理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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32 巻, 1 号
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原著
  • —ワイヤ筋電図を用いた筋反応時間分析—
    安彦 鉄平, 島村 亮太, 廣澤 全紀, 山本 純一郎, 前島 寛和, 安彦 陽子, 相馬 正之, 小川 大輔
    2017 年 32 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕前額面における骨盤アライメントの変化が腰部多裂筋深層線維および腰部多裂筋浅層線維の筋反応時間に与える影響を検証すること.〔対象と方法〕健常成人男性9名とした.運動課題は,聴覚刺激に対しできるだけ素早く肩関節を屈曲および伸展することとし,ワイヤ筋電図で腰部多裂筋深層線維および浅層線維,表面筋電図で三角筋前部および後部線維を測定した.三角筋の筋活動開始を基準とし,腰部多裂筋の筋反応時間を算出した.測定肢位は,骨盤水平位,左骨盤下制位,左骨盤挙上位の3条件とした.〔結果〕反復測定分散分析の結果,肩関節屈曲では立位姿勢に有意な主効果が認められたが,筋と立位姿勢の交互作用は有意でなかった.〔結語〕前額面における骨盤アライメントの変化は,腰部多裂筋の筋反応時間が変化することが示している.
  • —学生と臨床実習教育者の認識に着目して—
    吉塚 久記, 玉利 誠, 横尾 正博, 日髙 正巳, 浅見 豊子
    2017 年 32 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕円滑な臨床実習教育に寄与するため,理学療法評価の技術項目における学生の実施上ならびに臨床実習教育者(CE)の指導上の困難感を調査し,両者の共通点と相違点を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象は評価実習後の学生68名とCE 43名とし,理学療法評価の27項目について,主観的な困難感を質問紙にて調査した. 〔結果〕「動作分析」「統合と解釈」「問題点の抽出」は両者の多くが共通して困難感を示したが,学生の方がより強い傾向にあった.〔結語〕学生とCEがともに困難感を示す技術項目や,学生の多くが困難感を示す技術項目があることから,困難感の要因を検討していくことが必要である.
  • 眞田 祐太朗, 境 隆弘, 小柳 磨毅, 椎木 孝幸, 大澤 傑, 行岡 正雄
    2017 年 32 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕人工膝関節全置換術(TKA)後3ヵ月までの膝伸展不全(Lag)の推移を調査し,術前の膝伸展可動域 (ROM)との関連性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕対象は,両側性内側型変形性膝関節症と診断され,初回TKAを施行した22名とした.Lagは術後1週,2週,3週,4週および3ヵ月に計測を行った.術前における術側の膝関節痛,両側の膝屈曲・伸展ROM,両側のFTAを説明変数とし,術後3ヵ月のLagを目的変数とする階層的重回帰分析を行った.〔結果〕術後1週で19名(86.4%),3ヵ月で9名(40.9%)に5°以上のLagを認めた.術後3ヵ月のLagには,術前における術側の膝伸展ROMが有意に寄与した.〔結語〕TKA後3ヵ月のLagには,術前の膝伸展ROMが関連することが示唆された.
  • 菅井 拓哉, 相馬 俊雄
    2017 年 32 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕膝関節伸展運動時の下腿の回旋肢位の違いが膝関節伸展トルクおよび仕事量に及ぼす影響を明らかにすることとした.〔対象と方法〕健常成人男性20名とした.筋力測定機器(BIODEX SYSTEM3)を使用して,膝関節伸展トルクを測定した.膝関節屈曲90°から30°の可動域で最大等速性膝関節伸展運動を行った.膝関節伸展運動の角速度は,60,180,300°/secとした.下腿の回旋肢位(中間位,外旋位,内旋位)の間で,膝関節伸展のピークトルク値,仕事量(初期および終期),ピークトルク発揮時間および角度を比較した.〔結果〕角速度60°/secでは,ピークトルク値と初期および終期ともに仕事量が,内旋位および外旋位に対して中間位で有意に大きな平均値を示した.〔結語〕下腿内旋位および外旋位での膝関節伸展トルクの強化が,傷害の発生予防に繋がると推察される.
