理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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27 巻, 1 号
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原著
  • 冨田 憲, 園田 茂, 谷野 元一, 岡本 さやか, 永井 将太, 和田 陽介, 寺西 利生
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中片麻痺患者に対して蛋白同化ホルモン(以下,AS)を投与し,歩行や日常生活に即した訓練を中心に行う一般的な理学療法・作業療法とAS投与の併用が麻痺側下肢筋力に及ぼす効果を検討した.〔対象〕回復期リハビリ病棟に入院した初発脳卒中片麻痺患者19名とした.〔方法〕対象を,AS投与群(以下,AS群)とAS非投与群(以下,CT群)にランダムに振り分けた.麻痺側下肢筋力として,麻痺側の等速性膝関節伸展トルクを測定した.介入期間は6週間とし,AS群とCT群の麻痺側下肢筋力の経過を比較した.〔結果〕全症例での検討では両群間の筋力増加率に有意差を認めなかった.一方,麻痺が軽度な症例では6週後のAS群の筋力はCT群と比べ有意に増加していた.〔結語〕ASの投与は麻痺が軽度の脳卒中片麻痺患者の麻痺側下肢筋力を増強することが示唆された.
  • 佐々木 賢太郎, 神谷 晃央, 丸尾 朝之, 木村 剛
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕車椅子のリクライニング角度が呼吸機能,および呼吸機能測定中の呼吸筋活動に及ぼす影響を検討することであった.〔対象〕健常男子大学生27名.〔方法〕車椅子のリクライニング条件として,最も快適と感じる角度(BASE),それより10°前傾(FORWARD),10°後傾(BACKWARD)の3条件を設定した.呼吸機能と呼吸筋の筋活動を測定し,条件間で比較した.〔結果〕呼吸機能は,ERVにおいてFORWARD条件が他2条件よりも有意に増大した.スパイロメトリー中の筋活動については,最大呼気相において外腹斜筋の筋活動はリクライニングの角度条件間に差が認められた.〔結語〕搭乗者が快適と感じるリクライニング角度よりもわずかに前傾することで,外腹斜筋の活動が増加し,ERVが増大する可能性が示唆された.
  • 井上 由里, 長倉 寿子, 上杉 雅之, 小枝 英輝, 成瀬 進, 宮﨑 純弥
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 11-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕介護職員の腰痛の強さと機能障害に関連する健康関連Quality of life(QOL)について検討した.〔対象〕介護職員189名.〔方法〕腰痛の強さを数値化して,腰痛による機能障害の程度をRoland-Morris Disability Questionnaire(RDQ)によって,健康関連QOLをShort Form 36- Item Health Survey(SF-36)によって,自己記入式で評価した.腰痛の強さとRDQ得点を従属変数,SF-36の下位尺度を独立変数として重回帰分析をした.〔結果〕腰痛の強さには「体の痛み」,「身体機能」,「心の健康」,RQDには「身体機能」と「体の痛み」が関連していた.〔結語〕日常的・社会的役割や活動は介護職員の腰痛や機能障害に関与しなかったが,痛みと激しいスポーツや活動を制限が関与することが推測された.
  • 千葉 健, 山中 正紀, 武田 直樹
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー

    〔目的〕本研究の目的は,変形性膝関節症患者(以下,膝OA)と健常者の足底感覚を比較すること,膝OA患者の重心動揺における足底感覚の影響を検討することである.〔対象〕下肢・体幹に障害のない健常高齢者16名,および膝OA患者17名とした.〔方法〕足底感覚の測定にはSemmes-Weinstein Monofilamentsを使用した.また,堅い支持面・柔らかい支持面での閉脚立位保持中の総軌跡長,実効値面積,単位面積軌跡長を算出した.〔結果〕母趾球と小趾球の触圧覚閾値に関して,健常群とOA群の分布に有意差を認め,OA群では小趾球の閾値が母趾球よりも高い者の割合が大きかった.健常群では,足底感覚中央値と単位面積軌跡長に有意な相関を認めなかったが,OA群では有意な負の相関を認めた.〔結語〕本研究結果から膝OA患者の姿勢制御において足底感覚が重要な役割を果たすことが示唆された.
