理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
26 巻, 2 号
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原著
  • 山本 洋之, 柳田 泰義
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕筋力発揮時の時間-張力曲線の傾きを分析し,筋力の評価のための筋力発揮特性の測定方法を検討した.〔対象〕対象は,健常な男女47名である.〔方法〕最大努力での膝伸展筋力を5秒間測定し,測定開始からの10 msec毎の張力から,最大筋力,最大筋力発揮時間,最大筋力/最大筋力発揮時間,100 msec毎の筋力増加量とその最大値を求めた.またそれら測定値間の相関係数を求め,最大筋力との関係を検討した.〔結果〕最大筋力発揮時間は個人差が大きかったが,100 msec毎の筋力増加量の最大値は,最大筋力や最大筋力/最大筋力発揮時間との相関が最も高かった.〔結語〕最大筋力発揮時間は被験者による差が大きく一定しないが,100 msec当たりの筋力増加量の最大値は,最大筋力や最大筋力/最大筋力発揮時間との相関が高く,筋出力特性を表す一つの指標となる可能性が示唆された.
  • 川見 優貴, 木下 和勇, 齋藤 恵子, 鈴木 華子, 瀬戸 新, 佐々木 誠
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 175-177
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,異なる視覚情報が跨ぎ動作に与える影響を明らかにすることである.〔対象〕対象者は,健常な学生41名とした.〔方法〕前方を注視しながらの歩行中と障害物を注視しながらの歩行中とで障害物を跨がせた.前足が障害物を跨ぐときの障害物前方上縁と足先の最短垂直距離(toe clearance),障害物後方上縁と踵の最短垂直距離(heel clearance),ならびに跨いだ後の垂直床反力を測定した.〔結果〕toe clearance,heel clearanceとも,前方を注視しながらの歩行中よりも障害物を注視しながらの歩行中の方が有意に小さかった.垂直床反力(Fz)は,2条件間に有意差が認められなかった.〔結語〕歩行路上の障害物に対しては,終始注視していた方がバランスを崩す危険性が少なくなり,エネルギー効率もよいことが示唆された.
  • 大橋 幸子, 浅川 絵夢, 目黒 篤, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕介護老人保健施設(以下老健施設)利用者の転倒に関連する因子について検討した.〔対象〕老健施設利用者34名.〔方法〕Modified Stroop Test(MST),Trail Making Test,改訂長谷川式簡易知能評価スケール,転倒関連行動測定,要介護度,過去6ヶ月の転倒回数を測定し,4ヶ月の前向き調査を行った.対象者を転倒群と非転倒群に分け各項目と転倒との関連について分析し,転倒予測の指標となる項目を検討した.〔結果〕転倒群ではMST Part2と転倒関連行動測定表の危険行動数及び過去6ヶ月の転倒回数が有意に増大していた.ロジスティック回帰分析ではMST Part2が転倒と有意に関連している結果を示した.〔結語〕MST,危険行動数,転倒経験は転倒予測に有用な評価であることが示唆された.
  • 橋本 和久, 加藤 宗規, 山崎 裕司
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,介護老人保健施設に入居中の1名に対してトイレでの転倒頻度の減少を目標に行動分析学的な介入を行い,その効果について検討した.〔対象〕老人保健施設に入所中の69歳の男性とした.症例の既往は,多発性脳梗塞,腰椎椎間板ヘルニア,認知症であった.〔方法〕転倒が増加する前の期間をベースライン期,転倒が増加した期間を転倒増加期,介入を行うとともに動作中に不適切な行動が出現した回数を合わせて記録した期間を介入期,その後,記録を終了した期間をフォローアップ期とした.転倒増加期の状況に対して,適切な行動を行う援助となる環境の調整と行動が強化され易くする行動の結果の付与を行う介入を実施した.介入の効果について,各期間の転倒回数をχ 2独立性の検定により検討した.〔結果〕1ヶ月の転倒回数に換算した転倒頻度は,ベースライン期1.3回,転倒増加期7.5回,介入期0.7回,フォローアップ期1.1回であり,転倒増加期に比較して介入期で転倒は有意に減少し,介入期およびフォローアップ期ではベースライン期と有意な差がなかった.〔結語〕本症例がトイレで転倒する頻度の減少を目標に行った応用行動分析的介入は,有効なものと考えられた.
