日本東洋医学雑誌
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74 巻, 4 号
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臨床報告
  • 宮西 圭太, 平田 道彦, 織部 和宏
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年74 巻4 号 p. 307-313
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    整形外科疾患で加療中の高齢者に対して,随伴症状から腎虚と血虚を推定し,六味丸と四物湯を投与して主訴が改善した3症例を提示する。1例目は関節リウマチで加療中の69歳女性で,両足部に自覚的な冷えを訴えた。2例目は79歳男性で歩行時に増悪する両下肢痛・しびれがあり,腰部脊柱管狭窄症の症例であった。3例目は体幹~下肢に移動性の慢性疼痛を有する80歳男性で,3ヵ月前から痛みの頻度が増加していた。3症例とも口渇や頻尿,顔面紅潮,不眠,皮膚乾燥などから六味丸と四物湯を併用投与して主訴が改善した。和田東郭は『蕉窓方意解』で,血虚と腎虚は併存しやすいことに言及している。3症例の主訴は異なり,その西洋医学的な病態は異なることが想定された。しかし,随伴する口渇や不眠などの見逃されやすい症候を漢方医学的に腎虚・血虚と病態解析して,異病同治の形で主訴を改善に導くことができた。

  • 吉田 也恵, 中本 佳代子
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年74 巻4 号 p. 314-320
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    臨床的に肺子宮内膜症と診断し,約3年間喀血を繰り返した症例に芎帰膠艾湯による漢方治療が著効したため報告する。症例は30歳女性。27歳時から月経周期に一致して血痰が出現し繰り返すため受診した。喀血時の胸部 CT と気管支鏡検査で左下葉 B6気管支からの出血を認め,臨床的に肺子宮内膜症と診断した。以降約3年間月経毎に喀血を繰り返し,多い時は中等量喀血を認めた。20XX年2月に頻回の喀血が数日間続く状態となり,血虚・虚寒を認めたため芎帰膠艾湯を開始した。3月の月経初日から3日間,4月の月経2日前から5日間内服したところ,いずれの月も少量喀血が1回のみとなった。以降の内服は終了したが妊娠が成立するまで1年以上の間,一度も喀血を再発することなく経過した。西洋医学的な肺子宮内膜症の治療は内分泌療法・外科的治療とされているが,衝任虚損・虚寒証を伴う肺子宮内膜症に対しては芎帰膠艾湯が奏功する可能性が示唆された。

  • 村井 政史, 谷津 高文, 眞木 賀奈子, 小林 範子
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年74 巻4 号 p. 321-325
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    症例は20歳女性で,幼少時より噯気は出ていたが特に気にしていなかった。2年ほど前からほかの人よりも噯気が多いのではないかと感じるようになり,内科で消化管運動機能改善薬などを処方されたが症状は改善しなかった。噯気は普段はあまり出ないが飲食した直後にのみ激しく出ることから,飲食時に空気も嚥下していると推察され,呑気症と考えた。ところで,胃反とは,胃の働きが悪くなり食べた物を消化できずに吐く状態で,朝に食べると夕方に吐き夕方に食べると朝に吐くとされる。本症例では,飲食直後の激しい噯気を胃反と類似した病態ととらえ茯苓沢瀉湯を投与したところ,噯気は減り激しく出なくなった。このことから,胃反の解釈を,吐出物は胃の内容物でも噯気のような空気でもよく,吐き方は激しく,飲食直後に吐くかしばらく経ってから吐くかといった時間的な違いにはこだわらない,とすることができると思われた。

  • 徳毛 敬三, 根津 優子
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年74 巻4 号 p. 326-330
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    卵巣がんによるがん性腹水に,五苓散は無効であったが柴苓湯と越婢加朮湯を併用投与したところ,腹水が減少した症例を経験したので報告する。

    73歳女性。X年8月腹部膨満感を主訴に近医内科を受診し,卵巣がん疑いで当科紹介となった。進行卵巣がんの診断で開腹手術を施行した。術後の化学療法にも拘らず,1年3ヵ月後再発した。再発後の治療は奏功せず,X+3年8月から緩和医療に移行してがん性腹水に,腹水濾過濃縮再静注法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy:CART)を施行した。また,腹水減少を目的に投与した五苓散は奏功しなかったが,引き続き柴苓湯と越婢加朮湯を併用投与したところ,播種病巣は増悪したものの,腹水はかえって減少した。結果として CART の施行間隔をそれまでの2週間から4週間以上に延長することができ,患者さんの QOL 改善に大きく寄与した。

  • 山本 真一, 長船 綾子, 松井 彰, 田中 國晃
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年74 巻4 号 p. 331-337
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    2種の漢方薬で繰り返し薬剤性膀胱炎を生じた症例を経験したので文献的考察を含めて報告する。55才時に体重増加に対して防風通聖散を処方され,約1ヵ月後に排尿痛などが生じ近医泌尿器科を受診し,膀胱炎として抗菌剤を処方された。約1ヵ月間治療しても治癒しないため総合病院の泌尿器科に紹介され,使用中の全薬剤を中止したところ2週間以内に症状と尿所見が改善した。防風通聖散再開後,数日で膀胱炎症状が再燃した。4ヵ月後,更年期障害に対して女神散を使用したところ膀胱炎様症状が再燃した。以上から防風通聖散と女神散による薬剤性膀胱炎と診断された。この2種と過去に使用した漢方薬の構成生薬の検討により黄芩が原因生薬と考えられた。漢方薬による薬剤性膀胱炎は一般に発症まで長期間を要し,原因薬剤の中止により比較的短期間で軽快する。原因生薬として黄芩を示唆する文献が多い。長期の処方に際しては十分な注意が必要であると考える。

