理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
32 巻, 4 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
原著
  • 瀧上 陽登, 浦辺 幸夫, 前田 慶明, 藤井 絵里, 森山 信彰
    2017 年 32 巻 4 号 p. 467-471
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ラグビーなどのコンタクトスポーツは,マウスガード(Mouth Guard:以下,MG)の使用が認められている.MGを装着することで,頸部の最大等尺性運動中の咬筋および頸部筋の筋活動量の変化と,運動方向の違いによる筋力発揮の変化があるかを明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕本研究は健常男子ラグビー部員16名を対象とし,8方向への頸部の最大等尺性運動時の頸部筋力,咬筋,胸鎖乳突筋,板状筋の筋活動をMG装着の有無で比較した.〔結果〕MG装着により,頸部筋力および咬筋の筋活動量は全8方向で有意に増大した.また,胸鎖乳突筋の筋活動は主動作筋としての方向で有意に増大したが,板状筋はいずれの方向でも有意差は認められなかった.〔結語〕本研究から,MG装着が顎口腔領域を保護するだけでなく,頸部筋力の発揮にも有効であることが示唆された.
  • 竹内 誠貴, 工藤 卓人, 藤田 拓, 石川 良太, 宇井 秀斗, 遠藤 沙紀, 小山 千賀穂, 佐藤 榛花, 鈴木 里沙子, 森岡 奏子, ...
    2017 年 32 巻 4 号 p. 473-476
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕胸腰部回旋ROM-testに準拠した測定(以下,R-t準拠法)と胸郭から股関節の柔軟性評価が可能なWing-test変法(以下,W-t変法)を用いて,機能的残気量(以下,FRC)増加が体幹回旋可動性に及ぼす影響を明らかにする.〔対象と方法〕対象は若年健常者54名.FRCは安静呼気位を基準に2,000 ml容量のシリンダーを用いて500 ml,1,000 ml,1,500 ml,2,000 mlの空気を吸入,FRCを増加させ測定方法およびFRCを要因とした二元配置分散分析で検討した.〔結果〕有意な主効果と交互作用が認められた.W-t変法はR-t準拠法より可動域が大きく,FRCが1,000 ml以上増大すると可動域は減少し,W-t変法で顕著だった.〔結語〕FRCの増加により両テストとも,体幹回旋可動性が低下した.
  • 長谷川 智, 幸地 大州, 臼田 滋
    2017 年 32 巻 4 号 p. 477-481
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟入院患者における歩行自立判定のためのBalance Evaluation Systems Test(以下,BESTest),Mini-BESTest,Brief-BESTestの精度の検討を行うこと.〔対象と方法〕入院患者69名を対象に歩行自立判定のための各BESTestのカットオフ値を算出した.〔結果〕BESTest 72%(AUC 0.90,感度87.9%,特異度88.9%),Mini-BESTest 18/28点(AUC 0.84,感度85.7%,特異度78.1%),Brief-BESTest 14/24点(AUC 0.85,感度85.7%,特異度78.1%)であった.〔結語〕各BESTestはいずれも歩行自立判定における精度が高かった.
  • 橋本 広徳, 鈴木 哲, 石川 衛, 苅田 哲也, 松浦 晃宏
    2017 年 32 巻 4 号 p. 483-486
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕誘発筋電図によるH波を脊髄興奮性の指標とし,持続的伸張運動と動的反復運動が脊髄興奮性に与える影響を検討すること.〔対象と方法〕対象は,下肢に神経障害の既往がない健常成人男性14名とした.誘発筋電図を用い,安静時,持続的伸張運動を行う条件と動的反復運動を行う条件の3条件で,ヒラメ筋のH波を測定した.〔結果〕持続的伸張運動条件において安静時,運動後間で有意な差は認められなかった.動的反復運動条件は安静時に対し,運動後に有意な低下が認められた.動的反復運動条件における運動後のH波の振幅変化率は,持続的伸張運動条件に比べ,有意に低かった.〔結語〕本研究の動的反復運動条件では持続的伸張運動条件より有意に脊髄興奮性が低下することが示された.