  • ―ラットによる実験的研究―
    梅井 凡子, 小野 武也, 十河 正典, 沖 貞明, 大塚 彰, 大田尾 浩, 梶原 博毅, 武藤 徳男
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕虚血再灌流後の骨格筋の状態を経時的に確認すること.〔対象〕8週齢のWistar系雌性ラット41匹を7群に振り分けた.群わけは正常群と再灌流時間の異なる6群とした.〔方法〕駆血圧300 mmHg,駆血時間90分間で右大腿に駆血を行い異なる時間再灌流を行った.筋萎縮評価にはヒラメ筋相対体重比とヒラメ筋線維横断面短径を用いた.〔結果〕正常と比較し,ヒラメ筋相対体重比は再灌流時間が96時間群で,ヒラメ筋線維横断面短径は再灌流時間が72時間群で,それぞれ有意に減少していた.〔結語〕骨格筋において虚血再灌流後には浮腫が発生するとともに筋萎縮も発生していることが確認できた.
  • ―健常若年者および高齢者を対象として―
    野北 好春, 松田 雅弘, 高梨 晃, 塩田 琴美, 宮島 恵樹, 川田 教平, 勝木 員子, 加藤 宗規, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕背臥位,座位,立位での応答信号と声での応答運動による単純反応時間の測定における再現性を基に必要最小限の測定回数について検討した.〔対象〕理学療法学科に所属する学生(34名から36名)及び行政が主催した転倒予防のための体力測定と運動指導に参加した整形疾患,中枢性疾患の既往のない健常高齢者(24名から27名)とした.〔方法〕背臥位,端座位,立位での単純反応時間を各10回測定した.得られた結果より,級内相関係数(ICC(1,1))と対応のあるt検定を用いて,再現性が高くかつ10回の平均値(平均測定値)と差がない連続する測定回数を検討した.〔結果〕各体位において平均測定値と有意差を認めずICC(1,1)が0.9以上を示した最小の連続する測定回数は,若年者では,座位2-3回,立位1-2回,背臥位2-3回であった.また,同様に高齢者では,座位3-4回,立位は3-4回,背臥位2-3回であった.〔結語〕3体位での測定回数を統一するならば,若年群の測定回数は3回,高齢群では4回の測定回数が必要であることが示唆された.
  • 鈴木 加奈子, 塩島 直路
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 203-207
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕両上肢前方挙上動作における肩甲骨と体幹の動きの関連について検討することを目的とした.〔対象〕対象は,健常成人男性20名とした.〔方法〕両上肢前方挙上0°,30°,60°,90°,120°,および150°での肩甲骨回旋角度を水準計で,上下部体幹角度を画像解析ソフトScion Imageを用いて計測した.回帰分析により,肩甲骨と体幹の動きの関係について検討した.〔結果〕肩甲骨回旋角度と上下部体幹角度は,3次相関の関係を成した.〔結語〕両上肢前方挙上時には,肩甲骨と上下部体幹が一定の関係を保って動いていることが示され,肩甲骨回旋角度が6.9?となる際に,上下部体幹の動きが屈曲から伸展方向へと切り替わることが考えられた.
  • ―介護保険利用者に対して―
    高橋 猛, 小泉 大亮, ISLAM Mohammod Monirul, 渡辺 元夫, 成田 誠, 竹島 伸生
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕介護が必要な高齢者を対象に,他動式マシンを用いた運動による機能的体力に及ぼす効果を検討した.〔方法〕対象は67歳以上のデイケア施設利用者(運動群18名,対照群14名)とした.運動介入期間は3ヶ月間,頻度は週2日とした.運動効果は,アームカール(AC),チェアースタンド(CS),アップアンドゴー(UG),シットアンドリーチ(SR),バックスクラッチ(BS),ファンクショナルリーチ(FR),12分間歩行テスト(12MD)を介入前後で測定した.〔結果〕運動群と対照群の効果の相違を検討したところAC,CS,UG,SR,BS,12MDに交互作用が認められ,運動群が有意に高かった.〔結語〕介護が必要な高齢者に対して他動式マシンを用いた運動の有用性が示唆された.
