理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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34 巻, 3 号
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原著
  • 齊木 理友, 藤田 和樹, 久保 直之, 尾島 朋宏
    2019 年 34 巻 3 号 p. 277-282
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕TKA術後の遊脚期の膝関節屈曲角度と前遊脚期の膝関節周囲筋活動との関係を検討した.〔対象と方法〕対象はTKAを施行した24膝とした.歩行中の膝関節角度は,歩行側方からの動画上で測定した.筋電図の導出筋は,術側の大腿直筋と外側広筋,大腿二頭筋とした.歩行評価は術後4週に行った.歩行各相の相対的筋活動および同時活動指数と,爪先離地時と最大屈曲時の膝関節角度との間の関係を解析した.〔結果〕遊脚期の膝関節最大屈曲角度と,前遊脚期の大腿直筋の相対的筋活動および外側広筋と大腿二頭筋の同時活動指数に中程度の相関を認めた.〔結語〕前遊脚期中の大腿直筋の過活動および外側広筋と大腿二頭筋の過剰な同時活動が,Stiff-knee gaitの原因になり得ることが示された.

  • 小暮 英輔, 原 毅, 阿部 勉, 大沼 剛, 森山 隆, 坂田 知子, 角 大輔, 藤井 泰成, 甲斐 紀章
    2019 年 34 巻 3 号 p. 283-286
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕訪問リハビリテーション(訪問リハ)対象者に我々が立案した転倒予防プログラムを実施し,介入効果を検証することを目的とした.〔対象と方法〕対象は,訪問リハを実施し,室内歩行が自立している利用者14例とした.方法は,転倒予防プログラムを週1回の訪問時に実施し,4週間継続した.介入前後でShort Form Berg Balance Scale(SFBBS)とFunctional Reach test(FR)を評価し,バランス能力に差があるかを比較した.〔結果〕SFBBS,FRとも介入後に有意に向上を認めた.〔結語〕我々が立案した転倒予防プログラムはバランス能力向上の一助になる可能性が示唆された.

  • 青栁 達也, 菅沼 一男, 金子 千香, 眞保 実
    2019 年 34 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕神経症傾向の学生が訴える身体的,精神的な症状について調査した.〔対象と方法〕平成27年2月に4年制大学の理学療法学科に在籍する1年生88名.集合調査法にて,コーネル・メディカル・インデックスを実施した.〔結果〕正常群と神経症傾向群の群間比較の結果,既往歴,習慣以外の下位尺度で差を認め,神経症傾向群が有意に高値を示した.〔結語〕神経症傾向の学生は,精神的症状では少しのことで腹を立て気分を害する一方で,気分が落ち込みやすいなど感情の起伏が激しい特徴があり,身体的症状では視覚や息苦しさ,頭痛,疲労など様々な症状を訴えることが明らかとなった.このような訴えがある学生は神経症傾向である可能性があり,配慮が必要であると考えた.

  • 守田 裕貴, 横井 裕一郎
    2019 年 34 巻 3 号 p. 293-297
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕運動誤差を評価するために考案したStep length testを用い,再現性と視覚情報の有無が脳性まひ者の下肢の運動へ与える影響について検討した.〔対象と方法〕脳性まひ者11名(男8名,女3名,年齢44.2 ± 12.2歳)と健常者19名(男10名,女9名年齢20.5 ± 1.0歳)とした.実際距離,1.2倍距離,0.8倍距離を視覚ありと視覚なしに分け,誤差を測定した.再現性は級内相関係数,標準誤差,最小化検変化量を算出した.〔結果〕再現性は,両群共に級内相関係数が0.7以上の高い数値であった.運動誤差は脳性まひ者が健常者と比較して有意な差が認められた.〔結語〕脳性まひ者は,健常者と比べ下肢の振り出し動作におけるボディーイメージに障害を有することが明らかとなった.