  • —システマティックレビューによる検討—
    高橋 大生, 大城 昌平, 山﨑 一史, 西田 裕介, 山内 克哉, 美津島 隆
    2017 年 32 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕がん患者に対する運動介入は未だ確立されておらず,運動介入の報告も乳がんや前立腺がん患者を対象とした研究が多いのが現状である.そこで,本研究では,エビデンスの確立されていない肺がんと大腸がんに着目し,運動介入効果を検討した.〔対象と方法〕cancer(がん)とexercise(運動)を検索語とし,システマティックレビューを実施した.〔結果〕肺がんおよび大腸がん患者に対して最も用いられている介入方法は有酸素運動であり,主に6分間歩行距離や最高酸素摂取量等の運動耐容能が改善していた.QOL(Quality Of Life)を評価している論文は15編あり,そのうち3編が有意な改善を報告していた.〔結語〕運動介入により身体機能の向上は期待できるがQOLの改善は乏しいと考えられた.
  • —精神疾患によりリハビリテーションに困難をきたした症例を対象として—
    上薗 紗映, 加藤 宗規
    2017 年 32 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕一般病院では対応が困難で精神科病院に転院してきた大腿骨頸部骨折術後患者の歩行自立率と歩行自立の予測について検討すること,および精神科への理学療法士配置の効果を検証することである.〔対象と方法〕7年3ヵ月間に当院で大腿骨頸部骨折の術後リハを受けた87名について年齢などの基礎情報と歩行能力について調査し重回帰分析を行った.また,予測式からの予測と,開始時FIMからの予測を組み合わせ検討した.〔結果〕受傷前歩行が可能であれば,一般病院でのリハが実施困難でも45.5%の患者が歩行再獲得した.2つの予測で基準を満たした場合,自立の正答率は87.5%であった.〔結論〕予測の正答率は比較的高く,有用であると考えられた.
  • —肯定的,否定的な言い回しの比較—
    喜多 一馬, 池田 耕二
    2017 年 32 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法時の肯定的,否定的な声かけの言い回しが,患者の意欲の向上にどう影響するかを明らかにすること.〔対象と方法〕対象は,調査に協力を得られた入院患者37名(男性17名,女性20名,年齢69.9 ± 12.6歳)とした.紙面によるアンケートにて,トイレ,歩行,疼痛の3つの場面を想定し,各場面で肯定的および否定的な声かけの2つの言い回しを設定し,意欲の向上がみられるかを調査し比較した.〔結果〕3つの場面全てにおいて,肯定的な声かけの言い回しで患者の意欲の向上が認められ,否定的な声かけの言い回しでは意欲の向上は認められなかった.〔結語〕理学療法時の肯定的な声かけの言い回しは,患者の意欲を向上させることが示唆された.
  • 川井 謙太朗, 舟崎 裕記, 林 大輝, 加藤 晴康, 沼澤 秀雄
    2017 年 32 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕投球障害肩症例における肩関節機能を投球側と非投球側の間で比較した.〔対象と方法〕対象は野球投手の男性44例とした.肩甲上腕関節ならびに肩甲胸郭関節に対する肩関節機能(可動域7項目,筋力13項目)を投球側と非投球側の間で比較した.〔結果〕投球側は非投球側に比べ,上腕骨頭後捻角度,補正外旋角度は有意に大きく,一方,補正内旋角度,Horizontal Flexion Test,Scapular Retraction Test,inner muscle筋力,僧帽筋下部線維筋力は,有意に低い,あるいは小さかった.〔結語〕投球障害肩症例にみられた, 投球側と非投球側間での可動域や筋力に関する肩関節機能の特徴的な相違は,これと投球動作時の肩関節痛との深い関連性を示唆する.