  • 堀江 淳, 阿波 邦彦, 今泉 裕次郎, 市丸 勝昭, 直塚 博行, 白仁田 秀一, 田中 将英, 林 真一郎, 堀川 悦夫
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 215-219
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕COPD患者のバランス能力と身体機能,身体能力の関係,GOLD病期間のバランス能力の差を検証すること.〔対象〕男性COPD患者31例.〔方法〕バランス能力,身体機能,身体能力を測定し,バランス能力と各測定項目の関係をピアソンの積率相関係数,GOLD病期間のバランス能力の差を一元配置分散分析,Tukey法にて分析した.〔結果〕TUGは,身体機能,身体能力と有意な相関が認められ,外周面積,総軌跡長は,身体能力と有意な相関が認められた.GOLDの病期別では外周面積,総軌跡長,片脚立位時間,TUGでIV期とI+II期との間に有意差が認められた.〔結語〕GOLD最重症(Stage IV)では,バランス能力の低下が起こり始める可能性が高くなることが示唆された.
  • 中村 睦美, 山元 佐和子, 水上 昌文
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 221-224
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕人工膝関節置換術後患者の日常生活活動能力の経時的変化を検討することである.〔対象〕変形性膝関節症で人工膝関節置換術を行った40名を対象とした.〔方法〕日常生活17項目の活動能力,関節可動域,疼痛についての評価を手術前,退院時,術後3ヶ月以降(退院後)に行った.〔結果〕活動能力は退院時,退院後全ての項目において術前と比較して有意に改善したが,退院時と退院後に有意差のある項目がみられた.〔結語〕 手術により全ての活動能力は術前に比べて改善したが,入院中に行う機会の少ない活動については退院後さらに改善がみられた.自宅環境に左右される活動能力は入院中よりも退院後に低下したため,それらに対するアプローチが必要であることが示唆された.
  • ―ATM®2を利用した運動療法―
    根地嶋 誠, 杉浦 武, 久保 裕介, 小堀 かおり, 蒲田 和芳, 横山 茂樹, 大城 昌平
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕骨盤および胸郭を圧迫固定できる腰痛治療器ATM?2を用いた等尺性運動が,腰痛患者の疼痛とQOL(quality of life)におよぼす影響について検証することを目的とした.〔対象〕機械的腰痛患者14名とした.〔方法〕ATM®2による運動療法は,3秒間の等尺性収縮を10回,週2回で4週間実施し,その後,4週間の経過観察期間を設けた.介入期間の前後および経過観察後に,疼痛の評価(visual analogue scale: VAS)およびQOLの評価(腰痛特異的QOL尺度Roland-Morris disability Questionnaire: RDQ)を行った.〔結果〕VASは,55.4±13.7 mmから介入終了時は6.6±7.8 mm,経過観察後は6.5±7.6 mmとなり有意に減少した.RDQは,7.4±4.9点から介入終了時は1.4±1.3点,経過観察後は2.2±4.1点となり有意に減少した.〔結語〕機械的腰痛患者に対するATM®2を用いた運動療法は,優れた短期効果を発揮する可能性がある.