  • ─言語教示と結果の知識との組合せによる運動学習への効果─
    鈴木 博人, 石岡 勇樹, 一戸 広大, 川藤 沙文, 佐藤 菜摘, 鴫原 さゆり, 津田 大輝, 梁川 和也, 藤澤 宏幸
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では姿勢最適化トレーニングのモデルとしてfunctional reach(FR)を取り上げ,言語教示におけるinternal focus of attention(IFA)とexternal focus of attention(EFA)の運動学習への効果を結果の知識(knowledge of results:KR)を与えた場合について明らかにすることを目的とした.〔対象〕健康な大学生22名とした.〔方法〕練習前後のテストにてFRにおける外果から第3指末端での水平距離(FR距離)および重心位置を測定した.練習前テスト終了後,被験者を無作為にIFA群とEFA群との2群に振り分け,5日間連続で練習を実施した.各群へ同一のKRを与えた.〔結果〕EFA群が運動学習に至ったのに対し,IFA群は運動学習に至らなかった.〔結語〕EFAとKRの情報は類似性が高く,運動学習へプラスの効果を示した.教示情報と外在的フィードバック情報の類似性によって学習効果に影響を及ぼす可能性が示唆された.
  • 野澤 涼, 山本 澄子
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕椅子からの立ち上がりは臀部から足部のみの狭い支持基底面へ重心移動させる,そして重心を立位まで上昇させるという力学的要求が大きい動作であり,重心の移動には体幹の動きが重要となってくる.そこで今回は,若年者と高齢者を対象とし,胸部と骨盤に分けた体幹部位の前傾運動と下肢関節運動が椅子からの立ち上がり動作にどのように影響を及ぼすかを明らかにすることを目的として研究を行った.〔方法〕三次元動作解析装置と床反力計を使用し,胸部最大屈曲角度,骨盤の最大前傾角度,身体重心の最大移動速度,臀部離床時の胸部と骨盤の絶対角度,骨盤に対する胸部の相対角度,股関節,膝関節の最大伸展モーメントを算出し,若年者と高齢者の違いを知るために,これらの項目間の相関を求めた.〔結果〕若年者では胸部の最大屈曲角度,骨盤に対する胸部の相対角度の最大屈曲角度と膝関節最大伸展モーメントに有意な負の相関が見られ,高齢者では胸部の最大屈曲角度,骨盤の最大前傾角度と膝関節最大伸展モーメントにそれぞれ有意な負の相関が見られた.また立ち上がりに要した時間に違いが無いにもかかわらず,身体重心の進行方向の最大移動速度は若年者と比較し高齢者のほうが速かった.〔結語〕高齢者は胸部,骨盤の屈曲,前傾を利用し,身体重心の進行方向の移動速度を高めることにより,身体重心の上昇を可能にしており,若年者は胸部の前傾を利用し身体重心の上昇を可能としていることが示唆される.
  • 上田 泰久, 山﨑 敦, 福井 勉, 山本 澄子
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕デスクワークにおいて頻回に行われる動作のひとつである頸椎の回旋に対し,姿勢の非対称性としての肩峰の高低差が及ぼす影響を検討した.〔対象〕健常な成人男性13名とした.〔方法〕計測機器は超音波方式3次元動作解析システムを用いた.正中位を基準にして右回旋位と左回旋位における頸椎および胸椎の棘突起と肩甲骨の移動距離と,肩峰の高低差との関連をPearsonの相関係数により検討した.〔結果〕右回旋位では下位頸椎および胸椎の棘突起と肩甲骨の移動は右肩峰が下制しているものほど左方向へ移動した.一方,左回旋位では胸椎の棘突起の移動は右肩峰が挙上しているものほど右方向へ移動した.〔結語〕肩峰の高低差は頸椎回旋に影響を及ぼし下制側へ頸椎や胸椎が回旋した.
