理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
35 巻, 3 号
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原 著
  • 飯島 進乃, 福田 圭佑, 原 毅, 金子 純一朗, 丸山 仁司
    2020 年 35 巻 3 号 p. 309-313
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕周術期消化器がん患者を対象に,パンフレットでの術前運動プログラム提示の効果を6分間歩行距離(6MWD)に着目して検証する.〔対象と方法〕消化器がん患者28例に12種目の運動を提示,6MWDを含む機能評価を初回(運動導入前),術前(運動終了時),術後に実施した.初回から術前の6MWDの変化で改善,維持,低下の3群に分けて評価項目を比較した.〔結果〕10例が改善群に該当した.維持・低下群で初回を基準とした術後6MWDが有意に低下したが,改善群では有意差がなかった.改善群と比較して維持・低下群で有意に術前の体重が減少した.〔結語〕当院での術前運動プログラムは,一部の消化器がん患者で術後6MWD低下の予防に効果があったが,体重減少に留意する必要性が示唆された.

  • 田尻 后子, 霍 明, 曽我部 美恵子, 岩崎 朱美, 四方 早子, 丸山 仁司
    2020 年 35 巻 3 号 p. 315-319
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕中高年女性において尿失禁が日常生活のQOLに与える影響について明にすることとした.〔対象と方法〕自立生活している40歳以上の女性262人(56.1 ± 10.0歳),排尿状態における日常生活への影響について,①属性,②排尿に関すること,③日本語版IIQ(Incontinence Impact Questionnaire)質問用紙に無記名自己記入式による調査を実施し,多変量解析を行った.〔結果〕尿失禁ありは,111人(42.4%),以前に尿失禁の経験ありは,39人(14.9%),尿失禁なしは,112人(42.7%)であった.尿失禁のタイプは,腹圧性尿失禁が62名(55.9%),切迫性尿失禁が13名(11.7%),混合性尿失禁が36名(32.4%)であった.ロジステック回帰分析では,年齢とIIQの7項目「Q5.歩く・泳ぐ・スポーツでからだを動かす」,「Q11.地域の集会に行く」,「Q19.どんな服装をするか」,「Q30.恥ずかしい思い」(p<0.01),「Q6.娯楽(映画・コンサート等)を楽しむ」,「Q8.車やバスで家から30分以上の場所へ外出する」,「Q23.臭わないか,という心配のために活動が制限される」(p<0.05)の合計8項目が抽出された.因子分析では,因子1≪日常の生活行動≫,因子2≪余暇行動≫,因子3≪気がかりな対人行動≫の3因子が抽出され,Cronbachのα係数は,0.975であった.〔結語〕尿失禁を経験している中高年女性は,羞恥心などの心理的な不安を持ちながら基本的生活や対人関係,社会活動においてQOLに影響を与えていることが示唆された.

  • 柴田 聡, 竹村 雅裕
    2020 年 35 巻 3 号 p. 321-327
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究の目的は非予測的カッティング動作時の関節角度,モーメント,筋活動に大腿骨前捻角が与える影響を検討することとした.〔対象と方法〕対象者は大学女子選手15名とし,大腿骨前捻角はCraig’s testで測定した.課題動作は,30 cm台からの非予測的カッティング動作とした.関節角度・モーメント・筋活動と大腿骨前捻角の相関係数を算出した.〔結果〕Craig’s testによる大腿骨前捻角の平均値は11.9 ± 2.6°であった.大腿骨前捻角と膝関節外反角度の最大値および変化量の間に有意な負の相関を認めた.〔結語〕大腿骨前捻角が大きいと膝関節外反角度は小さくなった.非予測的なカッティング動作時の膝関節外反角度に影響を与える要因をさらに検討する必要がある.

