理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
38 巻, 4 号
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表紙
会告
目次
原 著
  • 早乙女 雄紀, 大沼 亮, 栗原 靖, 松田 雅弘
    2023 年 38 巻 4 号 p. 229-233
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕パーキンソン病患者のバランス能力向上にSPIDERを用いた運動療法が与える即時効果を検討すること.〔対象と方法〕PD患者10名を対象とし,SPIDERを用いた条件と用いなかった条件で運動療法を行い,効果を比較した.効果の計測は,Time up&Go Test(TUG),Functional Reach Test(FRT),および10 m歩行テストの3項目で行った.運動課題はスクワット10回と,前後へのステップ各10回とした.〔結果〕SPIDERを用いた条件でTUGとFRT,歩行速度が有意に向上した.用いなかった条件ではすべての項目で有意差はなかった.〔結語〕SPIDERを用いた運動療法が,PD患者の動的バランス能力に即時的効果を与えることが示唆された.

  • 齋藤 愛見, 平野 智也, 船渡 和男
    2023 年 38 巻 4 号 p. 234-240
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕幼児のターンアウトを伴う直立姿勢の特徴を検証した.〔対象と方法〕女児10名と成人女性の熟練バレエダンサー13名を対象とした.パラレルとターンアウトの直立姿勢を矢状面から撮影し,姿勢角と鉛直線から解剖学的計測点までの水平距離を算出した.〔結果〕幼児はダンサーと比較し,ターンアウトで前傾姿勢,胴体部で前方への移動量が大きいことが示された.〔結語〕ターンアウトの直立姿勢において,幼児は姿勢前傾と胴体部位の大きな前方移動を示し,姿勢前傾角度の減少と頸椎伸展を伴うダンサーの立位姿勢と異なることが明らかとなった.幼児はターンアウトでの直立姿勢を保持する体幹および下肢の筋力が低く,足部から頭部までの鉛直的な姿勢をとることは困難であることが示唆された.

  • 吉川 航平, 治郎丸 卓三, 池谷 雅江, 兵頭 勇太郎, 岡 恭正
    2023 年 38 巻 4 号 p. 241-247
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕中学生野球選手のスプリント,立ち幅跳びと身体機能との関係性を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は中学野球選手26名.30 mスプリント,立ち幅跳び,しゃがみ込み(Deep Squat Test:DST),開脚,Straight Leg Raise(SLR),握力,体幹機能(Sahrmann Core Stability Test:SCST)を測定し,SLR,DST,開脚,SCSTはグレード判定を用いた.30 mスプリント,立ち幅跳びと身体機能との関係についてSpearmanの順位相関係数を求めた.〔結果〕30 mスプリントとSLR,握力,SCSTに弱い相関を認め,立ち幅跳びと握力,SCSTに弱い相関を認めた.〔結語〕中学生野球選手のスプリントと立ち幅跳びには,体幹の安定性が重要である.

  • 塚原 翔, 沼口 峻也, 屋嘉比 章紘, 石坂 正大, 久保 晃
    2023 年 38 巻 4 号 p. 248-252
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕施設入所の要介護高齢者の日常生活動作能力と,低骨格筋量者の割合および身体各所の骨格筋量の関係を明らかにすること.〔対象と方法〕特別養護老人ホームの要介護高齢者女性39名を対象に,生体電気インピーダンス法による骨格筋量と日常生活動作の評価指標であるBarthel Index(BI)を計測した.Asian Working Group for Sarcopenia 2019に準じ,骨格筋量指数を低骨格筋量の基準とし,骨格筋量指数とBIの相関関係を分析した.〔結果〕低骨格筋量者の割合は84.6%であり,骨格筋量指数とBIの相関係数は,0.61であった.〔結語〕特別養護老人ホーム入所者のほとんどが低骨格筋量者であり,日常生活動作能力と骨格筋量に関連があることが示唆された.

  • 池田 裕貴
    2023 年 38 巻 4 号 p. 253-257
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕キネシオテーピング(KT)法 において,伸張率に応じて裁断すべきテープ長を測る客観的方法は確立されていない.そこで,単回帰モデルを利用した方法を考案・検証した.〔対象と方法〕2種類のKTを10~50 cmの範囲で裁断した.剥離紙がついた状態の裁断すべきKT長を算出する6つの単回帰モデルを,伸張に関するデータと目的とする伸張率に基づき作成した.〔結果〕すべての単回帰モデルは100%の説明が可能であった.〔結語〕単回帰モデルによる伸張率の統制は,有用な方法であることが確認された.

  • 松野 悟之
    2023 年 38 巻 4 号 p. 258-262
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕通所介護施設を利用する要介護高齢者を対象に,Body Mass Index(BMI)と認知機能との関連性を調査した.〔対象と方法〕通所介護施設に通所する要介護高齢者24名とした.対象者の年齢,性別,身長,BMI,筋肉量,教育歴,老研式活動能力指標,Mini-Mental State Examination(MMSE)を評価した.認知機能と独立して関連する要因を調査するために,MMSEスコアを従属変数,年齢,性別,教育歴,BMIを独立変数に投入した重回帰分析を用いた.〔結果〕重回帰分析の結果,BMIのみがMMSEスコアに独立して関連する要因として認められた.〔結語〕要介護高齢者においては,BMIと認知機能は正の相関となる可能性が示唆された.