  • 小澤 春香, 松崎 嵩, 中山 惟人, 中山 秀人, 高橋 典明, 渡部 恭平, 久保 晃
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 231-234
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕健常者が胸郭前方で両側上肢を用いて荷物を運搬する際に,荷物の内容物と,腕振りの有無によって身体反応に相違があるのかを明らかにすることである.〔対象と方法〕健常成人15名(男性8名,女性7名,平均年齢24歳)とした.方法は水平なトレッドミル上で,1 kgの重錘ベルトを両手首に装着しての歩行(以下,手首歩行とする),1 kgの重錘ベルト2個が入った缶を運搬する歩行(以下,ベルト歩行とする)と,水をほぼ一杯に満たした500 ccの計量カップ2個に重錘ベルトを加えてベルト歩行と同重量の歩行(以下,カップ歩行とする)を1.5 km/h(低速)と3.5 km/h(高速)の2条件で施行した.酸素摂取量,心拍数,歩行率を測定し,手首歩行,ベルト歩行,カップ歩行の3課題を要因とした一元配置分散分析を行い,Bonferroni法にて群間比較を行った.〔結果〕低速および高速で,酸素摂取量,心拍数ともすべての課題間で有意差を認めた.歩行率は,低速ではベルト歩行とカップ歩行の間のみ有意差を認めた.高速では手首歩行とカップ歩行,ベルト歩行とカップ歩行の間で有意差を認めた.〔結語〕ベルト,カップ歩行では手首歩行に比べると,歩行速度に関わらず酸素摂取量,心拍数の増加が見られる.さらに不安定な荷物を運搬する際には,歩行率を増加,すなわち歩幅を減少させて身体動揺を制御するため,全身的な筋活動が増加したと解釈される.
  • 野北 好春, 松田 雅弘, 高梨 晃, 塩田 琴美, 宮島 恵樹, 川田 教平, 勝木 員子, 加藤 宗規, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 235-238
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕体位(背臥位,端座位,立位)が音による応答信号と口頭による声の応答運動を行う単純反応時間に与える影響について検討した.〔対象〕若年者34名,高齢者65名であった.〔方法〕反応時間の測定を背臥位,端座位,立位で行った.測定回数は,若年者は3回,高齢者は4回とした.その後年齢,性別に分け各体位での比較検討を行った.〔結果〕若年者,高齢者の男女別における体位間の比較では,高齢男性,若年男性,若年女性は反応時間に有意差を認めず,高齢女性は背臥位での場合に座位,立位での場合有意に延長した.男性,女性の各体位における若年者と高齢者の比較では,背臥位で若年者男性に比べ高齢男性では反応時間が有意に延長した.若年者,高齢者の各体位における性別間の比較では,3体位ともに若年女性が若年男性に比べ有意に反応時間が延長した.〔結語〕高齢者の女性では,背臥位が座位,立位に比べ延長し,覚醒の関与が推察された.今後は,活動性を含めた検討が必要と考えられた.
  • ―近赤外線分光法による検討―
    中林 美代子, 大西 秀明, 古沢 アドレアネ明美
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 239-245
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,近赤外光イメージング装置を用いて,軽負荷での自転車駆動中における大脳感覚運動野下肢領域の活動と運動負荷量との関係および皮質活動の時間的変化を明らかにすることである.〔方法〕対象は健常成人9名とした.運動課題は,一定の仕事率および回転数で駆動する4課題と,駆動途中で回転数のみを変化させる2課題である.全課題とも3セット連続で行い,駆動開始直後から5秒間ごとの時間区分(区間)にわけ,各区間の酸素化ヘモグロビン(oxyHb: oxygenated hemoglobin)量の変化について比較検討した.〔結果〕一定の仕事率と回転数の4つの課題では,運動開始後5~10秒間は0~5秒間,10~15秒間,15~20秒間の各区間と比較して,oxyHb変化量が有意に高いことが示され,一旦増加したoxyHbは駆動中であるにもかかわらず減少した.回転数を変化させる2つの課題では運動開始直後にoxyHbが増加した後徐々に減少するが,駆動回転数を増加させた際に再度増加が認められた.〔結語〕自転車駆動時の一次運動野下肢領域の活動状態を捉えることができた.また,運動遂行中に駆動回転数の変化を与えることで一次運動野下肢領域の血流量の増加が認められることが判明した.
