理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
30 巻, 5 号
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原 著
  • 鈴木 学, 細木 一成
    2015 年 30 巻 5 号 p. 655-659
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕臨床実習中のストレス反応と課題遂行状況との関連を検討した.〔対象〕理学療法士2養成校の4年生81名とした.〔方法〕SRS18(心理的ストレス反応測定尺度)による臨床実習中のストレス反応の程度と実習課題遂行の両者の関係をについて相関分析および回帰分析により解析した.〔結果〕総合的実習遂行状況には「抑うつ反応・不安」,「不機嫌・怒り」,そして総合的ストレス反応との間も有意な弱い負の相関がみられた.そしてストレスの程度に対する情報収集と活用の程度の標準回帰係数に有意差がみられた.〔結語〕実習課題では情報収集と活用の程度がストレスの程度に影響を与えていることが示唆された.
  • 藤田 大介, 小原 謙一, 吉村 洋輔, 大坂 裕, 末廣 忠延, Tim CLEMINSON
    2015 年 30 巻 5 号 p. 661-665
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法士を目指す学生達が持っている介護保険領域の職場イメージの構造を把握し,学年が上がることで,イメージはどのように変化するのかを明らかにすることとした.〔対象〕理学療法士養成施設に在籍する84名とした.〔方法〕イメージに関する14項目について探索的因子分析を行い,各因子について1年生と4年生を比較した.〔結果〕介護保険領域職場のイメージは,「職場の魅力」,「職場の自由さ」,「職場の科学性」の3因子によって構成されていた.「職場の科学性」のイメージは,1年生よりも4年生で有意に低かった.〔結語〕職場の科学性に関するイメージをポジティブな方向に変化させるべきだと考えられた.
  • 山田 拓実, 藺牟田 洋美
    2015 年 30 巻 5 号 p. 667-674
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕介護予防運動プログラムへの参加状況ごとにみた,健康関連QOLに対するプログラム参加の影響を検討した.〔対象〕体操参加者542名,体操中断者265名,体操未経験である一般高齢者1,784名. 〔方法〕健康関連QOLはSF-8TM Health Survey日本語版(以下SF-8TM)で評価した.〔結果〕体操参加者は一般高齢者よりもSF-8TMの10項目全てで有意に高かった.一般高齢者でのみ,SF-8TM得点は年齢階級が高くなるにつれて低下していく傾向が8項目で認められた.〔結語〕介護予防運動プログラムの参加に関連して,SF-8TM各項目の得点の違いは80歳以上の高齢者に特徴的に現れることが明らかとなり,体操参加者の健康関連QOLは一般高齢者に比べ有意に高かった.
  • 松本 智博, 小野 武也, 石倉 英樹, 相原 一貴, 佐藤 勇太, 田坂 厚志, 梅井 凡子, 積山 和加子, 沖 貞明
    2015 年 30 巻 5 号 p. 675-677
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕1週間の関節固定によって発生する痛覚過敏が,固定除去後に慢性化するかどうか検討した.〔対象〕Wistar系統の雌ラット5匹とした.〔方法〕左後肢は固定肢とし,足関節最大底屈位で固定した.右後肢は無介入肢とした.引っ込め反応は痛覚過敏の検査ために用いた.足底に対する痛覚刺激は一定に漸増し,引っ込め反応が認められるまで行った.〔結果〕固定肢において,固定除去直後から固定除去後13日までの引っ込め反応が認められた際の刺激強度は,固定前と比べて有意に低下した.無介入肢は実験期間中,有意な低下を示さなかった.〔結語〕1週間の関節固定後の痛覚過敏は慢性化しない傾向を示した.
  • 萩原 晃, 朝倉 智之, 和田 直樹, 臼田 滋
    2015 年 30 巻 5 号 p. 679-682
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕二重課題が歩行停止動作に及ぼす影響を明らかにすることである.〔対象〕健常成人男性15名とした.〔方法〕三次元動作解析装置を用いて,8 mの歩行路を快適速度で歩行し,既定の位置で停止する課題を歩行停止動作の課題のみとする単一課題条件(ST条件)と認知課題を付加する条件(DT条件)で測定した.評価項目として,減速開始から歩行停止に要する時間(停止時間)と距離(停止距離)を算出した.〔結果〕ST条件に比べDT条件で有意に停止時間が延長した.停止距離は条件間で有意差を示さなかった.〔結語〕二重課題下での歩行停止動作の評価や練習を行う必要性が示唆された.
