理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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26 巻, 6 号
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原著
  • 中村 睦美, 水上 昌文
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 725-730
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕水中抵抗を利用した膝周囲筋トレーニング時の筋活動の特性を明らかにすることである.〔対象〕健常成人男性11 名を対象とした.〔方法〕水中での膝伸展屈曲運動と陸上での等速性機器を用いた等速性運動,重錘負荷による運動,スクワット運動,レッグプレス運動時において表面筋電図を基に算出された大腿四頭筋とハムストリングの筋活動と同時収縮率を検討した.〔結果〕水中課題では動作開始時には主動筋の強い求心性収縮がみられたが,動作半ばより拮抗筋の遠心性収縮が同程度まで増大し同時収縮率が高値を示し,最終可動域では強い遠心性収縮がみられた.〔結語〕水中抵抗を用いることによる早期に主動筋と拮抗筋の同時収縮が大きくなるという特性は,膝周囲筋トレーニングに有効である.
  • 石田 和宏, 対馬 栄輝, 梅野 恭代, 佐藤 栄修
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 731-737
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,brief scale for evaluation of psychiatric problems in orthopedic patients (BS-POP)における測定の信頼性を求めることとした.〔対象〕BS-POPには,“患者用”と“治療者用”が存在する.対象は,“患者用”で慢性腰痛者10名,“治療者用”で腰椎椎間板ヘルニア患者42名とした.〔方法〕“患者用” と“治療者用”の検者内・検者間信頼性を求め,各質問項目別ではκ係数,順位相関係数,一致度を指標とした.〔結果〕“患者用”のICC(1,1)は0.98,“治療者用”のICC(1,1)は0.90,“治療者用”のICC(2,1)は0.87であった.質問項目別では“治療者用”における検者間信頼性の2項目を除き,κ係数あるいは順位相関係数にて中等度以上の相関または81%以上の高い一致度を示した.〔結語〕BS-POPにおける測定の信頼性は全般的に良好であった.しかし,“治療者用”の一部の項目では,検者間信頼性が低かった.
  • 河合 克尚, 長谷部 武久, 堀 信宏
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 739-742
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕若年男性の腹部肥満に関連のある体力因子を明らかにするため,腹囲と体力因子の関連性について検討した.〔対象〕健常若年男性20名(平均年齢22.1±3.5歳)とした.〔方法〕測定項目は,身体所見として身長,体重,腹囲とした.体力の評価には,文部科学省による新体力テスト(6項目)を用いた.腹囲と各体力因子(握力,上体起こし,長座体前屈,反復横とび,20 mシャトルランから推定した最大酸素摂取量,立ち幅とび)の関連を検討するため,Pearsonの積率相関係数を用いて分析した.〔結果〕腹囲と有意な相関が認められた体力因子は最大酸素摂取量であった.〔結語〕若年男性において,腹囲と最大酸素摂取量の相関が認められたことにより,若年男性の腹部肥満の要因として全身持久性体力が関係している可能性が示唆された.
  • ─健常者での片麻痺擬似姿勢のシミュレーション─
    渡部 潤一, 白石 麻貴, 田内 秀樹, 鴻上 繁
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 743-746
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕健常者において,片麻痺姿勢を擬似的に作り,前方リーチ距離,座位から立位への動作の後,立位バランスにどう影響を及ぼすのか検証した.〔対象〕健常者な男女28名である.〔方法〕座位姿勢は自然条件と脳卒塞条件の2種類実施し,前方リーチ距離と閉眼片脚立位時間を比較検討した.〔結果〕前方リーチ距離,閉眼片脚立位時間ともに自然条件において有意に高値を示していた(p<0.01).〔結語〕片麻痺姿勢をシミュレーションすることで座位バランス,動作後の立位バランスが自然条件より低下するということが示唆された.すなわち,理学療法実施時に姿勢を修正して座位練習を行う重要性が伺われ,立ち上がりや移乗動作を行うにあたり良肢位に誘導することで,より良い動作を獲得できる可能性があることが示唆された.
  • 千代丸 正志, 山本 澄子
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 747-751
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕静止立位姿勢において踵骨外反が上部体幹,骨盤,下肢各関節,身体重心位置に与える影響を三次元的に明らかにすることである.〔対象〕健常成人男性12名とした.〔方法〕三次元動作解析システムと床反力計を使用して,静止立位姿勢の計測を行った.5°,10°,15°の傾斜板を作成し,傾斜板上での静止立位姿勢を計測し,傾斜板なし時の静止立位姿勢との違いを検討した.〔結果〕傾斜板角度の違いに伴い踵骨外反角度,踵骨前傾角度,足関節背屈角度,下腿セグメント内旋角度は有意な差を示し,下肢運動連鎖に基づく結果となった.身体重心位置は傾斜板角度の増加に伴い前方へ偏移した.〔結語〕傾斜板なしから傾斜板角度10°までは足関節を中心とした姿勢制御が行われ,15°では股関節と骨盤を含めた姿勢制御が行われることが示唆された.