  • 保坂 公大, 大田尾 浩, 西 栄里, 今村 純平, 田中 順子, 柴田 元
    2023 年 38 巻 4 号 p. 263-267
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕脊椎圧迫骨折患者の退院時の階段昇降能力に影響を及ぼす入院時の要因を検証した.〔対象と方法〕回復期病棟を退院した女性の脊椎圧迫骨折患者173名とした.評価項目は,入院時の改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),骨格筋量指数(SMI),ボディマス指数(BMI),握力,脳卒中の既往,椎体骨折数,受傷回数,入院日数とした.退院時の階段昇降の自立に影響する因子を調査し,階段昇降自立の可否を判別するカットオフ値を検討した.〔結果〕退院時の階段昇降自立の可否には,入院時のHDS-Rと握力が関係した.カットオフ値は,HDS-Rが19.5点,握力が13.9 kgであった.〔結語〕脊椎圧迫骨折患者は,入院時の認知機能と握力が良好であると,階段昇降が自立する可能性が高いことが示唆された.

  • 小山 浩司, 一場 友実, 古島 弘三, 菅野 好規, 新津 あずさ, 小太刀 友夏, 新納 宗輔, 上野 真由美, 足立 和隆
    2023 年 38 巻 4 号 p. 268-272
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕児童を対象に,スパインマットの使用前後で肩甲骨間の距離がどのように変化するのか検討をした.〔対象と方法〕児童83名を対象とした.介入方法は,対象をベッド上に背臥位とし,スパインマットを胸椎部に挿入した.スパインマットの介入前後に,胸椎後弯角度と肩甲骨間距離を測定し,対象者を過度後弯群と正常後弯群に分けて測定値を比較した.〔結果〕両群ともに介入前後の肩甲骨間距離に有意差が認められた(過度後弯群:介入前13.9 ± 1.7 cm,介入後13.3 ± 1.9 cm;正常後弯群:介入前13.6 ± 2.7 cm,介入後13.3 ± 2.7 cm).〔結語〕スパインマットの即時効果として,児童の肩甲骨間距離が減少する可能性が示唆された.

  • ─胸椎過度後弯に着目して─
    小山 浩司, 一場 友実, 古島 弘三, 菅野 好規, 新津 あずさ, 小太刀 友夏, 新納 宗輔, 上野 真由美, 足立 和隆
    2023 年 38 巻 4 号 p. 273-278
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕男子大学生の胸椎過度後弯の割合とその特徴を明らかにした.〔対象と方法〕男子大学生100名を対象に,スパイナルマウスを用いて立位での胸椎後弯,上位胸椎,下位胸椎,腰椎前弯,仙骨傾斜の各角度を測定した.〔結果〕40°以上の胸椎過度後弯を呈する対象の割合は45.0%(45/100)であった.胸椎後弯角40°を基準として,これより大きい過度後弯群と小さい正常後弯群に分けて結果を比較したところ,過度後弯群では,胸椎後弯角と腰椎前弯角の間に有意な相関関係は認められなかったが,正常後弯群では,弱い相関関係を認めた.〔結語〕胸椎の過度後弯を呈する男子大学生の割合は45.0%であり,その特徴として,胸椎後弯角と腰椎前弯角の間に相関関係を認めない可能性が示唆された.

  • 豊田 大輔, 小原 雄真, 橋本 勉, 立花 萌, 石塚 恒多
    2023 年 38 巻 4 号 p. 279-283
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕地域包括ケア病棟にてPoint of Careリハビリテーション(POCリハ)担当スタッフを常駐配置することが,患者の日常生活動作(ADL)および平均在院日数にどのような影響を及ぼすか検証した.〔対象と方法〕疾患別リハビリテーション対象患者114名を常駐担当配置前後の2群に分け,Functional Independence Measure(FIM)利得,FIM効率,平均在院日数,ADL誤差改善値の群間比較を実施した.〔結果〕2群間において有意差を認めた項目は平均在院日数であり,FIM利得,FIM効率,ADL誤差改善値に有意差は認められなかった.〔結語〕病棟常駐によるPOCリハの実施が在院日数短縮に有意に働いたのは,それによって院内多職種間連携ならびに家族への説明機会の獲得が促進されたためではないかと考えられた.

  • 高橋 元悟, 吉田 寛, 柴田 朋子, 田中 和哉
    2023 年 38 巻 4 号 p. 284-288
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕脚立上での作業中の姿勢保持の安定性について,静止時の重心動揺面積との関係を明らかにすることを目的とする.〔対象と方法〕対象者は健常成人9名とした.脚立上の足場の環境を模擬した踏ざん装置上で被験者に外乱刺激を加え,重心移動を経時的に測定した.静止時の重心動揺面積,外乱刺激時の潜時反応時間と最大後方重心移動距離の各パラメータ間の相関を評価した.〔結果〕静止時重心動揺面積と潜時反応時間,潜時反応時間と最大後方重心移動距離の間で,正の強い相関が認められた.〔結語〕踏ざん装置上での静止時の重心動揺面積を測定するだけで,脚立上での姿勢保持の安定性が評価可能となることが期待できる.