  • 坂本 将德, 佐藤 三矢, 駒崎 卓代, 津田 隆史
    2017 年 32 巻 4 号 p. 487-491
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕認知症高齢者を対象とした集団レクリエーション介入を実施し,ランダム化比較試験を通じてBPSDの変化を検討した.〔対象と方法〕対象は,介護老人保健施設に入所中の認知症高齢者48名.対象者を無作為に2群へ割り付け,介入群(23名)に対しては1週間に2回の頻度で理学療法士と作業療法士が協働し,集団レクリエーション介入を3ヵ月間実施した.対照群(25名)では,介入群と同じ介入時間となるように同様の頻度と期間にて,介護職員によるレクリエーション介入を実施した.2群間の比較は二元配置分散分析を実施した.〔結果〕BPSDとQOLに関する測定項目で有意な交互作用が確認された.〔結語〕介護老人保健施設に入所中の認知症高齢者に対して集団レクリエーション介入を行えば,BPSDを軽減できる可能性が示唆された.
  • 朝倉 智之, 臼田 滋
    2017 年 32 巻 4 号 p. 493-496
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕地域在住高齢者のSit-to-Walk taskにおけるFluidity Index(FI)について,年齢および介護保険認定状況との関連を,標準的な臨床評価尺度との比較から検討することを目的とした.〔対象と方法〕地域在住の介護保険認定高齢者10人,健常高齢者9人を対象とした.群毎にFIおよび標準的臨床評価尺度を従属変数,年齢を独立変数とした回帰直線を求め,2群の回帰直線の傾きの差の検定を行った.〔結果〕FIの回帰直線の傾きは2群の差を認めたが,標準的臨床評価尺度では差を認めなかった.〔結語〕FIは標準的臨床評価尺度以上に加齢,機能・能力低下の影響を受けることが明らかとなった.
  • —計量テキスト分析を用いて—
    吉塚 久記, 玉利 誠, 本多 裕一, 光武 翼, 江越 正次朗, 大古場 良太
    2017 年 32 巻 4 号 p. 497-501
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法の臨床実習において,臨床実習教育者(以下,CE)が学生への動作分析の指導を行う上で問題と認識している要因を明らかにすることとした.〔対象と方法〕CE 64名に自由記述式の質問紙にて動作分析の指導上の問題を尋ね,計量テキスト分析を実施した.〔結果〕要因を示す特徴語との共起関係を描画してカテゴリー化した結果,学生の認知領域・精神運動領域・情意領域,CEの指導方法・指導方針,動作分析自体の課題特性が挙げられた.〔結語〕CEは動作分析の指導を行う上で問題が生じた際には,これらの各要因について検討し,学生に建設的な指導を行うことが重要と考える.
  • —筋力,関節位置覚,関節柔軟性に着目して—
    樋口 明奈, 本間 未来, 山本 望由, 田中 康雄, 濱野 礼奈, 江玉 睦明
    2017 年 32 巻 4 号 p. 503-507
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,月経周期における足関節機能の変化を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕対象者は,月経周期に乱れがない大学女子バレーボール部の学生6名とした.足関節底屈・背屈筋力は,角速度30°/秒と120°/秒の2条件で,等速性運動で測定し,足関節底屈・背屈筋力体重比を算出した.足関節位置覚は,足関節背屈-15°,0°,15°を設定角度として測定し,誤認角度を算出した.足関節柔軟性は,足関節最大背屈角度と足関節背屈20°のpassive torqueを測定した.〔結果〕各周期において足関節底屈・背屈筋力,足関節位置覚,足関節柔軟性に統計学的に有意な差は認められなかった.〔結語〕本研究の結果から,月経周期が足関節機能に影響を与えない可能性が示唆された.