  • 遠藤 勇志, 久保 晃
    2017 年 32 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕介護老人保健施設で生じた転倒・転落の事故を3年間に渡り,後方視的実態を把握することである.〔対象と方法〕介護老人保健施設で転倒・転落した285事例を対象とした.転倒・転落の状況を調査し,軽度要介護者と重度要介護転倒者との比較を行った.〔結果〕転倒・転落のリスクが高いものは,要介護3~4,女性で80歳代,認知症と骨関節系疾患を有し,下肢筋力低下,下肢の関節拘縮,疼痛が生じており,車椅子使用にて日常生活に一部介助を要するものであった.〔結語〕重度要介護者の転倒・転落も多いことが示唆され,転倒対策の一助になりうる.また,非転倒者間での比較は今後の検討課題である.
  • 内田 貴洋, 相馬 俊雄
    2017 年 32 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕等尺性膝関節屈曲運動における屈曲トルクと屈曲角度を変化させたときの拮抗筋である大腿四頭筋の筋活動量に及ぼす影響を明らかにすることである.〔対象と方法〕健常成人12名とした.課題運動は,等尺性膝関節屈曲運動とした.膝関節の屈曲角度は,30°と90°とした.筋電図は,大腿直筋,内側広筋,外側広筋から筋活動量を算出した.〔結果〕屈曲角度では,大腿直筋は屈曲90°に比べ30°で有意に低値を示した.一方,外側広筋では屈曲90°に比べ30°で有意に大きかった.〔結語〕開放的運動連鎖における膝関節屈曲運動では,膝関節屈曲90°で後十字靭帯が伸張ストレスを感知して,大腿四頭筋の筋活動量を制動していると推察される.
  • —足趾の関節可動域と下腿の筋横断面積に着目して—
    青木 謙介, 松原 裕一, 宮本 俊和
    2017 年 32 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕大学生陸上長距離選手におけるmedial tibial stress syndrome(MTSS)の身体要因を足趾関節可動域とMRIによる筋横断面積から検討することである.〔対象と方法〕長距離選手男性30名(年齢20.1 ± 1.5歳,身長169.9 ± 4.5 cm,体重59.5 ± 4.0 kg)とした.MTSS経験の有無をアンケートにより調査して,MTSS経験群(以下,経験群)とMTSS未経験群(以下,未経験群)の2群に分けた.足趾関節可動域,下腿の筋断面積を2群間で比較した.〔結果〕未経験群は経験群と比較して,第2中足趾節関節の伸展可動域が有意に高かった.下腿の筋横断面積に有意差はみられなかった.〔結語〕MTSSの発症には第2中足趾伸展関節可動域の制限が関係していることが示唆された.
  • 山﨑 大輝, 小早川 凌, 結城 舞, 西澤 岳, 福田 智美, 正保 哲
    2017 年 32 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕運動時のリクライニング角度の違いによる嫌気性代謝閾値と血行動態の変化を測定し,エルゴメータ駆動時の適切な肢位を検討した.〔対象と方法〕対象は若年健常男性14名とした.異なるリクライニング角度の嫌気性代謝閾値および血行動態を測定した.〔結果〕平均血圧は安静時から運動時まで70°で高値を示した.交感神経活動は20°で安静時に対し嫌気性代謝閾値で有意に亢進した.酸素摂取量は嫌気性代謝閾値時に20°に対し45°,70°で有意に高値を示した.〔考察〕運動時のリクライニング角度を45°とし,高血圧症例および健常者には下肢下垂位,低血圧症例には下肢挙上位を選択することが望ましいと示唆される.
