理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
31 巻, 6 号
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原著
  • 内田 智也, 古川 裕之, 松本 晋太朗, 小松 稔, 野田 優希, 石田 美弥, 佃 美智留, 大久保 吏司, 藤田 健司
    2016 年 31 巻 6 号 p. 791-794
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕我々が考案したSingle Leg Up Downテスト(以下SLUDテスト)と体重支持指数(以下WBI)の関連について検討すること.〔対象と方法〕中学野球選手202名にSLUDテストおよびWBI(等尺性最大膝伸展筋力を体重で除した値)を測定した.非投球側のSLUDテスト遂行可能な高さで群分けし,各群間のWBIをKruskal-Wallis検定,多重比較法を用いて比較した.〔結果〕SLUDテスト40 cm,30 cm,20 cm,10 cmのWBIの平均はそれぞれ0.79±0.18,0.87±0.20,1.00±0.19,1.04±0.24であり,40 cmと30 cmの各群に対して,20 cm,10 cmの各群が高値を示した.〔結語〕スポーツ選手に必要な筋力はWBI 1.0以上とされていることからも,20 cm台からのSLUDテスト遂行の可否が下肢筋力のスクリーニングテストとして有用であることが示された.
  • 鈴木 学, 細木 一成, 北村 達夫, 加藤 仁志, 黒川 望, 鳥海 亮
    2016 年 31 巻 6 号 p. 795-798
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕臨床実習中のストレス反応の強さとストレスコーピングの頻度との関連性を検討することとした.〔対象と方法〕理学療法士2養成校の4年生88名とした.臨床実習中のストレス反応とストレスコーピングについて調査し,ストレスの主反応によるコーピングの使用の差異およびストレス反応とストレスコーピングの強さの関係について検討した.〔結果〕ストレスの主反応による肯定評価型および責任受容型のコーピングの使用頻度が有意に高かった.総合ストレス反応とコーピングとの関係について対決型および責任受容型と逃避型との間に有意な正の,計画型および肯定評価型との間に有意な負の相関がみられた.〔結語〕ストレス反応の増加はネガティブなコーピングの使用に正の,ポジティブなコーピングには負の効果を生じさせやすいことが示唆される.
  • 金子 秀雄, 木庭 知美, 徳永 理紗
    2016 年 31 巻 6 号 p. 799-804
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,女子学生における非特異的慢性腰痛の有無による呼吸機能の違いを検証することを目的とした.〔対象と方法〕非特異的慢性腰痛のある女子学生17名(腰痛群)と健常な女子学生17名(健常群)を対象とした.呼吸機能として努力性肺活量(対標準努力性肺活量),呼吸筋力(最大吸気圧,最大呼気圧),胸腹部可動性(呼吸運動評価スケール)を測定した.〔結果〕腰痛群の努力性肺活量(対標準努力性肺活量),上部および下部胸郭スケールと下肢挙上位での腹部スケールは,健常群より有意に低値であった.〔結語〕女子学生における非特異的慢性腰痛は,胸腹部可動性に関連した努力性肺活量低下を招く可能性が示された.
  • 林田 一輝, 大住 倫弘, 今井 亮太, 森岡 周
    2016 年 31 巻 6 号 p. 805-810
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕今回Rubber Hand Illusionを用いてSelf-Touchによる身体所有感の脳内メカニズムを検証した.〔対象と方法〕健常者20名を対象に ①Self-Touch,②Self Rubber Hand Illusion(ラバーハンドを触れることによる錯覚),③Other-Touch(他者から触れられる),④Other Rubber Hand Illusion(ラバーハンドを触れられることによる錯覚)の4条件で機能的生体近赤外線分光装置を用いて脳活動を計測した.〔結果〕全条件で両側運動前野が,条件②のみ補足運動野が活動していた.〔結語〕Self-Touchによる身体所有感の錯覚の惹起には補足運動野の活動が関与している.
