理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
12 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 小畑 和也, 佐野 正和, 才田 浩之, 守山 成則, 畑 明美, 前田 真一, 影近 謙治, 菊地 尚久, 八幡 撤太郎
    1997 年 12 巻 4 号 p. 171-174
    発行日: 1997年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    寛骨臼回転骨切り術(以下RAO)は,臼蓋形成不全の観血的治療として,良好な成績を得ているが,非術側の関節症性変化の進行を危惧する報告もある。この研究の目的はRAO術後患者において術側での荷重が十分行われているかを確認するとともに,術側荷重率の経時的変化及び術後何年で十分な荷重が獲得されてくるかを調べることであった。対象は,RAO術後患者42名(42関節)の術側・非術側荷重率を足底圧分布測定装置にて測定し,術後年数により,4群に分類した。この結果,術後2年以内の患者群では術側での荷重率が有意に少なく,術後年数が経過するにつれ50%に近似する傾向にあったが,術後3年以上経過した患者群の中には,術側での荷重がおこなわれず,対側の手術を受けたり,また,術適応があると診断されている者も少数認められた。これらの結果から,より早期に術側・非術側の荷重率を50%に近似させる必要があると考えられた。
  • 高橋 哲也, 網本 和
    1997 年 12 巻 4 号 p. 175-178
    発行日: 1997年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    足底面に一定速度で傾斜刺激を与え,立位保持能力の加齢的変化,方向の異なる傾斜刺激時立位姿勢反応,および視覚情報への依存度を検討した。対象は若年者10例(平均年齢24.9歳),中高年者10例(平均年齢65.4歳)で開眼及び閉眼にて,静止条件,前後傾斜条件,側方傾斜条件を行った。結果は次の通りであった。(1)重心移動分散は中高年群が若年群に比べやや大きい値を示したが,有意ではなかった。(2)両群ともに閉眼時に重心移動分散は有意に高値を示した。(3)傾斜刺激,視覚遮断刺激を与えることで足圧中心は前方へ移動する傾向があった。(4)開眼時には傾斜刺激の違いによって重心移動分散に差はなかったが,閉眼時には前後傾斜刺激が側方傾斜刺激より大きかった。以上のことから,今回の足底面を毎秒1度の速度で傾斜させたときの立位保持能力は,若年・中高年群間でさほど差が認められず,また両群において前後傾斜刺激時の立位姿勢は側方傾斜刺激時より視覚情報に依存することが示唆された。
  • 池添 冬芽, 浅川 康吉, 羽崎 完, 神先 秀人, 入江 清五, 河野 一郎, 森永 敏博
    1997 年 12 巻 4 号 p. 179-181
    発行日: 1997年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    養護老人ホーム利用者80名を対象として,起居移動動作の自立状況および膝伸展筋力を測定し,起居移動動作の自立に必要な膝伸展筋力について検討した。対象者を階段昇降,入浴動作,歩行,トイレ動作,車椅子からベッドへの移乗動作の5項目に関して,Barthel indexのMobility indexを用いて,自立している群と介助を要する群とに分類した。膝伸展筋力は徒手保持型マイオメーターで測定した最大等尺性膝伸展筋力を体重比百分率に換算し,左右両側の合算値であらわした。起居移動動作の各項目について自立群と介助群との膝伸展筋力を比較すると,すべての項目で自立群は介助群よりも有意に大きい値を示した(p<0.01)。判別分析の結果,自立群と介助群とを判別する膝伸展筋力値は階段昇降で体重の約48.5%,それ以外の項目で44~45%程度と考えられた。これらの筋力値は高齢者において起居移動動作が自立するために保つべき膝伸展筋力の目安になると考えられる。
  • 神原 孝子
    1997 年 12 巻 4 号 p. 183-186
    発行日: 1997年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    今回,片麻痺患者(17名)に対し,5日間にわたり継続してPCIの測定を行い,その有用性について検討を行った。被験者はPCI測定値から,022から0.60のA群と1.39から5.02のB群に分けられた。A群では1名を除いて日常の移動が歩行であり,B群では1名を除いて車椅子を使用しており,PCI値の差は移動方法とほぼ一致した。また,歩行速度に関しても,A群においては20m/min以上でありB群に比較し速い傾向を示した。B群ではPCIの測定値のばらつきが目立ち,歩行頻度の少ない患者においては,心拍数,歩行とも安定した値が得られにくかった。このことから,片麻痺患者に対し,PCIの測定を行う際には,日常の活動量を考慮する必要があると思われた。片麻痺患者においては健常者に比較し,やや高値に目標値を設定することが必要であった。
  • ―慢性期例の治療効果から―
    玉木 彰, 岡野 勝正, 辻田 純三
    1997 年 12 巻 4 号 p. 187-192
    発行日: 1997年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    従来,脳卒中片麻痺患者の呼吸障害は拘束性障害が多いと報告されてきたが,それらに対する理学療法は,呼吸訓練器を利用したものが多く,長い訓練期間を要していた。我々は片麻痺患者の座位姿勢や体幹機能に着目し,その改善を目的とした1回の運動療法が呼吸機能に及ぼす効果を検討した。結果,%VC,胸郭拡張差は有意に増加した。これらは,片麻痺患者の呼吸機能障害が二次的に起こっている胸郭の可動性の低下や体幹筋の機能不全による横隔膜の機能低下なども要因として考えられた。それらの改善を目的とした全身的アプローチが必要であることが示唆された。
  • 斎藤 昭彦
    1997 年 12 巻 4 号 p. 193-199
    発行日: 1997年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    この論文の目的は股関節由来の痛みと腰椎由来の痛みの鑑別を記載することにある。臨床において股関節から大腿,膝にかけての痛みのマネージメントを行う場合,治療しようとする痛みが股関節における局所の解剖学的構造の異常による痛みであるのか,あるいは腰椎の解剖学的構造の異常による関連痛あるいは投射痛であるのかを鑑別することが不可欠である。この論文では,いくつかの局所的な問題と股関節と腰椎の鑑別のための特別なテストを記載した。
  • V.神経系疾患と臨床検査
    國井 麻里, 黒澤 美枝子
    1997 年 12 巻 4 号 p. 201-212
    発行日: 1997年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    種々の原因により神経系に障害がおこると,各種運動障害,感覚障害,自律機能障害がおこる。本稿では中枢神経系並びに末梢神経系の機能の評価法一般を紹介すると共に,代表的な中枢神経系疾患として脳卒中とパーキンソン病,末梢神経系疾患としてニューロパチーと重症筋無力症を取り上げ,機能検査に現れる異常について概説した。
  • III.パーキンソン病および糖尿病治療薬
    鈴木 正彦
    1997 年 12 巻 4 号 p. 213-218
    発行日: 1997年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    薬物療法下の患者に理学療法を行うことも多いが,両療法は独立して作用するのではなく相互に影響しあう。本講座の3回目として,治療のために薬物療法と理学療法を併用する例としてパーキンソン病と糖尿病を取り上げた。パーキンソン病治療薬はドパミン作用薬と抗コリン作用薬に,糖尿病治療薬はインスリン製剤と経口糖尿病薬に分類される。これら薬物の効果と理学療法との関わりについて概説した。
feedback
Top