  • 大沼 亮, 星 文彦, 松田 雅弘, 神野 哲也
    2020 年 35 巻 3 号 p. 329-333
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕高齢者の歩行開始における予測的姿勢調整(APAs)の体幹運動特性について検証した.〔対象と方法〕対象は若年成人10名と高齢者10名とした.重心動揺計,表面筋電計,加速度計を用い,歩行開始時の体幹運動を計測した.筋電図は左右の中殿筋と脊柱起立筋の4筋を導出筋とし,加速度計は頸部(C7),腰部(L3),骨盤(S1)に貼付した.〔結果〕高齢者では足圧中心の動き始めに先行して立脚側脊柱起立筋の活動を認めたが,若年成人では認めなかった.C7からL3を引いた差の値(dCL)の比較において,若年成人では遊脚側方向へdCLが変化し,高齢者では立脚側方向への変化がみられた.〔結語〕高齢者の歩行開始において立脚側脊柱起立筋の筋活動と立脚側方向への上部体幹の加速度の変化が特徴であった.

  • ─荷重変化特性に着目して─
    平野 博文, 山本 澄子
    2020 年 35 巻 3 号 p. 335-339
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
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    〔目的〕座位上肢リーチ動作の際の重心移動・殿部~下肢の床反力や胸郭~骨盤角度を運動学・運動力学的に分析し,その特性を明確にすることである.〔対象と方法〕若年健常者20名とした.座位姿勢で前方方向へ右手を伸ばす課題を行った.開始姿勢から目的物把持姿勢までの重心位置・床反力上下成分・体幹角度や骨盤角度の変化量を計測した.〔結果〕目的物の方向へ重心移動を行っていたが,床反力は非リーチ側の殿部へ留めて動作を行うことがわかった.角度の変化量では胸郭角度は,前傾・右側方傾斜・左回旋,骨盤角度は,前屈・右側方傾斜・左回旋,骨盤胸郭相対角度は前傾・右側方傾斜・左回旋とほとんどが共通した結果となった.〔結語〕健常者の前方リーチ動作は,非リーチ側殿部の床反力変化量を残存させながらそれらを基盤とし,動作戦略が図られることが示唆された.

  • 和田 太成, 鈴木 啓介, 黒澤 和生
    2020 年 35 巻 3 号 p. 341-345
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
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    〔目的〕膝蓋下脂肪体(IFP)の変形と膝関節痛の関係を検討する前段階として,健常若年者の膝関節運動(0~45°)に伴うIFPの形態変化を調べた.〔対象と方法〕健常若年者23名を対象に,超音波画像診断装置を用いて膝伸展位,15°,30°,45°屈曲位でのIFPの遠位部と中央部の厚みを測定した.〔結果〕IFPの遠位部は,伸展位から15°屈曲位の運動範囲で最も厚みの減少量が大きかったが,中央部では有意差を示さなかった.〔結語〕IFPは伸展位から15°屈曲位の運動範囲では,遠位部で膝関節屈曲に伴いIFPが介在する膝蓋靭帯深部の空間容積が増加して圧迫され変形が生じるが,中央部では変化がなかった.IFPの膝関節痛への関与が今後の検討課題である.

  • ─実現可能性調査─
    歌川 貴昭, 湯野 哲司, 橋本 忠司, 山口 浩貴, 増田 恵太, 喜多野 章夫, 生野 公貴, 庄本 康治
    2020 年 35 巻 3 号 p. 347-354
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕訪問リハビリテーション利用者に対して,神経筋電気刺激(NMES)を用いたホームエクササイズが継続的に実施可能であるか,身体への影響も含めて調査することとした.〔対象と方法〕訪問リハビリテーション(訪問リハ)利用者9名に対して,NMESを両側大腿四頭筋に8週間実施した.実施率,膝伸展最大随意収縮(MVC)トルク,大腿前面筋厚,下肢筋肉量,歩行速度について評価した.〔結果〕実施率は85.3 ± 16.4%であった.8週間の介入実施前後で,障害側の膝伸展MVCトルクのみ有意に改善を示した(0.9 ± 0.4から1.1 ± 0.5 Nm/kg,p<0.05).〔結語〕NMESを用いたホームエクササイズは訪問リハ利用者のホームエクササイズとして継続的に実施可能であり,障害側の膝伸展MVCトルクを改善する可能性を示したが,一般化にはさらなる検討が必要である.