  • 鎌田 哲彰, 岡田 恭司, 若狭 正彦, 斉藤 明, 木元 稔
    2016 年 31 巻 6 号 p. 811-814
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕短時間の静的ストレッチング(以下,SS)が大腿直筋の柔軟性と筋力に及ぼす効果について検討すること.〔対象と方法〕運動習慣が週2日以内の健常若年者30名の右下肢を対象とした.伸張時間を2,4,6,8,10,30秒でSSを行い,それぞれの前後で,踵殿距離,大腿直筋のエラストグラフィによる歪み比と等尺性膝伸展筋力を算出した.〔結果〕踵殿距離は2秒~30秒すべてのSS後に,大腿直筋の歪み比は8秒以上のSS後に有意な低下が見られた.筋力は8秒間まではSS後の変化がなく,10秒以上で有意な低下が見られた.〔結語〕8秒間のSSでは,大腿直筋の筋力が維持され,柔軟性が向上するのに対し,10秒以降では柔軟性が向上し,筋力は低下することが示唆された.
  • 肥田 直人, 石井 慎一郎, 山本 澄子
    2016 年 31 巻 6 号 p. 815-818
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,ランニングにおける前足部接地と後足部接地の推進特性の違いを調べた.〔対象と方法〕対象は健常成人18名.三次元動作解析装置を用いて前足部から接地したランニングと,後足部から接地したランニングを計測した.〔結果〕後足部接地では立脚期に重心前方移動が大きく,前足部接地では遊脚期に大きかった.後足部接地では立脚前半における床反力鉛直成分が大きく,前足部接地では立脚後半における床反力鉛直・前方成分が大きかった.後足部接地では,立脚前半に大きな後方への回転力が生じた.〔結語〕後足部接地では衝撃を減らすことで前に進み,前足部接地では地面を強く蹴ることで前に進むという特性がみられた.
  • —学生アンケートの計量テキスト分析—
    篠崎 真枝, 浅川 育世, 大橋 ゆかり
    2016 年 31 巻 6 号 p. 819-827
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕PBLテュートリアル教育の効果と問題点および学生の学習行動の変化を検討した.〔対象と方法〕1~4年生を対象に3年間自由記載のアンケートを実施し,計量テキスト分析した.〔結果〕クラスター分析より,【PBL授業への積極的参加】,【主体的な学習姿勢の修得】などの因子が形成された.学年別コードの分析より,4年次では能動的な姿勢や自己学習のコードの増加を示した.〔結語〕PBLの効果として,主体的学習や自己学習の増加などが確認できた.PBLの経験を積んだ高学年で主体的学習行動への変化が見られ,4年間のカリキュラムを通して学生の学習行動の変化を促すプログラムの構築の必要性が示唆された.
  • 三好 圭, 大平 雅美, GOH Ah-Cheng, 神應 裕
    2016 年 31 巻 6 号 p. 829-833
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕仰臥位用(SE)と自転車(BE)エルゴメーターを用いて姿勢の違いによる筋活動量への影響を検討すること.〔対象と方法〕男子学生11名とした.負荷量は10 W,20 W,30 W,43 W(BEは44 W),75 W(BEは76 W)とした.筋電図より得られる内側広筋,大腿直筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,腓腹筋外側頭,ヒラメ筋,脊柱起立筋,腹直筋の最大等尺性随意収縮(MVC)を用いて%MVCを求めた.〔結果〕BE,SEともに負荷量が上がると%MVCも上がる傾向にあった.BEと比較すると前脛骨筋,内側広筋,脊柱起立筋でSEの%MVCの平均が有意に低かった.〔結語〕SEは下肢の筋力増強トレーニングとして利用できる可能性はあるが,筋力低下のある透析患者での検討が必要である.
