理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
29 巻, 5 号
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原 著
  • 反町 拓, 丸山 仁司
    2014 年 29 巻 5 号 p. 661-665
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法士養成専門学校において,学生の理学療法領域の研究に関する意識を把握することとした.〔対象〕理学療法士養成専門学校において理学療法研究法を受講した42名.〔方法〕「理学療法領域の研究」に関して,および「データ活用に関する基本的数学知識」に関して,選択式質問紙法(全6項目)と自由記述にて意見を抽出した.〔結果〕理学療法領域の研究に対する困難さを感じる学生が対象者の90%を占めたが,そのうち50%は卒業後も研究を行いたいとの希望を持っていた.多くの学生にはデータの活用に関する基本的数学知識の不足が認められた.〔結語〕養成専門学校においては,理学療法領域の研究の困難さを感じる学生が多く,克服に向け能力の事前把握や知識の補てんなどによる段階的な指導が必要である.
  • ─若年者との比較を通じて─
    貞清 香織, 屋嘉比 章紘, 木村 和樹, 石坂 正大, 久保 晃
    2014 年 29 巻 5 号 p. 667-669
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕体格栄養評価としてのbody mass index(BMI)に代わり,除脂肪指数(fat-free mass index:FFMI)が高齢者の強壮・虚弱を反映する指標となるかを検討することとした.〔対象〕若年男性34名(19.3 ± 0.4歳,±は標準偏差),活動性の高い高齢男性 22名(71.2 ± 3.6歳)とした.〔方法〕インピーダンス法の体成分分析装置を用いて計測される,身体組成を高齢者と若年者との間で比較した.〔結果〕活動性の高い高齢男性でも,BMI,脂肪指数は有意に高くなるが,FFMIは有意差を示さなかった.〔結語〕FFMIは,加齢による脂肪量の変化が影響しないため,体格栄養評価の指標の一つとなる可能性がある.
  • 小貫 睦巳
    2014 年 29 巻 5 号 p. 671-677
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕学習者主体の授業方法である当日ブリーフレポート方式授業を理学療法の講義形式の授業に取り入れ,教育手法の効果と現代の理学療法学生の特性を検証した.〔方法〕授業に参加した大学生43名,専門学校生56名のアンケート結果を基に宇田のデータと比較し,カテゴリカル主成分分析,テキストマイニングの手法を用い分析した.〔結果〕従来型の一斉授業と比べ,この方式の授業は理学療法学生の過半数が肯定的に捉えており,理学療法学生は真面目で自ら学ぼうという意識を持っているという特性が見られた.〔結語〕毎回のレポート課題を通して学生に働きかける事により,個々に学習意欲の喚起や間違いの修正が可能な点は従来型の一斉授業にない利点といえ,講義形式の授業に取り入れる事で学生の動機付けを高める事が可能である事が示された.
  • 小沼 佳代, 島崎 崇史, 矢作 友里, 竹中 晃二
    2014 年 29 巻 5 号 p. 679-682
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕退院後の脳卒中患者における社会的活動と意図の関連性を明らかにする.〔対象〕脳卒中患者45名.〔方法〕退院直前(T1),退院3ヵ月後(T2),退院6ヵ月後(T3)に,社会的活動実施意図尺度(I-SAS),および社会的活動尺度(SAS)を用いて調査を行った.I-SASの変化は一元配置の分散分析,SASの変化は対応のあるt検定,I-SASとSASの関連性は階層的重回帰分析を用いて検討した.〔結果〕T2からT3にかけて,社会的活動性が低下していた.T2の社会的活動は,T1の意図によって予測されるものの,T3の社会的活動はT2の意図では予測できないことが示された.〔結語〕退院6ヵ月後には社会的活動が低下し,intention-behavior gapが生じていることが示唆された.