  • 春山 幸志郎, 川上 途行
    2015 年 30 巻 5 号 p. 683-687
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中片麻痺者における端座位および立位の水平面骨盤回旋角度とその差異に関連する因子を明らかにすることを目的とした.〔対象〕当院入院中の脳卒中片麻痺者38名を対象とした.〔方法〕端座位と立位での骨盤回旋角度を測定し,その角度変化と疾患特性や機能障害等との関連を重回帰分析にて検討した.〔結果〕骨盤回旋角度は端座位で1.1 ± 3.6°,立位で3.8 ± 6.4°後方回旋しており,立位では正中位および端座位と比較して有意に回旋偏倚を認めた.重回帰分析により回旋角度変化を規定する因子として,下肢Brunnstrom recovery stageと歩行能力が抽出された.〔結語〕脳卒中片麻痺者の骨盤回旋角度は立位で麻痺側後方回旋が生じ,その角度差は麻痺の重症度や歩行能力により影響を受ける可能性が示唆された.
  • 金子 千香, 平林 茂, 菅沼 一男, 大日向 浩, 丸山 仁司
    2015 年 30 巻 5 号 p. 689-692
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法学科1年生の大学生活不安を経時的に調査し,学生に対する支援策を検討することとした.〔対象〕四年制大学理学療法学科の新入生88名とした.〔方法〕入学後の5月,10月,翌年2月の3回にわたる大学生活不安尺度の評価を実施した.〔結果〕日常生活不安尺度は5月の調査時に比べ10月には低い値を示した.大学不適応尺度は5月の調査時に比べてしだいに増大し,翌年2月には有意に高い値を示した.評価不安尺度と総合得点には変化は認められなかった.〔結語〕入学年度の年度末には進級への不安から大学不適応を感じる学生が増えることが示唆されため,大学不適応感を抱いている学生を早期に見つけ,進級前の年度途中から頻回に面接を行う必要がある.
  • 北川 智美, 樋口 由美, 藤堂 恵美子, 今岡 真和, 平島 賢一, 石原 みさ子
    2015 年 30 巻 5 号 p. 693-697
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕専業主婦を対象に,座業時間を含む身体活動量について,主観的な評価と実測値との関連を検討した.〔対象〕24~44歳の専業主婦17名を対象とした.〔方法〕IPAQ日本語版と活動量計によって得られた身体活動量をそれぞれ,高強度活動,中等度強度活動,座業の三段階に分類し,総身体活動量を含めた4項目について比較検討した.〔結果〕主観的な評価と実測値の比較では,総身体活動量・座業で実測値の方が有意に高く,相関関係は全4項目でほとんど認められなかった.高強度活動が実測されたにも関わらず全く行っていないと自覚する者が82%であった.〔結語〕専業主婦では,主観的な評価より高い身体活動量が実測された.
  • 高橋 由依, 隈元 庸夫, 世古 俊明, 金子 諒介, 吉川 文博
    2015 年 30 巻 5 号 p. 699-705
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ブリッジ運動評価の有用性について検討し,その基準値を得ること.〔対象〕片麻痺者56名とした.〔方法〕対象を起立,「している」移動,「できる」移動で能力別に群分けし両脚,麻痺側・非麻痺側ブリッジ運動時の荷重率と股屈曲角度(角度),膝伸展筋力,ブルンストロームステージについて群間比較し,有意差を認めた項目を独立変数,各動作能力を従属変数とするロジスティック回帰分析を行いROC曲線からcut-off値を算出した.〔結果〕起立が可能となる麻痺側ブリッジ角度は34°,「している」移動が歩行,「できる」移動が非補助具となる麻痺側ブリッジ荷重率は18%であった.〔結語〕麻痺側ブリッジ運動評価は,起立と移動能力を反映する片麻痺者の股関節伸展運動能力を定量評価しうる有用な評価法であることが示唆された.
