人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
2023 巻, FIN-031 号
第31回金融情報学研究会
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
  • 小池 和弘, 牟田 篤兄, 田中 祐史, 田中 謙司
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 01-06
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    物流需要はネット通販の成長に伴う個配増加と多品種・小ロット化が進む一方,供給面ではトラックドライバー不足と時間外制限による「2024年問題」がある.物流コストインフレが続くと2030年には物流供給が36%不足し経済に大きな負の影響を与えると予想されている.これに対し経済産業省を中心にフィジカルインターネット(PI)への構造転換が進められているが,解決すべき問題が多い.特に独特な商習慣である店着価格制は運送会社にとって効率化のインセンティブが働きにくい制度である.本研究では近い将来PIへのパラダイムシフトが進み,DCやデポなど物流施設の共有化,パレットや箱サイズの標準化,業務プロセスや積み替え手順の標準化が実現する前提で,運賃の店着価格制に代わる価格決定の仕組みを提案する.仲介役の居ない仮想運賃市場で荷主と運送会社が自由にP2P取引を行うマルチエージェントシステムの中で,個々の運送会社エージェントは時間外制限を遵守し,共有物流施設の活用と帰り便の積載率向上などで収益率最大化を図る.適切な環境条件下においては個々の運送会社の利己的な意思決定であっても,全体的には需要を満たした上で運送コストが低下し荷主にとってもメリットが得られることをシミュレーション実験で確認する.

  • 金澤 輝代士, 佐藤 優輝
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 07-08
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    成行注文は一般的に長期的な予測可能性をもつ.買い注文を+1,売り注文を-1として定式化すると,その符号自己相関関数はゼロではなく,非常にゆっくり減衰していく.この減衰は漸近的にべき減衰であることが知られており,この微視的起源が昔から議論になっていた.この減衰の微視的起源とは,トレーダーの注文分割行動にあると実務的に言われている.そして,注文分割行動を数理モデルとして定式化したのがLillo,Mike,Farmer (LMF)の理論である.本研究では,LMFモデルの理論研究を報告する.我々はトレーダーの戦略多様性がある場合について,LMFモデルを拡張した.更にその解析的性質を厳密に調べ上げた.

  • 水田 孝信, 八木 勲
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 09-15
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    証券取引所は市場価格の急変動をおさえるため,現在の価格から大きく離れた価格の注文を出せないようにする値幅制限や,価格が急変動した際にある一定時間注文を受け付けないサーキットブレイカーを導入する場合がある.一方で,どちらがより価格の急変動をおさえるかは多くの議論がある.そこで本研究では人工市場を用いて値幅制限とサーキットブレイカーの効果の比較を行った.その結果,値幅制限とサーキットブレイカーは制限幅や時間スケールといったパラメータを同じにすれば,同じ程度に急変動をおさえる効果があることが分かった.しかし,投資家が注文をキャンセルする時間スケールより値幅制限が短いパラメータを持つ場合,制限価格に付近に注文がたまってしまい,その注文が急変を緩和する方向への価格変動を妨げてしまい,サーキットブレイカーよりも価格急変動をおさえる効果は劣ってしまうことも分かった.今回の結果だけを見れば,値幅制限よりもサーキットブレイカーの方が優れているように見える.しかし今回の結果は,誤発注による下落であり,かつ,いずれの規制も個別銘柄に導入された場合のみを分析しているなど,非常に限定的な状況下のことしか示していないことに注意が必要である.

  • 遠藤 修斗, 水田 孝信, 八木 勲
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 16-21
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    金融市場の最良気配値付近における注文の偏りはオーダーブックインバランス(OBI)と呼ばれており,この OBI とリターンには正の相関があると考えられている.本研究ではOBIを考慮した執行アルゴリズムをモデル化し,本モデルが市場からどのような影響を受けるのかを人工市場を用いて調査した.

