理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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10 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 宮田 昌司
    1995 年 10 巻 4 号 p. 179-183
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    右半球症状を伴う脳卒中患者40例のTransfer自立度と右半球症状との関連について検討した。対象者の退院時Transferを自立・監視・介助の3群に分け,自立に関連すると考えられる年齢・Brunnstrom stage(以下Br.stage)・下肢深部感覚・基本動作・神経心理学的テスト・動的場面における右半球症状―病棟Nurseによる評価等から検討を加えた。結果より自立・監視群間ではBr.stageや基本動作等の項目おいて有意差がなく,むしろ右半球症状の改善度に関連が深いことが示唆された。特に,入院時から動的場面での右半球症状の推移に注目することが,その後の自立度を推測する手がかりとなる。監視・介助群間では基本動作能力に有意差がみられたが,その他の項目では有意差がみられなかった。また,臨床的には「日中,ボーっとしている」と評されるような覚醒レベルの低下が介助群の特徴としてみられた。
  • 岩月 宏泰, 岩月 順子
    1995 年 10 巻 4 号 p. 185-187
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    脳血管障害患者11名を肩手症候群を合併している者(合併群)5名と非合併群6名の2群に分け,両側手掌部から導出した交感神経皮膚電位(Sympathetic skin response;SSR)の潜時と振幅について両群間および同年代の健常者(8名)と比較検討した。その結果,1)脳血管障害患者の麻痺側の振幅は合併群1.55±0.54mV,非合併群1.23±0.30mVであり,脳血管障害群は健常群より有意に低下していた。2)脳血管障害群では振幅の麻痺側/非麻痺側比では合併群2.34±0.87,非合併群1.25±0.46であり,合併群が非合併群より有意な高値を示した。3)Valsalva負荷時の振幅は健常群,合併群,非合併群とも安静時より有意ではないが増加していた。以上のことより,肩手症候群を合併していた麻痺肢から導出されたSSRの振幅は非麻痺肢,非合併群の麻痺肢より増加していたことから,麻痺肢の病態を反映していることが示唆された。
  • 久保 晃, 小沼 正臣, 高橋 龍太郎, 望月 直哉
    1995 年 10 巻 4 号 p. 189-193
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    東京都老人医療センターへ入院し理学療法を施行した中枢神経疾患患者53例(平均年齢75歳)の転倒状況を分析した。45%の患者が転倒し,場所はBed周囲が約80%を占めた。大腿骨頚部骨折は,2件(6.1%)発生した。転倒の有無と高次脳機能,痴呆,失禁,起居移動動作自立度の改善,理学療法開始時および終了時の寝たきり率のいずれの間にも有意な差を認めなかった。したがって,転倒の誘因は複合的で,転倒そのものは訓練効果を弱める決定因ではないと考えられた。高齢中枢神経疾患患者の入院生活において,患者の機能自立の達成と安全という両者のバランスを的確に考慮することが重要である。
  • 徳田 哲男, 児玉 桂子
    1995 年 10 巻 4 号 p. 195-202
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    特別養護老人ホームにおける入浴介護動作を,入浴場所と入浴支援機器の組み合わせにより8種類の入浴形態に整理し,入浴介護環境を動作学的側面より検討した。それぞれの入浴形態には入浴支援機器の使用性能が強く反映されており,入浴形態の違いが要介護者の自立程度の差はもとより,介護手順や要素動作の数,入浴所要時間,介護者側の身体的あるいは精神的な負担感の強さなどにも影響を与えていたことを考察した。
  • 市橋 則明, 上原 結花, 山本 宏茂, 伊藤 浩充, 吉田 正樹
    1995 年 10 巻 4 号 p. 203-206
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,Closed Kinetic Chain(CKC)での股関節外転筋の筋力増強訓練における股関節周囲筋の筋活動を測定し,筋電図学的にこれらの訓練方法の有効性を検討することである。対象は,健:常人10名(男性6名,女性4名)とし,片脚立位時に反対側の上肢外転,下肢外転,骨盤挙上を行ったときの中殿筋,大腿筋膜張筋,大殿筋,内転筋の整流平滑筋電図を求めた。その結果,下肢外転,骨盤挙上動作において片脚立位に比べ,股関節外転筋に高い筋活動がみられた。また,上肢外転においては,無負荷では片脚立位と差がなかったが,負荷をかけることにより筋活動は増加した。今回行ったCKCでの訓練は,臨床的に効果が期待できる訓練である。
  • 寺本 喜好, 臼井 永男
    1995 年 10 巻 4 号 p. 207-214
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    疾患を持った被検者を対象に,重心位置を計測し,さらに重心計のステージ上で,頭部を固定して骨盤を水平方向にローテーションさせ,その軌跡を測定して健常者と比較した。その結果,足底面内には症状,年齢,性別,習熟度によって様々な円(楕円)軌道が描かれ,健常者とは形態,大きさ,円滑さにおいて差が見られた。この軌跡の運動解析をすることによって,骨盤と腰部および下肢の身体状況を知る手掛かりとなり,身体の柔軟性と重心の安定性および運動能力を,定量的に評価できる可能性が考えられた。そしてこの重心ローテ―ション(CGR)を習熟することによって,骨盤をより正常な形態に補正し,脊柱や下肢の関節および筋の柔軟性と,平衡感覚の向上に役立つことが示唆されたので報告する。
  • 秋山 純和
    1995 年 10 巻 4 号 p. 215-219
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    呼吸器疾患の運動生理について講義することを命じられた。筆者は余暇活動として伝統的に日本に伝わった武道(合気道,居合道,弓道など)を学ぶ機会があった。武道には呼吸法についてもいろいろの教えがある。それらの武術,武道を導入として呼吸器疾患における運動生理を諸家の研究成果を踏まえてまとめた。拘束性障害,閉塞性障害と呼吸筋の関係,奇異呼吸であるHooverサインのメカニズムにおける今までと異なる研究報告,運動負荷とanaerobic thresholdとの関係,酸素飽和度と理学療法評価,呼吸器疾患患者とADL等について解説した。
  • 内山 靖
    1995 年 10 巻 4 号 p. 221-231
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    姿勢の調節に関して,姿勢の捉えかたと姿勢調節の障害に対する理学療法について記述した。姿勢の捉えかたは,研究領域によってその範躊と目的が若干異なり,計測方法は目的に応じておのずと限定される。理学療法では障害学の枠組みの中で,生理学的・工学的・運動学的背景を中心とした広い概念で姿勢調節の機構を捉えて現象の理解を深めることが肝要である。姿勢調節の障害と理学療法との関わりについては,対象となり得る範囲を具体的に列挙してその評価の概要と報告されている治療および効果についても記載した。
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