  • 三浦 和, 勝平 純司, 黒澤 和生
    2014 年 29 巻 5 号 p. 683-687
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ヒラメ筋の痙縮抑制に効果的な圧迫強度と時間を明らかにすることである.〔対象〕地域在住の慢性期の脳血管障害片麻痺者18名.〔方法〕H波,M波の閾値と最大値の測定をヒラメ筋に対し軟性サポーターを用いた5つの強度(0,20,30,40,50 mmHg)と3つの時間(1,3,5分間)の組み合わせで施行した.臨床で行われているヒラメ筋の6つの痙縮評価も実施した.〔結果〕麻痺側の脊髄運動神経興奮性は,非麻痺側と比較し有意な亢進を示し,これとクローヌス数の間に有意な相関が認められた.40 mmHgで5分と30 mmHgで3分での圧迫により麻痺側の脊髄運動神経興奮性は他の組み合わせと比較して有意に低値をみせた.〔結語〕これらの強度と時間の組み合わせでの圧迫は,ヒラメ筋の痙縮抑制の効果を持つ.
  • 正保 哲, 柿崎 藤泰
    2014 年 29 巻 5 号 p. 689-692
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕高強度レジスタンストレーニング前後の循環動態を把握するために,高強度の運動前後の一回拍出量,末梢血管抵抗,圧受容器反射感受性の変化を明らかにすることとした.〔対象〕運動習慣の無い健常男性11名とした.〔方法〕臥位下肢伸展挙上にて最大随意筋力の80%の負荷で10回実施する運動課題を設定し,運動前後の循環動態を分析し,運動前後の一回拍出量,末梢血管抵抗,圧受容器反射感受性を比較検討した.〔結果〕収縮期血圧とLF/HFに運動後の有意な低下を,圧受容体反射感受性に有意な上昇が認められた.全末梢血管抵抗には,運動後1~2分での有意な低下がみられた.〔結語〕今後は,TPRの低下による末梢血管の弛緩作用と循環血液量の増加が認められ,交感神経活動亢進が持続しない運動負荷強度の設定が必要である.
  • 越前谷 友樹, 秋月 千典
    2014 年 29 巻 5 号 p. 693-697
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,転倒患者の特異的なバランス障害因子を明らかにし,再転倒を防ぐ上で効果的な理学療法介入の確立の一助とすることである.〔対象〕当院に入院している転倒により受傷した整形外科疾患患者13名とした.〔方法〕転棟時と退院時にmini-BESTestとBBSによるバランス能力評価を行い各要素の得点率を比較した.〔結果〕mini-BESTestのすべての項目で退院時に有意な得点率の向上が認められた.バランス要素間では歩行安定性と姿勢反応において他の項目より有意に得点率が低かった.〔結語〕転倒患者は歩行安定性と姿勢反応がバランス障害因子として抽出された.今後はこれらへの効果的な介入方法の確立が必要である.
  • ─肩甲帯の相対的回旋角速度に着目して─
    片桐 創太, 中釜 大輔, 乙戸 崇寛, 澤田 豊, 赤坂 清和
    2014 年 29 巻 5 号 p. 699-702
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肩甲帯と骨盤帯の回旋角速度の変化が反復投球によりどのように変化するか検討した.〔対象〕上下肢に整形外科疾患を有しない大学野球部員8名.〔方法〕投球数を60球とし,この投球の前半と後半のフォームを水平面よりハイスピードカメラを用いて撮影した.画像よりacceleration期の肩甲帯と骨盤帯の回旋角度,回旋角速度,およびステップ長を算出した.〔結果〕投球の後半で球速が維持または上昇した群では,球速が低下した群と比較して肩甲帯の相対的回旋角速度の変化が少なかった.〔結語〕反復投球時では投球速度を維持するため,無意識に肩甲帯の相対的回旋角速度の変化を最小限に調整している可能性が示唆された.