  • 大槻 桂右, 鈴木 哲
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 247-250
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕反復起立運動によって最大心拍数(maximum heart rate; HRmax)の60%(60%HRmax),70%(70%HRmax),80%(80%HRmax)到達時のBorg指数と二重積(double product; DP)ならびに心拍数(heart rate; HR),収縮期血圧(systolic blood pressure; SBP)との関係を分析することである.〔対象〕健常成人18名(年齢27.0歳,男性10名,女性8名)とした.〔方法〕5分間の安静椅子座位後,60%,70%,80%HRmaxに到達するまで反復起立運動を実施した.計測指標はHR,SBP,DPとした.〔結果〕60%,70%,80%HRmax到達時のBorg指数とDPとの間には有意な相関が認められたが,HRはBorg指数の間に有意な相関は認められなかった.〔結語〕反復起立運動では,必ずしもHRとBorg指数が一致するとは限らないことがわかった.反復起立運動を実施する場合,HRとBorg指数との関係のみでリスク管理を行うのではなく,DPの変化も捉えて運動療法に伴うリスク管理を検討する必要性が示唆された.
  • 朝倉 智之, 臼田 滋, 白倉 賢二
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 251-254
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕座位からの歩行開始動作(sit-to-walk task: STW)について,課題条件の変更が,動作の流動性(fluidity)に及ぼす影響を検討することを目的とした.〔対象〕健常成人15名(平均年齢23.2歳)を対象とした.〔方法〕下腿長の座面高の椅子からの快適速度による正面方向への歩行開始動作を基本条件とし,動作速度(最大速度),椅子の座面高(低い椅子,高い椅子),目標地点の方向(右斜め,左斜め)を変更した課題条件のそれぞれで,STWを三次元動作解析装置を使用し測定した.評価指標としてFluidity Index(FI)を用い,基本条件に対する変更条件のそれぞれを比較した.〔結果〕高い座面高および速い動作速度でのSTWは基本条件に比べ有意にFIを上昇させた.低い座面高および方向の変更では基本条件と有意な差は認められなかった.〔結語〕環境条件の変更はfluidityに影響を与えるため,STWの測定や練習を実施する際にこれらを考慮する必要性がある.
  • 池田 望, 村田 伸, 大田尾 浩, 村田 潤, 堀江 淳, 溝田 勝彦
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 255-258
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,地域在住女性高齢者を対象に下肢筋力や歩行能力,平衡機能などの身体機能評価を総合的に行い,握力との関連を検討した.〔対象〕F県F町に居住する女性高齢者265名,平均年齢73.7±6.4歳であった.〔方法〕大腿四頭筋筋力,足把持力,片足立ち保持時間,長座体前屈距離,最大歩行速度,6MWT,10 m障害物歩行時間,TUG,上体起こしなどの各種身体機能と握力との関連を調査した.〔結果〕握力と有意な相関を示したのは,足把持力,大腿四頭筋筋力,片足立ち保持時間,最大歩行速度,TUG,10 m障害物歩行時間,6MWTであり,長座体前屈距離とは有意な相関は認められなかった.〔結語〕握力の測定は,地域在住女性高齢者の下肢筋力,立位バランス,応用歩行能力までを含めた全身的な体力を反映する,簡便で有用なテスト法であることが示唆された.
  • ―ラットを用いた実験的研究―
    梅井 凡子, 小野 武也, 平藪 英昭, 沖 貞明, 大塚 彰, 大田尾 浩, 武藤 徳男
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 259-262
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕駆血と固定が筋萎縮に与える影響を検討すること.〔対象〕8週齢のWistar系雌ラット21固体を無作為に「固定群」,「駆血後固定群」,「駆血群」に振り分けた.「固定群」の対側肢を「正常群」とした.〔方法〕右大腿にギプス固定や駆血の処置を行った.筋萎縮評価にはヒラメ筋相対体重比とヒラメ筋線維横断面短径を用いた.〔結果〕多重比較検定の結果,ヒラメ筋相対体重比,ヒラメ筋線維横断面短径ともに「「正常群」と比較すると「駆血後固定群」「固定群」で有意に減少していた.二元配置分散分析の結果,駆血と固定での交互作用は認められなかった.〔結語〕固定により生じる廃用性筋萎縮と,駆血により引き起こされる筋萎縮はそれぞれ独立して生じることが示唆された.