  • 平野 正広, 秋山 純和, 加藤 崇洋, 岡庭 栄治, 丸山 仁司, 天野 裕之, 鬼塚 史朗
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術の術後合併症に腹圧性尿失禁があり,その治療法にはPFMT(Pelvic Floor Muscle Training:骨盤底筋群トレーニング)がある.MRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像)によってPFMT時の骨盤底部の運動変化を検討した.〔対象〕健常成人男性7名とした.〔方法〕PFMT方法は,「おしっこを止めるように」,「肛門を閉めるように」の2つの指示とし,MRIによる撮影を実施した.骨盤底筋群の収縮による運動変化を捉えるために,安静時と指示を与えた時で恥骨─尾骨先端(P-C)距離,床面-尾骨先端(F-C)距離,恥骨─膀胱頚部(P-B)距離を測定し比較した.〔結果〕P-C距離は減少し,F-C距離,P-B距離の増大する傾向を認めた.指示「おしっこを止めるように」でP-C距離は減少幅が大きく,指示「肛門を閉めるように」でF-C距離の増大幅が大きかった.〔結語〕MRIを用いてPFMT時の骨盤底部の運動変化を明らかにした.PFMT指導によるP-C距離の減少,F-C距離の増大は,男性における尿失禁治療のPFMT 指導方法に役立つことが示唆される.
  • 種本 翔, 渡邉 進
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕運動制御への関与や固有受容器としての役割が注目されている体幹深部筋群への運動介入が,重心動揺に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.〔対象〕立位,歩行の自立した運動器疾患患者20名とした.〔方法〕運動課題は,腹部引き込み運動と下肢運動とし,それぞれ引き込み運動と下肢運動とした.介入前後での重心動揺を2群間で比較した.〔結果〕腹部引き込み運動群では,有意に総軌跡長,外周面積,矩形面積の減少,単位面積軌跡長の増加を認めた.一方,下肢運動群では,介入前後で有意な変化は認められなかった.〔結語〕体幹深部筋に対する運動介入は,重心動揺を安定させることが示された.
  • 中島 遼, 平野 大輔, 赤坂 清和, 澤田 豊, 乙戸 崇寛
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕拮抗筋に対するストレッチが主動筋の関節トルクに与える影響について,筋硬度柔軟性,および3種類の速度による等速性運動時の膝関節伸展トルクにより検証した.〔対象〕立位体前屈で手掌が床につかない男子大学生20名.〔方法〕被験者をストレッチ実施群,非実施群に無作為に分け,介入は7日間のセルフストレッチとした.介入前後に筋硬度,下肢伸展挙上角度(以下SLR角度),指床間距離(以下FFD),角速度60,120,180°/secでの膝関節伸展トルクを測定した.〔結果〕実施群ではストレッチによる介入により,筋硬度には変化がなかったものの,SLR角度は有意に改善した.また,伸展-30°での膝関節伸展トルクは,180°/secで有意な増大を示した.〔結語〕拮抗筋の柔軟性の増加は,主動筋による速い運動での関節トルクを増加させる可能性が示唆された.
  • ─振動覚の低下は転倒恐怖感や活動性に影響を及ぼさない─
    吉川 義之, 松田 一浩, 竹内 真, 福林 秀幸, 高尾 篤, 安川 達哉, 井上 由里, 梶田 博之, 杉元 雅晴
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕転倒リスク管理における振動覚検査の有用性を検討することである.〔対象〕地域在住高齢者50名とした.〔方法〕振動覚検査,Timed “Up & Go” Test (TUG),膝伸展筋力測定,転倒恐怖感・活動性の調査を実施した.転倒の有無により転倒群と非転倒群に分け,各項目の2群の結果を比較した.また,転倒恐怖感・活動性とその他の各検査との関連性を調べた.〔結果〕振動覚検査,TUG,転倒恐怖感は,転倒群に比べ非転倒群の成績が有意に優れていた.転倒恐怖感・活動性は,運動能力と有意な相関を認め,振動覚との相関はみられなかった.〔結語〕振動覚は,転倒恐怖感や活動性と関連性がなく,運動能力の高い高齢者の転倒リスク評価に有用であると示唆された.