  • —理学療法学科学生を対象とした研究—
    梅野 和也, 太田 研吾, 井元 淳, 中村 浩一
    2017 年 32 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕自己調整学習方略,学習目標および目標志向性が定期試験の結果に及ぼす影響を検討することとした. 〔対象と方法〕対象は3年制専門学校の理学療法学科1年生80名(平均年齢19.2歳)とし,自己調整学習方略,学習目標および目標志向性に関するアンケートを実施し,その結果を定期試験の成績から分けられた上位群と下位群の間で比較した.〔結果〕自己調整学習方略の「プランニング方略」,「モニタリング方略」,学習目標では「獲得重視傾向の強さ」の項目において群間での有意差が認められた.〔結語〕自己調整学習方略や学習目標の違いが定期試験の結果に影響を与える可能性がある.
  • 野口 雅弘, 宮城 重二, 諸江 美穂, 山口 慎一, 越野 慶隆
    2017 年 32 巻 1 号 p. 73-80
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,血液透析患者に回転数を一定にした定量的な運動介入を行い,身体への影響を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕外来透析患者27名(男性19名,女性8名,67 ± 10歳)に,回転数を一定にした透析中の仰臥位エルゴメータ運動を12週間行った.〔結果〕本研究の結果,1,800回転(60回転/分,30分間)の基準値の70%(1,260回転)を保てていた高齢者は,介入後に6分間歩行距離と長座体前屈が有意に増加した.多重ロジスティック解析で,1,260回転の回転数を下回るリスク因子として,糖尿病性腎症と6分間歩行距離低下が採択された.〔結語〕透析中運動では1,260回転の回転数をカットオフ値とし,1,260回転以上の運動を指導することで歩行機能改善に寄与する可能性が示唆された.
  • —最速歩行と通常歩行の計測順序の違いによる影響—
    飯田 修平, 青木 主税
    2017 年 32 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕10 m歩行テストにおける最速歩行と通常歩行の測定順序の違いが測定結果に与える影響を検討した.〔対象と方法〕対象は健常成人50名とした.10 m歩行テストにおいて,最速歩行測定後に通常歩行の測定をする方法と通常歩行測定後に最速歩行を測定する方法の2種類を別日に測定した.評価項目は,最速歩行および通常歩行の所要時間,通常歩行の主観的歩行速度におけるNRS(Numerical Rating Scale)とし,対応のあるt検定で比較した.〔結果〕両群の最速歩行の所要時間と通常歩行の主観的歩行速度に有意な差は認められなかったが,通常歩行の所要時間では,最速歩行を先に測定した群の方が有意に短かった.〔結語〕最速歩行を先に測定することは,運動残効により通常歩行の結果に影響する可能性がある.
  • 金子 千香, 平林 茂, 菅沼 一男, 堀本 ゆかり, 齋藤 孝義
    2017 年 32 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法学科新入生の早期退学の一因と考えられる大学生活不安感の実態について,大学間比較をすることでより客観的に明らかにすること.〔対象と方法〕2015年に2つの異なる四年制大学の理学療法学科に入学した1年生88名と96名を対象とした.入学後約2ヵ月の時点で集合調査法にて大学生活不安尺度を調査し,3つの下位尺度(日常生活不安尺度,評価不安尺度,大学不適応尺度)の得点を群間比較した.〔結果〕退学などの学籍異動に大きく関連するといわれる大学不適応尺度には両校で有意差はなかった.〔結語〕本研究は2校だけの比較という限界はあるが,理学療法学科の新入生が入学早期に抱える大学不適応感は,入学時の学力にかかわらず,新入生が入学直後に一様に持つ感覚であることが明らかとなった.
  • 森川 智栄, 楠見 陸, 阿江 麻里奈, 森 千晴, 岩田 晃
    2017 年 32 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕適切な姿勢を選択する能力(姿勢選択能力)と運動パフォーマンスの関係を明らかにすることとした.〔対象と方法〕健常若年女性46名を対象とした.姿勢選択能力は,膝関節伸展時に対象者自身が最も筋力を発揮できると予測した角度と,実際に最大筋力が得られた角度の差とした.この能力と,運動パフォーマンス(6 m走,垂直跳び)の計測値との関係を解析した.〔結果〕姿勢選択能力の低い群と比較して,高い群は,有意に6 m走行時間の平均が短く,跳躍高の平均が高かった.〔結語〕姿勢選択能力の高低により運動パフォーマンスに差が認められたことは,姿勢選択能力が運動パフォーマンスを決定する因子の一つである可能性を示唆する.