  • 三好 将太, 廣重 陽介, 上久保 利直, 山口 衛里, 吉岡 利貢, 白川 泰山
    2020 年 35 巻 3 号 p. 355-359
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕大学陸上長距離選手における脛骨過労性骨膜炎(medial tibial stress syndrome:MTSS)に関する傷害調査,MTSS既往に関する身体機能,特に下腿浮腫の影響を明らかにし,予防への示唆を与えること.〔対象と方法〕長距離選手50名にアンケート調査を行い,無作為に12名(男性6名,女性6名)を抽出し,各種測定を実施した.測定項目は,下腿体積,Shin oedema test(SOT),股関節内旋・外旋可動域,アーチ降下距離とした.〔結果〕MTSSの既往をもつ者は50名中40名であった.下腿体積の日内変動は,MTSS群はcontrol群と比較して高値を示した.その他の測定項目に差は認められなかった.〔結語〕MTSS既往がある選手はむくみやすいこと,MTSSを発症しやすいことが示唆された.

  • 白井 孝尚, 井尻 朋人, 鈴木 俊明
    2020 年 35 巻 3 号 p. 361-365
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕スマートフォンのアプリケーションを用いて,妥当性のある肩甲骨の運動方向および運動角度が得られるかを調査した.〔対象と方法〕健常男性10名に上肢前方挙上と結帯動作をさせた.三次元動作解析装置とアプリケーションを用いて,各課題時の肩甲骨の前傾および上方回旋の角度を計測した.〔結果〕全課題において,三次元動作解析装置とアプリケーションで算出された結果には,相関関係を認めた.また,ICC(1,2),(2,2)において,高い判定を認めた.〔結語〕アプリケーションでの測定方法は,上肢前方挙上や結帯動作時の肩甲骨のアライメントを評価できる有用な方法の一つであり,肩関節の評価に役立てられると考える.

  • ─従来型実習と診療参加型実習の比較─
    屋嘉比 章紘, 小野田 公, 石坂 正大, 貞清 香織, 久保 晃
    2020 年 35 巻 3 号 p. 367-370
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕従来型実習と診療参加型実習の実習形態の違いが国家試験相当の専門・実地問題の点数に与える影響を検討した.〔対象と方法〕総合臨床実習(12週間)の前後に国家試験相当の実地問題を実施した.その際,従来型と診療参加型実習の実習前後の点数の比較を行った.〔結果〕実習形態と実習時期の2要因による比較では交互作用はなかったが,従来型と診療参加型実習ともに実習後で有意に得点が向上した.〔結語〕従来型と診療参加型実習ともに,実習後に得点が向上した.実習形態による実地問題の点数には有意差はなく,どちらの実習でも知識面の向上が得られた.CCS(診療参加型実習)の有用性が示された.

  • 篠崎 真枝, 深谷 隆史, 浅川 育世, 大橋 ゆかり
    2020 年 35 巻 3 号 p. 371-379
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕理学療法学生が感じた臨床実習の困難ならびに学生の望む実習指導を明らかにする.〔対象と方法〕臨床実習を修了した学生16名に対し半構造化面接を行い,内容分析した.〔結果〕記録単位数の多かったカテゴリーは,臨床実習の困難では,【C⑪学生が患者に評価や治療介入を実施するうえでの困難】や【C⑥学生と指導者の質問や助言のやりとりで生じる困難】などの15カテゴリーであり,学生の望む指導では,【D⑧望ましい学生と指導者のやりとり】や【D⑩症例把握のために学生の臨床思考を進める指導】などの17カテゴリーであった.〔結語〕学生が臨床実習で感じた困難が示され,学生の望む実習指導を踏まえた対応策が示唆された.

