日本口腔腫瘍学会誌
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7 巻, 1 号
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  • 今井 裕, 佐々木 忠昭, 永島 知明, 篠原 真
    1995 年 7 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌一次症例33例に対し, 抗PCNAモノクローナル抗体を用い免疫組織学的に検討し, PCNA発現と臨床進行度, 組織学的悪性度ならびに予後との関係について検討し, 以下の結果が得られた。
    1.臨床進行度では, T分類, N分類ともにPCNA発現と相関し, 進展例ならびリンパ節転移症例に高率であった。
    2.組織学的悪性度もPCNA発現と相関がみられ, 高悪性群にその発現が高率で, 特に核異型度, 浸潤様式, 浸潤程度との関連を認めた。
    3.予後との関わりでは, 予後不良例にPCNAの発現が有意に高率であった。
    以上より, 頭頸部扁平上皮癌におけるPCNAの発現は, 臨床ならび病理所見と相応し, 悪性度の指標や予後の推測に有用な手段となることが示唆された。
  • 黒川 英雄, 山下 善弘, 石橋 浩晃, 梶山 稔
    1995 年 7 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    増殖細胞核抗原・PCNAは免疫組織化学的に容易に検出し得ることが可能であることから, 近年, 注目を浴びている。今回, 私たちは口腟扁平上皮癌を対象として, PCNAの発現を免疫組織化学的に検索し, 臨床ならびに病理組織学的な所見との関連性について検討した。
    すべての腫瘍組織にPCNA陽性細胞が認められ, Stage分類, 予後との明らかな関係は認められなかったが, 分化度が高い程, PCNA陽性細胞率が有意に低く, また, 浸潤様式との関係では4C, 4D型において高いPCNA陽性率を示す傾向があり, 悪性度の指標としてPCNAの臨床応用の可能性が示唆された。
  • 神部 芳則, 鎌田 仁, 高木 忍, 渡辺 是久, 赤坂 庸子, 新藤 潤一
    1995 年 7 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    われわれは, 下唇から下顎歯肉全域, 口底部まで広範囲に進展した口腔未分化癌の症例を経験したので, その概要を報告する。患者は, 50歳男性で, 下顎歯肉の退縮および下顎前歯部の痛みを主訴に来院した。パノラマX線写真およびCT像では下顎骨の明らかな異常はみられなかったが, 骨シンチでは99mTc-MDPの下顎骨への集積を認め, 67Gaシンチでは, 両側頸部リンパ節相当部への集積像を認めた。
    患者は化学療法同時併用放射線療法 (PEP: 120mg, 60Co: 49.9Gy) で根治的に治療され, 口腔の形態と機能は完全に温存された。治療後約1年6カ月経過するが局所および頸部リンパ節に異常を認めていない。
  • 松本 光彦, 松永 心子, 大木 秀郎, 堀 稔, 田中 博, 佐藤 廣, 草間 薫, 小宮山 一雄
    1995 年 7 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    69歳女性の原発巣の確定に苦慮した上顎癌と肺癌の同時性重複癌と思われる1例を経験した。
    上顎骨部分切除術3カ月後に同側顎下リンパ節が腫大し, その摘出生検で転移性腺癌と診断され内科的に全身精査を行ったが, 原発巣を確定し得なかった。顎下腺由来を想定し頸部郭清術を施行したが両側の顎下腺には悪性所見はなかった。さらに3カ月後に肺に多発性陰影が確認され生検で低分化型腺癌と診断された。この後約20日胃低分化型腺癌も発見され, 全経過1年で死亡した。
    本症例の顎下リンパ節, 肺, 胃の生検組織像は基本的に同一腫瘍と考えられ, 腫瘍細胞の形態から肺原発の腫瘍が, 早期に顎下腺に近接するリンパ節に転移し, 経過とともに胃粘膜へも転移した症例と考えられた。本症例は肺癌が判明するまでの期間は広義の原発不明顎下リンパ節転移癌と考えるのが妥当であると思われ, 両腫瘍の発生時期を考えると上顎癌と肺癌の同時性重複癌と思われた。
  • 中村 直喜, 関口 隆, 本間 清史, 小玉 智, 永井 格, 小浜 源郁
    1995 年 7 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    神経鞘腫は身体のあらゆる部分に発生するが, 口腔領域においては比較的少なく, 口底部の発生は非常にまれとされている。今回われわれは, 口底部に発生した神経鞘腫の1例を経験したので報告する。
    患者は74歳女性で, 口底部の無痛性の腫脹を主訴に来院した。術前診断ではMRIおよび超音波所見が有用であり, 特に超音波所見は腫瘍の臨床所見, 病理組織学所見を良く反映していた。全身麻酔下に口内法により腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的に神経鞘腫Antoni B型と診断された。術後は再発, 唾液の流出障害もなく経過良好である。
  • 松浦 政彦, 瀬川 清, 北原 朋広, 工藤 啓吾
    1995 年 7 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    舌癌のうち, 初診時に遠隔転移の認められる症例は, 稀である。われわれは, このような肺門部転移を疑った高齢者舌癌の1例を報告する。
    患者は84歳男性で, 左側舌の嚥下時痛を主訴に, 当科を紹介され来院した。臨床診断は左側舌癌 (T3N0M1) で, 化学療法と放射線療法が, 原発巣と肺線巣に施行された。原発巣の大きさは, 65%に縮小し, 肺転移巣にも効果が認められたが, 肺線維症が生じた。その後, 激しい舌の自発痛と腫瘍の壊死を生じ, 疼痛除去を目的に, 全麻下に舌の部分切除術を施行した。しかし, 術後2カ月目に, 肝機能不全のため死亡した。
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