理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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38 巻, 5 号
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表紙
会告
目次
原著
  • ─症例集積研究─
    相原 忠洋, 黒澤 和生
    2023 年 38 巻 5 号 p. 325-331
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究の目的は,非特異的腰痛が呈する体性機能異常の兆候・症状と,自律神経活動の様子を観察し,どのような傾向があるかを把握することである.〔対象と方法〕非特異的腰痛患者4症例の理学療法評価にKeele STarT Backスクリーニングを加え,理学療法施行前後に体性機能異常の症状・兆候と自律神経活動指標の変化を観察し,健常者4例と比較した.〔結果〕脊柱操作後の自律神経活動は,健常例での傾向は2分したが,腰痛症例では全例で交感神経活動増加した.腰痛症例の体性機能異常は,Lowリスク群3症例で疼痛は減少したが,Highリスク群の1症例では増加した.〔結語〕生物心理社会的要因の強い非特異的腰痛症例では,そうでない症例とは異なる体性機能異常の症状・兆候を示す可能性が示唆された.

  • 山崎 達彦, 山下 淳一, 清水 美晴, 山本 澄子
    2023 年 38 巻 5 号 p. 332-337
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕関節リウマチ患者の運動イメージについて疾患活動別の比較と日常生活動作(ADL)能力の関連性を確認することを目的とした.〔対象と方法〕関節リウマチ患者60名の運動イメージ課題とADL能力を測定後,疾患活動別での比較とADL能力への関連項目を調査した.〔結果〕疾患活動別により運動イメージ課題とADL能力に差が認められた.また,ADL能力には運動イメージ課題と疾患活動が関連することが認められた.〔結語〕関節リウマチ患者の疾患活動の状況により,運動イメージが低下している可能性がある.また,関節リウマチ患者のADL能力に対して,疾患活動に加え運動イメージに対する考慮も必要である.

  • ─近赤外分光法を用いた測定と考察─
    藤田 信子, 池田 耕二, 松野 悟之, 三木 健司, 仙波 恵美子
    2023 年 38 巻 5 号 p. 338-344
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕中高年線維筋痛症患者と中高年健常者のStroop test時における前頭前野の活動を近赤外分光法で測定し,結果を比較・検討した.〔対象と方法〕対象を中高年線維筋痛症患者と中高年健常者の2群に分けてStroop testを行い,前頭前野の活動を近赤外分光法で測定した.酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb値),およびtask-induced deactivationの傾向を表すΔoxy-Hb値を2群および前頭前野3領域で比較した.〔結果〕Stroop test時の右背外側前頭前野のoxy-Hb値は,中高年線維筋痛症患者に比べて中高年健常者で有意に高かった.中高年線維筋痛症患者の前頭極のΔoxy-Hb値は,左右の背外側前頭前野領域より高い傾向を示した.〔結語〕Stroop test中,中高年線維筋痛症患者には中高年健常者のような前頭前野の活動はみられず,加えてデフォルトモードネットワークの抑制機能の低下が示唆された.

  • 渡邉 瑠音, 松本 千晶, 石坂 正大, 久保 晃, 井川 達也
    2023 年 38 巻 5 号 p. 345-349
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕対象とした高校男子サッカー競技者をレギュラーか非レギュラーかの2群に分け,身体機能および体組成成分の違いとそれらの関連性を明らかにすること.〔対象と方法〕高校男子サッカー部員26名を対象とし,握力,足趾把持力,Finger floor distance,Heel buttock distance,リバウンドジャンプ,カウンタームーブメントジャンプ,Straight leg raising,T-test,Yo-Yo testの身体機能および体組成成分を計測し,比較した.〔結果〕レギュラーと非レギュラーの2群間比較では,レギュラー群のPhase Angleが有意に高値であり,Phase Angleと握力およびYo-Yo testの間に有意な正の相関がみられた.〔結語〕高校男子サッカー部員においてPhase AngleとYo-Yo testの結果に関連がある.

  • ─ワールド・カフェ方式でのコミュニケーション演習の導入─
    飯田 修平, 加藤 勝行, 徳田 良英, 窪川 徹, 阪井 康友, 吉本 真純
    2023 年 38 巻 5 号 p. 350-355
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕COVID-19感染拡大に伴い,見学実習に替えて2022年度1年次学生に実施した学内代替実習の教育効果を検証し,第1報として報告済みの2021年度の結果と比較した.〔対象と方法〕2022年度の理学療法学科1年生を対象とし,臨床実習指導者である外部講師と学内教員がそれぞれの指導分野で実施した.2021年度研究では実施しなかったワールド・カフェ方式でのコミュニケーション演習を新たに導入し,アンケートで学習達成度を調査し,2021年度の結果と比較した.〔結果〕7段階リッカートスケールの単純集計では,全ての項目で肯定的な回答が得られた.頻出語の集計では「コミュニケーション」の抽出回数が2022年度で多かった.〔結語〕コミュニケーション演習の導入にて学内代替実習はある程度の効果を収めた.

  • ─正常膝関節を用いた予備的実験─
    菅原 昌浩, 小野 武也, 佐藤 勇太, 廣瀬 勇太, 池尾 諒真, 坂井 一哉
    2023 年 38 巻 5 号 p. 356-360
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究は,ラット正常膝関節の膝窩部における関節包の生体力学的特性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕対象とした8週齢のWistar系雄ラット5匹の後肢から作成した大腿骨-関節包-脛骨の複合体試料を,引張試験に供した.〔結果〕長さ-張力曲線の波形は,ラット個体によって急峻な低下を何度も繰り返すもの(5試料中3試料)と,繰り返さないもの(5試料中2試料)があった.〔結語〕ラット膝窩部における関節包には,十字靭帯様の線維が混在するものと,混在しないものがあることが明らかとなった.