  • 石橋 雄介, 西田 宗幹, 山田 和政
    2017 年 32 巻 4 号 p. 509-513
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕身体合併症を呈した精神科病棟入院患者を対象に,生活機能と精神機能に対する理学療法(PT)の有効性を検証した.〔対象と方法〕身体合併症に対してPTを実施した精神科病棟入院患者を対象に,理学療法開始時と終了時のBarthel IndexスコアおよびGlobal Assessment of Functioningスコアをカルテより収集した.〔結果〕両スコアともPT終了時で有意に高得点であった.〔結語〕身体合併症を呈した精神科入院患者に対するPTは,生活機能のみならず精神機能の改善も期待できることが示唆された.
  • —連想法と計量テキスト分析を用いて—
    玉利 誠, 谷口 隆憲, 松谷 信也, 吉塚 久記
    2017 年 32 巻 4 号 p. 515-519
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法学科1年次生が臨床実習に対して抱く感情とその理由について明らかにすることとした.〔対象と方法〕理学療法学科1年次生38名が「臨床実習」から連想する語の中から感情を表す語を抽出し,その理由を計量テキスト分析にて分析した.〔結果〕感情を表す語には「怖い」「きつい」「緊張」「大変」「難しい」「楽しい」「厳しい」「辛い」「不安」が抽出され,その理由についての共起ネットワークでは,8つのサブグループが示された.〔結語〕1年次生は臨床実習における学びにポジティブな感情を抱きつつも,実際の患者に関わるために技術や知識が必要であること,多くの仕事や課題を行うことや初めての環境に適応する必要性などについてネガティブな感情を抱いていると考えられた.
  • 鈴木 あかり, 金子 秀雄
    2017 年 32 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕地域在住高齢者の咳嗽力と呼吸,運動,口腔嚥下機能との関連性を検討する.〔対象と方法〕対象は65歳以上の地域在住高齢者143名とした.咳嗽力には咳嗽時最大呼気流量(CPF),呼吸機能には努力性肺活量(FVC),最大吸気圧(MIP),最大呼気圧,胸腹部可動性を測定した.運動機能には30秒椅子立ち上がりテスト,Timed Up and Go test,口腔嚥下機能にはオーラルディアドコキネシス,反復唾液嚥下テストを実施した.〔結果〕CPF低下の認められた16%の対象者は呼吸,運動,嚥下機能も低下していた.重回帰分析の結果,CPFの有意な独立変数はFVCとMIPであった.〔結語〕地域在住高齢者の16%はCPFが低下し,CPF低下予防には呼吸機能であるFVCとMIPを保つことが重要である.
  • 遠藤 佳章, 小野田 公, 久保 晃
    2017 年 32 巻 4 号 p. 527-530
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕異なる姿勢で,複数のローカル筋がどのように働いているのかを検討する.〔対象と方法〕対象は若年健常男性28名(年齢22.4 ± 1.9歳).第2,5腰椎部多裂筋(LM(L2),LM(L5)),脊柱起立筋(ES),腹横筋(TrA),内腹斜筋(IO),外腹斜筋(EO)の右側の姿勢別筋厚を超音波画像診断装置を用いて測定した.〔結果〕LM(L2)は臥位,座位,立位の順で有意に筋厚が増大した.LM(L5)は,臥位・座位より立位で有意に筋厚が増大した.ES,TrA,IOは臥位より座位・立位で有意に筋厚が増大した.EOの筋厚は主効果が認められなかった.〔結語〕姿勢の相違による体幹筋厚の変化は各筋により特徴が存在することが示唆された.
  • —主成分分析による検討—
    石坂 正大, 久保 晃, 金子 純一朗, 野村 高弘, 堀本 ゆかり, 韓 憲受, 貞清 香織, 黒澤 和生, 大村 優慈, 森田 正治, ...