  • 鈴木 啓介, 加茂 智彦, 新津 雅也, 大武 聖, 齋藤 孝義, 黒澤 和生
    2019 年 34 巻 3 号 p. 299-302
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕本研究の目的は2型糖尿病患者の歩行機能が低下する時期を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は教育入院した2型糖尿病患者141名とし,30歳代から70歳代まで10歳ずつに群分けした.評価指標は自己快適歩行速度による10 m歩行テスト中の,歩行速度,歩幅,ケイデンス,身体動揺性とし,年代別の比較として多重比較検定を実施した.また,年齢を共変量とした共分散分析を実施した.〔結果〕結果は各年代と比較して60歳代以上で歩幅の有意な低下を示した.70歳代以上では歩行速度の有意な低下,身体動揺性の有意な増加を認めた.また,共分散分析では全ての項目,年代で有意差を認めなかった.〔結語〕2型糖尿病患者は60歳代より歩行機能が低下し始める可能性が示唆された.

  • ─簡易的な機能テストを用いた評価─
    遠藤 康裕, 坂本 雅昭
    2019 年 34 巻 3 号 p. 303-308
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕簡易的なテストを用いて機能評価を行い,投球時痛を有する選手の身体特徴を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕対象は中学生野球選手27名とし,投球時痛の有無で2群に分けた.テストは,ショルダーモビリティ,Finger Floor Distance,Heel Buttock Distance(HBD),股関節内旋,しゃがみ込み,片脚立位,フォワードベンド,フォワードベンチ,サイドベンチとした.〔結果〕疼痛群では対照群に対して,HBD,股関節内旋,フォワードベンドで有意に陽性者が多かった.〔結語〕投球時痛を有する選手では,大腿四頭筋柔軟性低下,股関節内旋可動域制限,動的立位バランスの低下を有することが示唆された.

  • 氏川 拓也, 古我 知成
    2019 年 34 巻 3 号 p. 309-312
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕定常負荷運動後のクーリングダウン(CD)が自律神経に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕健常成人男性10名を対象とし,心肺運動負荷試験により嫌気性代謝閾値(AT)を決定し,後日,ATでの定常負荷運動20分間実施後,AT強度の50%(AT50)もしくは75%(AT75)のCD,静止座位を10分間行わせた.心電図より高周波成分(HF)と低周波成分(LF)を算出した.〔結果〕CD終了前,AT75では運動前に比べ,HFが有意に減少し,LF/HFの有意な増加が認められた.一方,静止座位とAT50ではHFおよびLF/HFは運動前と比較して有意な差は認められなかった.〔結語〕AT75と比べて,AT50は自律神経系の安静時レベルへの回復が速いことが示唆された.

  • ─stop signal抑制課題を用いて─
    植田 智裕, 引野 伽乃, 松浦 治希, 兒玉 隆之
    2019 年 34 巻 3 号 p. 313-318
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕健常者における抑制課題実行時の脳神経活動を,脳内情報処理過程が反映される脳波解析により時間的,空間的な側面から脳神経活動部位および神経機能的連関性の両者について検討した.〔対象と方法〕対象は健常男子学生20名とした.方法は視覚性3刺激オドボール課題を用いて,脳波ERP成分をLORETAにて解析した.〔結果〕抑制課題実行時は左楔前部,左眼窩前頭皮質に有意に高い神経活動を認めた.さらに,左前頭極,左運動前野および左下頭頂小葉の三領域に抑制課題実行時に有意に強い神経機能的連関性を認めた.〔結語〕抑制課題実行時は,認知機能を反映する脳波ERP成分を認め,また本機能には,左楔前部や左眼窩前頭皮質の脳神経活動が関連し,さらに前頭葉のみならず頭頂葉との協応による判断や予測的な活動を基盤として実行されることが示唆された.

  • 内尾 優, 志真 奈緒子, 猪飼 哲夫, 内山 温, 楠田 聡
    2019 年 34 巻 3 号 p. 319-323
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕脳性麻痺重症度と早期運動獲得時期との関連性を明らかにする.〔対象と方法〕対象は,極低出生体重児のうち脳性麻痺の診断を受けた17例とした.診療録より周産期因子,粗大運動獲得の有無を調査した.対象を脳性麻痺重症度である粗大運動機能分類システム(gross motor function classification system:GMFCS)により軽症例,重症例の2群に分類し比較した.〔結果〕周産期因子には差がなく,軽症例は重症例に比し修正9ヵ月での寝返りを獲得している児が多かった.〔結語〕早期の運動獲得時期を評価することは,脳性麻痺重症度を早い段階で予測する一助となる可能性が示唆された.

