日本東洋医学雑誌
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62 巻, 3 号
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総説
  • 巽 浩一郎
    2011 年 62 巻 3 号 p. 329-336
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/15
    ジャーナル フリー
    COPDは労作時呼吸困難を主訴とし,QOLが著しく障害される病態である。経過中に体重減少を認める患者は生命予後が悪く,体重減少は呼吸機能の一指標としての気流制限の程度とは独立した予後因子とされている。体重減少に対する治療法として,食事指導や栄養補助療法が用いられているが,必ずしも十分な効果は得られていない。さらに,栄養障害は易感染性を招き,COPDの増悪発症に関与する可能性も考えられる。COPD患者では増悪の度に呼吸機能が低下していくことが想定され,増悪の頻度を減らすことが呼吸機能の維持に貢献するものと考えられる。またCOPDは全身性炎症性疾患であるという認識が高まってきており,それに対する治療も必要と考えられる。補中益気湯には食欲改善や免疫機能改善作用があり,COPDの栄養障害や易感染性の改善,増悪の抑制により,QOLの改善,重症化移行の遅延化,呼吸機能の維持をもたらしうる。
原著
  • 石川 慎太郎, 久保 哲也, 砂川 正隆, 俵積田 ゆかり, 佐藤 孝雄, 石野 尚吾, 久光 正
    2011 年 62 巻 3 号 p. 337-346
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/15
    ジャーナル フリー
    瘀血の状態では,血液が鬱滞することから腫脹や疼痛などの障害が現れる。瘀血は循環障害と捉えられ,血管抵抗性と血液流動性の側面から研究されてきた。血液流動性の変動要因には血球および血漿成分があり,その変動に活性酸素が深く関わっていると考えられている。今回,ラットに漢方薬(当帰芍薬散,柴胡加竜骨牡蛎湯,桃核承気湯,桂枝茯苓丸,十全大補湯)を投与して活性酸素動態と血液流動性への影響を観察した。その結果,これらの漢方薬投与群では,抗酸化力が上昇し,血液流動性が亢進した。また,当帰芍薬散・桃核承気湯・桂枝茯苓丸は血小板凝集を減少させた。さらに赤血球浮遊液の流動性は,抗酸化力との間に負の相関を認め,漢方薬の抗酸化作用が赤血球の変形能あるいは粘着性に影響したと推察された。血栓症や塞栓症などの誘因である血液流動性の低下を予防する可能性が示唆された。
臨床報告
  • —眼科漢方30年の経験から—
    山本 昇吾, 藤東 祥子
    2011 年 62 巻 3 号 p. 347-358
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/15
    ジャーナル フリー
    再発性眼疾患に対して再発防止の目的で漢方治療を行った症例を呈示し,漢方治療の有効性について考察した。
    眼科漢方30年の経験の中で,再発予防を目的として漢方治療を施した症例は27例あった。疾患の内訳は,再発性麦粒腫,再発性多発性霰粒腫,再発性結膜下出血,再発性糸状角膜炎,再発性角膜ヘルペス,Posner-Schlossman Syndrome,中心性漿液性脈絡網膜症,再発性硝子体出血であったが,随証治療の原則に従い,継続的に漢方治療を施したところ27例中12例で3年以上にわたって再発を認めなかった。
    再発性眼疾患に対する再発防止は一般に困難と考えられているが,これらの結果は再発性眼疾患に対する漢方治療の有効性を示唆するもので,漢方は今後も試みるべき治療であると考える。また,今回の検討から,再発性疾患に対して治療を施した場合にその治療が有効であると言えるまでの年数に関する一つの基準として3年~4年が妥当ではないかと思われた。
  • 井上 雅, 横山 光彦, 石井 亜矢乃, 渡辺 豊彦, 大和 豊子, 公文 裕巳
    2011 年 62 巻 3 号 p. 359-362
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/15
    ジャーナル フリー
    尿管結石の疝痛発作に対して芍薬甘草湯を投与し,その臨床的有用性を非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)と比較検討した。対象は尿管結石患者25名で,11名に対し芍薬甘草湯5.0gを内服させ,コントロール群として,14名にNSAIDsを内服させた。内服時,内服後15分,30分,60分にNRS(numerical rating scale)を用いて比較検討した。NRSは0点を全く痛みなし,10点を最も強い痛みとした。結果は芍薬甘草湯内服群では内服時NRSは6.7 ± 2.3点で,内服後15分で3.4 ± 3.5点と有意に軽減した。NSAIDs内服群では内服時8.3 ± 1.8点で,内服後15分では7.0 ± 1.9点と有意な鎮痛効果は認めたが,鎮痛効果は芍薬甘草湯の方が有意に優れていた。その他の時点においても同様の結果で,芍薬甘草湯は尿管結石の疝痛発作に対して即効性があり,NSAIDsよりも有意に鎮痛効果を認めた。