  • 村田 勇太, 和智 道生, 治郎丸 卓三, 大西 均, 藤谷 亮, 野口 真一, 布留 守敏
    2023 年 38 巻 4 号 p. 289-293
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕ライフキネティックトレーニング(LK)の介入を行い,視覚機能と視覚と身体コントロールの協調性に対する効果の検証を行うこと.〔対象と方法〕対象者は,高校サッカー部に所属する男性52名とした.一般的なサッカーのトレーニングに加え,60分間のLKを週1回,12週間連続で行うLK群と,一般的なサッカーのトレーニングのみを行うCON群に無作為に分類し,選択反応回数と周辺視野を計測した.〔結果〕LK群で選択反応回数,周辺視野ともに有意に増加を認めた.〔結語〕LKによりサッカー選手の選択反応回数,周辺視野は向上することが示唆された.

  • 松嶋 里美, 牟田 智也, 山下 淳一, 堀本 ゆかり
    2023 年 38 巻 4 号 p. 294-299
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕医師が腰椎変性疾患術後患者の症状再燃の捉え方と理学療法に求める視点を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は,腰椎変性疾患を専門とする整形外科医4名で,オンラインによるアンケートと対面によるインタビュー調査を実施した.〔結果〕症状再燃の視点は,患者が語る日常生活の愁訴が基準であった.術後理学療法には,体幹筋力の維持,全身バランスの調整,自主トレーニング指導を実施することが期待されていた.〔結語〕医師は,客観的評価に加え,患者が語る日常生活の愁訴で再燃の程度を判断しており,術後理学療法では,症状再燃を予防する筋力維持・向上や全身バランスの調整を期待していることが明らかになった.

症例研究
  • ─2SDを指標に用いた活動と参加の効果検証─
    有竹 愛理, 浅川 育世
    2023 年 38 巻 4 号 p. 300-306
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕訪問リハビリ利用者の環境因子介入効果を,活動参加をアウトカムに検討した.〔対象と方法〕視床出血後症例1名に対し各3ヵ月のA期B期を比較した.事前調査で訪問リハビリ利用者36名の活動参加の変化量を算出し,機能的自立度評価(FIM)9点,Life Space Assessment(LSA)5.9点,Community Integration Questionnaire(CIQ)4.3点を目標値に設定し,A期は標準的介入,B期はA期に加え包括的環境要因調査票(CEQ)を介入した.〔結果〕各変化量はA期FIM 3点,LSA 9.0点,CIQ 2.0点,B期FIM 9点,LSA 1.0点,CIQ 4.5点であった.〔結語〕訪問リハビリ利用者の環境因子介入は活動参加に良い影響を与えることが示唆された.

  • 齋藤 恒一, 伊藤 和寛, 山口 和輝, 海野 知美, 渡部 秀樹
    2023 年 38 巻 4 号 p. 307-312
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕完全独立型緩和ケア病院で,理学療法を受けた脳卒中後重度片麻痺を合併した終末期がん患者一例の日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)の経過を報告する.〔対象と方法〕脳卒中発症を契機に肺腺癌,脳転移,多発性肺転移と診断され,脳卒中後重度片麻痺を呈した60歳代男性を対象とした.全身状態はパフォーマンスステータス4と診断され,完全独立型緩和ケア病院へ転院した.〔結果〕転院後の理学療法開始時(第51病日)のADLは,機能的自立度評価法運動項目は23点,認知項目は31点,包括的QOL尺度短縮版で計測したQOLは26点であったが,8週間後,機能的自立度評価法運動項目は移乗動作のみ改善し28点,QOLは39点へと改善した.〔結語〕脳卒中後重度片麻痺を合併した終末期がん患者への理学療法により,移乗動作の介助量軽減やQOLの向上が得られた一症例を経験した.

総説
  • 田口 晶子
    2023 年 38 巻 4 号 p. 313-324
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)患者における栄養障害は改善すべき問題の一つである.サルコペニアの概念の台頭と相まって,COPD患者の栄養障害が取りざたされている.COPD患者の栄養障害は比較的高頻度に発生し,その原因は多元的である.その影響はCOPD患者の諸症状の悪化から生命予後にまで及ぶため,呼吸リハビリテーションの中に栄養療法が取り入れられている.その介入効果は,様々な指標で評価され,推奨の検討がなされるに至っている.栄養療法の実践と近年の研究の進展が注目を集め,今後の発展に期待が寄せられている.本総説では,COPD患者の栄養障害について,関心の変遷と発生頻度,発生の多元的要因,派生する悪影響,評価の方法,栄養補給療法の効果と推奨,さらに,今後の臨床実践と研究の展望に言及する.

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