  • 國枝 洋太, 石山 大介, 西尾 尚倫, 三木 啓嗣, 山田 拓実, 足立 智英, 星野 晴彦
    2019 年 34 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕基本動作に介助を要する急性期脳卒中患者における肺炎合併の予測因子を検討した.〔対象と方法〕対象は急性期脳卒中患者111名(肺炎合併群17名,非合併群94名)とした.入院時のデータから肺炎合併の予測因子を多重ロジスティック回帰分析によって抽出し,ROC曲線を用いてカットオフ値を算出した.〔結果〕肺炎合併率は15.3%であり,予測因子として入院時NIHSS,整形疾患,認知症が抽出された.また,入院時NIHSSにおける肺炎合併のカットオフ値は,12.5点であった.〔結語〕急性期脳卒中患者の肺炎合併には,脳卒中重症度だけでなく,整形疾患や認知症などの併存疾患も重要な予測因子であることが示唆された.

  • 田代 大祐, 中原 雅美, 田中 香織, 室岡 真弘, 原口 健三
    2019 年 34 巻 3 号 p. 331-335
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕MMSE・MoCA-Jを使用し,高齢者における年代間の認知機能の違いについて比較検討した.〔対象と方法〕地域在住の高齢女性48名の認知機能をMMSE・MoCA-Jにて評価した.年齢を4群(75-79歳,80-84歳,85-89歳,90歳以上)に分類し,MMSEとMoCA-Jの総得点および下位項目得点を比較した.〔結果〕MMSE,MoCA-Jでは「計算」,MoCA-Jでは「Trail Making」において,加齢に伴う低下が認められた.〔結語〕高齢者の認知機能測定において,MMSEおよびMoCA-Jを使用し,下位項目を年代別に比較することで年代に応じた詳細な分析が可能となることが示唆された.

  • ─Pittsburgh Sleep Quality Indexを用いた学年間比較─
    石倉 英樹, 大塚 彰
    2019 年 34 巻 3 号 p. 337-340
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕本研究の目的は理学療法士養成校における学生の睡眠習慣について,学年間の影響について明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は理学療法学専攻学生の1~4年生とした.ピッツバーグ睡眠質問票日本語版を用い,最近1ヵ月間の睡眠について調査を行った.〔結果〕1,2年生と比較して3,4年生では「入眠時間」,「睡眠効率」,「睡眠困難」の項目で悪化しており,睡眠障害が発生していた.〔結語〕学年が上がるにつれ睡眠障害が発生しており,睡眠習慣に関する指導の必要性が示唆された.

  • 宮地 司, 河村 顕治
    2019 年 34 巻 3 号 p. 341-345
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕閉運動連鎖(CKC)は,前十字靭帯(ACL)再建術後のリハビリテーションに有効とされているが,臨床における筋力評価の多くは開運動連鎖(OKC)で行われている.そこで,本研究はCKCでの筋力測定法の開発を目的とした.〔対象と方法〕健常成人を対象に,開発した等速性CKCでの筋力測定法の信頼性について検討を行った.次にCKCでの下肢伸展およびOKCでの膝伸展のピークトルク(PT)について関係性を検討した.〔結果〕測定の信頼性は良好な値であった.PT値は,CKCはOKCの約2倍と有意に高値を示し,両者は強い相関関係を示した.〔結語〕等速性CKCでの下肢筋力評価は,ACL再建術後患者においても安全に行える可能性を示唆した.

  • 秋山 陽子, 根地嶋 誠, 西田 裕介
    2019 年 34 巻 3 号 p. 347-351
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕安静時における核心温と,骨格筋量および交感神経機能との関係を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象は,若年健常男性16名(年齢19~28歳)とした.核心温は口腔温を,骨格筋量は四肢骨格筋量から算出した骨格筋指数を,交感神経機能は心拍数計で得たRR間隔データを周波数解析して求めた超低周波成分を指標とした.骨格筋量の測定後,安静30分間の心拍数を計測し,続いて婦人用電子体温計で口腔温を5分間実測した.〔結果〕安静時核心温と骨格筋量に有意な正の相関関係が認められた.安静時核心温と交感神経機能には相関関係は認められなかった.〔結語〕若年健常男性における安静時の核心温の高さに,骨格筋量が関係することが明らかになった.

