無形資産のみで売上を構成するものとした場合、企業は人材の獲得ならびに能力開発により能力を蓄え、各市場への配分の仕方において、その成果の違いが表れるだろう。その際、意思決定者は、ビジョンを元に行動の指針となる制度を設計する必要があるが、制度は通例に基づいて設計されることが多く、また、この制度設計の手法やその効果について定量的な観点からみた研究は少ないため、研究が望まれている。そこで、本研究は、産業と企業行動をエージェントベースモデルを通じてモデル化し、人材の流動性を鑑みた制度設計を通じて、優秀な業績を上げるために重要な意思決定の解明を目指す。
本研究では、データマイニング法(DM法)を活用した不正会計検知手法の分析結果について報告する。DM法とは、株式ファクター研究で近年提案された手法で、計算可能なファクターを網羅的に分析することで従来研究では注目されてこなかったが有効なファクターを見出そうとするものである。DM法を用いたファクターの検証から不正会計検知モデル構築、予測結果までを報告する。
本研究では,情報セキュリティ事故に関連するニュースが,企業の株式価格へ与える影響について分析を行った.分析対象は,上場企業とし,ロイターニュースにより市場参加者へのアナウンスが行われたニュースを対象とした.ニュースの分析においては,金融分野のテキスト分析に焦点をあてたFinBERTを用いた.本研究において、イベントスタディによる手法を用い、複数の期間において、株式価格への影響について比較、分析を行った。
社会シミュレーションの出力結果・ログからのナレッジ抽出については,様々な方法論が提案されている.当該分析手法は,モデルの開発者や分析者のみならず,その他ステークホルダーの間での認識共有・統一のために重要である.本発表では,社会シミュレーションの結果の分析及び形式的記述のために,デザイン思考の分野で用いられているエクスペリエンスマッピング手法を援用することを試みる.
バルチック海運指数(Baltic Dry Index)は,鉄鋼、石炭、穀物などの原料を運ぶ国際的な海上運賃の指標で、将来の世界的な経済活動や海運関連株価を予測する上で注目されるといわれている指標である。本研究では、1985年1月4日以降の時系列の日次数値データを活用し、同指数の中期予測可能性の検証のための基礎分析を実施した。市況産業である開運会社にとって、市況を読み間違えることは多大な損失に直結し、中長期予測の有効性が確認されれば、海運会社の採用できるヘッジ手法の選択肢の拡大、ヘッジ精度の向上など、その意義は大きいと考える。
本研究では、日本の株式市場を対象とし、ニュースデータと高頻度データを用い、過去のニュース発信傾向及びニュースのセンチメントによる出来高の反応を分析した。ニュースの分類は、ファイナンス分野の分析に提案された分析手法であるFinBERTモデルを用いた。詳細の分析は過去のニュース発信の傾向を取り入れて各ニュースのセンチメントに対する出来高の反応を評価した。分析の結果、平均的に過去のニュースの発信傾向がポジティブの情報とネガティブの情報が混在しているときがポジティブの情報とネガティブの情報のいずれかに傾いているときより、ニュースに対する出来高の反応が大きいことが分かった。この結果は、日本株式市場の市場動向の分析に貢献する興味深い結果です。
本稿では,日本で行われたM&Aを対象に買収企業と被買収企業間の技術的距離と,取引前後のイノベーション活動との関係性について分析した.分析においては,特許文書データを自然言語処理技術によって解析し,各特許の価値を加味しながら技術的距離の測定を行った.分析の結果,M&A前に被買収企業が獲得した特許数が買収企業よりも多い合併案件では,案件公表後にイノベーションアウトプットが大きく低下することが分かった.また,このグループは相対的に技術的距離の値が小さいことが確認できた.本研究における新規性は,自然言語処理を用いて技術的距離を測定し,M&A発表後にイノベーションアウトプットが低下する条件や特徴を見出したことである.