    2017 年 32 巻 4 号 p. 531-536
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕円滑な就職活動の支援に向けて,理学療法(以下,PT)学生における就職決定要因を検討することとした.〔対象と方法〕対象は平成27年度PT学科学部4学年とし,アンケートの協力が得られた144名であった.〔結果〕就職決定因子のうち重要性の高いのは,PTの上司の理解,役職者のリハビリに対する理解,臨床での技術指導の充実であった.主成分分析の結果,5つの主成分が抽出され,人的地域的親和性,待遇,卒後教育環境,立地,自己実現に関する項目であると解釈できた.〔結語〕就職決定因子として,上司の理解による人間関係,および病院・施設での研修制度の充実が重要である.
  • 杉田 洋介, 伊藤 克彦, 高野 唯
    2017 年 32 巻 4 号 p. 537-541
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕廃用症候群患者の歩行能力回復に影響を及ぼす因子を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象とする廃用症候群の診断名がついた52例を退院時歩行自立群と非自立群に分類し,身体機能,認知機能,血液検査データなどの項目をもとに,多重ロジスティック回帰分析により歩行回復に影響する因子を抽出し,Cut-off値を算出した.〔結果〕膝伸展筋力,身体活動量,総蛋白値の3項目が自立歩行の関連因子として抽出された.各項目のCut-off値は,膝伸展筋力0.35 kgf/kg,身体活動量は9.9 METs・時/週,総蛋白値は6.4 g/dlであった.〔結語〕廃用症候群患者が再び自立歩行を獲得するには,下肢筋力,歩行やベッドからの立ち上がりなどの総身体活動量,静的栄養指標として総蛋白質などが関連していることが示唆される.
  • 辻 修嗣, 宮﨑 純弥
    2017 年 32 巻 4 号 p. 543-547
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕側方リーチテスト(以下,LRT)の再現性と,LRTとFunctional reach test(以下,FRT)および両上肢で行うFRT(以下,両FRT)との関連性について検証し,動的バランス評価の適応について検討することである.〔対象と方法〕健常成人男女21名とした.ファンクショナルリーチ測定器を用い,左右LRTと左右FRT,両FRTをそれぞれ測定し,LRTと両FRTの級内相関係数(ICC)を求めた.また,それぞれの関係について検証し,各リーチ距離の差を比較した.〔結果〕LRTのICC(1.3)は0.907,両FRTが0.977と高い再現性を認めた.LRT,FRT,両FRTはそれぞれ有意な相関があり,同時に身長との相関も認めた.身長を正規化した値では,LRTとFRTは各々左右間で高い相関を示したが,LRTとFRTおよび両FRTの間に相関は認めなかった.LRTとFRTの機能的特性として,LRTの左右対称性とFRTの左右非対称性を認めた.また,利き手の影響についてLRTにはなく,FRTでは有意な関連を認めた.〔結語〕LRTは高い再現性と左右対称性であることが示された.LRTとFRTは運動機能が異なった評価であり,側方への動的バランス評価を目的とする場合はFRTよりもLRTを使用した方が適切である可能性が示された.また動的バランス評価においては,LRTとFRTまたは両FRTのどちらも測定し,前方と左右側方の評価を行う必要があると思われた.
  • 北川 広大, 田口 湧, 戸谷 伸之
    2017 年 32 巻 4 号 p. 549-552
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕スマートデバイスを簡易な歩行解析や歩行改善システムに応用することを目指し,その基礎検討として,歩行時の歩行路面に対する足底面の高さが上肢の加速度に及ぼす影響をスマートフォンの加速度センサを用いて調べた.〔対象と方法〕健常な若年男性10名にトレッドミル上で「自由歩行」と「15 cm以上に足を高く上げる歩行」を指示し,それぞれの歩行中における前腕部の加速度をスマートフォンの加速度センサから測定した.〔結果〕10名中8名の被験者で「足を高く上げる歩行」における前腕部の加速度が有意に大きい値を示した.〔結語〕歩行中において,挙上する足の高さが高くなると上肢の加速度が大きくなる傾向がみられたため,個人ごとに上肢の加速度から足の相対的な高低を推定できる可能性が示された.