  • 齋藤 茂樹, 吉田 英樹, 前田 貴哉, 佐藤 菜奈子, 佐藤 結衣, 岡本 成諭子, 一戸 のどか, 小山内 太郎, 成田 和生, 原 幹 ...
    2014 年 29 巻 5 号 p. 703-707
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ストレッチングの前処置としての骨格筋へのキセノン(Xe)光照射の有効性を検討することとした.〔対象〕健常者13例の左右の下腿三頭筋とした.〔方法〕安静腹臥位での10分間の左右の下腿三頭筋へのXe光照射(Xe-LITS)およびXe-LITSを伴わない10分間の安静腹臥位保持(コントロール)を日を改めて実施し,それぞれの実施前後での足関節背屈角度と下腿三頭筋の筋硬度を検討した.〔結果〕下腿三頭筋の筋硬度については,Xe-LITSおよびコントロール実施前後での有意な減少が認められたが,足関節背屈角度の有意な増加を引き起こし得たのはXe-LITSのみであった.〔結語〕本研究結果は,骨格筋へのXe光照射のストレッチングの前処置としての有効性を示す.
  • 佐藤 結衣, 吉田 英樹, 佐藤 菜奈子, 齋藤 茂樹, 前田 貴哉, 成田 大一, 岡本 成諭子, 一戸 のどか, 小山内 太郎, 成田 ...
    2014 年 29 巻 5 号 p. 709-713
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ストレッチングの前処置としての神経筋電気刺激(NMES)の有効性を検討することとした.〔対象〕健常者16名とした.〔方法〕ハムストリングスの伸張性向上を意図したIa抑制およびIb抑制に基づくNMES,NMESを実施しない介入(それぞれ,Ia-NMES,Ib-NMES,コントロール)を実施し,前後でのハムストリングスの筋硬度と長座位体前屈距離の変化の有無を条件間で比較した.〔結果〕ハムストリングの筋硬度の有意な減少を引き起し得たのはIb-NMESのみであった.一方,長座位体前屈距離については,Ia-NMESとIb-NMESの両者が,コントロールで出現した有意な減少を予防し得た.〔結語〕本研究結果は,NMESがストレッチングの前処置として有効であることを示唆する.
  • ─多施設共同研究─
    出口 直樹, 中嶋 正明
    2014 年 29 巻 5 号 p. 715-719
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕変形性膝関節症(膝OA)患者を対象に,推奨された身体活動の運動習慣に影響を及ぼす要因を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は,多施設共同で実施し50歳以上の膝OA患者で,疼痛および心理的要因に関するアンケートを300部配布し調査した.〔結果〕回答数は120名(運動非定着群64名,運動定着群56名)で,統計学的処理にて交絡因子を補正した結果,運動非定着群と運動定着群の間の関連因子としてWOMAC機能,運動の自己効力感が抽出され,疼痛との関連はなかった.〔結論〕推奨された身体活動の運動習慣の継続には,疼痛や心因的疼痛の影響よりも身体機能の低さや運動への興味のなさや運動を行う自信の低下が関連しているかもしれない.
  • ─Motor Assessment Scaleを中心として─
    佐藤 惇史, 藤田 貴昭, 山本 優一, 潮見 泰藏
    2014 年 29 巻 5 号 p. 721-724
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ADL自立度の低い脳卒中患者において,motor assessment scale(MAS)がADL予後予測の有用な指標となり得るか否かを検討した.〔対象〕入院時functional independent measure(FIM)が80点以下であった脳卒中患者14名.〔方法〕退院までのFIM利得を目的変数,入院1ヵ月までのMAS,Berg balance scale,stroke impairment assessment set(SIAS),日常生活機能評価の得点を説明変数とする単回帰分析を行った.〔結果〕有用な変数として,MAS 1ヵ月時と1ヵ月利得,SIAS 1ヵ月時が選択された.〔結語〕中等から重度脳卒中患者では,MASとSIASがADLの予後予測に有用である可能性がある.