  • 竹内 真太, 根地嶋 誠, 溝井 健介, 山内 直人, 西田 裕介
    2020 年 35 巻 3 号 p. 381-385
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究では,大殿筋とハムストリングスへの間欠的圧迫刺激が骨盤前傾可動域に与える即時効果を検証した.〔対象と方法〕対象は健常男性11名とした.対象者は座位にて大殿筋とハムストリングスに対する3分間の間欠的圧迫刺激を受けた.刺激前後で直立位と体幹屈曲位における胸椎角,腰椎角,仙骨傾斜角を計測した.また直立位と体幹屈曲位の差を屈曲可動域とし,刺激前後で比較した.〔結果〕介入後に直立位の仙骨傾斜角は増加し,胸椎角と腰椎角は減少した.体幹屈曲位の仙骨傾斜角と仙骨傾斜角の屈曲可動域は増加した.〔結語〕大殿筋とハムストリングスへの間欠的圧迫刺激は,骨盤前傾可動域を増加させることが示唆された.

  • 岡田 壮市, 小粥 崇司, 中本 浩揮, 幾留 沙智, 竹島 伸生
    2020 年 35 巻 3 号 p. 387-395
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕虚弱高齢者を対象にモトタイルによる二重課題運動を12週間(2回/週)指導し,機能的体力と認知能力への効果を調べた.〔対象と方法〕デイショートサービス利用者36人(平均年齢74.6歳)とした.ミニメンタルステート検査(MMSE)の結果で2群(1群(n=27):27点以上;2群(n=9):27点未満)に分けて,効果を検討した.モトタイルを用いてステップ運動と認知への課題を用いた.〔結果〕アップアンドゴー,ステッピング,5回椅子起居時間,趾指把持力,Flanker(不一致ミス)とStroop(ミス)の課題に経時効果が認められた.しかし,両群の変化率または量に違いがなかった.〔結語〕二重課題運動において運動効果が両群で認められ,その有効性が示唆された.

  • 馬庭 春樹 , 須山 竜二, 武部 晃平, 佐々木 順一
    2020 年 35 巻 3 号 p. 397-402
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕肺切除術後早期の運動耐容能の変化を胸腔鏡補助下手術(VATS)と開胸術で比較した.〔対象と方法〕肺切除術を受けた98名(年齢70.0 ± 7.9歳,男性67名,女性31名)を対象とし,VATS群(79名)と開胸群(19名)に分けた.術前後で6分間歩行距離(6MWD)を測定し,術後値を術前値で除した値を6MWD回復率とした.6MWD回復率を群間比較し,また6MWD回復率を従属変数とした重回帰分析を行った.術後評価は術後6.2 ± 3.2日目に実施した.〔結果〕開胸群の6MWD回復率はVATS群よりも有意に低値であり,術式の違いは6MWD回復率に有意に関連した.〔結語〕肺切除術後早期の運動耐容能には術式の違いが影響し,開胸術ではVATSよりも回復が遅延することが示唆された.

  • 小坂 健二, 越本 浩章, 田中 謙次, 神澤 佑哉, 坂本 森, 松野 諒平, 森 英人, 森脇 崇
    2020 年 35 巻 3 号 p. 403-407
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕胸郭柔軟性を簡便に評価する前胸部柔軟性テストの信頼性を検討した.〔対象と方法〕被検者は健常成人15名,検者は経験年数の異なる3名とした.被検者はベッド上側臥位で,両股関節・膝関節を屈曲90°位に設定した.検者は骨盤を固定し,肩甲帯を背側へ捻転させ,肩峰後角とベッドとの距離を測定した.信頼性の検討には級内相関係数(ICC)とBland-Altman分析を用いた.〔結果〕検者内信頼性はICC(1,1)=0.80-0.92,検者間信頼性はICC (2,1)=0.71-0.90であった.Bland-Altman分析では,検者内・検者間信頼性において-0.25~0.16の比例誤差を認めた.〔結語〕前胸部柔軟性テストは検者内・検者間信頼性が高く,臨床応用可能な評価法であると考える.