  • 眞田 祐太朗, 大澤 傑, 椎木 孝幸, 今高 康詞
    2017 年 32 巻 4 号 p. 553-557
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕人工膝関節全置換術(TKA)後1年までの大腿四頭筋およびハムストリングスの膝関節角度別等尺性筋力の推移を調査し,その推移を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕変形性膝関節症と診断され,TKAを施行した14名とした.調査期間は術前,術後3週,3ヵ月,6ヵ月,12ヵ月とした.筋力測定にはBIODEXを用いて,膝関節30°,60°,90°屈曲位におけるピークトルク体重比とH/Q比を算出した.〔結果〕大腿四頭筋筋力は,術前に比べ術後3週では60°および90°屈曲位で有意に低下し,術後12ヵ月では30°および60°屈曲位で有意に増加した.〔結語〕TKA後の大腿四頭筋筋力は膝関節90°屈曲位において低下し,回復も遅延することが示唆された.
  • 松田 涼, 隈元 庸夫, 世古 俊明, 三浦 紗世, 濱本 龍哉
    2017 年 32 巻 4 号 p. 559-562
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕座位と立位での体幹伸展運動時における腰部脊柱起立筋(以下,LES)と腰部多裂筋(以下,MF)の血液循環動態と筋活動量を検討し,腰痛に対する理学療法効果の筋生理学的根拠となる一知見を得ることである.〔対象と方法〕対象は健常成人男性15名とした.運動課題は座位と立位での体幹伸展運動とした.運動課題時におけるLESとMFの血液循環動態は,異なる体幹伸展角度の間で,ヘモグロビン量(Oxy-Hb,deOxy-Hb,total-Hb)の相対的変化と筋活動量を較した.〔結果〕座位ではLESとMFの,立位ではLESのOxy-Hbが角度を増すごとに増加した.〔結語〕座位と立位での体幹伸展運動は,Oxy-Hbの増加が期待されることから,阻血性腰痛の介入に有効である可能性が示唆される.
  • 木村 愛子, 内田 芙美佳, 鈴木 哲
    2017 年 32 巻 4 号 p. 563-567
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕介護職員に対する腰痛に関する情報提供が,破局的思考および腰痛予後に対する認知に与える影響,またその影響と腰痛の有無・程度との関連性を検討することとした.〔対象と方法〕対象は介護職員29人とし,腰痛に関する情報提供を講義形式の研修会にて行った.対象者を腰痛群と非腰痛群の2群に分け,介入前後間で評価項目の得点を比較した.〔結果〕腰痛予後に対する認知の得点は,腰痛群と非腰痛群のいずれも,介入後に有意に向上した.破局的思考の得点は,非腰痛群では介入後に有意に改善したが,腰痛群では有意な変化はみられなかった.〔結語〕介護職員に対し腰痛に関する情報提供を行うことで,腰痛のある者には破局的思考および腰痛予後に対する認知を,腰痛のない者には腰痛予後に対する認知を改善できる可能性が示唆される.
  • 鈴木 哲, 元廣 惇, 木村 愛子, 内田 芙美佳, 堀江 貴文, 橋本 広徳
    2017 年 32 巻 4 号 p. 569-572
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕学生の職業的アイデンティティの形成の程度を解釈する際に,Gritを考慮に入れる必要性があるかどうかを明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕専門学校の理学療法学科の学生85名を対象とし,質問紙にて,基本属性,医療系学生の職業的アイデンティティ尺度,日本語版Short Grit尺度(Grit-S)を調査した.医療系学生の職業的アイデンティティ尺度およびその下位因子の得点とGrit-Sの得点との間の関係を,Spearmanの順位相関係数にて検討した.〔結果〕Grit-Sおよびその下位因子の得点と,医療系学生の職業的アイデンティティ尺度およびその下位因子の得点との間に有意な正の相関がみられた.〔結語〕Gritは職業的アイデンティティに関連する可能性がある.