  • 一瀬 裕介, 久保 晃
    2016 年 31 巻 6 号 p. 835-839
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕頭頸部屈曲テスト施行時の各負荷段階における左右の頸長筋,胸鎖乳突筋の変化を,超音波診断装置を用いて捉えることができるかを検討した.〔対象と方法〕健常成人男性12名,女性12名とした.安静時と頭頸部屈曲テストの5段階負荷において,超音波診断装置を用いて静止画を抽出した.胸鎖乳突筋筋厚,頸長筋筋厚,頸長筋横断面積を計測した.〔結果〕頸長筋横断面積は利き手側に対して非利き手側において大きな値を示した.頭頸部屈曲テストにおける頸長筋横断面積は,中等度以上の負荷において左右とも有意な増加を示した.〔結語〕頸長筋の超音波画像は,頸長筋の筋活動変化を確認でき,テストのフィードバック手段としての有用性が示唆された.
  • 藤田 和樹, 堀 秀昭, 小林 康孝
    2016 年 31 巻 6 号 p. 841-845
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ボツリヌス療法および理学療法介入後における歩行能力改善率と身体的因子の関係性を調査し,治療の有効性が高い症例の身体的特徴を明らかにすること.〔対象と方法〕慢性期脳卒中患者41例を対象とした.A型ボツリヌス毒素製剤を下腿の痙縮筋に計300単位投与した後,理学療法を4週間実施した.統計は,介入後の歩行速度改善率と介入前の各データとの相関を求めた.〔結果〕歩行速度改善率は,MAS,BBS,歩行速度,歩行形態,重複歩距離との間に有意な相関が認められた.〔結語〕ボツリヌス療法および理学療法併用による歩行速度の改善には,介入前の痙縮が著明で歩行能力が低い症例に有効性が高いことが示唆された.
  • 三浦 紗世, 世古 俊明, 隈元 庸夫
    2016 年 31 巻 6 号 p. 847-850
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕握力測定器を用いた足趾把持力測定の信頼性と妥当性について検討し,その有用性を検証することである.〔対象と方法〕外来リハビリテーションに通う高齢者9名とした.握力測定器と市販の測定器を用いて測定される足趾把持力と測定時の筋活動量を計測した.両測定法の信頼性と関連性および,測定法間での足趾把持力と前脛骨筋,ヒラメ筋,母趾外転筋の筋活動量を比較した.〔結果〕検者内信頼性はいずれの方法においても良好であった.両測定法間での足趾把持力に高い相関が認められた.筋活動量はすべての筋で差を認めなかった.〔結語〕握力測定器を用いた足趾把持力の測定法は再現性と妥当性を持つが,市販の測定器とは得られる値が異なることに留意する必要がある.
  • 髙石 直紀, 奥野 裕佳子, 冨田 和秀
    2016 年 31 巻 6 号 p. 851-856
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,我々が開発した「咳嗽力アップ体操」の筋活動特異性を検証する事を目的とした.〔対象と方法〕対象は健常者8名とした.咳嗽体操は約20分とし,椅座位で胸郭拡張運動4種目,脊柱可動性向上運動7種目,腹壁筋群促通運動7種目とした.体操中の酸素摂取量と換気量,筋電図を測定した.〔結果〕咳嗽体操の酸素摂取量と換気量は体操全体で1.6 ± 0.8 METs,1,338.0 ± 610.8 mlであった.体操中の筋活動時間は内腹斜筋が有意に多かった.〔結語〕当咳嗽体操は低負荷で,随意咳嗽時の呼出に関与する内腹斜筋の筋活動が顕著であったことから,高齢者等の咳嗽能力を高める可能性が示唆された.