  • 西尾 大祐, 前島 伸一郎, 大沢 愛子, 平野 恵健, 木川 浩志, 丸山 仁司
    2014 年 29 巻 5 号 p. 725-730
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕在宅復帰に向けたリハビリテーション(リハ)の指針を得るために,在宅高齢脳卒中患者の日常生活活動(ADL)に影響する因子を明らかにすることとした.〔対象〕在宅復帰した75歳以上の脳卒中患者24名とした.〔方法〕患者背景,入院経過,家族参加型リハの有無,退院時の全般的な神経症候およびADL,退院6ヵ月後の外来リハ頻度,自主訓練頻度およびADLを評価した.退院6ヵ月後のADLを従属変数,その他の評価項目を独立変数として重回帰分析を行った.〔結果〕抽出された評価項目は在院日数,家族参加型リハ,性別,退院後自主訓練頻度であった.〔結語〕実践的な患者家族指導を含む集中的な訓練により速やかに在宅生活へ移行させ,自主訓練を継続させることが,患者に自立度の高い在宅生活の維持をもたらすと考えられる.
  • 中越 竜馬, 武政 誠一, 南場 芳文, 森岡 寛文, 雄山 正崇, 中山 可奈子
    2014 年 29 巻 5 号 p. 731-734
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕在宅高齢者の介護保険サービス利用状況を明らかにすることとした.〔対象〕居宅介護支援事業所を利用している要介護認定者85名とした.〔方法〕ケアプラン実施記録票をもとに,介護保険サービスの利用状況に関する調査を実施した.〔結果〕サービス利用率は,先行研究と比べ高い傾向にあったこと,軽介護群と比べ重介護群の方が,福祉用具の使用および通所での個別リハビリテーションの利用における人数が多くなることが判明した.〔結語〕要介護度が高くなるにつれ,日常生活に対する介助の補助を目的にした福祉用具の利用とリハビリテーションの必要性が高まることが示唆される.
  • ─無作為化対照研究─
    伊藤 一也, 蒲田 和芳
    2014 年 29 巻 5 号 p. 735-738
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ATM®2を用いたエクササイズが体幹・股関節に与える効果を明らかにすることを目的とした.〔対象〕体幹の柔軟性に劣る健常成人男性20名を対象とし,ATM群とコントロール群に無作為に割付けた.〔方法〕ATM群はATM®2にて骨盤を固定した状態で最大努力の体幹屈曲運動を行い,コントロール群は立位姿勢で脱力状態を保ちながら体幹屈曲運動を行った.介入前後で指床間距離(FFD)と股関節屈曲可動域を測定し,各群における変化量を比較した.〔結果〕コントロール群と比較して,ATM群では有意にFFDが増加した.股関節屈曲可動域に有意差は認められなかった.〔結語〕柔軟性が低下した健常成人男性において,ATM®2を用いたエクササイズは,前屈ストレッチングと比較してFFDを増加させる効果がある.
  • ─鹿児島市における二次予防事業の統計分析─
    園田 真弓, 吉元 洋一, 島田 裕之
    2014 年 29 巻 5 号 p. 739-743
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕当研究は,二次予防事業の効果および評価方法を,身体面,精神面および生活面から検証した.〔対象〕鹿児島市の地域在住高齢者232名(平均年齢,76.7 ± 5.8歳).〔方法〕運動介入を週2回,計24回行い,運動機能検査,アンケート調査および基本チェックリストによる調査を介入前後,1年後にアンケート追跡調査を行った.それらの結果を対応のあるt検定およびWilcoxonの順位和検定にて分析した.〔結果〕運動機能検査,精神面および生活面において有意な向上を示した.〔結語〕多角的側面への運動効果が統計上示されたが,より明確な効果判定の指標として,5 m歩行時間と開眼片脚立位を用いた具体的到達目標値の検討が今後の課題に残った.