  • ─肯定的と否定的な言い回しによる比較─
    喜多 一馬, 池田 耕二
    2019 年 34 巻 3 号 p. 353-357
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕理学療法時の肯定的,否定的な声かけの言い回しの違いによる視覚的文字教示が患者の意欲に与える影響をランダム化した枠組みで明らかにすること.〔対象と方法〕対象は,入院患者 102 名(男性 31名,女性71 名,年齢 75 ± 12.3 歳)とした.紙面によるアンケートにて,トイレ,歩行,疼痛,理学療法全般,退院の5つの場面を想定し,各場面で肯定的,否定的な2つの言い回しを設定し,意欲の向上がみられるかを調査し,比較した.〔結果〕歩行を除く4つの場面において,肯定的な言い回しによって患者の意欲の向上を認めた.〔結語〕ランダム化した枠組みの調査においては,いくつかの場面で肯定的な言い回しで,患者の意欲を向上させることが示唆された.

  • 湖東 聡, 関屋 曻, 加茂野 有徳
    2019 年 34 巻 3 号 p. 359-365
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕立位スタンス幅と歩行開始プロセスの関係を,重心,床反力,キネマティクスおよび関節トルクの側面から明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕健常成人男性6名とした.3つのスタンス幅条件の立位(閉足位,開脚位15 cm,開脚位30 cm)から,普通の速度で歩き始めた.3次元動作解析装置と床反力計を用いて,重心,足圧中心,股関節角度・トルクを求めた.〔結果〕歩行開始時においてスタンス幅が大きいほど,1歩目の歩隔および側方への足圧中心と重心の移動量は大きく,支持脚股関節内転角度と外転トルクは小さかった.〔結語〕スタンス幅は歩行開始時の支持脚と1歩目振出脚のプロセスに影響を与えることが明らかとなった.

  • 鶴見 知己, 小野田 公, 久保 晃
    2019 年 34 巻 3 号 p. 367-370
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔背景〕幼児期の肥満の原因の一つに身体活動(PA)の減少が考えられ,小児においてもPAは生活習慣病のリスク因子,肥満や体力などの健康関連指標と関連する.本研究は幼児期における身体活動量と体組成の関係を明らかにすることとした.〔対象と方法〕保育園の年長クラスの幼児を対象とし,PAと脂肪量指数(FMI)と除脂肪量指数(FFMI)を測定した.FMI,FFMIはInbody520(バイオスペース社製)を使用し,活動量の測定は,Active Style Pro(オムロンヘルスケア社製)を腰につけ7日間測定した.1.5~3.0 METsを低強度活動時間,3.0 METs以上を中高強度活動時間(MVPA)に分けた.〔結果〕MVPA とFFMIと歩数とFFMI,MVPAとカウプ指数,歩数とカウプ指数に有意な負の相関を認めた.平日のMVPAと比較し休日のMVPAは有意に低値を示した.〔結論〕身体活動が多い幼児において体格指数やFFMIが低値であり,身体活動とFFMI,体格指数が関連することが示唆された.平日よりも休日において有意にMVPAが低下することが示唆される.

  • 南場 芳文, 弘津 貴章, 部谷 有紗, 田中 美能留, 藤江 亮介, 稲田 奈津実, 松浦 晃宏, 中祖 直之, 近藤 至宏, 松浦 祐治 ...
    2019 年 34 巻 3 号 p. 371-375
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    〔目的〕理学療法士,作業療法士,言語聴覚士による治療を受けた患者の処方薬の内容より,リスクマネージメントのために必要な知識を分析すること.〔対象と方法〕4つの医療機関で2016年7月と2017年7月の2回,調査実施日にPT,OT,STのいずれかを受けた患者の医療記録および,お薬手帳から抽出した処方薬を分析した.〔結果〕2016年度では406名に51種類2809薬剤名,平均6.92剤/名(回収率48.9%),2017年度は334名に55種類2908薬剤名,平均8.70剤/名が(回収率49.7%)処方されていた.〔結語〕転倒の原因となりやすいものやバイタルサインの変化を注意深く行いながら運動を遂行していく必要がある処方薬が確認された.処方薬から考察された臨床薬学の知識に基づいたリスクマネージメントは重要である.

症例研究
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