  • 井上 博喜, 矢口 綾子, 原田 直之, 中尾 桂子, 吉永 亮, 矢野 博美, 加島 雅之, 田原 英一
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年74 巻4 号 p. 338-341
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    Persistent genital arousal disorder(PGAD)は,性的刺激なしに陰部に強い異常感覚や苦痛が出現する病態である。今回我々は,PGAD に当帰四逆加呉茱萸生姜湯が有効であった二例を経験した。PGAD の原因として神経や血管の機能不全が関与していると考えられているため,骨盤腔内臓器の虚血を改善する当帰四逆加呉茱萸生姜湯は良い適応と考えられた。特に鼠径部の圧痛を認める場合に当帰四逆加呉茱萸生姜湯を考慮すべきであると思われた。

  • 白井 明子, 小川 恵子
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年74 巻4 号 p. 342-347
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    メニエール病は原因不明の内耳内リンパ水腫疾患である。頻尿症状を伴うメニエール病非定型例に猪苓湯合四物湯が有効であった1例を経験したので報告する。

    【症例】47歳,女性。3年前から両耳鳴・難聴を繰返し,近医耳鼻科にてメニエール病非定型例の診断を受け,イソソルビド等の内服を継続したが増悪と寛解を繰り返し,漢方治療目的に紹介となった。水滞・血虚・瘀血・陰虚の病態を考慮し,頻尿を伴うことから猪苓湯合四物湯を処方した。その後,頻尿・耳鳴症状は改善し,1年3ヵ月後に自然廃薬となった。

    【考察】猪苓湯合四物湯は利水・清熱・滋陰・補血・活血の作用を持つ方剤である。メニエール病の漢方治療としては内リンパ水腫を水滞と捉え,五苓散や柴苓湯が一般に用いられるが,水滞に加え血虚・瘀血・陰虚といった複数の病態が原因である場合には,猪苓湯合四物湯が有効な選択肢となり得る。

  • 濱浪 嘉登, 有光 潤介, 小川 恵子, 松森 良信, 佐浦 隆一
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年74 巻4 号 p. 348-352
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    両大腿切断後の断端痛に対し,桂枝加朮附湯が奏効した1例を経験した。断端痛に対する漢方薬使用の報告例は乏しい。今回,切断の要因となった重症下肢虚血は両下肢の動脈硬化による高度狭窄と閉塞によるものであった。漢方医学的に虚血は循環不全による陽気不足と停滞により,寒と瘀血が存在していると考えられる。本症例では所見から瘀血は二次的産物と捉え,寒を除き陽気を抹消に届ける処方を考慮したところ,疼痛に対し奏効した。一般的な鎮痛薬で効果が乏しい断端痛に対し,桂枝加朮附湯を併用することで速やかな鎮痛効果が期待され,疼痛コントロールに有用であることが示唆された。

  • ―養腎降濁湯の有用性最大化に向けての考察―
    平名 浩史, 清水 和彦, 二村 明広, 平谷 和幸, 井上 幸枝, 小川 恵子
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年74 巻4 号 p. 353-364
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    養腎降濁湯加減により,化学療法後の慢性腎臓病ステージ G4が改善傾向となった症例を報告する。症例は30歳代男性。2X歳 精巣腫瘍(Mixed germ cell tumor)に対して BEP 療法(シスプラチン,エトポシド,ブレオマイシン),VelP 療法(イホスファミド,シスプラチン,ビンブラスチン)施行後59ヵ月間,腎機能低下のまま経過した。利便性と良質の生薬を担保するため IPCD 法にて養腎降濁湯を開始した。開始時の血清 Cr(s Cr)3.98 mg/dL,estimated Glomerular Filtration Rate(eGFR)16 mL/ 分 /1.73 m2が,3年経過した現時点で sCr 2.6 mg/dL,eGFR 25.4 mL/ 分 /1.73 m2まで改善し,維持されている。また,a long-term e GFR plot analysis により3年に亘る改善傾向が確認された。

解説
  • 長田 直子, 菅原 健
    原稿種別: 解説
    2023 年74 巻4 号 p. 365-379
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/23
    ジャーナル フリー

    和田東郭,有持桂里は共に,江戸中後期の漢方折衷派を代表する京都の医師である。それぞれの医学塾で弟子達に講義した内容は口授本として残され,後世に伝えられた。しかし,東郭の口授本の中には,桂里の医学・薬方内容とみられるものもある。本稿では,東郭口授とされる『百疢一貫』『東郭先生方輿並記聞』と桂里口授の『方輿輗』の項目・内容比較を行い,東郭口授本と桂里の医学の関係を検討した。

    その結果,『百疢一貫』は,杏林先生の言葉や体験談が記され,内容的に真の口授者は杏林先生である可能性があり,調査の結果「杏林先生」は有持桂里を指すことが明らかとなった。この本は有持桂里の講義などを元に書かれた可能性が高い。一方,『東郭先生方輿並記聞』は,桂里の医学内容そのものであり,その元は,今は失われている『方輿』の旧本である可能性が高い。よって,両書共に有持桂里の医学内容である可能性が極めて高いと考察される。

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