知識や経験の伝承は、産業現場や社会制度の現行オペレーションの維持継続が目的である。一方で、企業や社会の重要な課題を取り巻くシステムはAIやIoTといった近年の技術の浸透により複雑化・大規模化が進んでおり、過去の経験に基づいた意思決定が必ずしも有効ではない。今後は蓄積されている知識や経験をシステムシンキングにおける対象のモデル構築に活用し、モデルベースで意思決定を行うプロセスの組織への実装が有益と考えられる。本発表ではシステムシンキング、モデルベースの意思決定のための手法とケース、また、知識伝承との関係について述べる。
ふげんは、福井県敦賀市に位置する実験用原子炉施設である。1978年に臨海、2003年に運転を停止し、2008年には国の認可を受けて廃止措置に入った。近年は、ベテラン職員が徐々に退職し、実際の炉の運転経験のない職員も多くいる。汎用運転研修施設もあるが、新型転換炉(ATR)であるふげんで培われてきた様々な技術・知識は固有性も高く貴重である。そこで、オントロジーを活用し、知識・技術を後世に継承する仕組みを検討する。
知識は産業や文化など人間の活動を発展させる力である.従業員は多くの知識を経験とともに積み上げているが,それは人工知能が扱えるようには構造化されていない.特に,介護などの非定型業務の知識は多様であり,現場ごとに固有の知識が存在する.筆者らは,現場を越えて共通の知識をもとに,従業員が現場固有の知識を構造化する方法論として知識発現を提案している.本発表では,知識発現の現状と将来展望について述べる.
スポーツやダンスなどの指導現場では体幹の使い方を「軸」という用語で表現する場合が多くある.しかし,バイオメカニクスの観点から体幹部を一つの軸として定義することは難しい.なぜなら体幹部は複数の骨で構成されているためである.本研究では体幹部の長軸周りの捻り動作を対象とし,体幹部をバイオメカニクスの観点からバネモデル化できるかどうかの検証を行った.そして,主観評価実験も行った.
我が国の情報通信業では,連続1か月以上休業または退職した労働者の割合が,全産業平均の約2~3倍であり,メンタルヘルス問題が深刻である.開発ガイドラインの策定やスキルの標準化,人材育成が進められているが,問題解決に至っていない.筆者は,物や生物の音声,人間の心理や感覚を言葉で表すオノマトペを用いて,IT技術者の仕事の量・難易度・感情を表現しつつ,生体データを計測することで,ストレス状態の可視化に取り組んでいる.