理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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38 巻, 3 号
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表紙
会告
目次
原 著
  • 梅田 信吾, 中村 裕二, 中谷 優太, 仙石 泰仁
    2023 年 38 巻 3 号 p. 150-160
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕標準的な後傾5°座面,15°前傾座面,座面前部が前傾し後部が標準と同一角度の半前傾(half-sloped seat shape:HS)座面の3つを用いて安静,上肢動作時の座位姿勢と体幹下肢筋活動に与える影響を調査した.〔対象と方法〕対象は健康成人12名とした.標準,前傾,HSの3座面で,机上中央を見て動かない安静座位と利き手でペットボトルを机上左右と前後に移動する上肢運動中移動回数,寛骨大腿骨角度と座面大腿骨外側上顆間距離変化,動作肢三角筋前部,両側僧帽筋上部,外腹斜筋,腰部脊柱起立筋,大腿直筋,外側広筋,腓腹筋外側頭表面筋電図を比較した.〔結果〕HS座面は,標準座面より座面大腿骨外側上顆間距離延長が少なく,前傾座面より距離延長と右大腿直筋,左外側広筋,右腓腹筋の筋活動が少なかった.〔結語〕HS座面により活動に適した座位姿勢の維持に寄与できる可能性が示唆された.

  • 井上 直人, 井尻 朋人, 鈴木 俊明
    2023 年 38 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕立ち上がり動作の殿部離床相における体幹と骨盤に関係する運動を明らかにすることを本研究の目的とした.〔対象と方法〕健常男性15名に立ち上がりを実施させ,画像解析ソフトを用いて各角度の変化を測定した.〔結果〕殿部離床相初期および後期で骨盤前傾,膝関節伸展,下腿前傾が増加した.加えて,初期では体幹前傾,胸腰椎移行部屈曲が増加し,後期では体幹後傾,股関節伸展が増加した.運動パターンは,16パターンに分かれた.〔結語〕殿部離床相初期の体幹前傾には胸腰椎移行部屈曲の関与が大きく,後期の体幹後傾には股関節伸展の関与が大きいことが示唆された.さらに,骨盤前傾には足関節背屈位での膝関節伸展の関与が大きいことが示唆された.

  • 渡邉 良太, 加賀 祐紀, 山口 亮, 大嵜 美菜子, 林 尊弘, 杉山 統哉, 辻 大士
    2023 年 38 巻 3 号 p. 169-174
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕回復期リハビリテーション病棟入院前の生活機能と退院時歩行自立との関連を明らかにすること.〔対象と方法〕入院前に屋内歩行が自立していた者のうち,回復期リハビリテーション病棟入棟時には歩行が非自立であった運動器疾患高齢患者30例を対象とした.目的変数を退院時歩行自立可否,説明変数を入院前の生活機能(運動機能,栄養,口腔機能,閉じこもり,認知機能,生活機能)とし,調査には基本チェックリストを用いた.〔結果〕退院時歩行自立者は21例(70.0%)であった.入院前の運動機能低下,閉じこもり,生活機能低下該当者は非該当者に対し,退院後歩行自立となる可能性が低かった.〔結語〕歩行自立には,入院前の良好な生活機能が関連していることが示唆された.

  • 佐藤 孟水, 朝倉 智之, 下田 佳央莉, 土屋 謙仕, 山崎 恒夫, 臼田 滋
    2023 年 38 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕健常者に対する足底での硬度弁別課題が脳活動および重心動揺に及ぼす影響とこれらの関連性を検討することである.〔対象と方法〕20代の利き足が右の健常成人男女26名を対象とした.介入群は足底での硬度弁別課題,対照群は足関節底屈運動課題を行った.10日間の介入の前後で片脚立位時の開眼・閉眼での重心動揺(総軌跡長・矩形面積・外周面積)と硬度弁別課題中の脳活動として酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)濃度の変化を測定した.〔結果〕介入前後において,脳活動および重心動揺は介入群と対照群で有意差を認めなかった.介入群にて,介入前後の前頭連合野や運動前野の脳活動の変化量と開眼の総軌跡長・矩形面積・外周面積の変化量間に正の相関を認めた.〔結語〕重心動揺と硬度弁別課題中の脳活動には関連があることが示唆された.