  • ─浜田市旭町健康づくりプロジェクト─
    木下 勝範
    2014 年 29 巻 5 号 p. 745-749
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕対象地域の中高年者に「運動」「音楽」を用いた健康教室を開催し,参加頻度による気分の変化を比較した.〔対象〕音楽療法教室群は,58名(67.4歳 ± 9.1),運動支援教室群は,57名(67.5歳 ± 9.0)であった.〔方法〕それぞれ月に1回,年間10回の健康教室を開催した.全ての教室開催時の教室前後に日本語版Profile of Mood States短縮版を行い,教室参加者は参加頻度に応じて「低頻度参加群」「高頻度参加群」に分類した.〔結果〕POMSの下位尺度の項目において低頻度参加群及び高頻度参加群のそれぞれに有意差を認め,また健康教室によって有意差を認める項目に違いが生じていた.〔結語〕教室の種別や参加頻度によって気分の変化に違いが生じることが示された.
  • 後藤 亮平, 田中 直樹, 渡邉 大貴, 金森 毅繁, 柳 久子
    2014 年 29 巻 5 号 p. 751-758
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕廃用症候群入院患者の特性,またADLの回復に影響する要因を検討した.〔対象〕廃用症候群のためリハビリテーションの指示が出された患者とした.〔方法〕退院時のFIM運動項目の得点から初期評価時FIM運動項目の得点を引いた値(FIM利得)を,中央値で2群に分類した.多重ロジスティック回帰分析を用いて,ADL向上に影響する要因を検討した.〔結果〕入院前FIM運動項目,膝伸展筋力,股関節屈曲可動域,肺炎の有無の4因子に,FIM利得との有意な関連が認められた.〔結語〕廃用症候群入院患者においては,入院前FIM運動項目,膝伸展筋力・股関節屈曲可動域といった身体機能,また肺炎の有無が,入院期間中のADL向上に影響する事が示唆された.
  • 福山 勝彦, 福山 ゆき江, 山崎 裕美, 芳野 悦子, 鎌田 幸恵, 木村 真弓
    2014 年 29 巻 5 号 p. 759-763
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕傾斜板を利用する運動調節能力を用いた足趾運動覚の評価法における信頼性を確認すること,この方法により年代および,利き足と非利き足の差を検出すること.〔対象〕18~89歳の健常男女122名とした.〔方法〕傾斜板(DYJOCボード・プラス)を前後方向にのみ動くようにし,設定された課題を足趾の運動のみで行ない,運動調節能力を評価した.〔結果〕この評価は,高い信頼性が確認された.高齢者の運動調節能力は他の年代に比べて有意に低く,さらに,その非利き足では利き足に比べ有意に低かった.〔結語〕この評価法は,足趾の運動覚を評価する一手段として用いることが可能であると考えられる.また,高齢者においては,左右の運動覚のバランスを整えることが重要である.
  • 柚原 千穂, 笠原 敏史, 齊藤 展士, 高橋 光彦, 吉田 美里
    2014 年 29 巻 5 号 p. 765-769
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法で用いられるスクワット動作における加齢の影響を重心変化から明らかにする.〔対象〕健常高齢者19名(平均70.5歳)を60歳代と70歳代の群に分けた.〔方法〕三次元動作解析装置を用い,閉眼スクワット動作時の重心の聴覚刺激からの反応時間,前後,左右,垂直方向の各最大変位,下方最大速度を求めた.〔結果〕重心反応時間は年代間で差は認められなかった.70歳代の下方最大変位および速度は60歳代に比べて有意に低下し,前後方向最大変位が増大する傾向であった.〔結語〕高齢者のスクワット動作は浅く,ゆっくりなることが明らかとなった.また,矢状面上での重心運動が加齢によって影響される可能性が示された.高齢者への健康増進プログラムや理学療法でスクワット動作を行う時,加齢の影響を考慮する必要がある.