  • 西山 侑汰, 国枝 結花, 名頭薗 亮太, 辰見 康剛
    2023 年 38 巻 5 号 p. 361-364
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕iPhoneに標準搭載された傾斜計測アプリケーションの検者内・検者間信頼性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕男性大学生10名20肢を被験者として,iPhoneを用いた測定の経験がある者とない者で級内相関係数(ICC)を求めた.肩関節外旋・内旋可動域測定は,仰臥位,肩関節90°外転位・肘関節90°屈曲位,前腕中間位にて測定した.〔結果〕肩関節外旋および内旋可動域測定の検者内信頼性は,ICC(1,1)および(1,2)=0.9以上であった.肩関節外旋および内旋可動域測定の検者間信頼性は,ICC(2,1)および(2,2)=0.8以上であった.〔結語〕iPhoneを用いた肩関節回旋可動域測定は,高い信頼性があることが示唆された.

  • 大嶋 一輝, 前田 佑輔, 齋藤 孝義, 黒澤 和生
    2023 年 38 巻 5 号 p. 365-368
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕冷却なし,15分冷却,30分冷却の3条件において,局所膝関節冷却時間を短縮して膝伸展トルクに与える影響を明らかにすること.〔対象と方法〕健常成人男性18名を対象に,冷却なし,15分冷却,30分冷却の3条件実施後に,膝伸展トルクを経時的に測定した.〔結果〕膝伸展トルクは,測定開始から20分後において冷却2条件が冷却なしより有意に高値を示した.〔結語〕膝伸展トルクは,15分と30分のどちらの冷却時間においても20分後に増大したことから,15分の冷却時間の方が治療時間の短縮という点で有用と考えた.そのため局所膝関節冷却を15分行い,その後20分経過した頃に膝伸展作用を発揮させる目的の理学療法を実施すれば,転倒予防の一助となるであろう.

  • ─視覚障害を主とした身体機能と栄養に着目して─
    犬田 和成, 谷口 圭佑, 坂本 晴美, 呉 世昶, 柳 久子, 小堤 弘輝, 巻 直樹
    2023 年 38 巻 5 号 p. 369-374
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究では,施設入所身体障害者における体組成を用いての身体的特徴と上下肢筋力,バランス能力,歩行能力などの身体機能および栄養成分との関連を検討することを目的とした.〔対象と方法〕対象は,身体障害者手帳を有している身体障害者支援施設の入所者78人で,運動機能検査および体組成の測定を行った.〔結果〕非筋量サルコペニア群は22名(28.0%),筋量サルコペニア群は56名(72.0%)であった.四肢骨格筋量指数Skeletal Muscle Mass Indexを従属変数とした重回帰分析では,タンパク質量,Timed Up and Go testが抽出された.〔結語〕中年期の身体障害者において,背景にある運動機能,栄養との関連を検討する必要性が示唆された.

  • 中山 大貴, 石橋 慶亮
    2023 年 38 巻 5 号 p. 375-380
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕サルコペニアを有する通所リハビリテーション利用者の生活空間と下肢骨格筋形態および身体機能との関連性について,明らかにする.〔対象と方法〕通所リハビリテーション女性利用者60名を対象とし,身体機能,生活空間(LSA),下肢の筋厚,筋輝度の測定を実施した.その後,各群におけるLSAと各変数との関連性を検討した.〔結果〕サルコペニア群のLSAと相関関係を認めた変数は,握力,Timed Up and Go Test(TUG),大腿筋厚,下腿筋輝度であった.LSAに対する影響度については,TUGのみ抽出された.〔結語〕本研究対象者における生活空間の把握には,歩行パフォーマンス能力を重点とした骨格筋形態に対する評価が重要であると示唆された.

紹介
  • ─症例報告を対象としたナラティブレビュー─
    田中 智美, 井川 達也, 石坂 正大
    2023 年 38 巻 5 号 p. 381-384
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究の目的は,本邦における犬の理学療法に関する最新の知見を収集し,その内容を整理することとした.〔対象と方法〕1900年から2022年までに日本国内の学術雑誌に掲載された理学療法に関する症例報告を対象とし,医中誌Webを含む3つの電子データベースを使用して特定された.〔結果〕合計10件の症例報告が確認され,そのほとんどは整形外科または神経疾患の犬に関する報告であった.物理療法,徒手療法,運動療法を用いた事例が報告されていた.〔結語〕本邦では,犬の理学療法に関する科学的レポートが少なく,今後の動物理学療法の発展が期待される.

  • ─Delphi法を用いた事象の抽出─
    小野塚 雄一, 山本 泰三
    2023 年 38 巻 5 号 p. 385-390
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究は,日本におけるRedcord国際コース修了者と国際インストラクターからインシデント・アクシデントになり得る事象の項目を抽出することである.〔対象と方法〕対象は,Redcord国際コースの日本で習得できるNeurac2の修了者および国際インストラクターを研究協力者19名とし,調査方法はDelphi法を用いた.〔結果〕19名から80%以上が必要であるとした事象は26項目であった.カテゴリーは「対象者の転倒転落」11項目,「身体症状の発生」11項目,「物品の落下」4項目であった.〔結語〕現場に潜むインシデント・アクシデントになり得る事象は「構造的要因」と「技術的要因」を背景にしたものがあり,Redcord使用の経験年数や技術の成熟度などの「技術的要因」が多いことが示唆された.

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