兵庫県南部地震による宝塚市付近の建物被害と地形との関係, また建物被害と宅地化年代との関係について検討した. 建物被害と地形, 建物被害と宅地化年代をGISを用いてオーバーレイし, 各地形と各宅地化年代に対する被害率を求めた. また数量化I類による回帰係数を用いて, 各地形と各宅地化年代に対する被害率を求めた. 前者は地形と宅地化年代を別々に, 後者は同時に扱ったものである.
回帰係数から求めた被害率を用いて, 建物被害と地形および宅地化年代との関係を評価した. その被害率と被害率の95%信頼区間を考慮すると, 被害の起こりやすい地形は, 中位段丘, 低位段丘, 低地改変地, 扇状地, 沖積低地, 山地, 山地丘陵改変地, 自然堤防の順である. また大きな被害の起こりやすい地形は扇状地・低位段丘, 低地改変地・中位段丘, 自然堤防・沖積低地・山地・山地丘陵改変地の順である. 被害の起こりやすい地形の順序と, 大きな被害の起こりやすい地形の順序は異なっている. またより堅い地盤の中位段丘, 低位段丘, 扇状地が, より軟弱な地盤の沖積低地, 自然堤防よりも建物被害が起こりやすい結果となった. これらの結果から, 地形の構成層と地質構造が被害率に影響を及ぼす要因になっているものと思われる.
回帰係数から求めた被害率と被害率の95%信頼区間を考慮すると, 新しい宅地ほど, 被害全体から見ても被害大から見ても被害は起こりにくくなる傾向のあることがわかった.
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