  • ―2種類の座位姿勢からの検討―
    鈴木 哲, 平田 淳也, 大槻 桂右, 渡邉 進
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 263-267
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕膝当てを取り付けた前傾座面椅子と従来の椅子間で,脱力座位と直立座位の際の脊椎カーブと体幹筋活動を比較すること.〔対象〕健常な成人女性10名(25.7±4.9歳)とした.〔方法〕従来の椅子と前傾座面椅子上で,それぞれ脱力座位と直立座位を保持し,その際の体幹筋活動および脊椎カーブを測定した.〔結果〕前傾座面椅子上で脱力座位を保持した際の胸椎および腰椎カーブは,従来の椅子上と比べて,有意に前彎位であった.前傾座面椅子上で直立座位を保持した際の体幹筋活動は,従来の椅子上に比べて有意に低かった.〔結語〕前傾座面椅子を使用することにより,体幹筋活動が少ない直立座位をとることができ,かつ腰椎後彎が少ない脱力座位をとることができることが示唆された.
  • 山本 洋之, 柳田 泰義
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 269-273
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕歩行中の膝関節の角度変化は,double knee actionとして知られているが,測定方法により正常といわれる角度変化を示さない例がある.そこで歩行条件,角度計の装着方法を工夫し,膝関節の角度変化を測定し,どのような類例があるかを分類,検討した.〔対象〕健常な男女63名である.〔方法〕電子角度計を下肢の外側にテープ固定し,素足歩行中の膝関節角度変化を計測した.立脚期の角度変化のパターンにより,歩様を分類した.〔結果〕歩様は正常なタイプ,立脚後期での膝の伸展が小さいタイプ,踵接地の時期での膝の伸展が小さいタイプ,立脚中期の膝屈曲が小さいタイプ,立脚中期において2回の屈曲があるタイプの基本的なものと,それらのいくつかの複合的なタイプに分類できた.〔結語〕素足歩行における立脚期の膝関節角度はいわゆる正常な角度変化ではない場合があることが確認され,それらを類型化することができた.
  • 池田 由美, 井上 薫, 伊藤 祐子, 寺田 尚史, 高橋 良至, 新田 收, 岩崎 健次, 金子 誠喜
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 275-281
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳血管障害者の麻痺側上肢運動感覚障害の定量的評価方法および効果的訓練方法の確立へ向けた最初の取り組みとして,健常高齢者を対象に,上肢運動に力覚提示装置(HD)を用いた練習を行わせ,その効果を検討した.〔対象〕健常高齢者7名とした.〔方法〕HDに組み込まれているPOINT課題とWAVE課題を用い,右上肢で5種類の力覚条件にて練習を行わせた.〔結果〕課題遂行時間,平均二乗誤差,課題遂行時間と平均二乗誤差との積について練習開始時と終了時を比較したところ,2つの課題間では運動の習熟成果に違いがある可能性が示された.また,両課題において,HD操作に伴う力覚の有無や力覚の種類によって練習終了時の成績の相違を認めるものがあった.〔結語〕HDを効果的に使用するには,練習目標定に合わせた課題の選択や,力覚条件の選択による練習順序の設定,練習効果判定の指標の選択といった工夫が必要であることが示唆された.
  • 吉永 龍史, 小野 武也, 沖 貞明, 大塚 彰, 梅井 凡子, 大田尾 浩, 石倉 英樹
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 283-286
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕一日当たり12時間の関節固定がラット足関節拘縮発生に与える影響を検討することである.〔対象・方法〕8週齢のWistar系雌ラット14匹を,各7匹の2つに分けた.7匹は,左後肢の処置を施さない「正常肢群」とし,また右後肢を実験初日から最終日まで足関節最大底屈位で固定する「24時間固定肢群」とした.残り7匹は,右後肢を実験初日から最終日まで一日当たり12時間の足関節固定を行う「12時間固定肢群」とした.実験期間は1週間である.〔結果〕一日当たり12時間の関節固定は関節拘縮を発生させた.〔結語〕今後は,一日当たり12時間よりも短い関節固定で関節拘縮が発生するか調べる必要がある.
