理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
36 巻, 2 号
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原 著
  • 大八木 博貴, 木下 和昭, 眞田 祐太朗, 阿部 渉, 石田 一成, 柴沼 均
    2021 年 36 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究は人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節屈曲可動域(膝屈曲ROM)低下に及ぼす膝蓋骨アライメントの特徴を検討した.〔対象と方法〕対象は変形性膝関節症に対してTKAを施行された28膝とした.測定項目は年齢,Body Mass Index,膝屈曲ROM,膝蓋骨アライメント(外方傾斜角,外方偏位)とした.術後の膝屈曲ROMが術前値未満の群(ROM低下群)と術前値以上の群(ROM改善群)に分け,各測定項目を群間で比較した.〔結果〕ROM低下群はROM改善群に比べて術前後の膝蓋骨外方偏位と術後の膝蓋骨外方傾斜角が有意に高値であった.〔結語〕術後の膝屈曲ROMは,術前後の膝蓋骨外方偏位が大きく,術後に膝蓋骨外方傾斜角が増大するほど低値になる傾向が示唆された.

  • ─屋内生活空間と主観的幸福感に着目して─
    武 瞳, 山上 徹也, 福島 菜見, 片桐 志穂, 深津 知永, 浦野 幸子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕訪問リハによる屋内生活空間と主観的幸福感の変化を検討した.〔対象と方法〕訪問リハを新規に利用開始した整形外科疾患患者8名を対象に,生活空間をHome-based Life-space Assessment(Hb-LSA)で,主観的幸福感をPhiladelphia Geriatric Center Morale Scale(PGC-MS)で評価した.〔結果〕開始6ヵ月後にHb-LSAとPGC-MSが有意に改善した.〔結語〕訪問リハは,利用者の生活機能に応じて生活空間を改善させており,Hb-LSAを用いることで,その変化を捉えやすくなる可能性が示された.またADLや生活空間の改善に伴い主観的幸福感が改善する可能性が示された.

  • 伊藤 秀幸, 市原 清志, 天野 徹哉
    2021 年 36 巻 2 号 p. 159-168
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕人工膝関節置換術患者における日常生活活動(ADL)の回復には,非術側の膝機能評価は重要である.そのため膝筋力と関節可動域の基準範囲を,術前後の値に影響する要因を考慮して設定する.〔対象と方法〕人工膝関節置換術患者のうち反対側に同手術の既往があるものを除いた390名を対象とし,膝伸展・屈曲筋力と伸展・屈曲関節可動域を測定した.変動要因の評価を実施し,群間差指数(SDR)を算出し,0.3を層別化の基準とした.〔結果〕SDR値から,各筋力は性別により,各関節可動域は膝関節症が片側性か両側性かにより層別化が必要と判断した.筋力はBox-Cox式のパラメトリック法により,関節可動域はノンパラメトリック法により基準範囲を設定した.〔結語〕非術側の膝機能の基準範囲は,術後患者の膝機能評価に役立つ.

  • 新永 拓也, 廣瀬 昇, 渡邊 修司, 望月 優人, 潮見 泰藏
    2021 年 36 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕若年健常者の非肥満者と肥満者における呼吸機能を比較し,四肢骨格筋肉量をはじめとする身体組成との関係を明らかすることを目的とした.〔対象と方法〕対象者18名をBody Mass Index(BMI)≦24以下かつ腹囲周径84 cm以下を非肥満群とし,BMI≧25以上かつ腹囲周径85 cm以上を肥満群と定義し,両群の身体組成と呼吸機能を測定した.〔結果〕肥満群の%VC,%FEV1.0は非肥満群に比べて有意に高値を示した.非肥満群において,%PImaxとBMIとの間に負の相関が認められた.肥満群においては,%ERVと右上肢筋肉量およびBMIとの間に,それぞれ有意な正の相関が認められた.〔結語〕若年肥満者では,肥満による呼吸機能の影響が小さくなる可能性が示唆された.