  • 小林 巧, 山中 正紀, 神成 透, 堀内 秀人
    2014 年 29 巻 5 号 p. 771-774
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)後早期の姿勢移行課題時の筋活動パターンについて調査し,姿勢制御機構について理解することとした.〔対象〕術後4週のTHA患者9名とした.〔方法〕片脚立位動作を視覚条件(開眼および閉眼)と測定肢条件(術側および非術側)の下で行わせ,筋電図を用いて測定される下肢筋の筋活動開始時間を各条件間で比較した.〔結果〕大腿二頭筋の筋活動開始時間は開眼および閉眼条件ともに,非術側に比べ術側で有意に遅延した.また,長内転筋の筋活動開始時間は閉眼条件でのみ非術側に比べ術側で有意に早かった.〔結語〕THA患者は術側と非術側で異なる戦略を用いて姿勢安定性を図っている可能性がある.
  • ─拡散テンソルイメージング研究─
    玉利 誠, 宇都宮 英綱, 高橋 精一郎
    2014 年 29 巻 5 号 p. 775-778
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕拡散テンソル画像(DTI)を用い,嚥下に関係する脳領域と反復唾液嚥下テスト(RSST)の関連性を明らかにすることとした.〔対象〕年齢27~75歳の右利きの健常成人48名(男性37名,女性11名)とした.〔方法〕MRI (1.5テスラ)を用いてDTIを撮像し,f-MRI研究により嚥下に関係するとされている脳領域を関心領域(ROI)とした.各ROIの拡散異方性値とみかけの拡散係数(ADC)を計測し,これらとRSSTとの関連性をSpearmanの順位相関係数により解析した.〔結果〕RSSTと左側の島のADC値との間に負の相関が認められた.〔結語〕左側の島は嚥下時の感覚運動を統合し,随意的かつ連続的な嚥下に関与している可能性が示唆される.
  • ─家族の意向を踏まえた検討─
    杉浦 徹, 櫻井 宏明, 杉浦 令人, 岩田 研二, 木村 圭佑, 坂本 己津恵, 松本 隆史, 金田 嘉清
    2014 年 29 巻 5 号 p. 779-783
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕回復期リハビリテーション病棟退院時に移動手段が車椅子となった脳卒中患者に求められる自宅復帰条件を検討すること.〔対象〕移動手段が車椅子の脳卒中患者で,転帰先が自宅もしくは施設・療養病床となった68名とした.〔方法〕自宅群(28名)と施設群(40名)を群間比較し,ロジスティック回帰分析にて転帰先因子を抽出した.また,入院時に家族が想定した転帰先と実際の転帰先の関係を分析した.〔結果〕ロジスティック回帰分析では「食事」と「トイレ動作」が転帰先因子として抽出された.また,入院時の転帰先意向は最終的な転帰先に反映される傾向がみられた.〔結語〕移動手段が車椅子での自宅復帰条件には「食事」と「トイレ動作」が求められ,患者の家族とは入院当初から自宅復帰に向けた展望の共有が重要となる.
  • 谷澤 真, 増田 陽子, 飛永 敬志, 宮崎 千枝子, 齊藤 孝道, 村田 健児, 大関 覚
    2014 年 29 巻 5 号 p. 785-788
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕筋活動量の観点から効果的な腓骨筋トレーニング方法を明らかにすること.〔対象〕健常成人女性44名88足とした.〔方法〕表面筋電図を用いて,セラバンドを用いた外返し抵抗運動(対照群),calf raise(calf raise群),立位による外反位での母趾球荷重運動(外反位母趾球荷重群)時の長腓骨筋の筋活動を計測し,これらの群間で比較した.〔結果〕長腓骨筋の筋活動量は外反位母趾球荷重群,calf raise群,対照群の順に高値を示し,すべての群間に有意差が認められた.〔結語〕立位による外反位での母趾球荷重運動はセラバンドを用いた外返し抵抗運動よりも効果的な腓骨筋トレーニング方法である.
