人の脳の振る舞いを模倣した有機的情報処理を実現すべく①神秘的な神の創造物である脳の情報処理を真似ることはしないで、②自分の思考/判断/行動を極力、客観的に観察し脳の振舞いを体系化し、③これを実現すべく制御方式を創造、体系化し(この中でブレークスルー*1に遭遇)*1:思考アルゴリズム、記憶制御(連想/階層記憶/活性化伝搬)、仮想視野空間制御④項#②③を相互補完する中で脳機能工学に基づく有機的情報処理を構築してきた。本論では、これまでのアプローチから得られた有機的情報処理の体系と今後の取り組みを紹介する。
動物の脳にヒントを得た認知アーキテクチャが AGI 実現の足がかりになるという期待がある。動物の脳では、近年の人工ニューラルネットワークを用いた機械学習で広く用いられている逆誤差伝播は少なくとも複数脳領域を超える形では用いられていないと考えられる。本稿では、モジュール間の逆誤差伝播を行わない複数の学習器からなる以下の3つの認知アーキテクチャの実装について報告と考察を行う。1) モジュール間の逆誤差伝播を行わない複数の学習器からなる最低限のアーキテクチャ2) 皮質・基底核・視床ループの実装3) 注意機構を持つ作業記憶の実装
連想記憶の機構を持った汎用人工知能のためのプログラム合成対象言語 Pro5Lang について述べる。この言語は論理型言語と機械語の特徴を合わせ持っている。連想記憶装置は証明探索の過程で得られる証明済み命題をのみを記憶する。この提案機構は脳におけるエピソード記憶の主要な役割の1つを明解に説明する計算論的モデルでもある。テストプログラムをいくつか書くことにより、Pro5Lang の表現力と合成対象言語としての適性を予備的に検討した。
科学技術研究は長期的なAIの応用先の中でも最も波及効果が大きいと見込まれる分野の一つである。AIを一種の自動化技術として捉えた場合、その効用は人間の操作や指示をいかに減らすかあるいは簡略化出来るかと比例する。従って、科学AIの効用はその自律性と深く関係すると考えられる。本講演では、米国SAE(自動車技術会)が示した自動運転のレベル設定にヒントを得て、実験科学分野を念頭に置いた科学AIの自律性レベルの設定を提案する。また、汎用AIを含むAI研究の長期的な発展との関連を、科学研究における過去および最近の具体的なAIの応用例とともに議論する。