  • 兎澤 良輔, 浅田 菜穂, 荒井 沙織, 源 裕介, 平野 正広, 川崎 翼, 加藤 宗規
    2020 年 35 巻 3 号 p. 409-412
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕胸腰部屈曲可動域測定において,スマートフォンアプリケーション(アプリ)を用いた測定方法の信頼性を検討すること.〔対象と方法〕男子大学生20名に座位での体幹屈曲運動をスマートフォンで撮影後,撮像からアプリ(グリット線撮影アプリProfessional)を用いて検者2名(理学療法士,学生)によるアプリ測定を実施した.検者2名のアプリ測定の結果について検者間信頼性および測定誤差を算出した.〔結果〕アプリ測定のICC(2,1)は0.831で系統誤差は認めず,最小可検変化量の95%信頼区間は7.5°であった.〔結語〕アプリによる胸腰部屈曲可動域測定は検者間信頼性が高く,測定誤差が少ない測定で習熟度の影響が少ないことが示唆された.

  • 中江 基満, 中馬 孝容
    2020 年 35 巻 3 号 p. 413-419
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕化学療法中の有害事象と身体状況,運動効果との関連性を検討することを目的とした.〔対象と方法〕対象は,化学療法目的入院の血液腫瘍患者でリハビリテーションが処方された症例である.運動効果指標はCancer Functional Assessment Set(cFAS),motor Functional Independence Measure(mFIM)を,栄養指標はGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いた.有害事象は有害事象共通用語基準(CTCAEv5)を用い,18項目を評価した.有害事象数とcFAS,mFIM,GNRI,各々の関連性を分析した.〔結果〕cFASとmFIMにおいて有意な改善が認められた.有害事象数はcFAS,mFIM,GNRIと負の相関が認められた.〔結語〕身体機能・栄養状態が有害事象の出現と関連している可能性が示唆された.また,有害事象の程度や栄養状態にかかわらず,基本動作・日常生活動作・移動能力,立位バランスの運動効果が期待できる可能性が示唆された.

  • 野田 拓斗, 坂本 理々子, 佐々木 誠
    2020 年 35 巻 3 号 p. 421-424
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕身体活動量の多さが運動耐容能の高さや運動後の心拍数の回復過程(Heart Rate Recovery:HRR)に影響するかを明らかにすること.〔対象と方法〕健常学生18名を対象に身体活動測定器を着用させ,身体活動指標として運動量,歩数を求めた.また,運動負荷試験を実施し,最高酸素摂取量(peakVO2/kg),運動終了後5分まで1分ごとに心拍数の回復値を測定し,運動量,歩数との相関関係の検討を行った.〔結果〕身体活動指標とpeakVO2/kgとの間に相関関係はなかった.運動量とHRRの間には相関関係がなかったが,歩数とHRRとの間には相関関係があった.〔結語〕身体活動量は運動耐容能と関連しないこと,身体活動指標のうち,運動強度を反映する運動量はHRRと関係しないが,運動強度を反映しない歩数がHRRの早さに寄与していることが示唆された.

  • 長島 裕子, 押木 利英子
    2020 年 35 巻 3 号 p. 425-430
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕通所リハに通う脳血管障害者の生活空間と運動機能,活動能力の関連を検討すること.〔対象と方法〕対象は在宅療養で通所リハを利用している脳血管障害片麻痺者40人とした.測定項目は,Life-Space Assessment(LSA),Stroke Impairment Assessment Set(SIAS),膝伸展筋力,Timed Up & Go test(TUG),10 m全力歩行,重心動揺,Functional Independence Measure(FIM)とした.〔結果〕LSA平均合計得点は41.2 ± 23.8点であった.LSAを従属変数として分析した結果,TUGが抽出された.〔結語〕通所リハに通う脳血管障害者の生活空間には,TUGが関連することが明らかとなった.

  • 茂内 卓, 佐々木 誠
    2020 年 35 巻 3 号 p. 431-434
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕亜最大運動後回復過程における生体反応・息切れ感の相違を立位姿勢と座位姿勢で比較すること.〔対象と方法〕健常大学生12名を対象に,亜最大運動負荷試験を実施した.運動負荷後回復過程において立位条件と座位条件を設け,運動終了直後,3分後,6分後,9分後の収縮期血圧,心拍数,二重積,酸素摂取量,分時換気量,一回換気量,呼吸数,息切れ感を測定した.〔結果〕運動終了後9分までの収縮期血圧に姿勢間で差はなかったが,立位条件において,心拍数が高値で推移し二重積が3分後に高値であった.運動後の姿勢の違いは他の指標に影響を与えなかった.〔結語〕運動負荷回復過程において立位姿勢は,循環血液量を一定に保つために一回拍出量の不足を心拍数によって代償すること,運動後早期で心臓の負担が大きい可能性が示唆され,両姿勢は酸素負債の返済が同等であり,換気指標と息切れ感に差がないと考えられた.

