近年都市部から地方への移住希望者が増加しており,移住先に定住してもらうことは地方にとっても日本社会にとっても重要であるが,移住前の認識と移住後の実際の生活との齟齬から再び離れていってしまう問題がある.我々は,このような課題を解決するための人と地域とのマッチングシステムを提案する.本システムの実現においては,コールドスタート問題への対応や,対話的に推薦を行える状況の活用などの特徴があり,これらは人工知能によるアプローチに寄って実現される.本論文では,提案手法と既存の機械学習や最適化の手法との比較についても考察する.
近年、日本にでもクラウドファンディング市場は目覚ましい拡大を遂げている。本研究では、クラウドファンディング市場で起案者と出資者での相互作用の分析・モデル化を試みる。それは、出資という参加行動と、そのプロジェクトへの参加をSNSで拡散する消費者行動と、プラットフォーム企業として消費者にコミュニティへの参加行動を促進する戦略をとる企業側のコミュニケーション構造を明らかにする。ブランド・コミュニティの概念と特徴について確認し、消費者の自発的参加行動の背景を、先行研究をもとに整理する。ブランド・コミュニティの文脈からクラウドファンディングを定性的な分析を行い、エージェントベースモデルによる仮想実験を行う。
近年、高効率を目的とした全自動水耕栽培システムが、農業人口減少や自然災害の発生により、世界中から注目を集めている。しかしそのシステムでは、段式栽培による短期間での効率的な栽培のため、高品質な作物育成が困難であることが挙げられる。そこで本研究室では、高効率栽培を維持しながらも、ロボットを農業従事者が遠隔操作し育成に関与することで、高品質な作物の育成を行う「水耕栽培マネージングシステム」を提案、開発してきた。本研究では、作物の品質を向上させるために、ロボットアームの直感的な遠隔操作や触覚センシングによる遠隔地からの従事者の栽培ノウハウを活かした作物管理を目的にしたシステムを提案する。
将来成長が期待される有望な研究者の確保はイノベーションの推進にとって最重要課題の一つである.然しながら,このような研究者を発掘することは容易ではない.本研究では,生命科学分野を事例として,科学技術振興機構(JST)が提供する学術文献データから構成される共著ネットワークを分析することで有望な研究者を探索する手法を提案する.共著ネットワークにおける中心性の高い研究者を優秀な研究者と定義し,中心性の時間の推移による研究者の成長過程を分析することにより,有望な研究者を探索する.また,これらの研究者と研究分野や所属機関等との関係を分析することにより,有望な研究者の特性を明らかにすることを目指す.
少子高齢化が進む日本では、組織における人材の多様化は必然である。本研究では、組織の多様化研究におけるフォールトライン(グループを1つ以上の属性によってサブグループに分ける仮想の分割線)にフォーカスし、その種類・強弱によって、グループ全体の成果およびコンフリクトの発生度合いに与える影響がどのように変化するかを考察する。また、負の影響が発生する場合、それを未然に防ぐ、または減少させるために、マネージャーはチームに対してどのようなアクションを起こすべきかの仮説を立て、コンフリクトを減らすために何が効果的なアクションかを、ABMによるシミュレーションで実証する。