  • 武政 誠一, 中越 竜馬, 村上 雅仁, 上杉 雅之, 井上 由里, 小枝 英輝, 成瀬 進, 後藤 誠, 嶋田 智明
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕在宅高齢脳卒中片麻痺者(要介護者)を介護する家族介護者のQuality of Life (QOL)の現状を把握し,それに影響を及ぼす要因を明らかにする目的で検討を行った.〔対象〕通所リハビリテーションサービスを利用している要介護者25名(年齢72.8±11.1歳)とその家族介護者25名(年齢59.8±12.2歳)とした.〔方法〕身体的・精神的機能面およびQOLを中心とした実態調査を行った.〔結果〕介護者のQOLと要介護者のADL自立度との間には相関はなかったが,介護者のQOLは介護者の介護負担感が高ければQOLは低下し,介護者の身体的・精神的健康状態が悪ければQOLも低下することが判明した.〔結語〕したがって介護者のQOLを向上させるには,介護負担感軽減のための社会的サポ-トの必要性が示唆された.
  • 柳澤 幸夫, 松尾 善美, 春藤 久人, 中村 武司, 片川 雅友, 坂東 儀昭
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕上腹部術後における咳嗽介助(AC)有無での咳嗽能力および創部痛への影響を比較し,その効果を明らかにすることとした.〔対象〕上腹部開腹手術を受けた24例とした.〔方法〕術前・術後1・3・5・7日目の計5回,肺活量(SVC)およびAC有無の咳嗽時最大呼気流速(PCF)と咳嗽時創部痛の程度を測定した.〔結果〕術後のSVC,PCFは術後1日目に最も低下した.PCF回復率とSVC回復率で有意な正の相関が認められ,安静時創部痛と咳嗽時創部痛もPCF回復率と有意な負の相関が認められた.また,AC併用の効果はPCFの増加や創部痛の抑制を認め,術後5日までのAC併用は効果的であった.〔結語〕ACは咳嗽能力低下した患者や創部痛を有する患者に有用であると結論した.
  • 武田 要, 勝平 純司, 高野 綾, 江幡 芳枝, 藤沢 しげ子
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕妊娠末期における立ち上がり時の座面高の変化による下肢負荷量軽減効果を分析した.〔対象〕20~30代の健常な妊娠末期の妊婦8名と非妊娠女性8名とした.〔方法〕3次元動作解析システムにて,座面高400 mmと450 mmの2条件下での立ち上がり動作を計測し条件間で比較した.〔結果〕座面を高くすると非妊婦,妊婦とも膝関節伸展モーメントが有意に減少していた.非妊婦では,床反力鉛直成分が有意に減少し,妊婦では有意差はなかった.主観的運動強度では,妊婦は,座面高を高くしても自覚強度があまり変わらなかった.〔結語〕座面を高くすることは,膝伸展筋群の負担を減少させるが,立ち上がりやすさにつながらないことが示唆された.
  • 布施 陽子, 矢崎 高明, 福井 勉
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究目的は腹横筋収縮を促進する具体的方法を検討することである.〔対象〕対象は健常者12名とした.〔方法〕超音波診断装置を用い,A:安静背臥位,B:ストレッチポール上背臥位(上肢支持あり),C:Bと同様だが上肢支持なしの3条件での安静呼気終末の外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の筋厚を体幹矢状断部で左右両側とも計測した.〔結果〕A~Cの3条件間において,腹横筋のみ筋厚に有意差を認めた.また腹横筋厚はA-B間・A-C間に有意差が認められた.〔結語〕腹横筋エクササイズとして,ストレッチポールの使用は有効である.
  • 松田 憲亮, 本間 和也, 吉住 浩平, 永井 良治, 中原 雅美, 金子 秀雄
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕皮膚冷却刺激下での中殿筋低負荷トレーニング効果と筋活動変化を検討することである.〔対象〕健常成人男性32名を対象とした.〔方法〕対照群と皮膚冷却群に分け,低負荷での股関節外転運動からなるトレーニングを6週間実施した.隔週で等尺性股関節外転最大筋力と中殿筋の表面筋電図を測定した.皮膚冷却群では最大随意収縮時および最大随意収縮時を基準としてその30%の負荷量時の積分値と平均周波数を測定し,トレーニング開始時を100%として正規化し比較した.また,冷却部位の皮下組織厚,皮膚表面,深部組織温度を計測した.〔結果〕等尺性最大筋力は皮膚冷却群で4~6週後有意に増加した.筋積分値は6週後,有意に増加したが,平均周波数の変化は認められなかった.〔結語〕皮膚冷却刺激下での中殿筋低負荷トレーニングでは,有意な筋力増強効果が認められた.筋力増強には皮膚冷却刺激による運動単位動員の促進とtype I線維における筋活動特異性や運動強度が反映されていることが示唆され,type II線維の活動増加については判別できなかった.