  • 堂面 彩加, 對東 俊介, 小西 華奈, 高橋 真, 関川 清一, 稲水 惇, 濱田 泰伸
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 287-290
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕短時間高強度運動負荷により肺の酸化ストレスが増大するのかどうかを検討した.〔方法〕健常若年者11名を対象とし,運動負荷として30秒間全力ペダリングを行うウインゲートテストを実施した.運動負荷前後に呼気凝縮液採取装置を用いて呼気凝縮液を採取し,活性酸素の指標である過酸化水素濃度と抗酸化防御機構の指標である抗酸化力はフリーラジカル評価装置を用いて測定した.〔結果〕運動負荷前後にて,過酸化水素濃度,抗酸化力はともに有意な変化を認めなかった.〔結語〕健常若年者において,肺の酸化ストレスは短時間高強度運動負荷によって増大しないことが示唆された.
  • 飛永 敬志, 岡 浩一朗, 萩原 久美子, 安村 建介, 菅野 吉一, 大関 覚
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 291-296
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕人工膝関節全置換術(TKA)による回復過程を検討するために,身体機能および健康関連QOL(HRQOL)を調査した.〔対象〕TKA術後リハを実施した変形性膝関節症患者40膝とした.〔方法〕身体機能評価にはTimed Up and Go test(TUG),膝伸展筋力,開眼片脚起立時間を測定し,HRQOL評価には準WOMACとSF-36を用いた.〔結果〕身体機能の全項目において術後3ヶ月で有意に改善した.準WOMACの痛みとSF-36の身体機能,体の痛み,全体的健康感,社会生活機能は術後1ヶ月で有意に改善し,さらに術後3ヶ月で準WOMACの機能も有意に改善した.開眼片脚起立時間を除く身体機能とHRQOLの全項目は,変化量と初期値との間に有意な負の相関を認めた.〔結語〕TKAによりHRQOLは術後1ヶ月で改善し,術後3ヶ月では身体機能が改善することが示唆された.
  • 川原 由紀奈, 園田 茂, 奥山 夕子, 登立 奈美, 谷野 元一, 渡邉 誠, 坂本 利恵, 寺西 利生
    原稿種別: 原 著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 297-302
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕2006年以降より回復期リハビリテーション病棟での訓練時間は1日上限6単位から9単位に増加した.このことから訓練量増加の効果をADLとの関係で検討した.〔対象〕回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,2005年度の5~6単位の群122名と2008年4月から9月の7~9単位の群41名とした.〔方法〕2群間の入退棟時FIM運動項目合計点(FIM-M),FIM-M利得(入院時-退院時FIM-M),FIM効率(FIM-M利得/在棟日数)と自宅復帰率の関係を比較した.〔結果〕7~9単位の群は5~6単位の群に比べFIM-M利得,FIM効率,自宅復帰率が有意に高かった.〔結語〕訓練増加がADL改善に効果的であると考えられる.
症例研究
  • 小林 和彦, 辻下 守弘, 岡崎 大資, 甲田 宗嗣
    原稿種別: 症例研究
    2011 年 26 巻 2 号 p. 303-308
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕担当入所者への過剰介助から廃用性の機能低下を促進させる可能性の高い看護職員1名に応用行動分析学の技法を用いたベッドから車椅子への移乗介助の方法を指導し,その効果を分析することで行動論的な介助指導の意義と課題について検討した.〔方法〕対象は介護老人保健施設に勤務する介助経験豊富な正看護師で,彼女が日頃実際に介助や介助指導を行っている高齢障害者に対するベッドから車椅子への移乗介助に際し,応用行動分析学の技法を適切に用いた介助が行えるようになることを指導目標として講義形式による指導と実践指導を4ヶ月間にわたり施行し,指導効果を単一事例実験計画法により分析した.〔結果〕実践指導後において適切な介助が増加した.また,介助対象者自身もベースライン測定時には大幅な過剰介助での課題遂行であったのが必要最小限に近い介助での課題遂行に移行し,これらはフォローアップにおいても維持された.〔結語〕より少ない介助で入所者の行動を引き出せるようになり臨床的に意義ある指導効果が得られたと考えられるが,指導内容の理解度の判定や指導効果の長期的維持等,今後における課題も残された.
