本研究では、自動倉庫における並列タスクキューの評価のための代理モデルを提案する。自動倉庫の最適化は現実の物流における重要な課題であり、一般的にMAPD問題として定式化される。本研究では、MAPD問題へのタスク追加の方式を制御するため、並列タスクキューという枠組みを定義している。この並列タスクキューの最適化により、自動倉庫の効率化が行えることを期待している。提案する代理モデルはニューラルネットワークを用いてこの並列タスクキューから自動倉庫の性能を評価するものである。実験によって代理モデルは一定の精度が示され、並列タスクキューを用いた自動倉庫効率化に活用できることが期待される。
動的避難誘導システムは,コンピューターシステムの正常稼働が困難な,災害時の環境で稼働しなければならないため,システムのレジリエンシーが重要な問題となる.本研究は,分散アルゴリズムを内蔵した避難誘導標識が独立に,ネットワークを通して通信しあうことにより,建物内からの避難誘導を行う分散システムについて分析する.このシステムは単一障害点を持たず,避難誘導中に一部の構成要素が故障しても機能し続けることができる.非同期マルチエージェント・シミュレーションを使った分析により,火災の強さに比例して故障が発生するシナリオにおいて,本質システムは故障のないシステムと同等の性能を発揮することが分かった.
社会シミュレーションのエージェントに人間の行動を反映する手法として繰り返し囚人のジレンマを用いたアプローチが提案されている。エージェントに組み込む行動モデルの内容として繰り返し囚人のジレンマにおけるしっぺ返し戦略などの人間の協力行動や非協力行動の戦略が採用されている一方で、繰り返し囚人のジレンマでの行動に付随する感情について調査された研究はまだ少ない。行動に付随する感情が判明することで、人間の行動の背後にある感情の解明につながり、より応用的なエージェント構築に寄与することができる。本研究では表情センシングにより、繰り返し囚人のジレンマにおける人の行動が感情に与える影響について調査する。
近年,ストーリー型コンテンツの需要が拡大する一方で,効率的かつ創造性を支援する制作手法の必要性が高まっている.そこで本研究では,人の創造的作業を支援することを目的に,プロットに基づくマルチエージェントプランニング手法を提案する.従来はエージェント設計に多大な人的コストが必要であったが,大規模言語モデル(LLM)を活用して行動選択ネットワークを自動生成することでこのコストを削減した.また,プロットのプラン系列を再現しつつ,より細かい自律エージェントのプランを構築できることを確認した.本手法により,ストーリー制作における創造性拡張の新たな可能性を示す.
自律型のAI・ロボットが実環境で汎用的に動作するには,状況に応じて自身が持つ複数目的を適切に選択できる能力が必須となる.すなわち,状況により動的に変化する個々の目的達成における重要度や達成するまでに許容される時間などを考慮して,適応的にその場その場においてどの目的達成に集中するかを迅速に判断できなければならない.そこで,個々の目的達成をそれぞれ1つの自律エージェントが担当し,自律エージェント同士が協調することで,適応的目的選択を行うマルチエージェントプランニングを提案する.今回は,仮想空間にて構築したロボットシミュレーションにおいて提案手法の有効性を評価した.