  • 吉田 隆紀, 谷埜 予士次, 鈴木 俊明, 増田 研一
    2016 年 31 巻 6 号 p. 857-863
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,外反母趾用靴下の機能的靴下の効果を運動療法のみ実施したものと比較して検討した.〔対象と方法〕対象は,外反母趾角が15°以上の靴下着用運動療法群7名(13肢)と運動療法群7名(13肢)の女子学生とした.測定は,身体アライメント評価,足関節可動域,足趾筋力とした.また床反力計で歩行時の立脚時間,床反力,COP軌跡長を計測した.介入内容は,両群ともに週3回,6週間の運動療法を実施し,靴下着用運動療法群は靴下着用を加えた.〔結果〕介入前後の比較において靴下着用運動療法群は,外反母趾角の減少と蹴り出し時の垂直分力値が減少した.〔結語〕外反母趾用靴下着用は,運動療法実施のみより外反母趾角の改善効果が得られ,運動療法は歩行時の母趾へのストレスを減少させると考えられる.外反母趾の運動療法に外反母趾用靴下を組み合わせると外反母趾角の改善効果が高い.
  • 内田 全城, 塚本 敏也
    2016 年 31 巻 6 号 p. 865-868
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕敏捷性と膝関節周囲筋との関連性を検証した.〔対象と方法〕健常成人12名とした.Ten Step Test (TST)による敏捷性を測定し,膝関節伸筋と膝関節屈筋の等速性筋力を60°/s,180°/s,300°/sで計測した際の最大トルクと仕事量との相関を検証した.〔結果〕TSTと低速域の最大トルク,および全速域の仕事量との間に有意な負の相関がみられた.〔結語〕敏捷性の指標であるTSTは,利足優位の低速域最大トルクと,収縮持続能力との関連性が示唆された.
  • 手塚 潤一, 長田 久雄
    2016 年 31 巻 6 号 p. 869-873
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕変形性膝関節症患者を対象とし,健康関連QOLに影響を及ぼしている要因を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕変形性膝関節症患者115名.健康関連QOL,JOAスコア,主観的重症度,周辺環境満足感,趣味活動満足感,家族関係満足感,経済状況,楽観性指標,年齢,性別,他関節疾患の有無についての聞き取り調査を行った.〔結果〕SF-8スコアとの重回帰分析の結果,標準偏回帰係数で有意とされた変数は,JOAスコア,主観的重症度,周辺環境満足度,趣味活動満足度の4変数であった.〔結語〕高齢者変形性膝関節症患者は客観的重症度,主観的重症度が低く,周辺環境満足感,趣味活動満足感が高いと健康関連QOLが高いことが示唆された.
  • 一川 大輔, 重藤 誠市郎, 宮澤 太機, John Patrick SHEAHAN, 奥田 功夫
    2016 年 31 巻 6 号 p. 875-881
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ゴルフパフォーマンスと年齢によって,身体機能特性がどのように異なるのかを調査することとした. 〔対象と方法〕ゴルフパフォーマンスと年齢により4つのグループに分けられた46名のゴルファーとした.被験者の身体機能特性は,Functional movement screen(FMS)をもとに著者らが開発した項目により評価された.〔結果〕若年ローハンディキャップグループは,FMS項目の合計得点において他のグループより有意に高い値を示した.しかしながら,他のグループ間では有意な差は認められなかった.〔結語〕若年ローハンディキャップグループは,全面的な身体機能特性において大きな優位性を有していることが示された.
  • 木村 公喜, 辻 聡司, 寺尾 恭徳, 秋山 大輔, 萩原 悟一, 松崎 守利, 納戸 習之, 藤谷 順三
    2016 年 31 巻 6 号 p. 883-886
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕一過性の2分間の綱渡り練習が,綱渡り距離,総軌跡長,単位軌跡長,単位面積軌跡長,および外周面積に及ぼす影響を検討した.〔対象と方法〕男性12人とした.バランス練習は,長さ400 cmの綱を高さ30 cmに設置し,滑らないように裸足で2分間渡り続けた.重心動揺測定は,各測定項目において両足立ちと片足立ちについて,開眼時および閉眼時で15秒間実施した.〔結果〕右足開眼立ちと閉眼立ちにおいて総軌跡長と単位軌跡長が有意に減少した.左足立ちは,開眼立ちで総軌跡長と単位面積軌跡長が有意に減少し,外周面積が有意に増加した.〔結語〕一過性の2分間綱渡り練習の実施によりバランス因子が向上した.