  • 丸山 博之
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 22-23
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    東京証券取引所においては市場制度の見直しをおこなっている。2022年4月には、市場区分見直しとして、東証一部、二部、マザーズ及びJASDAQといった市場区分からの変更を行っている。本研究では、合成コントロール法を用いて、その影響の検証を行った。

  • 床枝 秀斗, 師岡 里名, 増田 樹, 星野 崇宏
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 24-31
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本講演では、小規模市場における売買成立方式が株式市場に与える影響について検証する。株式市場の売買成立方式は以前から議論されてきた議題であり、出来高に大きな影響を与える要素の一つである。また、近年株主コミュニティ制度の広がりとともに、小規模市場による効率的な売買成立方式の重要性が高まっているといえる。しかしながら、小規模市場における売買成立方式がどのような影響を及ぼすかについてまだ十分な研究はされていない。本稿では、ザラバ方式、板寄せ方式、ハイブリッド方式の3つの方式を比較し、人工市場を用いた検証を行う。加えて、株式会社FUNDINNO様からご提供いただいた株主コミュニティのデータに各売買成立方式を用いることで、各売買成立方式が市場の指標にどのような影響があるかをシミュレーションを用いて検証する。

  • 仲 泰成, 酒井 浩之, 永並 健吾
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 32-35
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では決算短信の生成型要約手法を提案する。本手法では決算短信と業績発表記事との対応を自動的に取得し、その対応を学習データとしてT5で要約モデルを生成する。その際、業績発表記事の各文と類似している文を決算短信から自動的に抽出することで、決算短信の重要文を抽出するための学習データを作成し、BERTによって決算短信から重要文を抽出する。この決算短信の重要文集合と業績発表記事を学習データとしてT5によって生成型要約を行った。評価の結果、重要文の抽出を行わない場合の要約文の正解率が41%であるところ、重要文抽出を行った場合の要約文の正解率は44%であった。

  • 小杉 樹来, 小澤 誠一, 廣瀬 勇秀, 池田 佳弘, 中川 憲保, 飯塚 正昭, 西田 大輔
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 36-41
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年、中長期的な企業経営や成長戦略において、環境、社会、企業統治(ESG)の観点から配慮を要する活動が求められている。これは、投資家が売上高や利益などの財務指標のみを重要視するのではなく、ESGへの取り組みという非財務情報にも配慮した経営を求めているためである。本研究では、企業が行っているESG活動やその実績などをニュース記事から取得し、投資すべき企業をESGの観点から根拠と合わせて自動選定する仕組みの構築を目指す。具体的には、急激な進化を遂げているChatGPTを用い、ロイターニュース記事のトピックをプロンプトエンジニアリングで自動抽出する方法を提案し、プロンプトを工夫することで、概念抽象度が異なるトピックの抽出が可能であることを示す。

  • Yuan Cheng, Matsui Tohgoroh
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 42-49
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    Risk management in banking is a process designed to minimize and control the probability or impact of uncertain events. It includes identifying, assessing, and prioritizing risks and uncertainties faced by banking institutions. The process also involves formulating strategies to manage these risks through mitigation, transfer, acceptance, or avoidance techniques. Risks in banking may include credit risk, market risk, operational risk, liquidity risk, interest rate risk, and other business-related uncertainties.Using the DBA k-means method to cluster financial time series data from EDINET offers a novel way to understand bank relationships. It allows us to identify which banks share similar characteristics and provide a quantitative measure of how closely these banks resemble each other regarding their financial metrics.

  • 永並 健吾, 酒井 浩之
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 50-54
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,様々な製品や素材が部品や原料の関係にあるかどうかを表すネットワーク構造(グラフ)のことを指して,サプライチェーンマップと呼ぶことにする.サプライチェーンマップを人手で作成するには,様々な製品の情報が必要となるため,非常に時間と労力を要する.そこで本研究では,大規模言語モデル(GPT-2)を用いて,サプライチェーンマップを自動で生成することを試みる.例えば,有価証券報告書などの金融テキストから「テレビ用液晶モニタを開発、製造し、…」といったような製品間の部品関係を示す文を抽出することで,「テレビ」と「液晶モニタ」が部品関係であると推定できる.しかし,製品によっては他の製品との部品関係を示す文が少なく,十分な量の部品推定が行えない.そこで本研究では,そのような文によりファインチューニングした大規模言語モデル(GPT-2)を用いて製品間の部品関係を示す文を新たに生成することで,どのような製品に対しても十分な量の部品を推定できる手法を提案する.