  • ─呼吸時体積変化の分析から─
    正保 哲, 山本 澄子
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 753-757
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脊柱後彎姿勢が胸郭運動に与える影響を部位別の体積変化から評価することを目的とした.〔対象〕対象は,若年男性12名とした.〔方法〕3次元動作解析装置による体表マーカーの変位量から算出された胸郭の体積変化を直立座位,後傾座位の2姿勢間で比較した.〔結果〕直立安静座位に比べ直立座位の深呼吸では胸骨切痕~剣状突起レベル,後傾座位の深呼吸では剣状突起~臍レベルでの体積変化が特に有意に大きかった.〔結語〕脊柱後彎姿勢では, 呼吸時に剣状突起より上の胸郭の体積変化が減少することが,換気量低下の要因である可能性が示唆された.
  • 吉田 忠義, 梁川 和也, 半谷 泰章, 矢崎 祥一郎, 渡辺 有佳莉, 藤澤 宏幸
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 759-762
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕異なる階段昇段パターン(一足一段,二足一段)における鉛直方向への重心移動速度(速度)と階段昇段時の酸素摂取量(VO2)および運動効率(NE)の関係を明らかにすることを目的とした.〔対象〕健常成人30名を対象とした.〔方法〕階段(傾斜角30°)昇段条件は一足一段と二足一段,速度条件は3.5 m/min,7.0 m/min,10.5 m/minとした.各測定条件で昇段時間は3分間とし,昇段時のVO2および心拍数(HR)を測定し,NEを算出した.VO2,METs,HR,NEに対して昇段パターンと速度を2要因として二元配置分散分析を行った.〔結果〕両昇段条件ともVO2,HR,NEは速度に依存して増加した.一方,速度3.5 m/minのVO2は一足一段が二足一段よりも高い値を示したが,速度10.5 m/minのVO2は二足一段が一足一段よりも高い値を示した.〔結語〕速度とVO2の関係における一足一段と二足一段の差異の形成には,NEが関係していることが示唆された.
  • 蛭間 基夫
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 763-767
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕今後の住宅改善におけるPTの役割や専門性を検討する基礎とするために現在のPTの住宅改善への介入実態やその意識について明らかにする.〔対象と方法〕対象は無作為に抽出した全国の3,795名のPTで,調査票を郵送にて配布,回収した(期間は2010年8月から2ヶ月間).結果の分析は単純集計により高低を比較した.〔結果〕住宅改善の経験のあるPTは76.1%であるが,09年度の介入件数は「0件」の割合(22.9%)が最も高い.また,住宅改善でのOTとの役割に相違はないとするPTの意識が高い一方で,介入にはPTとOTは連携すべきとする割合が9割に達している.〔結語〕OTとの役割に相違がないとする一方で,PTは住宅改善におけるOTの専門性を求めていることが示唆された.従って,PTの役割を検討するためには,OTを対象とする調査も今後必要である.
  • ─下肢での床押し力,身体特性,体幹機能,バランス機能に着目して─
    新井 清代, 芳野 純, 宮澤 満, 丸山 仁司
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 769-772
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕寝返り動作時,体幹パターンを変化させる関連因子(下肢での床押し力,身体特性,体幹機能,バランス機能)について統合的に検討した.〔対象〕若年健常者の計47名(男35女12)を対象とした.〔方法〕対象者の身体特性,体幹機能,バランス機能を評価した.また,全対象者に右側への寝返り動作を行わせ,体幹パターン分類を行うとともに,下肢での床押し力も測定した.さらに,体幹パターンを従属変数,他の測定項目を独立変数とし,ステップワイズ法による判別分析を行った.〔結果〕下肢での床押し力,胸腰椎部側屈角度の因子で体幹パターンを分類することができた.〔結語〕寝返り動作分析を行う際,体幹パターンを変化させる要因として下肢での床押し力,胸腰部側屈角度を考慮する必要がある.
  • 三浦 和, 黒澤 和生, 廣瀬 真人, 鈴木 知也
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 773-776
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法治療において,圧迫という機械的刺激の効果がさまざま報告されているが,適度な圧迫強度,時間を数値化して示す研究は行われていない.痙縮患者への応用を考え,痙縮の程度を表すとされる脊髄運動神経興奮性を最も抑制する圧迫強度,時間を明らかにするための基礎的資料を得ることが,この実験の目的である.〔対象〕健常成人の大学生16名.〔方法〕誘発筋電図,超音波診断装置を用いて,10,30,50,100 mmHgの圧をヒラメ筋に対し加えながら,H波と血流量の測定を行った.〔結果〕50 mmHgの圧で5分の圧迫が血流量を阻害せず,脊髄運動神経興奮性を最も抑制する効果をもつことが認められた.〔結語〕健常成人において,50 mmhg 5分間の圧迫を加えると,脊髄運動神経興奮性の抑制が可能であることが明らかとなった.