  • 日下 さと美, 高橋 哲也
    2016 年 31 巻 6 号 p. 887-891
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕多段階漸増椅子立ち上がり運動負荷試験の運動耐容能評価法としての妥当性と年代間の差を明らかにすること.〔対象と方法〕健常男性80名(19歳から80歳)を対象に多段階漸増椅子立ち上がり運動負荷試験を行い呼気ガス諸量や血圧を連続測定し,実測最高酸素摂取量とItohらの予測最高酸素摂取量との関係や最高立ち上がり回数との関係を分析した.また各指標を年代間で比較した.〔結果〕実測最高酸素摂取量と予測最高酸素摂取量の相関係数は,30歳から50歳代群以下では強い正の相関関係を認め,60歳代以上群では無相関であった.また,若年群では最高代謝当量をはじめ各指標は有意に高値であった.〔結語〕多段階漸増椅子立ち上がり運動負荷試験は50歳代群以下が対象の場合は自転車エルゴメータによる運動負荷試験の代用になる.
  • 高田 雄一, 矢崎 香苗, 岩本 浩二, 飯島 光博, 又村 貴大, 山本 可奈子, 宮本 重範
    2016 年 31 巻 6 号 p. 893-896
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕足部形状に変形のない健常足と内側縦アーチが低下した扁平足では地面へ接する部位は異なる.扁平足は足底感覚閾値にどのような影響を与えるのか検討することであった.〔対象と方法〕対象は健常群22名,および内側縦アーチが低下している扁平足群21名とした.モノフィラメント圧痛計を用いて9つの足底部位(母趾中央,示趾中央,中趾中央,環趾中央,小趾中央,母趾球,小趾球,内側縦アーチ中央,踵中央)において足底感覚閾値をそれぞれ測定した.測定した閾値を部位ごとに群間比較した.〔結果〕小趾球でのみ扁平足群で有意に閾値が低かった.〔結語〕扁平足群では健常群に比べ荷重量の少ないと考えられる小趾球の感覚閾値が低いことがわかった.
  • 有竹 洋平, 吉松 竜貴, 佐島 毅
    2016 年 31 巻 6 号 p. 897-905
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕日常生活動作(ADL)に介助を要する入院・入所高齢者において,下位項目の難易度からADLの特性を明らかにすることとした.〔対象と方法〕入院もしくは入所中の高齢者111名とした.食事,排泄,移乗,移動の4動作を,各動作を分解してできる全141の下位項目から成る評価表で評価した.項目毎に3件法で難易度を求め,動作間で比較した.また,難易度の階層に沿って下位項目を並べ,難易度の特性を検討した.〔結果〕食事の動作は他の3動作よりも有意に難易度が低かった.高い立位バランス能力が必要な下位項目において,そうでない項目と比べ難易度が高かった.〔結語〕基本的ADLに介助を要する入院・入所高齢者のADLは動作によって難易度が異なる.同じ動作の要素間でも難易度が異なることにも留意すべきである.
  • 齋藤 孝義, 菅沼 一男, 齋藤 由香里, 佐野 徳雄, 青柳 達也, 金子 千香
    2016 年 31 巻 6 号 p. 907-910
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕踵上げ反復運動回数と最大1歩幅を比較し,転倒経験の有無による測定値の違いについて検証すること.〔対象と方法〕自立歩行が可能な65歳以上の高齢者80名.踵上げ反復運動は10秒間の施行回数と,最大1歩幅は一方の下肢を可能な限り前方へ踏み出した距離を測定した.〔結果〕転倒群と非転倒群の群間比較の結果,踵上げ反復運動回数と最大1歩幅ともに転倒群は有意に低値を示し,相関係数はr=0.539であった.また,踵上げ反復運動回数のカットオフ値は10.5回(感度80.9%,特異度72.7%)であった.〔結語〕踵上げ反復運動回数と最大1歩幅との間にはかなりの相関があることが示され,転倒群の測定値が非転倒群より有意に低いことから,踵上げ反復運動は転倒を予測するのに有効である可能性がある.