  • 五味 雅大, 丸山 仁司, 菅沼 一男, 五味 朋子, 佐野 徳雄
    2014 年 29 巻 5 号 p. 789-792
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕横歩き歩行時間が動的バランス能力の指標として利用できるかについて,再現性の検討,また既存のバランス指標との比較検討を目的とした.〔対象〕屋外独歩可能な65歳以上の高齢者26名(男性8名・女性18名).〔方法〕横歩き歩行時間,開眼片脚立位保持時間,timed up and go test(TUG)の3項目を測定した.〔結果〕左右横歩き歩行時間のICC(1,1)は高値を示した.横歩き歩行時間とTUGとの間に正の強い相関が認められた.〔結語〕測定の再現性は良好であった.また,動的バランス指標として信頼性の高いTUGとの相関が強く認められたことから,横歩き歩行時間が動的バランスの指標として用いることができる可能性が示された.
  • 福尾 実人, 田中 聡, 大田尾 浩
    2014 年 29 巻 5 号 p. 793-797
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,地域在住高齢者の階段昇降動作が運動機能と活動量・心身機能に影響を及ぼす因子を検討した.〔対象〕65歳以上の地域在住高齢者37名とした.〔方法〕対象者を階段昇降自立群と階段昇降非自立群に分け,運動機能と活動量・心身機能を測定し,比較検討した.〔結果〕階段昇降非自立群では階段昇降自立群と比べ,life-space assessment(LSA),fall efficacy scale(FES),握力,連続歩行距離,主観的健康感,過去1年間の転倒経験の有無が有意に低い値を示した.〔結語〕本研究結果から階段昇降動作の評価は,高齢者の要支援・要介護への早期発見および予防につながる可能性があることが示唆された.
  • ─Closed Kinetic Chain運動での腱板筋活動に注目して─
    南場 芳文, 藤井 瞬, 大谷 啓尊, 井上 由里, 上杉 雅之, 武政 誠一, 宮本 重範, 弘津 貴章, 田中 日出樹
    2014 年 29 巻 5 号 p. 799-803
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕上肢挙上位におけるclosed kinetic chain(以下,CKC)運動が腱板筋の筋活動に及ぼす効果を明らかにし,腱板筋の機能回復に有効な徒手抵抗による運動方法を検証することである.〔対象〕健常な男女29名(平均年齢21.5 ± 4.7歳)の右29肩に対して行った.〔方法〕肩甲骨面上での拳上150°または,120°及び,外転位,下垂位にて棘下筋,三角筋(中部線維),僧帽筋(上部線維)の徒手抵抗に対する筋活動を積分筋電法(5秒間)にて計測した.〔結果〕肩甲骨面上での挙上150°,体重比5%の徒手的な負荷を用いたCKC運動は,棘下筋の随意最大収縮の約30%の筋活動を認めた.〔結語〕肩関節挙上位でのCKC運動は棘下筋の理学療法に有効である.
  • 齋藤 孝義, 丸山 仁司, 菅沼 一男, 鈴木 知也, 佐野 徳雄, 岩瀬 洋樹
    2014 年 29 巻 5 号 p. 805-808
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,座位での連続底背屈運動テストを転倒予測として用いることができるのか検証することを目的とした.〔対象〕対象者は65歳以上の高齢者50名とした.〔方法〕転倒群と非転倒群に分け,連続底背屈テスト,timed up & go test,functional reach test,5 m全力歩行テスト,立位つま先テストを評価した.その後,転倒と関係についてロジスティック回帰分析を用いて検討した. 〔結果〕2群間で全ての運動機能に差が認められた.ロジスティック回帰分析の結果,転倒の有無に影響する変数として底背屈テスト,立位テストが選択された.〔結語〕連続底背屈テストは座位で行なうことができ,安全,簡便に理学療法士以外でも実施できる転倒予測指標として有益であると考えた.