  • ─気分状態と脳酸素動態からの検討─
    松浦 和文, 山崎 文夫
    2021 年 36 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕腹式呼吸が気分と脳血流に及ぼす影響を検討した.〔対象と方法〕健常成人10名を対象とし腹式呼吸あるいは通常呼吸を行った後ストループ課題を行った.実験中,前頭部の酸素化ヘモグロビン濃度(Oxy-Hb)を測定し,呼吸前後とストループ課題後の気分を評価した.〔結果〕腹式呼吸後は混乱-当惑,緊張-不安,総合的気分状態得点が低下しストループ課題後も緊張-不安の低下が持続した.Oxy-Hbは腹式呼吸後に低下したが通常呼吸後は増加した.両呼吸条件でストループ課題後にOxy-Hbは増加した.〔結語〕1)腹式呼吸は気分を改善して前頭葉の血流抑制作用をもたらすこと,2)腹式呼吸後に精神性ストレスを受けた際,緊張-不安の低下が持続することで気分も改善傾向が続き前頭葉の血流量も低い傾向があることが示唆された.

  • 大森 隆生, 萩野 浩
    2021 年 36 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
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    〔目的〕理学療法学生の臨床実習前後における自己効力感の変化を調査し,その変化に関連する要因について検討した.〔対象と方法〕対象は理学療法士養成校の4年生の学生142名で,アンケート調査を実習前,1期実習終了後,2期実習終了後に実施した.アンケート項目は,特性的自己効力感尺度,実習に関する質問を中心に調査した.〔結果〕自己効力感は,実習前と比較して2期実習終了後は有意に向上した.自己効力感の不変向上群は,低下群と比べて,2期実習終了後の実習に関する質問において担当数,目標達成,課題達成,症例理解,指導者の肯定的言動,達成感の項目で有意に高かった.〔結語〕自己効力感の変化には,臨床実習を積み重ねることと最後の実習内容が影響してくることが示唆された.

  • ─術前肩腱板損傷患者における先行的調査─
    阿南 裕樹, 俵 祐一, 陶山 和晃, 田中 貴子, 神津 玲
    2021 年 36 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕整形外科術後に理学療法を実施した運動器疾患患者における閉塞性換気障害を合併する割合とその特徴を明らかにすること.〔対象と方法〕当院にて術後理学療法を実施した40歳以上の男性肩腱板損傷患者を対象とした.方法は患者背景,術前呼吸機能検査,喫煙状況について後方視的に調査し,閉塞性換気障害を合併する割合とその特徴について検討した.〔結果〕解析対象者101名のうち,閉塞性換気障害を合併した者は6名(5.9%)であり,6名中3名が70歳以上の現喫煙者(ブリンクマン指数:1000以上)であった.〔結語〕喫煙歴を有する高齢の運動器疾患患者のなかには,閉塞性換気障害を有する可能性があることを理学療法士は認識する必要がある.

  • ─後方視的研究による検討─
    大沼 亮, 松田 雅弘, 早乙女 雄紀, 中嶋 一歩, 山﨑 達之, 北山 哲也, ネルソン 祥子
    2021 年 36 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による外出自粛された通所利用者への理学療法士による運動指導の効果を検討することを目的とした.〔対象と方法〕対象は通所リハビリテーション利用者21名とした.対象の利用者に対し,通常理学療法として日々提供していた運動を担当理学療法士が自主トレーニング(自主トレ)として送付した.評価方法は自主トレに関するアンケート調査,Timed Up & Go Test(TUG),長谷川式認知症スケール(HDS-R)にて利用自粛前後を評価した.〔結果〕自主トレ実施群12名,自主トレ非実施群9名となった.TUGは自主トレ実施群で自粛前後に有意差はなかった.自主トレ非実施条件では自粛前後で有意に遅延していた.〔結語〕COVID-19による外出自粛が移動能力を低下させることと,理学療法士による運動指導が機能低下を予防できる可能性を示した.

  • 金子 秀雄, 鈴木 あかり
    2021 年 36 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究の目的は地域在住高齢者における咳嗽時最大呼気流量と胸腹部可動性の関連を明らかにすること.〔対象と方法〕地域在住高齢者188名(男性63名,女性125名)を対象に咳嗽時最大呼気流量,胸腹部可動性として呼吸運動評価スケールによる上部胸郭・下部胸郭・腹部スケール値,呼吸機能として努力性肺活量,一秒率,最大吸気圧,最大呼気圧を測定した.〔結果〕男女の比較では,年齢,Body Mass Index,上部胸郭スケール値を除き,女性が有意な低値を示した.重回帰分析において咳嗽時最大呼気流量の有意な予測因子は,男女ともに腹部スケール値であった.〔結語〕歩行が自立した地域在住高齢者における腹部可動性は咳嗽時最大呼気流量に関連することが示唆された.