  • 貝沼 茂三郎, 迎 はる, 古庄 憲浩, 海野 麻美, 白土 基明, 村田 昌之, 林 純
    2011 年 62 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/15
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性。骨髄異形成症候群の1病型である不応性貧血(refractory anemia:RA)と診断されビタミンK2製剤の投与を受けていたが,汎血球減少が進行するため当科を受診。初診時,白血球数2150/μL,ヘモグロビン値9.6g/dL,血小板数2.3万/μLであった。気血両虚を目標として十全大補湯を投与し,四物湯の各成分を3gから5gまで増量,さらに黄耆建中湯合四物湯に転方したが貧血は改善しなかった。その後再び十全大補湯に転方し,四物湯の各成分を6gに増量,さらに膠飴10gを加味した。その結果,ヘモグロビン値,血小板数は著明に増加した。治療前後での骨髄所見には大きな変化が認められなかったが,膠飴を加えることにより十全大補湯の造血作用が増強される可能性が示唆された。
  • 野上 達也, 岡 洋志, 藤本 誠, 引網 宏彰, 後藤 博三, 柴原 直利, 嶋田 豊
    2011 年 62 巻 3 号 p. 369-373
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/15
    ジャーナル フリー
    帯状疱疹後神経痛(PHN)の2症例に対して烏頭剤にて加療を行った。この2例は烏頭剤の投与によりPHNが改善し,中断により再発,再投与で再度改善するという経過をとった。症例1は76歳男性で右L2‐3領域のPHNに対して烏頭桂枝湯を投与し疼痛の軽減を得た。後に桂枝加苓朮附湯に変更したところ,2日後より疼痛が再び悪化し,烏頭桂枝湯を再開して疼痛は再度消失した。症例2は82歳男性で右C4‐5領域のPHNに対して烏頭湯を用いた。疼痛の軽減を得たためツムラ桂枝加朮附湯エキス顆粒に変更したところ,1週間後には疼痛が再増悪し,烏頭湯を再開して再度疼痛は軽減した。この2症例の経過から(1)PHNに対して烏頭剤は有効であり(2)その効果は標治的である可能性が示唆された。烏頭剤の中止や烏頭の漸減を考慮する上で示唆に富む症例と考え報告した。
東洋医学の広場
  • 加藤 耕平, 及川 哲郎, 花輪 壽彦
    2011 年 62 巻 3 号 p. 374-381
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/15
    ジャーナル フリー
    〔背景と目的〕漢方医学は食事を重視してきた医学であり,漢方薬には食用となる様々な植物が用いられている。したがって,栄養学との関連性があり,栄養学科の学生に対する漢方医学教育の必要性があると考えられる。しかしこれまで栄養学科の学生を対象にした意識調査は行われていない。このため栄養学科の学生に対して漢方薬(漢方医学)の意識調査を実施した。
    〔方法〕管理栄養士養成課程の3年生に質問項目13のアンケートを行った。
    〔結果〕9施設延べ509名から回答を得た。漢方薬(漢方医学)に「興味がある」と答えた学生は全体の59.3%であった。「興味がない」と答えた学生の86.4%は,その理由は「漢方薬(漢方医学)に触れる機会が少なく,よく分からない」と回答した。一方「授業で漢方薬を取り扱って欲しいですか」という問いに対して81.3%が「そう思う」と回答した。
    〔結論〕漢方医学は,栄養学科の学生に対して教育的ニーズがあることが示唆された。
論説
  • —薬用量および分服の意義—
    鈴木 達彦, 遠藤 次郎
    2011 年 62 巻 3 号 p. 382-391
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/15
    ジャーナル フリー
    本研究では日本漢方における薬用量と服用法について検討し,以下の結果を得た。日本の後世派に大きな影響をもたらした曲直瀬道三は,察証弁治により処方を組み立て,既存の処方を用いなかったため,薬用量を把握しづらいが,標準の量の約半分を薬秤として定めている。貝原益軒は1回服用量を1~2銭とし,かなり少ない量を規定している.吉益東洞は一方で権衡を1両=2銭(7.5g)としながら,1回服用量は大まかに3銭を目安としている。このほか,考証学派により1両=1.4gが主張された。
学会シンポジウム
伝統医学臨床セミナー
  • 1.抑肝散についての解説:抑肝散をより深く知るために
    2.小児の精神発達障害,心身症における抑肝散と抑肝散加陳皮半夏の使用経験
    3.産婦人科領域における応用:抑肝散の治療経験
    4.認知症に対する応用:認知症に対する漢方治療
    5.精神・神経科領域における応用:抑肝散をいかに使うか
    赤尾 清剛, 川嶋 浩一郎, 齋藤 絵美, 真鈴川 聡, 山田 和男
    2011 年 62 巻 3 号 p. 479-508
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/15
    ジャーナル フリー
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