  • 指田 昌樹, 和泉 潔, 坂地 泰紀
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 55-60
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    責任投資の原則(PRI)のもと機関投資家は、ESGの取り組みを取り入れた投融資をすることが求められている。しかし、現在日本においてはESG及びSDGsの取り組みに関する開示は、主にPDFベースのサステナビリティレポートや統合報告書で行なわれており、統一的なフォームは存在していない。そのため、ESG投資の責任者は手作業で各企業の取り組みの状況を評価する必要が生じ、多くの手がかかっている。本論文では、サステナビリティレポート等のPDFベースの情報からSDG関連の文を自動で抽出し、17のゴールに分類を行なうモデルの構築した。分類モデルは、事前学習済みのsentence-BERTモデルをファインチューニングして作成した。作成の過程で、SDGsのゴールのうち、「貧困」等に取り組んでいる企業が日本では少なく、学習データとなる事例が少ないという問題が生じた。そこで、ChatGPTを活用し、「貧困」等に関する文章を生成しそれを学習データとして用いることで、その課題の解決を図った。

  • 高野 海斗, 中川 慧, 藤本 悠吾
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 61-67
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    運用報告書における市況コメントと見通しは,投資家が資産の運用状況と今後の投資環境を理解する上で重要である.一方で,運用報告書の作成対象であるファンド数およびファンドの運用に影響を与えるニュースは日々増加しているため,これらの作成にかかるコストも増加傾向にある.そこで本研究では,ChatGPTを活用し,運用報告書における市況コメントと見通しを自動生成するツールを開発した.本ツールでは,ユーザーは市場とコメントの対象期間を入力するだけで,指定された市場およびコメントの対象期間に基づくリターンデータやニュースデータを参照し,投資環境や変動要因に関するコメントを自動的にかつ即時に生成することが可能である.本研究では,開発したツールによって自動生成された市況コメントと,実際の運用報告書における市況コメントとを定性的・定量的に比較分析し,その精度と有効性を検証した.本ツールは資産運用業界におけるレポート作成の効率化や品質向上に寄与する可能性がある.

  • 黒木 裕鷹, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 68-74
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    決算説明会は,投資家をはじめとするステークホルダーとの主要なコミュニケーション手段の一つであり,開示される定量的な財務データを解釈する定性的な情報を含む.企業分析における定性情報の重要性は広く認識されているものの,決算説明会にどの程度の定性情報が含まれているのか,企業特性や業績が定性情報とどのような関連があるのかについては,未だ調査が行われていない.そこで本研究では,今後の普及が期待される大規模言語モデル ChatGPT を用いて,決算説明会のテキストを「ファクト」と「オピニオン」に分類し,その性能を評価した.さらに分類されたテキストを用い,量・割合と企業特性や業績がどの程度関連するのかを分析し,オピニオンを多く用いる企業の傾向を調査した.結果として,英語かつ few-shot のプロンプトと gpt-4 を用いた場合,大量のラベル付きデータを学習する先行研究を超える精度 (F-1 score 0.824) であること,平均して38%の表現がオピニオンに分類されることがわかった.企業特性や業績との関連分析では,利益率が小さい企業や時価総額が割高な企業ほどオピニオンの量・割合が多い傾向にあることがわかった.フォーマットのない決算説明会において,オピニオンの多寡など企業ごとに異なる特徴は投資家との合意形成の手段として重要な役割を果たしている可能性が示唆される.

  • 児玉 実優, 酒井 浩之, 永並 健吾, 高野 海斗, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 75-80
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,統合報告書から抽出された企業における環境活動に関する文が一貫したストーリーとして記述されているか評価したうえで,不足している記述を改善案として生成する手法を提案する.近年,投資家はESG(E:環境,S:社会,G:統治)情報を投資判断において重視している.そのため,企業もESG 情報の発信に注力しており,ESGに関する情報は「統合報告書」に多く記載されている.経済産業省,環境省は,ESG関連情報を1:上位方針の階層,2:実行の階層,3:PDCA の階層の3つの階層に応じて一貫したストーリーとして説明を行うことを求めている.そこで本研究では,まず,統合報告書からE:環境活動に関する文の抽出を行い,抽出された文を1:上位方針の階層,2:実行の階層,3:PDCAの階層,それ以外に分類する.ここで,実際に分類を行うと,階層2までの記述がある企業は多いが,階層3までの記述がある企業は少ないことが分かった.そこで,本研究では数少ない階層3までの記述がある企業の文章を学習データとして大規模言語モデルをファインチューニングし,階層2までの記述で止まっている企業に対して,階層3に相当する文章を改善案として自動生成する.