  • 澤 広太, 中村 学, 手島 雅人, 平野 正広, 加藤 宗規
    2015 年 30 巻 5 号 p. 707-712
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ハンドヘルドダイナモメーター(以下,HHD)による体幹屈曲筋力および伸展筋力評価の妥当性と信頼性を等速性筋力測定装置(以下,ISME)による測定と比較検討することを目的とした.〔対象と方法〕健常若年者34名とした.HHDとISMEにおける体幹筋力測定を比較し,妥当性はPearsonの積率相関分析にて検討した.相対信頼性は級内相関係数(以下,ICC)を用い,絶対信頼性はBland-Altman分析にて検討した.〔結果〕体幹屈曲,伸展筋力共にHHDとISME間にて有意な相関を認めた.相対信頼性は全てICCで高かったが,絶対信頼性は,体幹伸展で誤差が大きかった.〔結語〕妥当性と相対信頼性は高かったことから,測定上の誤差を考慮することで臨床応用できると考えられた.
  • 有末 伊織, 藤澤 宏幸
    2015 年 30 巻 5 号 p. 713-717
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕タンデム立位における視覚情報の有無が,前および後方肢と合成の足圧中心動揺変数との間に与える影響を検討した.〔対象〕健常成人男性10名とした.〔方法〕右足を後方肢とするタンデム立位で,開眼および閉眼の2条件を計測し,前および後方肢の各足圧中心動揺変数(総軌跡長,前後動揺標準偏差,左右動揺標準偏差)や各下肢荷重量を比較した.〔結果〕視覚の有無にかかわらず,前方肢に比べ後方肢への荷重量が有意に大きかった.開眼および閉眼ともに後方肢と合成の各足圧中心動揺変数間,閉眼の前方肢と合成の各足圧中心動揺変数間は有意に高い相関となった.〔結語〕タンデム立位における姿勢保持には,後方肢の影響が強いと考えた.閉眼時のタンデム立位における姿勢保持には,後方肢だけでなく前方肢も関与することが示唆された.
  • ─併存疾患の重複に着目して─
    藤田 俊文, 岩田 学
    2015 年 30 巻 5 号 p. 719-724
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中患者での運動負荷後の循環動態変動を併存疾患の重複に注目して調査した.〔対象〕脳卒中片麻痺患者19名とした.〔方法〕リカンベント型エルゴメータを用いてウォーミングアップ,筋力測定,筋パワー測定を実施し,その際の安静時と各運動負荷後の血圧変動について,まずは併存疾患を考慮しない場合を解析し,その後高血圧症と糖尿病,高血圧症と脂質異常症の重複があるかどうかで比較した.〔結果〕併存疾患を考慮しない場合では,各運動負荷後の収縮期血圧に相違は見られなかったが,平均血圧では筋パワー測定で他の運動負荷よりも有意に高かった.また,高血圧症と脂質異常症の重複がある場合で平均血圧が高い結果となった.〔結語〕運動負荷後には併存疾患を考慮した循環動態を評価することが重要であることが示唆された.
  • 中野 聡太, 和田 親宗, 加藤 浩
    2015 年 30 巻 5 号 p. 725-728
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕股関節屈曲制限により立ち上がりが困難な要介助者に対して,力を発揮させるために有効な介助者の足部位置を明らかにする.〔対象〕移乗介助経験を有する男子大学生16名を介助者,健常成人男性1名を要介助者とした.〔方法〕床反力計,フォースシューズを用いて,介助者が足を前後に開いた場合(以下,前後開脚)と左右に開いた場合(以下,左右開脚)における要介助者の下肢荷重量を離殿時において比較した.〔結果〕離殿時の下肢荷重量は左右開脚よりも前後開脚で有意に大きかった.〔結語〕介助者の足部を前後に位置させることが,離殿時における要介助者の下肢荷重量の増加を促す可能性のあることが示唆される.
  • 室伏 祐介, 川上 照彦, 芥川 知彰, 近藤 寛, 小田 翔太, 細田 里南, 永野 靖典, 池内 昌彦
    2015 年 30 巻 5 号 p. 729-732
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕スタティックストレッチングが神経─反射機構に及ぼす影響を,T波の潜時,重心動揺の変化から検討した.〔対象〕下肢疾患や神経疾患のない30名.〔方法〕30秒間のスタティックストレッチングを3回実施し,ストレッチング前後でT波の潜時や重心動揺を測定した.また,ストレッチング効果があった群となかった群に分け,比較を行った.〔結果〕ストレッチング後,T波の潜時は延長し,重心動揺も増加した.特にストレッチング効果が著明にみられた群では,潜時の延長や動揺が著しかった.〔結語〕スタティックストレッチングは,神経─反射機構に影響を及ぼす可能性があり,競技直前等では慎重に行うべきである.