  • 多久和 良亮, 岡田 恭司, 若狭 正彦, 齊藤 明, 木元 稔, 鎌田 哲彰
    2017 年 32 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕頭頸部伸展位が片脚着地動作に及ぼす影響を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は,健常成人女性31名(平均20.1歳)とした.高さ30 cm台からの片脚着地動作を,頭頸部屈曲伸展中間位と,頭頸部伸展位の2条件で行った.片脚着地時の最大の膝関節屈曲と外反角度,体幹前後屈,側屈角度,および着地位置を測定し,条件間で比較した.〔結果〕頭頸部伸展位での着地では頭頸部屈曲伸展中間位の着地に比べて最大膝関節外反角度が有意に大きかった.最大膝屈曲角度と体幹前後屈,側屈角度,着地位置には有意差はみられなかった.〔結語〕頭頸部伸展位での片脚着地動作は膝関節外反角度を増大させ,非接触型前十字靭帯損傷の一要因となると推察された.
  • 北西 秀行, 木下 和昭, 中 雄太, 米田 勇貴, 大八木 博貴, 石田 一成, 柴沼 均
    2017 年 32 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は人工膝関節全置換術(TKA)後4 週の患者の身体活動量と運動機能,疼痛,破局的思考との関係を検討した.〔対象と方法〕対象はTKAを施行された31例とした.測定項目はTKA後4週の身体活動量と運動機能(等尺性膝関節伸展筋力,SS-5,TUG),疼痛,破局的思考とした.〔結果〕身体活動量と術側と非術側の等尺性膝関節伸展筋力,SS-5,TUGとの間に有意な相関が認められた.身体活動量と疼痛,破局的思考との間には有意な相関が認められなかった.〔結語〕TKA後4週の身体活動量は運動機能と関係することが示唆された.
  • 森田 由佳, 森田 義満, 堀川 悦夫
    2017 年 32 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕心肺運動負荷試験(CPX)を用いて運動耐容能の指標を求め,心臓超音波検査(UCG)による心機能評価との関係を解析し,心臓リハビリテーション(心リハ)における至適運動強度(Ex watt)を推定可能か検討する.〔対象と方法〕本研究に同意し,心リハに参加した心疾患患者21名である.CPXのパラメータのうちEx wattと,UCGによる心機能評価の左室急速流入血流速度(E),心房収縮期流入血流速度(A),E/A,僧帽弁輪部の拡張早期最大速度(e’),およびE/e’との関係を検討した.〔結果〕Ex wattとE/e’において,有意な相関関係が示された.〔結語〕UCGによるE/e’は,心リハにおける心疾患患者のEx wattを推定する一つの指標となる可能性が示唆された.
  • 藤井 啓介, 北濃 成樹, 神藤 隆志, 佐藤 文音, 國香 想子, 藤井 悠也, 大藏 倫博
    2017 年 32 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕独居高齢者における地域活動への参加と抑うつとの関連性を明らかにする.〔対象と方法〕要介護認定を受けていない地域在住高齢者を対象に地域活動への参加状況,世帯構成を調査し,基本チェックリストの「うつ予防・支援」に関する項目で抑うつ傾向の有無を評価し,有効回答のあった9,004名を分析対象とした.〔結果〕男女とも地域活動に参加していない独居は地域活動へ参加している独居者と比べ,抑うつ傾向を有している可能性が高かった.また,地域活動へ参加している独居高齢者は地域活動に参加しているおよび参加していない非独居高齢者と抑うつ傾向を有している可能性に差異を認めなかった.〔結語〕独居高齢者の地域活動への参加は良好な心理的健康と関連することから,独居高齢者が地域活動へ参加しやすい環境を整える必要がある.