  • 増田 樹, 中川 慧, 星野 崇宏
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 81-88
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年、大規模言語モデル(LLM)、特にOpenAIが開発したChatGPTの出現は、多岐にわたる領域での応用が試みられている。なかでも、医師国家試験や、司法試験をはじめとする難関資格試験を解かせる試みが増えてきた。それは公認会計士試験も例外ではなく、特に、米国公認会計士試験についてはすでに合格水準を超える精度が観測されている。一方で、米国公認会計士試験の合格率は50%前後であるものの、日本の公認会計士試験短答式試験の合格率は概ね10%程度で推移しており、より難度が高い可能性がある。本研究の目的は、難解な専門資格試験における言語モデルの応答能力や限界を理解することであり、特に、日本の公認会計士・監査審査会が実施する公認会計士試験(短答式試験)のうち、監査論の問題をChatGPTのAPIを活用し、回答する枠組みの提案を行う。そして、GPT-3.5とGPT-4に回答させることでその精度を比較検証する。結果として、GPT-3.5では、正答率は50%程度(チャンスレート同等)のものの、GPT-4では、60%を超える正答率を確認でき、有意チャンスレートを上回ることが確認できた。今後、このような会計・監査分野に特化したLLMを監査業務へ活用することで、より効率的かつ効果的な監査を行える可能性がある。

  • 伊藤 央峻
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 89-93
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    二酸化炭素(CO₂)の排出削減を促進する手法の1つであるカーボンプライシングについて,多くの学術論文が発表されている.論文の理解には経済や気候等に関する多様な専門知識が必要となる.本研究では大量のテキストデータを使ってトレーニングした大規模言語モデルの一種であるBERTを用いてカーボンプライシング関連論文の内容把握・分析を試みた.具体的には,インターネット上で収集したカーボンプライシング関連論文について,人手でラベル付けし学習データとして用いることで,BERTによる文章分類器を作成した.SHAPによってBERTの判断根拠を可視化し,カーボンプライシングに関するワードがモデルの判断に用いられていることを確認するとともに,BERTopicによるトピック分析を実施し,カーボンプライシング関連論文が6つの主要なトピックに分けられることを示した.

  • 中川 慧, 南 賢太郎
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 94-101
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    モメンタム効果はモメンタム効果は、過去のリターンに基づいて現在の価格動向を予測するものであり、多くの市場や資産に観察される。しかしながら、その測定期間の選択には恣意性があり、特に、短期、中期、長期の各計測期間では、モメンタム効果が大きく異なる。そこで、本研究は一般化トレンド・ファクターという新しいモメンタム効果の計測方法を提案する。一般化トレンド・ファクターはモメンタム効果やリバーサル効果を広く含み、定常性を満たす。また、単調回帰により、各銘柄ごと一般化トレンド・ファクターを推定する手法を提案する。これにより、期間選択の恣意性を排除し、銘柄毎のモメンタム効果の異質性を捉えることが可能となる。実証分析では複数の暗号資産をユニバースに用いて、このファクターの有効性を検証する。

  • 堀川 弘晃, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 102-109
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    オプションの価格設定とそのヘッジ問題は,金融の分野における実務的にも学術的にも重要な問題である.伝統的には完備市場のもとでのリスク中立評価に基づくヘッジ(デルタヘッジ)が試みられてきたが,近年,ディープ・ヘッジングという深層学習を用いて,不完備市場におけるオプションの最適ヘッジ戦略を計算する汎用的な枠組みが提案された.この枠組みでは,不完備市場における損失リスク最小化に基づくヘッジが行われる.しかし,リスク中立評価に基づくヘッジと損失リスク最小化に基づくディープ・ヘッジングとの間の関係は自明ではなく,ディープ・ヘッジングの実務的な利用には,伝統的なリスク中立評価との比較あるいは整合性を確かめる必要がある.また実測度下での最適化をメソドロジーとして採用するディープ・ヘッジングの枠組みでは,統計的裁定の存在によりヘッジの学習が阻害されることが知られている.そこで本研究では,統計的裁定戦略を数学的に定義する.そして複製可能な条件付請求権に対する,ディープ・ヘッジングとデルタヘッジとの間の理論的な関係を導く.具体的には,損失リスク最小化に基づくヘッジはデルタヘッジと統計的裁定戦略の和として表現される.この表現に基づいて,ディープ・ヘッジングのPnL分布の特徴を考察し,統計的裁定の存在に対してロバストな望ましいリスク尺度の議論を行う.