  • 山下 弘二, 柿崎 彩加
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 777-780
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,施設入居中の高齢者に対しEMST(Expiratory muscles strength training)プログラムが随意的咳嗽力に及ぼす効果について明らかにすることを目的とした.〔対象〕対象者はケアハウスに入居している高齢者21名とし,EMSTプログラムを行ったEMST群10名(年齢80.6±8.6歳)と対照群11名(年齢76.7±9.3歳)に分けた.〔方法〕EMSTのプロトコールは,呼気筋訓練器(Threshold® PEP)を用い, 最大呼気圧の50%の圧力に設定し, 15回2セットを1日に2回,5週間実施した.測定項目は最大呼気圧,最大吸気圧,努力性肺活量,一秒量,最大呼気流速,最大咳嗽流速とした.〔結果〕5週間後に,対照群は全ての測定項目で有意な変化は認められなかったが,EMST群は最大呼気圧,最大呼気流速,最大咳嗽流速に有意な増加が認められた.〔結語〕本研究により施設入所の高齢者に対するEMSTは,呼気筋力が大きく関与している随意的咳嗽力を高めるための効果的なプログラムであることが示唆された.
  • ─羽状角,筋厚,筋束長の経時的変化─
    曽田 直樹, 石田 裕保, 池戸 康代
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 781-784
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,超音波を用いて疲労課題中及び課題後の外側広筋の羽状角・筋厚・筋束長の変化を明らかにすることとした.〔対象および方法〕健常成人女性12名に対して疲労課題として75%MVCの条件で等尺性膝伸展運動を行わせ,疲労課題中および課題後の羽状角,筋厚,筋束長,RMSを測定した.〔結果〕疲労課題前後の比較では,羽状角が疲労課題後に有意に増加していた.筋束長では,疲労課題後に有意に減少していた.また疲労課題中における形態学的変化では,羽状角が安静時と比較し疲労課題中で有意に増加したが,課題中の変化は認められなかった.また筋束長では,安静時と比較して疲労課題中に有意に減少したが,課題中の変化はなかった.RMSについては,課題の経過とともに増加する傾向があった.〔結語〕これらの知見は,筋疲労や肉離れ,筋力増強に対する評価や治療効果の指標となる可能性があり,今後さらなる研究が必要であると思われる.また超音波がリアルタイムに筋疲労時の形態学的変化を観察することができ,筋の機能を客観的に評価する有効なツールである可能性が示唆された.
  • ─相互相関係数を用いた比較─
    大坂 裕, 渡邉 進, 藤田 大介, 石田 弘, 小原 謙一, 吉村 洋輔, 伊藤 智崇, 新小田 幸一
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 785-789
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,歩行分析における最適な加速度計装着部位を同定することを目的とした.〔対象〕健常成人男性15名とした.〔方法〕快適歩行にて鉛直・前後・左右成分の体幹加速度と床反力を同時に測定した.加速度計は第10胸椎(Th10),第3腰椎(L3),第2仙椎(S2)に装着した.左右下肢合成床反力と加速度より算出した床反力推定値との一致度の指標として,3つの装着部位での相互相関係数(CC)により比較した.〔結果〕鉛直・前後成分のCCはL3にて最も高く,左右成分のCCはいずれも低かった.〔結語〕歩行分析では加速度計をL3に装着することにより,鉛直・前後成分では実際の床反力に近似した波形パターンを得られることが示された.
  • 今井 丈, 丸山 仁司
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 6 号 p. 791-795
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/04
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,脛骨の捻れの指標となる果部捻転角の計測法について,検者内・検者間信頼性を検討することを目的とした.〔対象と方法〕対象は健常学生11名(22脚)男子8名,女子3名(年齢19.4±1.1歳)とした.検者は計測経験の異なる3名により計測を行った.信頼性の検討には級内相関係数(ICC)とBland-Altman分析を用いた.〔結果〕検者内信頼性に関して,1日目は計測経験のない検者ではICC(1,1)=0.31–0.41と低い値を示したが,2日目は計測を経験した有資格者で0.74と高い値が得られた.両日とも系統誤差は認められなかった.検者間信頼性に関しては,1日目は各検者間でICC(2,1)=0.28–0.48と低い値を示したが,2日目の計測値では有資格者検者間で0.83–0.84と高い値となった.Bland-Altman分析では,1日目は加算誤差が認められたが,2日目は認められなかった.〔結語〕今回の果部捻転角の計測法では,検者内・検者間信頼性は十分に定義された測定肢位と骨指標の正確なマーキング下においては,計測経験や熟練度で異なることや臨床評価としての有用性が示唆された.
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