地下深部花崗岩の変質プロセスを解明することを目的に, 岐阜県土岐市で深度約500mまで掘削したボーリングコアについて花崗岩の変質状態と割目等との相関を調べた. 変質鉱物として, 絹雲母, 緑泥石, 方解石, 水酸化鉄が認められた. 黒雲母の緑泥石化や斜長石の絹雲母化は, 開口割目が発達する部分と勇断を伴うシーリングされた割目が多い部分で顕著であり, 深度との相関は認められない. 方解石は, 勇断を伴うシーリングされた割目近傍において充填鉱物として認められるが, 開口割目の多い部分では見られない. 開口割目と剪断を伴うシーリングされた割目が同時期に形成されたとは考えにくく, 異なる時期の熱水変質があったと考えられる. 水酸化鉄は, 一部の開口割目やその近傍の鉱物粒間において観察され, 黒雲母や緑泥石などから溶出したFeが, 地表から浸透した地下水により酸化されて沈殿したものと考えられる.
これらのことを総合すると, 土岐花崗岩体の変質プロセスとして, (1) マグマ貫入直後の熱水変質, (2) 開口割目形成後の熱水変質, (3) 天水の浸入に伴う水酸化鉄沈殿の3ステージが考えられる. また, 地下深部花崗岩の変質プロセスにおいては, 割目を介在した地下水と岩石の反応が重要と思われる.
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