  • 岩村 泰輝, 石井 大祐, 臼田 滋
    2023 年 38 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕周術期の大腿骨近位部骨折患者における,破局的思考の経過と歩行能力への影響を検討すること.〔対象と方法〕対象は大腿骨近位部骨折患者29名,術前から退院までの疼痛とPain Catastrophizing Scale(PCS)の経時的変化と相関,二元配置分散分析にて術後1週での歩行および受傷前歩行の獲得との関連性を検討した.〔結果〕疼痛やPCSは経時的に低下し,術後の動作時疼痛などと強い相関を認めた.術後1週での歩行獲得可否では動作時疼痛とPCS拡大視に,受傷前歩行獲得の可否では安静時疼痛とPCS拡大視に交互作用を認めた.〔結語〕早期歩行能力へは疼痛強度が影響し,破局的思考は強い影響を与えなかった.周術期では,早期歩行獲得へ向け疼痛強度への介入の必要性が示された.

  • 浦田 龍之介, 鈴木 満里乃, 山本 真生, 伊藤 将円, 鈴木 皓大, 伊藤 梨也花, 伊藤 晃洋, 飯島 進乃, 屋嘉比 章紘, 鈴木 ...
    2023 年 38 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本邦理学療法分野の症例報告における情報の欠落の実態について調査することとした.〔対象と方法〕2019年に日本国内の学術雑誌に掲載された理学療法に関する症例報告を対象とした.医中誌Webを含む4つの電子検索データベースを用いて文献を網羅的に収集した.症例報告における情報の欠落について,CAse REport guidelinesを用いて評価した.〔結果〕253件の症例報告が選択された.患者の個人情報の項目では遵守率が100%であった.アブストラクトと本文に関する計12項目では,遵守率は50%未満であった.〔結語〕本邦理学療法に関する症例報告のなかには,必要情報の欠落により読者の誤解を招く表現が用いられている可能性が示唆された.

  • 亀山 咲子, 田島 嘉人, 澤村 彰吾, 佐藤 祐造
    2023 年 38 巻 3 号 p. 193-200
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕複数の学校と連携して医療における多職種連携教育(IPE)を実施し,その教育効果を検証した.〔対象と方法〕2017~2019年度の各年度にIPEを受講した,平成医療短期大学リハビリテーション学科理学療法専攻の2年生を対象とし,「自分の職種の業務を行う自信」,「患者様と接する自信」,「他職種の職員と接する自信」の3項目を本学独自の視覚的尺度で,および社会的スキルをKikuchi’s Scale of Social Skills(KiSS-18)を用いて測定し,IPEの前後で結果を比較した.〔結果〕「自分の職種の業務を行う自信」,「他職種の職員と接する自信」は,IPEの前と比べて後で有意に向上し,効果量は中等度以上であった.視覚的尺度の「患者様と接する自信」,およびKiSS-18においては,有意差と効果量ともに年度ごとにばらつきがみられた.〔結語〕IPEにより,他の職種の学生に対する理解が進み,理学療法専攻の学生としてのアイデンティティの形成を促すことができた.しかし,社会的スキルには直接的に大きな影響は与えなかった.

  • 古川 晃大, 北野 晃祐, 金子 秀雄
    2023 年 38 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕トレッドミル歩行運動の速度差がパーキンソン病(PD)患者に与える影響を検討する.〔対象と方法〕PD患者23名に最大および快適トレッドミル歩行をそれぞれ実施し,その前後に10 m最大歩行を行って,歩行速度,歩幅,歩行率と歩行中の側方・垂直・前後二乗平均平方根(RMS)を比較した.〔結果〕歩行速度,歩幅,歩行率,垂直・前後RMSは,最大および快適トレッドミル歩行実施後に実施前と比べて有意に改善した.側方RMSは,快適トレッドミル歩行実施後に実施前と比べて有意に改善した.最大および快適トレッドミル歩行前後の変化率の比較では,全項目で有意差はなかった.〔結語〕トレッドミル歩行運動の速度差がPD患者の歩行能力に及ぼす即時効果に差はなく,どちらも歩行能力が改善した.