  • 小暮 英輔, 原 毅, 大沼 剛, 森山 隆, 阿部 勉
    2020 年 35 巻 3 号 p. 435-437
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕スパイロメーターから得られた換気機能と最長発声持続時間(Maximum Phonation Time:MPT),最長呼気持続時間との併存的妥当性を調査することを目的とした.〔対象と方法〕呼吸器関連に異常がない健常者23名を対象とした.調査項目は基本属性,スパイロメーターから得られた換気機能,MPT,最長呼気持続時間とした.MPTと最長呼気持続時間と各評価指標との関係性を調査した.〔結果〕MPTと最長呼気持続時間は有意に正の相関を認めた.MPTは肺活量,%肺活量と正の相関を認めたが,最長呼気持続時間はどの換気機能とも相関を認めなかった.〔結語〕MPTは,肺活量を簡易的に評価できる測定方法である可能性が示唆された.

  • 内尾 優, 志真 奈緒子, 圖師 将也, 永田 智, 猪飼 哲夫
    2020 年 35 巻 3 号 p. 439-442
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕小児気管支喘息急性増悪患者に対する胸郭圧迫介助法の効果について検討した.〔対象と方法〕対象は,当院へ入院した神経学的異常を認めない平均2.5 ± 1.3歳の小児気管支喘息患者20名とした.対象を吸入時の徒手的な呼吸介助手技実施の有無により呼吸介助実施群11名,非実施群9名の2群に分け,診療録により入院時所見,入院中治療経過を検討,比較した.〔結果〕2群間において入院から酸素投与中止までの日数,入院期間には統計的な差はなかった.2群ともに入院中新たな無気肺を併発した症例はいなかった.〔結語〕乳幼児気管支喘息急性増悪患者に対する徒手的な呼吸介助手技は酸素投与中止までの日数や早期退院には寄与しない可能性が示唆された.

  • 柴 隆広, 沢谷 洋平, 川島 景敏, 石坂 正大, 久保 晃
    2020 年 35 巻 3 号 p. 443-447
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕地域在住要支援・要介護高齢者における臨床的体幹機能検査(FACT)と身体機能の関係を調査した.〔対象と方法〕当事業所の利用者126名を対象(男性72名,女性54名,平均年齢77.3 ± 8.6歳)とした.対象者にFACTと握力,最大歩行速度,Timed Up and Go test(TUG),30秒間椅子立ち上がりテスト(CS30),片脚立位保持時間を計測し,移動自立度を評価し,FACTと身体機能の相関関係を調査した.〔結果〕FACTは最大歩行速度,TUG,CS30,片脚立位保持時間,移動自立度には男女ともに中等度の相関が認められた.〔結語〕地域在住要支援・要介護高齢者に対して,FACTはバランス能力や下肢筋力,最大歩行速度,移動自立度と関連している可能性が示唆された.

  • 西村 卓朗, 宮地 諒
    2020 年 35 巻 3 号 p. 449-453
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕中山間地域在住高齢者において,運動習慣および年齢と生活空間(Life Space Assessment:LSA)との関連性を検証することである.〔対象と方法〕対象は65歳以上の中山間地域在住高齢者657名とし,対象者に対して自記式アンケート票調査を実施した.調査項目は年齢,性別,運動習慣の有無,LSAとした.〔結果〕運動習慣の有無群でのLSA得点の比較では,運動習慣あり群は運動習慣なし群よりも有意に高かった.また,運動習慣あり群では年齢とLSAとの間に関連性はみられなかったが,運動習慣なし群では年齢とLSAとの間に関連性がみられた.〔結語〕運動習慣はLSAを維持するための一要素であることが示唆された.