  • ─一施設における後方視的検討からの報告─
    関 淳子, 平野 大輔, 谷口 敬道
    2021 年 36 巻 2 号 p. 203-211
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕当院入院中の高齢がん患者に対するリハビリテーションの実態を明らかにする.〔対象と方法〕がんリハビリテーションを受けた65歳以上の入院患者109名を対象に,診療記録から原発巣やリハビリテーション内容等について抽出した.〔結果〕消化器と呼吸器の原発巣,緩和期,家族同居の患者が多く,退院直前までリハビリテーションが行われ,92%の患者は入院時の機能が維持されていた.理学療法では歩行練習と起居移乗練習,作業療法では関節可動域練習と起居移乗練習,言語聴覚療法では摂食嚥下練習とコミュニケーション練習が80%以上の患者に行われていた.〔結語〕高齢がん患者の入院リハビリテーションにおいては,入院時の機能の維持と退院後の生活を見据えた介入が求められる.

  • ─理学療法士を対象とした調査─
    宮原 拓也, 白石 和也, 加藤 研太郎, 高島 恵
    2021 年 36 巻 2 号 p. 213-220
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕臨床実習での装具療法の課題を抽出し,養成校での取り組みに活かすことを目的とした.〔対象と方法〕対象は1施設の理学療法士118名とした.調査内容は基本情報,下肢装具に関する指示のある養成校の割合,学生に不足する知識・技術,理学療法士の下肢装具の使用頻度,学生の下肢装具の見学・体験頻度,見学・体験機会が十分ではない原因等とした.〔結果〕学生の見学・体験機会は週1回未満が7割を超え,見学・体験機会が十分ではない原因は,対象症例不足と養成校からの指示不足が上位を占めた.下肢装具に関する指示のある養成校の割合は,わからないと0〜3割が多かった.〔結語〕養成校は依頼内容を具体的にする必要がある.

  • 羽場 俊広, 岩月 宏泰
    2021 年 36 巻 2 号 p. 221-226
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕片脚立位時の下肢機能軸が垂線と成す角度(mechanical axis inclination angle:MIA)について基準値を計測し,体幹や骨盤運動との関連性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕健常青年男女各12名を対象とした.通常の片脚立位と外側楔状足底板を使用した片脚立位を実施し,MIAおよび体幹と下肢の関節角度を測定した.〔結果〕MIAは有意な性差を認め,女性が男性より高値を示した.また,MIAは体幹や骨盤角度との関連性を認めたが,外側楔状足底板の有無による差を認めなかった.〔結語〕MIAには一定の基準が存在し,片脚立位時に膝関節アライメントが外反方向へ変化した場合でもMIAを一定に保つために体幹や骨盤運動による姿勢戦略が生じることが示唆された.

  • 濵地 望, 岡 真一郎, 森田 正治, 廣岡 良隆
    2021 年 36 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕男子大学生における血管内皮機能に影響を及ぼす因子を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は健常な男子大学生34名とした.血管内皮機能(flow-mediated dilation:FMD)と身体組成,血圧(SBP,DBP),強度別身体活動量(LPA,MPA,VPA,%MVPA)との関係を調査した.〔結果〕FMDの平均値は8.1 ± 2.2%であった.FMDはVPA,%MVPAと有意な正の相関(r=0.432,0.383),FMD正常群ではDBPと有意な負の相関(r=-0.445)を示した.また,FMD正常群は低下群に比べ,VPAが有意に高かった.〔結語〕男子大学生の血管内皮機能には,高強度の身体活動時間および拡張期血圧が影響することが示唆された.

  • 齋藤 拓之, 佐藤 みゆき, 齋藤 徹, 藤井 一弥, 臼田 滋
    2021 年 36 巻 2 号 p. 233-237
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕回復期リハビリテーション病棟におけるmodified Gait Efficacy Scale(mGES)の経時的変化を検討すること.〔対象と方法〕当院回復期リハビリテーション病棟に入院した下肢骨折患者11名を対象とした.mGESを入棟時,その後1ヵ月ごと,退棟時,病棟歩行自立時に測定した.〔結果〕mGESは入棟時と歩行自立直後,退棟時の間で有意差を認め,退棟時,歩行自立直後,入棟時の順で高値であった.歩行自立直前に比して,歩行自立直後でmGESは有意に増加した.mGESの歩行自立前変化量は,歩行自立後変化量よりも有意に高値であった.〔結語〕病棟歩行自立前において,病棟歩行自立後よりも歩行自己効力感が向上しやすいことが示唆された.