  • 岩井 信彦, 村尾 浩, 三浦 利之, 藤本 福美, 山口 史子
    2017 年 32 巻 4 号 p. 573-576
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕自宅から当院地域包括ケア病棟に入棟し,転帰先が自宅以外であった患者の特徴を明らかにすることとした.〔対象と方法〕2016年1月から同年7月末までに,自宅から本病棟に入棟した111人を対象とした.転帰先が自宅か自宅以外かの2群に分け,疾患名,年齢,性別,急性期病棟入院日数,入棟日数,リハ介入職種,リハ総単位数,1日あたりのリハ単位数,入・退棟時の排泄および移動動作能力を群間で比較した.〔結果〕非自宅群(8人)では自宅群(103人)に比べ入棟日数が長く,排泄および移動動作能力は入・退棟時ともに低かった.また疾患別では脳血管疾患が多かった.〔結語〕脳血管疾患であったり,入棟時の排泄および移動動作能力が低い場合には,自宅復帰が困難になる可能性が示唆された.
  • 森田 義満, 金子 秀雄, 岡 真一郎, 森田 由佳, 吉村 和代, 平田 大勝, 光武 翼, 井上 健, 横田 大樹, 稲毛 智仁
    2017 年 32 巻 4 号 p. 577-581
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕心臓超音波検査および足関節上腕血圧比(ABI)検査による評価と,心肺運動負荷試験(CPX)に基づく至適運動負荷量の関連を検討すること.〔対象と方法〕入院中の心疾患患者のうちCPX,心臓超音波検査およびABI検査を実施できた34名とした.至適運動負荷量と,心臓超音波検査による左室急速流入血流速度(E),僧帽弁輪部の拡張早期最大速度(e’),E/e’およびABIとの関連性を重回帰式により分析し,その推定精度を検証した.〔結果〕至適運動負荷量に対する独立決定因子は,E/e’とABIであった.重回帰式の調整済みR2は,0.365であった.〔結語〕入院期の心疾患患者において,至適運動負荷量は,E/e’およびABIによって推定できる可能性がある.
  • 柏原 杏子, 城所 哲宏, 山上 隼平, 宮下 政司
    2017 年 32 巻 4 号 p. 583-587
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕グラウンド・ゴルフ(以下,GG)実施者の移動機能および身体機能を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕地域在住高齢者508名を対象として,健康調査を実施した.〔結果〕男女ともに対照群(ORs:1.00)と比較してGG実施群は移動機能の低下が始まっている状態を示すロコモ度1に判定されるオッズ比が低く(男性:0.324,女性:0.315),男性において移動機能の低下が進行している状態を示すロコモ度2に判定されるオッズ比も低いことが明らかとなった(0.277).2ステップテストにおいても対照群と比較してGG実施群が高い値を示した.〔結語〕GG実施者は同年代の高齢者と比較してロコモ度1,2に判定されるリスクが低い.
症例研究
  • —幻肢運動を獲得することが奏功した症例,幻肢を消すことが奏功した症例—
    問田 純一, 内藤 卓也, 平賀 勇貴, 平川 善之
    2017 年 32 巻 4 号 p. 589-594
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕幻肢痛はその性質により病態が異なることが示唆されている.今回,異なる幻肢痛を呈した2症例に対して,幻肢痛の性質に応じて異なる介入を行った結果を報告する.〔対象と方法〕対象は下腿切断により自己受容感覚に関連する幻肢痛を呈した症例Aと上腕切断により皮膚受容感覚に関連する幻肢痛を呈した症例Bである.症例AにはMirror Therapyと幻肢の随意運動介入にて幻肢痛のコントロールを図り,症例Bには断端への感覚識別課題にて幻肢そのものの消失を図った.〔結果〕症例Aは幻肢の随意運動の獲得に伴い幻肢痛は消失した.症例Bは断端の感覚機能の改善に伴い幻肢の型が変化し,幻肢痛は消失した.〔結語〕今回の症例においては,幻肢痛の性質に応じて異なる介入を実施したことで,良好な結果が得られたと考える.
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