  • ─単位時間軌跡長による評価─
    米田 浩久, 鈴木 俊明
    2014 年 29 巻 5 号 p. 809-813
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究ではバランスボール上座位での下手投げを検定課題とした.学習効果のある運動課題設定を目的に,全習法と2種の分習法について単位時間軌跡長(LNG/T)をもとに検討した.〔対象〕健常大学生36名を無作為に3群に分類した.〔方法〕A群はボール上座位を保持しながら非利き手での投球動作を学習した.B群ではボール上座位学習後に投球動作,C群では投球動作学習後にボール上座位の学習を実施した.学習前後に検定課題を1回実施し,各群のLNG/Tを測定した.〔結果〕群内・群間比較ともB群で有意なLNG/Tの減少が認められた.〔結語〕本研究ではボール上座位を先に学習した群でLNG/Tの有意な減少と良好な学習成績が認められた.以上より,動作時の姿勢をはじめに学習する運動課題の設定が重要である.
  • 旭 竜馬, 藤田 博曉, 新井 智之, 丸谷 康平, 中濱 正利, 前原 邦彦
    2014 年 29 巻 5 号 p. 815-819
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕近年重要視されているにもかかわらず,QOLに関わる因子を示す報告は少ないことから,慢性腰痛のQOL評価尺度に関わる項目と評価法の違いについて検討した.〔対象〕介護老人保健施設を通所利用している慢性腰痛を有する高齢者27名とした.〔方法〕QOL評価にはRDQとJLEQを用い,痛みの評価としてVASにて腰痛の程度を評価した.さらに日常生活動作能力調査票,各運動機能を測定した.〔結果〕重回帰分析によりRDQに対して膝伸展筋力と荷物運搬動作,JLEQに対してVASと荷物運搬動作が選択された.〔結語〕慢性腰痛を有する高齢者は荷物運搬動作がQOLに関わる一つの項目として挙げられた.さらにRDQは腰痛以外の項目も反映され,JLEQはより腰痛に特化した評価が行えると考えられる.
症例研究
紹 介
  • 朴 聖章, 廣瀬 将士
    2014 年 29 巻 5 号 p. 835-839
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    〔目的〕転倒により骨盤骨折を受傷し自宅療養中に両腓骨神経麻痺を合併した珍しい経過をたどった症例への理学療法を経験したので,その経過に考察を加え紹介する.〔対象〕年齢71歳,身長160 cm,体重45 kg,体格痩せ型の女性であった.既往歴に糖尿病があり,意識レベルの低下や精神疾患の症状は認めなかった.〔方法〕足部機能を弾性包帯で補い工夫しながら早期荷重位にて理学療法を実施した.〔結果〕介入3ヵ月で体幹・下肢の筋力が2から3~4レベルへと,足背屈筋力は右2・左1が右4・左2レベルへと増強し,軽介助を要する歩行器歩行から見守りを要する杖歩行に移行することが可能となった.〔結語〕廃用性の筋力低下と両腓骨神経麻痺の問題から改善には時間を要する症例であった.
総 説
  • 玉利 誠, 宇都宮 英綱
    2014 年 29 巻 5 号 p. 841-845
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル フリー
    近年,拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging; DTI)や拡散テンソルトラクトグラフィー(diffusion tensor tractography; DTT)を用いて神経線維を可視化し,定量的に評価することが可能となった.本稿ではDTIとDTTの原理について概説するとともに,錐体路と上縦束のDTTについて先行研究を紹介した.錐体路のDTTは脳卒中患者の運動機能の予後予測の一手段として有用であり,上縦束のDTTは半側空間無視の症状を理解する一助となると考えられる.その一方で,DTTをリハビリテーションに応用する際には,MRIのボクセルサイズやテンソルモデルの問題をはじめ,関心領域の設定に関する恣意性の問題などに留意する必要がある.
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