  • 大古場 良太, 長谷川 正哉, 吉塚 久記, 本多 裕一, 浅見 豊子
    2016 年 31 巻 6 号 p. 911-914
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕突起物を踵に貼付することにより初期接地位置を教示し,その際の歩行時下腿筋活動について検証した.〔対象と方法〕健常成人12名とした.突起物を踵の3点(内側,外側,後方)に貼付した突起物有り条件と,何も貼付しない突起物無し条件の計4条件を設定し,初期接地の際に突起物を踏むように意識して歩行させた際の遊脚期における下腿筋活動を比較した.〔結果〕突起物無し条件と比較し,突起物有り条件において前脛骨筋および長腓骨筋の筋活動が有意に増大した.遊脚期を5%ごとに分けた周期ごとの比較では,どの周期あるいはどの筋においても有意差は認められなかった.〔結語〕突起物により特定の踵部位で接地するため,予測的に遊脚中の足部動態を制御したことが示され,認知的トレーニングへの応用につながる可能性が示唆された.
  • 山下 喬之, 田口 光, 長津 秀文, 西田 徳和, 東條 夏也
    2016 年 31 巻 6 号 p. 915-923
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法士養成課程における,統一性や客観性が乏しい実習成績評価の問題点を改善する目的で,養成校と実習施設が教育目標と到達基準を明確に共有できる実習成績報告書を新しく開発する.〔対象と方法〕長期臨床実習で使用する実習成績報告書とする.従来の指導者主観の強い実習成績評価方法を学生の能力を客観的に評価可能なパフォーマンス評価概念のルーブリックを用いて作成した.〔結果〕養成校の教育目標と到達基準を明確に表記したルーブリック成績報告書が完成した.〔結語〕ルーブリックは実習成績のみならず新人教育,人事考課まで幅広く活用することができる先駆的な教育ツールで,今後の切れ目ない理学療法教育文化を構築する基盤となると考えている.
症例研究
  • 竹内 真太, 西田 裕介, 美津島 隆
    2016 年 31 巻 6 号 p. 925-929
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,活動筋への血流を最適化すると推測されている心拍‐運動リズム間の同期現象の臨床的意義を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕対象は間歇性跛行を呈している閉塞性動脈硬化症患者1名とした.対象者は心拍リズムに同調させたリズムと,それと異なる3種類のリズムでトレッドミル上を歩行し,患側下腿後面の組織血液酸素飽和度から歩行による下肢の虚血を評価した.〔結果〕心拍リズムに同調させた歩行リズムでは,他の条件と比較して歩行中の患側下肢の虚血が軽度であった.〔結語〕心拍‐運動リズム間の同期現象は,末梢循環障害患者に対しても,活動筋への血流を最適化する効果があることが示唆される.
  • —負荷可変式仰臥位エルゴメータを使用して—
    野口 雅弘, 宮城 重二, 山口 慎一, 越野 慶隆
    2016 年 31 巻 6 号 p. 931-935
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では血液透析患者に対して,透析中の仰臥位エルゴメータ運動介入を実施し,透析中運動の効果を検証した.〔対象と方法〕対象者は,外来血液透析患者7人であった.介入方法は,3ヵ月間の透析中の仰臥位エルゴメータ運動を行った.運動強度はKarvonen法で定数0.3の低強度を目標心拍数として開始し,ペダルの重さにより運動強度を調節した.〔結果〕上腕足首血圧比(ABI)の高い対象者は歩行能力が高く,介入後6分間歩行は延長傾向になり,透析中の運動介入によって歩行能力を改善した可能性が示唆された.〔結語〕透析中運動により歩行距離延長は示唆されたが,ペダル負荷可変式の負荷漸増は局所疲労を早期に招き,運動負荷の調節は困難であった.新たな定量的な運動処方の考案が必要と考えられた.
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