  • —年代間および男女間における足趾接地有無の割合の差の検討—
    久利 彩子, 小西 有人, 竹内 直子, 吉田 正樹
    2017 年 32 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕開発した低床ピドスコープを適用し,成人期以降の年代間および男女間における立位で床に接地していない足趾(PFT)有無の割合の差を検討することである.〔対象と方法〕30歳から79歳の336名(男性141名,女性195名)とした.高さ90 mmの低床ピドスコープを開発した.開発した機器から取得した足底面画像を2値化した.PFT分類経験の異なる2名の検者にPFT有無を分類させ,検者間信頼性を検討した.両足足趾に1本でもPFTがある者をPFT者とし,年代間および男女間におけるPFT者割合の差を解析した.〔結果〕分類の検者間信頼性は非常に高かった.年代間および男女間においてPFT者割合に差は無かった.〔結語〕成人期以降のどの年代や性別においても,PFT者割合は同程度であった.
  • 金野 達也, 佐藤 彰紘, 矢﨑 潔, 森田 良文, 柴垣 浩明, 秋月 千典
    2017 年 32 巻 1 号 p. 117-121
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕把持力調整能力評価の基礎研究として,測定機器の測定誤差の程度を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕健常者27名を対象に,測定機器iWakkaを用いて得られた,把持力調整能力の2回の測定値に対し,Bland-Altman分析を実施した.〔結果〕Bland-Altman分析により,加算誤差と比例誤差は認められず,MDC95は利き手で1.2 g,非利き手で2.1 gであった.〔結語〕得られた測定誤差の程度より,iWakkaを用いた測定法による介入効果の分析が可能になると見込まれる.
  • 山本 沙紀, 伊藤 翼, 岡田 唯, 近藤 郁美, 栗田 貴子, 岩田 晃
    2017 年 32 巻 1 号 p. 123-127
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕先行研究によって報告されている,Seated Side Tapping test(SST)と移動能力との間の有意な相関をもたらす理由を明らかにするため,SSTと移動能力に共通する身体機能項目を明らかにすることとした.〔対象と方 法〕対象は若年者の健常女性27名とした.横断研究により得られたSSTおよび移動能力と,体幹筋力,下肢筋力,上下肢運動速度,柔軟性および座位バランスとの関連性を分析した.〔結果〕SSTと移動能力の両者に関連性のあった身体機能項目は,体幹伸展筋力,膝関節伸展筋力,足関節底屈筋力,上下肢運動速度であった.〔結語〕SSTと移動能力との関係は,これらのそれぞれと,体幹機能に加え,下肢筋力や上下肢の運動速度との関係によって,生じている可能性が示唆される.
  • 林 拓児, 石川 定, 河村 隆史, 中川 大樹, 川平 和美
    2017 年 32 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕通所リハビリテーション利用中の慢性期脳卒中片麻痺者に対して促通反復療法(治療的電気刺激・振動刺激併用)を低頻度で施行し,片麻痺上肢の麻痺改善効果を検討した.〔対象と方法〕通所リハビリテーション利用中の慢性期片麻痺者43名を対象に,麻痺側の上肢と手指に30分間,週2回の低頻度で12週間,治療を実施した.実施した治療法により伝統的な片麻痺治療法群と促通反復療法群に分け,上田式12段階片麻痺機能テスト法による評価をもとに,治療前後の麻痺の程度,改善度,有効率(改善人数/対象者数)を2群間で比較した.〔結果〕促通反復療法が伝統的な片麻痺治療法よりすべての指標において有意に高い麻痺改善の効果を示した.〔結語〕促通反復療法は低頻度でも有効な慢性期脳卒中片麻痺の治療法として今後の発展が期待できる.
