応用地質
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57 巻, 2 号
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論文
  • 門間 聖子, 細野 哲久
    2016 年 57 巻 2 号 p. 58-67
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/10/22
    ジャーナル フリー
    高規格道路のルート選定に際し,自然由来の重金属リスクを地球化学的手法により評価した.評価に際しては,候補2ルートを包括する地域を1km四方のメッシュに区分し,メッシュごとに1地点の土壌を採取して重金属類の全含有量分析を行った.その結果,銅,鉛および亜鉛の濃度が強い相関性を示し,これらの元素が鉱化作用やそれに起因する鉱物の共生関係と強い相関があることが示された.また,各元素の濃度について多変量解析を行った結果,第1因子得点が銅,鉛,亜鉛,水銀および砒素の濃度との強い相関を示し,鉱化作用の指標として有効であることが示された.これらの結果を踏まえ,多変量解析により得られた第1因子得点分布に基づき地球化学的にリスクの低いルートを選定した.当該ルートにおいて実際に道路建設が行われた結果,重金属リスクを有する掘削発生土の発生割合は7.8%の予測に対し実績は7.4%となり,予測と良好な一致が認められた.これらの結果から,地球化学的リスク評価は鉱化作用が見られる地域において重金属リスクがより低いルートを選定するために有効な手法であることが示された.
報告
  • 瀬﨑 章太郎, 小坂 英輝, 楮原 京子, 阿部 恒平, 三輪 敦志, 池邉 紘美, 岡田 真介, 八木 浩司, 鈴木 毅彦, 今泉 俊文
    2016 年 57 巻 2 号 p. 68-79
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/10/22
    ジャーナル フリー
    第四系が変形した活構造を示す露頭が山形県村山市を通る東北中央自動車道の工事法面に確認された.この活構造露頭は,山形盆地西縁断層帯に関連するものと推定されたが,既存の活断層図では地形判読により,撓曲と活向斜が解釈されているのみで,これらの構造と関係する地質構造は確認されていなかった.
    活構造露頭の周囲の法面を観察した結果,段丘構成層が変形した露頭が形成時期の異なる段丘でそれぞれ確認された.確認した撓曲・褶曲と,変位の累積性から最上川右岸の河島山を頂部とする丘陵の東縁に新たな活断層(浮沼断層)を認定できた.また,浮沼断層は,露頭で確認した変形や低断層崖を形成していないことから,撓曲や褶曲を生じさせた断層であり,地下に伏在すると解釈される.浮沼断層の平均変位速度は,断層隆起側の地形断面および断層低下側の地質断面により推定される上下変位量と段丘面の年代から,約0.45~0.55m/千年と試算された.
    防災・減災のためにも,このように伏在断層が推定される地域では,地表のずれの他に,地形の起伏とその配置・配列,地下構造を併わせて調査を行う事が重要である.
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