  • 巻 直樹, 松田 ひとみ, 岡本 紀子, 高尾 敏文, 荒木 章裕, Von Fingerhut Georg, 王 暁辰, 丁 剣洋, 佐藤 ...
    2020 年 35 巻 3 号 p. 455-459
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕地域在住高齢者において,睡眠の質と嚥下呼吸機能との関連について検討した.〔対象と方法〕65歳以上の地域在住高齢者を対象とし,インターネットアンケート調査を実施.対象数は400名であった.質問項目は,摂食・嚥下障害スクリーニング法(DRACE),ピッツバーグ睡眠質問票日本語版(PSQIJ)とした.〔結果〕回答を得た400名に対し,睡眠障害群と非睡眠障害群に分け比較,睡眠の質に関連する変数として,DRACE得点が見出された.〔結語〕高齢者において,睡眠の質と嚥下機能との関連性が示され,また睡眠の質と嚥下機能との関連における重要性が示唆された.

  • 岡本 伸弘, 増見 伸, 長嶺 翔吾, 太田 研吾, 吉田 和弘
    2020 年 35 巻 3 号 p. 461-466
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕低栄養大腿骨近位部骨折患者に着目し,退院時における歩行自立度の調査と歩行自立度に関連する要因を明らかにすること.〔対象と方法〕集計対象者は66名.退院時の歩行自立度を調査した.歩行自立度で分類した各群の諸特性について比較検討した.〔結果〕退院時における歩行自立度は,自立群は22名(34%),監視群は24名(64%),介助群は20名(23%)であった.3群間比較の結果,有意差を認めた項目は,受傷前歩行能力,入院時歩行能力,入院時認知機能であった.〔結語〕退院時に歩行が自立できた集団は,受傷前から歩行が自立できており,入院時の歩行能力や認知機能が高いことが特徴であった.これら要因は歩行自立度に関連することが示唆された.

  • 澁谷 光敬, 平島 賢一, 田野 聡, 髙岡 克宜, 池脇 圭司, 鶯 春夫
    2020 年 35 巻 3 号 p. 467-470
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕Tilt tableを使用した傾斜角度変化が腹筋群に与える影響を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象は健常成人男性5名で,筋活動計測は非利き足側の腹筋群(外腹斜筋,内腹斜筋),下肢筋(中殿筋,大腿直筋,大腿二頭筋)の5筋とした.Tilt tableの傾斜角度を40°から80°まで10°ずつ変化させ,各傾斜角度での受動的立位保持10秒間の筋活動を3秒間測定し,積分値を算出し比較検討した.〔結果〕内腹斜筋では40°に対し60°以上で有意に高値を,また,50°に対し60°で有意に高値を示した.その他の筋では傾斜角度変化における有意差は認められなかった.〔結語〕Tilt tableの傾斜角度を60°以上にすることは内腹斜筋を選択的に活動させる一手段となる可能性が示唆された.

症例報告
  • ─リハビリテーション旅行に参加したことで 自己効力感と生きがいが向上した症例─
    小暮 英輔, 原 毅, 熊倉 由香子, 木村 英生, 井出 佳宏, 藤井 泰成, 紙田 緑, 大沼 剛, 吉松 竜貴, 阿部 勉
    2020 年 35 巻 3 号 p. 471-475
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕リハビリテーション旅行(リハビリ旅行)が参加者に与える有益性を検証することを目的とした.〔対象と方法〕脳出血で左片麻痺を呈し,屋外杖歩行監視レベルであった80代女性1名を対象とした.modified Gait Efficacy Scale(mGES),Modified Fall Efficacy Scale(MFES),Ikigai-9,Life Space Assessment(LSA)をリハビリ旅行1ヵ月前(旅行前),リハビリ旅行直前(旅行直前),リハビリ旅行1ヵ月後(旅行後)で評価した.〔結果〕mGESは旅行後で向上し,Ikigai-9は旅行直前・旅行後で向上していた.〔結語〕リハビリ旅行は参加者の自己効力感や生きがいを向上させる一つの手段になりえる可能性が示唆された.

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