  • 佐藤 勢, 早川 岳人, 神田 秀幸, 熊谷 智広, 各務 竹康, 辻 雅善, 日高 友郎, 遠藤 翔太, 森 弥生, 福島 哲仁
    2017 年 32 巻 1 号 p. 133-137
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕老健施設入所者の転倒状況を調査し,時間帯別に分析を行い,転倒者の個人要因の特徴を明らかにすること.〔対象と方法〕福島市の老健施設で初回転倒した94名を対象者とし,性,年齢,身長,体重,要介護度,活動分類,認知症の分類,ADL評価,握力,長谷川式スケール,10 m歩行,BPSD,転倒場所について時間帯別に比較を行った.〔結果〕転倒者は9:01~17:00で39名,17:01~1:00は32名,1:01~9:00は23名の計94名であった.1:01~9:00の転倒者は低身長,BPSDの夜間不眠,廊下での転倒が有意に多かった.〔結語〕低身長,夜間不眠,廊下通行の特徴を持つ者は深夜から早朝にかけて転倒する可能性が高いため,注意が必要である.
  • 小野田 公, 糸数 昌史
    2017 年 32 巻 1 号 p. 139-143
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕実技講義を撮影した動画教材を復習のためにインターネット配信し,利用実態の分析から,その効果を明らかにすること.〔対象と方法〕国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科2年生101名を対象とした. 成績別の視聴状況分析調査と復習動画の視聴状況,内容,希望,意見に関するアンケートを実施した.〔結果〕視聴時間および回数は,配信直後よりも試験直前に増加し,成績別では下位群が多く利用する傾向を示した.全対象者の60%が動画を利用し,試験3日前からの視聴が70%以上を占めていた.利便性では全対象者の60%以上が利用しやすいとの意見であった.〔結語〕理学療法実技分野へ復習のための動画を配信した.利便性が高く,実技試験ために多くの学生が使用していた.また,理解度の低い学生の個別学習にも有用であることが示唆された.
症例研究
  • 加藤 丈博, 平松 佑一, 種本 翔, 服部 暁穂, 澳 昂佑, 松木 明好, 木村 大輔
    2017 年 32 巻 1 号 p. 145-150
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕椎体骨折後の安静臥床により身体機能やADLの獲得が遅延した症例の経過について報告する.〔対象と方法〕第2腰椎椎体骨折を受傷した70代後半の男性1名.約3週間の安静期間を経て離床が許可されたものの,廃用性の筋持久力および全身持久力の低下により歩行自立が困難となったため,運動耐用能の改善を意図した反復立ち上がり練習,下肢エルゴメーター,トレーニングマシンによる運動療法を実施した.〔結果〕筋持久力および全身持久力が改善し,歩行自立が可能となり,退院時には受傷前ADLを獲得した.〔結語〕安静臥床により生じる廃用性症候群は,椎体骨折後のADL改善に寄与する重要な予後不良因子となることが示された.今後は安静臥床期間における筋持久力および全身持久力に対する治療介入の有効性を検討する必要がある.
紹介
  • —講義介入とアンケート調査—
    齋藤 正美, 大塚 吉則
    2017 年 32 巻 1 号 p. 151-155
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕地域包括ケアシステムにおいて診療所の機能にリハビリテーション(以下,リハ)は重要な要素である.診療所に勤務する医師,看護師,理学療法士,社会福祉士(以下,スタッフ)がリハをどのように捉え,臨床業務にリハの視点を反映しているのか,明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕診療所スタッフ11名を対象とし,リハに関する講義を行い,その前後にアンケート調査を実施,講義介入前後のアンケート結果を比較した.〔結果〕講義後にスタッフのリハの理解,業務へのリハ視点の意識等が改善した.〔結語〕診療所スタッフへのリハ教育研修の体制整備は必要不可欠である.
エラータ
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