  • 五十嵐 達也, 松岡 秀典, 星野 涼, 西松 輝高, 臼田 滋
    2021 年 36 巻 2 号 p. 239-246
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕急性期入院脳卒中者に対する下肢筋厚,筋輝度測定の信頼性と最小可検変化量(minimal detectable change:MDC)を明らかにすることである.〔対象と方法〕急性期入院脳卒中者10名を対象とした.超音波診断装置により両下肢筋の筋厚と筋輝度を測定した.測定値の級内相関係数と標準誤差,95%一致限界,MDCの95%信頼区間(MDC95)を求めた.〔結果〕筋厚・筋輝度測定ともに級内相関係数は0.70以上で高い信頼性を示した.MDC95は筋厚で0.13から0.32 cm,筋輝度で6.21から13.49 a.u.であった.〔結語〕脳卒中者に対する超音波診断装置による骨格筋の評価は,高い信頼性を有し,MDCを明らかにすることでリハビリテーション介入の効果判定に寄与する可能性が示唆された.

  • 飛永 敬志, 大林 茂, 宮崎 千枝子, 谷澤 真, 小川 真人, 岡 浩一朗, 大関 覚
    2021 年 36 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕人工膝関節全置換術(TKA)患者の身体機能と身体活動セルフ・エフィカシー(SE)および健康関連quality of life(HRQOL)について,術後2年まで回復過程を検討した.〔対象と方法〕初回片側TKA患者33例とした.身体機能はTimed Up and Go testと開眼片脚起立時間および準WOMACの痛みと機能を用いた.SEは虚弱高齢者の身体活動SE尺度,HRQOLはMedical Outcome Study Short-Form 36-Item Health Survey version 2 standard版(SF-36v2)を用いた.〔結果〕身体機能と身体活動SEの全尺度,SF-36v2の身体機能,日常役割機能(身体)および体の痛みは,術後3ヵ月で有意に改善し,活力と心の健康を除く6尺度は術後2年まで有意に改善した.〔結語〕TKA患者の身体機能と身体活動SEおよびHRQOLは精神的尺度を除いて術後3ヵ月で改善し,術後2年まで維持された.

  • 岩室 樹, 鈴木 啓介, 黒澤 和生
    2021 年 36 巻 2 号 p. 253-258
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕外来心臓リハビリテーション(外来心リハ)に参加している高齢者がレジスタンストレーニング非実施となる特徴を明らかにする.〔対象と方法〕外来心リハ患者24名(平均年齢78.9 ± 7.8歳)に対し,健康関連QOLや自己効力感に関する質問紙を実施した.毎回レジスタンストレーニングを行う実施群(11名)と行わない非実施群(13名)に分け検討した.〔結果〕非実施群は実施群に比べ,SF-36サマリースコアの身体的側面(PCS)が有意に低く,役割/社会的側面(RCS)が有意に高かった.〔結語〕外来心リハ時に身体的,社会的な側面の評価を行い,レジスタンストレーニングを定着させる介入を検討することが必要である.

  • 江越 正次朗, 堀江 淳, 中川 明仁, 松永 由理子, 林 真一郎
    2021 年 36 巻 2 号 p. 259-264
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究では,病状早期のGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)の評価分類Group Aに属する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の,骨格筋機能である筋力とその関連因子について縦断的に検証することを目的とした.〔対象と方法〕Group Aに属する男性COPD患者23名を対象に,骨格筋力と骨格筋量(筋量)などの身体特性を評価し,諸項目を解析した.〔結果〕筋量は1年後も保持できていたが,握力は有意に低下した.また,サルコペニアは増加し,プレサルコペニアは有意に増加した.1年後の握力の変化量に,初期の身体特性は有意な関係を認めなかった.〔結語〕Group AのCOPD患者でも1年後に筋力低下が認められ,その障害は下肢ではなく上肢に出現し,疾患特有の骨格筋機能障害が生じている可能性が示唆された.

