本研究はスポーツフィッシングにおけるスキルの伝達を対象とした研究手法の提案である.暗黙的スキルの伝達を対象とする研究では,実践過程そのものが分析対象となるため,2011年に実施した実践過程を報告する.
著者はトップアスリートの身体知(長年の経験によって身体に刻み込まれた知能)に興味を持っている.これまでに吉田孝久氏(陸上競技・走り高跳び・元日本記録保持者)と冨田洋之氏(体操競技・アテネ五輪団体金メダリスト)にインタビューを行ない,その要旨をこの研究会で発表してきた.今回は水泳競技の中西悠子氏の身体知を紹介する.彼女は165cmというさほど大きくない体格ながら,「楽に速く泳ぐ」をモットーに世界の強豪たちと戦ってきた.そこには従来の常識に囚われない泳法,すなわち自身の身体特性や身体感覚を活かした泳法があった.それは日々の練習において多くのことを強く意識(制御)する中で,カスタマイズされたものであった.
散歩やサイクリングにおいて私たちは何気なく風景を知覚している.この暗黙的な風景の知覚を意識化することで風景への感性が開拓されると我々は考える.そこで本研究では視覚情報の可聴化をきっかけに思考が促進されるという仮説をもとに,自転車移動を対象に風景の変化を音楽へ変換することで風景の知覚を豊かにするツールの開発とその実践例を報告する.
我々は東京のまちを歩き,コミュニティの成立に想いを馳せた軌跡から,まちを語るための「型ことば」をカード化した.更に,型ことばに該当するスポットが集中するエリアに対して,型ことばの重ね合わせでそのエリアを語る「物語」を4編執筆した.まち観帖は型ことば集と物語の総称であり,まちを歩き,観て,楽しさを語り伝えるメディアとして機能する.