〔目的〕日本の地域在住高齢者に対し,どのような行動変容テクニックが身体活動の向上に有効か明らかにすること.〔対象と方法〕検索語は“aged” And “japan*” And “accelerometry” And “randomized controlled trial”としてシステマティックレビューを実施した.〔結果〕7編が選択され,全ての論文で身体活動が向上していた.全ての介入群で使用されていた行動変容テクニックは,Goal setting,Instruction on how to perform the behavior,Credible sourceであり,9~16個使用されていた.〔結語〕特定の行動変容テクニックの組み合わせにより,身体活動を向上させる可能性が示唆された.
〔目的〕地域在住要介護高齢者の転倒・転落状況,および転倒・転落時の傷害の関係性について検証すること.〔対象と方法〕対象は通所リハビリテーション利用者のうち,転倒・転落した68名とした.調査方法は,転倒・転落事故状況調査票から年齢,性別,介護度,転倒・転落日,期間中の転倒・転落回数,転倒・転落場所(居室,浴室,屋外等),転倒・転落による傷害内容(骨折,打撲等),転倒・転落時の移動形態,主要疾患などを抽出した.〔結果〕転倒・転落時傷害と関連する因子として,男性,独歩,転倒場所廊下などが挙げられた.〔結語〕転倒・転落場所は寝室,廊下がおよそ4割を占め,およそ6割が転倒・転落時に何らかの傷害を有していた.さらに転倒・転落時の傷害の関連要因として,男性,独歩,転倒場所が廊下であることがわかった.
〔目的〕遠隔からの確率共鳴(SR)刺激が足部の体性感覚に与える影響を検討した.〔対象と方法〕26名の健常若年者に対し,SR刺激部位は足根管,前後,全周,SR刺激強度は0.6T,0.8Tを適用し,触圧覚,二点識別覚,振動覚,関節位置覚の感覚閾値を母趾腹側と踵で測定した.〔結果〕母趾の触圧覚では足根管における0.6Tの刺激強度,振動覚ではすべての部位における0.8Tの刺激強度で有意な感度の向上が得られた.また関節覚については,足根管での0.6Tの刺激強度にて有意な感度の向上が確認できた.一方,二点識別覚にはSR刺激の影響を認めなかった.〔結語〕遠隔からのSR刺激の付与により二点識別覚以外の体性感覚の感度を向上させ得ることが可能であったが,感覚モダリティにより刺激条件が異なることが明らかとなった.
〔目的〕男子高校サッカー選手におけるコペンハーゲンアダクションエクササイズ(CAE)が鼠径部痛の発生率,重症度に与える影響を調査すること.〔対象と方法〕205名(CAE実施群)と194名(CAE非実施群)を対象とした.鼠径部痛の傷害発生率(IR)は,1,000 player-hours(1,000 ph)の単位を用いた.重症度は,slight,minimal,mild,moderate,severeに分類した.〔結果〕IRはCAE実施群0.25/1,000 ph,CAE非実施群0.78/1,000 phで,リスク比は0.33であった.重症度は軽症,重症ともにCAE実施群とCAE非実施群で有意差を認めた.〔結語〕CAEの実施が,IRを30%低下させた.重症度では軽症,重症ともに低下させることが示唆された.
〔目的〕リズム聴覚刺激を併用した歩行の開始時および定常時期のステップ時間と体幹加速度の変化を健常成人で検討することを目的とした.〔対象と方法〕健常成人17名を対象に,屋内平地歩行を2条件で実施した.条件1は20歩の自由歩行とした.条件2は条件1の20歩の平均ステップ時間より設定したリズム聴覚刺激に初期接地を合わせる歩行とした.歩行開始から5歩ごとに4期に区分した.〔結果〕Ⅰ期(1~5歩目)では条件1と比較して,条件2でステップ時間は短縮し,上下・左右への体幹加速度のピーク値,前・下への体幹加速度の変動係数が増大した.〔結語〕自由歩行と同じテンポでリズム聴覚刺激を呈示すると,健常者ではリズム聴覚刺激に歩行が順応するまでに5歩程度必要なことが示唆された.
〔目的〕維持血液透析患者に対して理学療法を実施し,身体機能や運動耐容能,Phase Angle(PA)の改善効果を検討した.〔対象と方法〕対象は糖尿病性腎症による末期腎不全で,血液透析を導入した75歳の男性患者1名である.理学療法は,監視下で6種類のレジスタンストレーニングを1回合計20分程度,週3回の透析前に12週間実施した.〔結果〕身体機能の向上を認め,低栄養・サルコペニアの重症度は改善し,PAは4.0°から4.3°に改善した.〔結語〕維持血液透析患者に対する12週間のレジスタンストレーニングは,PAを改善する可能性が示唆された.
〔目的〕転倒恐怖感が強い脛骨近位端骨折症例に対して,運動観察(AO)と運動イメージ(MI)を併用した介入を実践したため報告する.〔対象と方法〕症例は80歳女性,転倒後に転倒恐怖感,疼痛が強く歩行能力および身体活動量の低下が生じていた.介入は完全免荷時期から全荷重において,通常の理学療法プログラムに加えてAOとMIを併用した.〔結果〕転倒恐怖感および疼痛が改善し歩行能力が向上した.〔結語〕通常の理学療法プログラムに加えてAOとMIを併用した介入は,脛骨近位端骨折症例に対して実践できる可能性が示唆された.