  • ─ステップエイド®を用いた歩行中の荷重解析─
    糸谷 圭介, 永井 厚志, 糸谷 素子, 今堀 勇三, 藤本 計之, 田中 守, 加藤 順一
    2015 年 30 巻 5 号 p. 733-736
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕片麻痺患者の歩行中における短下肢装具の役割を,麻痺側の下肢荷重量(WBR)に着目して検証することである.〔対象〕歩行に人的介助を必要としない,短下肢装具を作成した片麻痺患者15名を対象とした.〔方法〕裸足時および短下肢装具装着時における平行棒10m歩行のWBRは,ステップエイド®を用いて測定した.装具の有無における歩行中の麻痺側WBR,WBRの変動係数(CV),10m歩行時間を比較した.〔結果〕装具装着時の平行棒歩行は裸足時と比較して10m歩行時間,WBR,CVが有意に減少した.〔結語〕片麻痺患者における短下肢装具は歩行中のWBRやCVを減少させ,歩行速度を向上させる役割があることが明らかとなった.
  • ─脳病理から─
    吉田 大記, 髙嶋 幸男, 森田 正治, 奥田 憲一, 岩田 欧介, 岩田 幸子
    2015 年 30 巻 5 号 p. 737-740
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕出生までの在胎期間に関係のある脳病理所見の分析から,特徴を明らかにする.〔対象〕早期産および,正期産で出生した乳幼児剖検例,それぞれ62および29例を対象とした.〔方法〕脳病理所見と診断内容から,在胎週数別の脳病変の特異性を抽出し,積率相関分散分析を行った.〔結果〕大脳白質障害のうち,脳室周囲白質軟化のびまん型と海綿状型は,在胎26週以下の超早期産で多く,広汎型は在胎27週から29週で多く,中間部白質軟化は在胎36週から38週に多く,皮質下白質軟化は39週から41週に多かった.基底核壊死は,在胎24週から26週と在胎39週から41週に分かれて多かった.〔結語〕大脳白質の軟化巣や他の病巣の好発部位が,出生時の在胎期間に応じて特異的である.所見はリハビリテーション早期介入に重要である.
  • 鈴木 誠, 鈴木 博人, 西山 徹, 古舘 裕希, 川原木 真司, 菅野 琢也, 高橋 未来, 森谷 知沙, 藤澤 宏幸
    2015 年 30 巻 5 号 p. 741-744
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕背臥位での両下肢挙上保持動作における体幹屈筋群の活動および骨盤前傾運動の詳細を明らかにすることである.〔対象〕健常成人男性23名とした.〔方法〕両膝関節伸展位で股関節90°屈曲位から15°間隔で下降させた位置をそれぞれ保持するとの課題において,体幹屈筋群の筋活動を筋電計にて,また同時に骨盤傾斜角度を計測した.〔結果〕筋活動は腹直筋上部および腹直筋下部で有意な増加を示した.骨盤前傾角度は有意に増加を示した.〔結語〕筋活動量の変化や骨盤前傾運動の早期出現が認められたことは,下肢降下テストにおける判定基準の検討の必要性を示唆する.
  • 渡邊 勧, 岩井 浩一, 山口 忍, 小林 聖美, 有田 真己, 勝村 亘, 宮崎 茜
    2015 年 30 巻 5 号 p. 745-753
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕地域包括ケアシステム推進のために,理学療法士における地域活動実践評価尺度(PAES)を開発し,その信頼性,妥当性を検証した.〔対象〕北関東3県の医療,介護サービスのうち,日本理学療法士協会会員に登録されている理学療法士が勤務する504の施設・サービス(846人)とした.〔方法〕郵送による自記式質問紙調査とした.〔結果〕対象者からの返送は387(45.7%),有効回答数373(44.0.%)であった.分析においては,41項目中17項目の因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行い,5因子の最適解を得た.Cronbachのa係数は,いずれも0.81以上であり,十分な内的整合性が確認された.妥当性については,構造方程式モデリングによるモデル適合率より,適合度が許容範囲にあることが確認された.〔結語〕開発した尺度は5因子17項目で構成され,理学療法士の地域活動の実践度を評価する尺度として信頼性・妥当性を有することが認められた.