  • 多米 一矢, 廣中 丈, 小関 博久
    2021 年 36 巻 2 号 p. 265-268
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕安静座圧の偏りから右座圧群と左座圧群に分類し,座圧と体幹側屈動作の関係について検討した.〔対象と方法〕健常成人男性20名(各座圧群10名)とした.座圧は床反力計を用い,体幹角度をkinoveaにて計測した.上下部体幹側屈角度の比較と座圧と体幹側屈角度の関係性を検証した.〔結果〕左座圧群は,上下部左右体幹側屈角度に差を示した(p<0.05).右座圧群と下部体幹右側屈角度,上部体幹左側屈角度に有意な相関を示した(| r |=-0.7~-0.65).左座圧群は,上部体幹左右側屈角度に有意な相関を示した(| r |=-0.65~0.82).〔結語〕座圧側への体幹側屈動作では上部体幹,非座圧側への側屈動作では下部体幹が生じることが示唆された.

症例研究
  • 村部 義哉
    2021 年 36 巻 2 号 p. 269-274
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕頸椎症術後の慢性疼痛を呈した症例に対して,頸部に関わる複数の体性感覚間の整合性の認識を中心とした介入を行ったところ,痛みの認知・情動的側面の改善と痛みの悪循環からの脱却により,慢性疼痛の持続的な改善が認められた一症例を報告する.〔対象と方法〕対象は,頸椎症に対する頸椎固定術後約5ヵ月が経過した80代女性.頸部の運動制御に関する複数の体性感覚(頸部の深部感覚,後頭部の触圧覚,頭部の重量覚)の整合性の認識を促したところ,防御性収縮や恐怖感の軽減を認めたため,それらを伴わせた頸部の自動介助運動を行った.〔結果〕頸部の慢性疼痛の改善と日常生活動作能力,痛みや自動運動に対する恐怖感の軽減を認めた.〔結語〕頸部の術後の慢性疼痛に対して本治療介入が有効となることが示唆された.

  • 中井 秀樹, 名畑 太貴, 越久 仁敬, 野村 文彦
    2021 年 36 巻 2 号 p. 275-278
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕粘液水腫性昏睡による心肺蘇生後の患者を担当し,人工呼吸器からの離脱に成功したので報告する.〔対象と方法〕48歳女性,心肺蘇生開始から20分で自己心拍を再開した.呼吸および循環不全,蘇生後脳症,粘液水腫性昏睡を呈し,人工呼吸器装着下での集中治療を要した.〔結果〕第22病日,呼吸リハ開始.臥位で呼吸介助を行い,換気を促進させると無呼吸が頻発した.多職種にて呼吸状態を管理し離床を進め,段階的な呼吸筋練習を行った.第43病日人工呼吸器からの離脱に成功し,第50病日で他院へ転院となった.〔結語〕代謝性疾患の特性把握と適切な呼吸管理の下で呼吸リハを行うことが人工呼吸器からの離脱に重要であることが示唆された.

  • 西村 卓朗, 宮地 諒, 小谷 晃一, 田中 正康
    2021 年 36 巻 2 号 p. 279-283
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕超低出生体重児において,発達段階に着目した介入が運動発達遅滞の予防に有効であったのかを検証することである.〔対象と方法〕症例は,体重755 gで出生した女児であった.発達段階に着目した介入として,修正月齢を考慮し,次の発達段階で獲得すべき動作を経験させる介入を行った.介入頻度は週2回で,介入時間は1回あたり40分間とした.〔結果〕本症例において,座位までの運動発達の過程は正期産児と同程度の推移であった.〔結語〕超低出生体重児に対して発達段階に着目した介入を行った結果,運動発達遅滞の予防に有効であった可能性が示唆された.

総 説
  • 及川 巧翔, 大川 光, 京野 優美, 牧 彩夏, 眞坂 陸斗, 佐々木 誠
    2021 年 36 巻 2 号 p. 285-292
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕非活動に伴う逸脱姿勢がもたらす弊害に対する理学療法介入の効果のエビデンスを検討すること.〔方法〕文献データベースを系統的に検索し,関連する論文を質的ならびに量的に分析した.〔結果〕検索構文と追加で抽出した論文415編のうち,30編が質的分析に,11編が量的分析に活用された.システマティックレビューでは,介入が身体の機能や構造,症状,能力に対して有効とする研究が比較的多く見出された.メタアナリシスでは,運動トレーニングが脊柱安定性・姿勢制御に対して,活動性を高める介入が身体各部の疼痛に対して,有効とは言えなかった.〔結論〕量的分析が可能な論文が少なかったが,質的分析で,理学療法介入が非活動に伴う逸脱姿勢の悪影響を改善する可能性が示唆された.エビデンスを確固たるものにするために,質の高いさらなる検討が必要である.

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