  • 小林 正典
    原稿種別: 症例研究
    2011 年 26 巻 2 号 p. 309-313
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕頸部骨折偽関節患者の日常生活活動(Activity of Daily Living ;ADL)向上に対する保存療法の可能性を探るために,偽関節患者のリハビリ過程での経時的なADLと骨折部(偽関節部)の状態について検討を行った.〔方法〕4名の患者に入院初期より筋力訓練などの理学療法を行い,定期的にX線写真を撮影,その変化とADLの経過を比較検討した.〔結果〕4名全員が入院2ヶ月までに疼痛が低下して独力での立位が可能となった.またX線写真では,3名に偽関節の間隙の狭小化と石灰化を認め,この所見の出現と疼痛の低下の時期に関連が見られた.〔結語〕偽関節患者に対する早期の積極的な理学療法は,下肢筋力の低下を予防すると共に,骨折部の早期安定化を促し,患者のADLの改善につながると考えられた.
総説
  • 三宅 順, 西田 裕介
    原稿種別: 総 説
    2011 年 26 巻 2 号 p. 315-321
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    筋収縮において,ATP再合成の促進が筋疲労と血流動態に反映する.骨格筋代謝の効率を向上させるためには,活動様式の理解と,強度,頻度の検討が必要である.しかし,先行研究において,血流動態を改善するための要素は種々考えられているが,収縮強度,頻度に関して統一見解は得られていない.そこで,本稿では,下腿三頭筋におけるリン酸化効率について,末梢血流動態と筋疲労の観点から文献検討を行った.これにより,cross-bridge回転速度とリン酸化能力の関係から,ATP再合成に効果的な筋収縮方法の解明の一助となると考えた.さらに,理学療法への応用として,運動処方で効果的な筋収縮方法とその有効性について考察した.
  • ―ヒラメ筋を有する下腿三頭筋のmuscle pumpingの重要性―
    高木 大輔, 西田 裕介
    原稿種別: 総 説
    2011 年 26 巻 2 号 p. 323-328
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    「2007年度動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では,動脈伸展性に対して,最大酸素摂取量の50%,30分以上の運動が推奨されている.しかし実際の臨床現場では,実施できない対象者が多く存在する.また実施が可能であっても,心肺系に対するリスクは高くなる.個々により最適,かつ安全な運動強度による処方を確立するために,動脈伸展性の改善が可能な運動強度の幅,つまり低強度負荷による動脈伸展性への影響を検討する必要がある.そこで本稿では,第2の心臓とも言われているヒラメ筋を有する下腿三頭筋の筋ポンプ作用が,低強度負荷でも動脈伸展性の改善要因である一回拍出量を静脈還流量という側面から効率よく増加できることに着目し,その概要についてまとめた.
  • ─末梢と中枢の統合─
    加茂 智彦, 西田 裕介
    原稿種別: 総 説
    2011 年 26 巻 2 号 p. 329-334
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    運動時における活動筋の血流再配分には,非活動筋の血流減少と,内臓部の血流減少によってもたらされている.しかし,最近の知見では,非活動筋の血流調節については議論の余地がある.今までは,運動時における非活動筋血流は減少すると考えられていたが,最近の研究では増加することが明らかになっている.非活動筋血流調節因子には,ずり応力,交感神経活動,一酸化窒素(NO),エンドセリン-1,深部温度,セントラルコマンドがあり,運動強度や,運動様式によっても異なった反応を示す.そこで,本稿では,運動時における非活動筋血流調節,血流調節因子,中枢と非活動筋血流調節について概説する.
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