  • 八谷 瑞紀, 村田 伸, 熊野 亘, 前田 弘美, 能隅 良子, 溝上 昭宏
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕パーキンソン病患者に有用なバランステストを検証するために,パーキンソン病患者を対象に臨床で使用頻度の高いバランステストを数種類測定し,どのバランステストがADLと関連するのかについて検討した.〔対象〕パーキンソン病患者20名(平均年齢72.4歳)を対象とした.〔方法〕TUG,片脚立ちテスト,FRTおよび重心動揺(外周面積,総軌跡長)を測定し, FIM-MおよびFIM-M下位項目との関係をピアソンの相関係数を用いて検討した.〔結果〕TUGはFIM-Mおよび下位項目である移乗,移動動作との間に有意な相関が認められ,セルフケアと排泄とは有意な相関は認められなかった.その他の片脚立ちテスト,FRT,外周面積,総軌跡長とFIM-MおよびすべてのFIM-M下位項目との間には有意な相関は認められなかった.〔結語〕得られた知見から,今回測定を行ったバランステストの中では,TUGのみがパーキンソン病患者のADLと関連していることが示唆された.
  • 伊藤 元治
    原稿種別: 原著
    2012 年 27 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕虚血後の骨格筋の再生過程を組織学的に観察した.〔対象〕Wistar系ラット8週齢雄を使用した.〔方法〕前脛骨動脈を外科用クリップで2時間虚血し,血清CK活性値を虚血前後と再灌流後24時間と72時間で測定した.虚血後の回復期間を2日,5日,14日,21日,28日間とし,HE染色後に光学顕微鏡で観察した.〔結果〕血清CK活性値は虚血直後に約2倍に増加し,筋断面積は再灌流後2日で約30%減少し28日後には回復した.中心核は,5日に出現し間質核は,2日で有意に増加した.〔結語〕再潅流後一時的に筋線維断面積は減少し,筋の損傷が示唆され,4週以内に元の筋線維に回復することが明らかになった.
症例研究
  • ─運動が身体組成・血圧脈波および呼吸機能に及ぼす影響─
    糸谷 圭介, 前田 慶明, 川口 清隆, 村上 雅仁, 加藤 順一
    原稿種別: 症例研究
    2012 年 27 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕高齢者に対する低負荷の集団的運動介入において運動が身体組成,血圧脈波および呼吸機能に及ぼす影響を検討し,運動教室の効果の検証を行った.〔対象〕当センターが実施する介護予防のための運動教室に参加した地域在住の高齢者17名(男性2名,女性15名,平均年齢76±10歳)とした.〔方法〕介入は集団での柔軟体操,グランドゴルフなどのレクリエーションスポーツを組み合わせた低負荷の運動を1日90分間,週2回,3ヶ月間実施した.介入前後に,Body mass index(BMI),骨格筋量,脂肪量,体脂肪率,安静時の心拍数(HR),安静時収縮期(SBP)および拡張期血圧(DSP),心臓足関節血管指数(Cardio-Ankle Vascular Index: CAVI),足関節上腕血圧比(Ankle-Brachial Index: ABI)および呼吸機能検査として努力性肺活量,1秒量,1秒率の評価測定を実施した.〔結果〕運動介入前後で比較して,BMI,骨格筋量,脂肪量,体脂肪率,HR, SBP, DBPおよびABIは有意な変化を認めなかったが,CAVIは有意な低下を認めた.また,呼吸機能検査において1秒量は有意に増加した.〔結語〕今回の結果から高齢者において低負荷運動介入は,動脈伸展機能および呼吸機能の面からも有効であることが示唆された.
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