  • 藤原 真幸, 中込 智樹, 加古 海星, 堀川 弘晃, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 110-117
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    オプションの価格設定とそのヘッジ問題は、金融の分野における実務的にも学術的にも重要な問題であり、深層学習技術の発展を活用したディープ・ヘッジングという不完備市場におけるオプションの最適ヘッジ戦略を計算する汎用的な枠組みが提案された。しかし、実務的なオプションヘッジの設定を考えると、複数のオプションからなるポートフォリオに対してヘッジを行う必要があり、その際には複数の異なるオプションを扱うスマイルカーブの情報を適切に考慮することが必要となる。そこで本研究では、ディープ・ヘッジングを複数のオプションからなるポートフォリオを対象に、ボラティリティの期間構造を織り込んだネットワークの構造を作成し、これらに対して最適なヘッジ戦略の構築することを目的とする。具体的には、同じ原資産、満期かつ行使価格の異なるヨーロピアンオプションを含むポートフォリオに対するヘッジ量の計算を行う枠組みを提案する。同時に、異なる行使価格を持つオプションを同時に扱うことから、スマイルカーブの情報を組み込んだネットワークの構造を考察する。具体的に数値実験によって、提案手法の有効性を確認する。

  • Yoshiro Enomoto, Kei Nakagawa
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 118-125
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は、近年加速する日本の資本市場改革に対応し、企業価値向上のための枠組みを提案する。企業にとって、企業価値を向上させる手段は必ずしも明確ではなく、特に投資家の期待を反映するとされるPER等のバリュエーションマルチプルの管理が難しい。そこで本研究では、企業がコントロール可能な変数(ファンダメンタル変数)と不可能な変数(マクロ経済変数)をインプットに、統計的な回帰分析と機械学習モデルのそれぞれでマルチプルの予測モデルを構築し、モデルの予測精度を検証する。さらに機械学習モデルに対して、SHAPという局所的サロゲート手法と、線形回帰を用いた大域的サロゲート手法を用いて、モデルの解釈を試みる。これにより、マルチプルが企業の経営努力によって改善可能な内部要因や、制御不可能な外部要因のどちらによってより説明されるのかを明らかにし、マルチプルの変動要因を解明することを目指す。最後に、企業が自身のマルチプルに影響を与えるための可能性を具体的に示し、その結果を資本市場改革の文脈における企業価値向上策として提案する。

  • 野間 修平
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 126-133
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    資産配分の文脈において,各資産の価格変動を横断的に説明する共通因子を抽出し,これを介して資産配分を決定する戦略であるFactor Risk Budgeting戦略が注目されている.このような価格変動の共通因子はリスクファクターと呼ばれる.マルチアセット市場におけるリスクファクターを抽出する手法としては主成分分析が広く用いられている.しかし,主成分分析を用いて抽出されるリスクファクターの多くはマクロ経済的な概念と紐づけて解釈することが困難であるため,主成分分析によってリスクファクターを抽出することはFactor Risk Budgeting戦略においてブレスや転移係数を低下させる要因となる.こうした問題を解決する手段として,ファクターローディングが疎性を有するように正則化を施すアプローチが提案されているものの,ファクターローディングが疎であることは様々な実務的問題を伴う.本研究ではローディングが密であり,かつ解釈も容易であるようなリスクファクターを抽出する手法を提案し,マルチアセット市場データを用いた実験によりその有効性を確認する.提案手法は分析対象となる資産が属する資産クラスについての情報を追加的に入力することにより,マクロ経済的な事象と紐づけて解釈することが容易であるリスクファクターの抽出を達成する.

  • 石原 龍太
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 134-141
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,藤島・中川[2021]が提案したトンプソン・サンプリンングを用いて複数のポートフォリオを動的に合成する手法を応用し,体系的にマルチアセットファンドの動的資産配分を行う手法を提案したものである.まずマルチアセットファンドの運用プロセス及び戦術的資産配分において行う資産の魅力度の評価方法について説明した.そして,米国債と米国株式の2資産に投資するマルチアセットファンドの動的資産配分モデルを構築し,2003年1月から2022年12月までの期間の市場データを用いてバックテストを行い,この期間においては提案手法がマルチアセットファンドの収益性やリスク・リターン効率を改善したという結果を確認した.