  • 西村 沙紀子, 福井 勉
    2015 年 30 巻 5 号 p. 755-758
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕矢状面におけるサポートモーメントと床反力垂直分力との関係からの類推により,片脚スクワット動作の前額面上姿勢制御における下肢関節相互の関連性を運動学的,運動力学的に検討することとした.〔対象〕健常成人10名とした.〔方法〕三次元動作解析装置と床反力計を用い,片脚スクワット動作を計測・解析した.前額面の下肢関節角度,関節モーメント,複合モーメント,COG,COP,床反力左右分力を算出し,これらのパラメータ間の関連性を解析した.〔結果〕複合モーメントと床反力左右分力には有意な関係が認められ,足関節モーメントのみの場合と比較し決定係数が大きい傾向があった.〔結語〕前額面の姿勢制御パターンにおいて,矢状面で述べられているパターンと同様の結果であることが示唆される.
  • 松尾 奈々, 村上 貴士, 日沖 善治, 貝本 拓也, 窓場 勝之, 兒玉 隆之
    2015 年 30 巻 5 号 p. 759-764
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕聴覚ニューロフィードバックトレーニングを実施し,難治性疼痛患者への効果検証を目的とした.〔対象〕腰部の慢性的な疼痛を主訴とする81歳女性.〔方法〕トレーニング介入は,脳波周波数帯域θおよびα波帯域のコントロールトレーニングを実施した.トレーニング介入による心理的効果の検証は,VAS,PCS,STAIにて評価した.また,神経生理学的評価は,脳波周波数解析により算出される周波数帯域毎の神経活動としての平均電位を指標とし,その変化を検証した.〔結果〕介入前後を比較したところ,脳波周波数成分β波帯域の活動電位の減少およびPCS,STAIの得点に減少が認められた.〔結語〕聴覚ニューロフィードバックトレーニングを実施したことで本症例において慢性疼痛への固執や不安感が改善される可能性が示唆された.
  • 山本 良平, 大橋 ゆかり
    2015 年 30 巻 5 号 p. 765-769
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕言語的なフィードバック(FB)の付与のタイミングが,運動学習と練習パフォーマンスに与える影響を明らかにすることとした.〔対象〕健常若年成人24名を対象とした.〔方法〕対象を同時フィードバック(CF)群と最終フィードバック(TF)群の2群に分けた.学習課題は右脚の振り出し課題とした.右脚の軌跡の目標値からの変位の平均値(RMSE)を学習の指標とした.〔結果〕両群ともにRMSEが減少し,学習が認められた.CF群では練習中のFB対象試行がその前の試行と比較して有意に小さい値を示したが,TF群では有意差を示さなかった.〔結語〕言語的なCFとTFは同様の学習効果をもつが,パフォーマンスを変化させるタイミングが異なると示唆された.
  • 岡田 壮市, 小粥 崇司, 成田 誠, 竹島 伸生, Mohammod Monirul ISLAM
    2015 年 30 巻 5 号 p. 771-775
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕高齢デイショートサービス利用者を対象に座位式運動を12ヵ月指導し,その運動効果を調べた.〔対象〕レジスタンス運動群(R, n=19)とバランス運動群(B, n=17)の2群を設定した.〔方法〕効果指標は下肢筋力と機能的体力とした.〔結果〕介入前の下肢筋力と機能的体力,日常歩数,歩行速度に群間で差異がなかった.いずれの変数も交互作用が認められなかった.R群は3ヵ月後に足背屈力と膝伸展力が有意に向上したが,それ以外で変化が認められなかった.両群でファンクショナルリーチ(FR)は12ヵ月後に有意な低下が認められた.B群は10m歩行も低下した.〔結語〕2種類の異なる運動による効果には顕著な相違がなかった.バランス運動はFRが12ヵ月後で低下しており,座位による運動の限界が考えられた.