  • ─予備的研究─
    上月 渉, 村上 達典, 上田 哲也, 樋口 由美
    2023 年 38 巻 3 号 p. 206-211
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕入院中の患者家族の身体的な介助に対する自己効力感(介助効力感)を評価し,自宅退院との関連性を検討した.〔対象と方法〕対象は回復期病棟入院中の患者とその同居家族とし,入院時・退院時に家族の介助効力感や健康関連QOL,患者のFunctional Independence Measure(FIM)を評価した.転帰先によって自宅群(n=32)と施設群(n=7)に群分けし,2群間の比較から自宅退院の関連要因を検討した.〔結果〕家族の介助効力感,患者の年齢とFIMにおいて2群間に有意差を認めた.相関分析の結果,退院時の介助効力感は他の関連要因との関連性を認めなかった.〔結語〕自宅退院には家族の介助効力感が関連する可能性が示唆された.

  • 片山 訓博, 岩見 一洋, 山田 義久, 大倉 三洋, 古屋 美知
    2023 年 38 巻 3 号 p. 212-215
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕今回,投球動作に影響する下肢筋力の効率的な強化方法を検討するため,常圧低酸素環境下で自転車エルゴメーターを用いた高強度インターバルトレーニング(HIIT)を実施し検討した.〔対象と方法〕高校野球投手9名を対象に,酸素濃度16.4%の常圧低酸素環境で,自転車エルゴメーターを用い,2回/週のHIITを8週間実施した.〔結果〕トレーニングの結果,自転車エルゴメーターの最大パワー,最大パワー体重比,平均パワー,最大回転数,そして最大パワー到達時の負荷量のそれぞれの増加,および最大パワー到達時間の短縮を有意に認めた.〔結語〕常圧低酸素環境下は,より効果的なトレーニング環境であると考えられる.

  • 渕上 正浩, 新井 龍一, 山本 知真, 畑村 希翠, 吉松 竜貴
    2023 年 38 巻 3 号 p. 216-219
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕大腿骨近位部骨折患者の足趾把持力は術側と非術側とで差があるのかどうかを明らかにするとともに,足趾把持力評価の信頼性と最小可検変化量を検討した.〔対象と方法〕大腿骨近位部骨折患者20名を対象として足趾把持力を測定し,結果を分析した.〔結果〕術側と非術側足趾把持力に有意差を認めなかった.Bland Altman分析の結果,系統誤差を認めなかった.最小可検変化量は術側2.1 kg,非術側1.3 kgであった.〔結語〕大腿骨近位部骨折術後患者の足趾把持力の変化が術側2.1 kg,非術側1.3 kg以下の場合,測定誤差である可能性がある.

症例研究
  • ─ケースシリーズ研究─
    小菅 勘太, 冨永 渉, 黒澤 和生
    2023 年 38 巻 3 号 p. 220-227
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕慢性期脳卒中患者におけるタブレットを用いたつまみ動作の映像観察による上肢機能に対する短期および長期効果を明らかにすること.〔対象と方法〕7名の脳卒中患者(中央値9年)に,タブレットを麻痺側に重なるように設置し,左右反転した非麻痺側上肢の動作映像を観察させた.観察は30秒を20回,合計10日間実施した.評価は介入前,介入後,終了後7日目と14日目に実施した.〔結果〕介入後,終了後7日目と14日目に,手関節背屈自動運動角度の増加,ペグ達成時間の減少,Motor Activity Logの点数増加や維持がみられた患者を認めた.全患者の主観的錯覚強度とペグの変化量の間に有意な正の相関を認めた.〔結語〕慢性期脳卒中患者に対するタブレットを用いた映像観察は,上肢機能改善に効果がある可能性が示唆された.

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