  • 澤木 智史, 仲山 泰弘
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 142-149
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では, 強化学習手法を活用し, 動的なアセットアロケーションの投資戦略を構築した. 初めに, 強化学習を投資戦略に適用する際の重要な考慮点として, 金融時系列データの非定常性をどのように強化学習アルゴリズムに組み込むかを検討した. この結果, 環境設定に時間軸や局面変化の変数を導入することで, 予測精度の向上が示唆された. 次に, 強化学習を投資戦略に応用する利点として, 最適化を行う問題を柔軟に設定できる点が挙げられる. これにより, 実務上の投資家が直面する制約をアルゴリズムに取り込み, 最適化を実施することが可能になると考える. 具体的には, 投資戦略策定における諸条件を, 目標リターンやドローダウンなどの管理指標の制約, リバランスの頻度やレバレッジ比率などの運営上の制約, そしてシグナルなどの予測精度の制約の3つに分類した. これらを強化学習のフレームワーク上での環境や報酬に組み込むと, 投資行動がどのように変わるかを調査した.

  • 岡島 右馬, 許 子微, 市瀬 龍太郎
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 150-153
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,新しい事業への参入や既存事業の拡大を目指す企業の合併と買収(M&A)が活発に行われている.機械学習技術の急速な進化により,M&A候補企業をより効果的かつ効率的に推薦しようという試みが行われているが,現在の主流はM&A取引をカテゴリー分けする方法であり,成功の可能性が高い候補を特定するのは困難である.そのため,本研究では,日本の上場企業間で実際に行われたM&A取引事例を参考にして,適切な組み合わせの予測を試みた.有価証券報告書に含まれる財務および非財務データを利用することで,M&A取引を分類し,決定木を用いて成功事例を正確に識別できるかどうかを検証した.その結果,一定の分類精度が得られ,M&Aの推薦実務への応用可能性が示唆された.

  • 田中 博生, 野村 忠慶, 西山 昇
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 154-155
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
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    過去のプロジェクトで実施した大型小売店舗の来客数予測の取り組みを紹介する。対象となった店舗は都心へ電車通勤できる郊外に位置する。大型小売店舗にとって毎日の来客数予測は、仕入れ数量に関係することもあり重要である。通常の来客数予測は、店長等の現場責任者がそれまでの経験から2,3日後の来客数を予測している。本プロジェクトでは、各店舗の来客数をモデルにより予測、情報共有する仕組みを検討した。予測するにあたり店舗の過去の来客実績、曜日などの季節性、安売り日等のイベント情報に加え、天候情報を組み合わせる事で予測力が向上するとの仮説のもと検証した。最終的には、過去の実績来客数と予測来客数の差異を「学習期間」のデータによる予測により「予測期間」通期で最小化する結果を得られた。

  • 森田 啓介, 黒木 裕鷹
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-031 号 p. 156-162
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/12
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    企業のガバナンスは経営の透明性やステークホルダーからの信頼と大きく関連する.コーポレートガバナンス・コードが,独立社外取締役の知見に基づいた助言に期待して,その選任を推奨する中で,一人の個人が複数企業の取締役および社外取締役を兼任するケースがある.取締役兼任ネットワークを分析した先行研究の多くは,ネットワーク中心性と企業の業績や情報開示の相関分析に焦点を当てている.しかし,同じ人物による異なる取締役会への参画によって,その人物の知見やノウハウが共有・伝播されるとすれば,接続の同類性やクラスター構造をはじめ,より複雑なネットワーク構造を捉えた分析が重要である.また,ネットワークデータを直接扱う機械学習技術の開発が進んできていることからも,兼任ネットワークにおいて,こうした豊富なネットワーク情報を考慮する意義を見定めることが必要である.本稿では,日本における兼任ネットワークの最近の動向を調査するとともに,条件付き一様グラフ検定と指数ランダムグラフモデル(ERGM)を適用し,ガバナンスとの関連が知られる諸指標の同類性(assortativity)を検証する.結果として,ベータや残差リスクは同類性をもつことがわかり,取締役の兼任によって企業間で知見が共有されている可能性が示唆された.取締役兼任ネットワークのもつ豊富な情報を活用して,ガバナンス構造の分析・予測を行う余地があると考えられる.

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