  • ─理学療法士・作業療法士に対する実態調査─
    松﨑 秀隆, 原口 健三, 吉村 美香, 玉利 誠, 森田 正治, 髙嶋 幸男
    2015 年 30 巻 5 号 p. 777-781
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法士(PT),作業療法士(OT)は,臨床実習(実習)において後進の育成に携わることも多い.しかし,臨床実習指導者(SV)の資格要件は経験年数のみで,“教育指導方法および教育用語”について学ぶ必要性は規定されていない.そこで教育指導方法の認識に関する現状調査の必要性があると考えた.〔対象〕各勉強会に参加し,同意の得られた155名とした.〔方法〕自記式の教育指導方法および教育用語を含めた質問紙を用いた実態調査型量的研究とした.〔結果〕多くのSVは学生指導の際,教育指導方法に苦慮しているが,その方法が効果的であったかなど,検証している者は少なかった.〔結語〕今後は,教育学の立場から学習理論に目を向ける必要性が示唆された.
  • ─前向き研究─
    川井 謙太朗, 舟崎 裕記, 林 大輝, 伊藤 咲子
    2015 年 30 巻 5 号 p. 783-786
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕野球,サッカー選手におけるしゃがみ込み動作と正座の可否と下肢障害発生との関連性について検討した.〔対象〕平均年齢18歳,競技歴12年の野球,サッカー選手それぞれ30名とした.〔方法〕各動作の可否を評価後,2年以内における非接触型損傷による下肢の障害発生の有無について調査した.〔結果〕しゃがみ込み動作の可否と障害発生との相関(φ係数)は,野球:0.94,サッカー:0.78,正座ではそれぞれ0.48,0.47であった.〔結語〕野球選手,サッカー選手ともに,正座の可否よりも,しゃがみ込み動作の可否の方が,下肢障害発生のリスクをある程度予想できる簡便で有用な評価法であることが示唆された.
  • 正保 哲, 柿崎 藤泰
    2015 年 30 巻 5 号 p. 787-792
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕背臥位での動的運動中の血行動態の把握のため,運動強度の異なる動的運動前後の血行動態の変化を検証した.〔対象と方法〕対象は健常男性11例をとした.最大心拍数の20%と40%に運動負荷を設定し,背臥位での動的運動時の血行動態を測定した.〔結果〕SVは,運動負荷40%で,運動中1~5分と運動後2分で有意に増加した.TPRは,運動負荷40%で運動20分に対して運動1~5分で有意に低下した.BRSは,運動強度40%で運動2~20分で有意に低下した.運動強度間の比較では,運動強度40%でSVは有意な低下,TPRは有意な増加,BRSは,有意な低下が見られた.〔結語〕背臥位での最大心拍数40%の動的運動中にSVが低下しTPRが上昇することが示唆された.
  • 永井 良治, 中原 雅美, 下田 武良, 高野 吉朗
    2015 年 30 巻 5 号 p. 793-796
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕地域在住要支援高齢者のサルコペニア発生と骨格筋量とその関連要因について検討した.〔対象〕57名(女性41名,男性16名)を対象とした.〔方法〕サルコペニアの判断アルゴリズムはEWGSOPの基準を採用した.測定項目は身体組成,栄養状態(MNA-SF),運動機能評価,Life space assessment(LSA)を計測した.〔結果〕サルコペニアと判断されたのは女性41名中2名(4.8%),男性16名中1名(6.2%)であった.骨格筋指数を従属変数とした重回帰分析では,BMI,LSA,握力,膝伸展筋力が抽出された.〔結語〕MNA-SFとBMIが低値な場合はサルコペニアの可能性が高い.BMIの改善は骨格筋量の低下を防止する可能性が示唆された.
症例研究
  • 藪本 保, 辛 紹熙, 渡邉 恒夫, 小栗 和雄, 渡邊 雄介, 松岡 敏男
    2015 年 30 巻 5 号 p. 797-800
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/06
    ジャーナル フリー
    〔目的〕全身振動(whole-body vibration: WBV)トレーニングの,学齢期の脳性麻痺児における歩行能力の改善に対する有効性を検証した.〔対象〕10歳の痙直型脳性両麻痺児の一症例とした.〔方法〕ABA’型シングルケースデザインを用いて,ベースライン期,WBV介入期,後介入期の筋厚,歩行能力の評価を行った.筋厚には超音波測定器を用いて膝関節伸展筋(中間広筋)対象に,歩行能力は10?m歩行テストによる時間距離変数を測定した.〔結果〕WBV期において症例患者の筋厚および歩行速度,ストライドが改善した.〔結語〕全身振動トレーニングは,学齢期における脳性麻痺児の筋厚および歩行能力の改善に有効である可能性が示された.
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