理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
25 巻, 1 号
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原著
  • 永井 将太, 奥山 夕子, 園田 茂, 新田 收, 登立 奈美, 坂本 利恵, 寺西 利生, 金田 嘉清
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ADL訓練用クリニカルパスを作成するために, FIMを用いてADL細項目の予測されるゴール(自立度)とその到達期間を解析した。〔対象〕回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者1479名を対象者とした。〔方法〕入院時のFIM運動項目合計点から対象者を9層に層別化し,各層ごとに各FIM運動細項目得点が自立に到達している患者の割合(以下,自立到達度)と,自立に到達するのに必要な期間(以下,自立到達期間)を解析した。〔結果〕入院時のADL障害の程度により特徴的な自立到達度と自立到達期間を示していた。〔結語〕これらの組み合わせを知ることで回復期リハビリ病棟へ入院する脳卒中片麻痺患者のADL訓練の指標となることが示唆された。
  • 桜井 進一, 坂本 雅昭, 中澤 理恵, 川越 誠, 加藤 和夫
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕下腿部の小型3軸加速度計による歩行分析の再現性を検討すること〔対象〕健常成人10名を対象とした。〔方法〕3軸加速度計を足関節外果と腓骨頭部に設置し,自由歩行及び歩行率を規定した歩行において歩行分析を行い,立脚期における垂直方向,前後方向,側方方向のピーク加速度とその踵接地からの時間及び踵接地時の加速度を求めた。〔結果〕再テスト法による級内相関係数(1.1)はピーク加速度及び踵接地からピーク加速度までの時間において規定歩行に比較し自由歩行で良好な再現性を示した。〔結語〕今回の加速度計を用いた自由歩行での歩行分析では,膝関節部の異常運動や不安定性の客観的評価指標として有用なパラメーターが得られると考えられた。
  • 吉澤 隆志, 松永 秀俊, 藤沢 しげ子
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕積極的に映像を流す形式(映像授業)と従来授業における授業意識の比較と,学習意欲との関係を検討した。〔対象〕某A専門学校理学療法学科学生(91名)とした。〔方法〕映像授業と従来授業とを実施し,映像授業における授業意識アンケート結果について因子分析を行い,両授業の下位尺度得点を比較した。また,映像授業における下位尺度得点と学習意欲アンケート結果との相関を調べた。〔結果〕映像授業における因子分析結果のうち第1因子(授業や将来に対する意欲)は,従来授業よりも下位尺度得点が高かった。また,第1因子は学習意欲の中でも特に内発的動機づけと学院への適応度との相関が見られた。〔結語〕映像授業は,従来授業よりも内発的動機づけや学院への適応度を高めることのできる授業形式であると考えられた。
  • ─健常成人における検討─
    甲斐 義浩, 村田 伸, 堀江 淳
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,健常成人男性における上肢挙上角と脊柱彎曲角(胸椎後彎角および腰椎前彎角)との関係について検討した。〔対象〕健常成人男性12名(平均年齢23.6±5.5歳)。〔方法〕上肢下垂位,90°,120°,150°,最大挙上位の5肢位における胸椎後彎角と腰椎前彎角を計測し,各挙上肢位で比較した。〔結果〕胸椎後彎角は,上肢下垂位から120°挙上位までと比較して150°挙上位と最大挙上位で有意な減少を示した。腰椎前彎角は,上肢下垂位と比べ150°挙上位以上で有意な増加を認めた。また,その増加の推移は上肢挙上角の増加に伴って概ね直線的に増加する傾向を示した。〔結語〕上肢挙上運動と脊柱彎曲角との関係は,挙上運動に伴って腰椎前彎角が概ね直線的に増加し,150°挙上位以上で腰椎前彎に加えて胸椎後彎角が有意に減少することで,上肢挙上運動に胸腰椎が相互的に貢献することが示唆された。
  • 年齢層により影響因子に差はあるか?
    池田 崇, 湯川 智子, 池嶋 浩二, 菅野 恵, 三浦 由紀子
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕急性期脳卒中を発症後介入初日にベッド上評価から自宅か転院かの転帰に及ぼす要因の分析と年齢による影響因子の違いを検討する。〔対象〕2007年1~6月までに脳卒中診療科に入院・リハビリテーションを行った112例。〔方法〕75歳未満60例(A群)と75歳以上51例(B群)に分類した。意識レベル,手指伸展の可否,食形態,Barthel Indexの食事・整容項目をベッド臥床にて評価し,転帰への影響の強さを年齢別に検討した。〔結果〕転帰への影響因子は,A群は手指伸展の可否(回帰係数=0.513),食形態(回帰係数=0.305)が影響因子であった。B群では手指伸展の可否のみが影響因子(回帰係数=0.348)であった。A群は有意に自宅退院が多かった。〔結語〕A群では手指伸展の可否,食形態が,B群では手指伸展の可否が影響因子で,年齢層により影響因子とその強度に差を認めた。以上から,介入初日ベッド上での手指伸展の可否・食形態・年齢が脳卒中発症早期の転帰を決定する上で重要な役割を果たしていることが示唆された。
  • ─検者内・検者間測定信頼性について─
    濱窪 隆, 明崎 禎輝, 野村 卓生, 佐藤 厚
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,体幹回旋可動域測定における検者内・検者間測定信頼性を明らかにし,骨盤固定の有無が測定信頼性に与える影響について検討した。〔対象〕被検者は28歳の健常成人男性1名,検者は10名とした。〔方法〕体幹回旋角度の測定は,骨盤固定の無しと骨盤固定有りでそれぞれ左右2回ずつ測定した。検者内信頼性は級内相関係数,検者間信頼性は1・2回目測定値の平均値と標準偏差から変動係数(Coefficient of variation:CV)を求め分析した。〔結果〕検者内信頼性は,骨盤固定の有無に関わらず高い信頼性を認めた(p<0.05)。検者間信頼性は骨盤固定無しでの左体幹回旋CV=22%,右体幹回旋CV=28%,骨盤固定有りでの左体幹回旋CV=17%,右体幹回旋CV=16%であった。〔結語〕体幹回旋可動域測定は検者間でばらつきを認めた。
  • ─閉鎖運動連鎖における膝関節屈曲筋の働きについて─
    吉澤 隆志, 松永 秀俊, 藤沢 しげ子
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕閉鎖運動連鎖でのハムストリングスの作用として,膝関節の伸展が考えられる。本研究の目的は,StrengthErgoにより測定した下肢伸展トルクと,Hand Held Dynamometerにより測定した膝関節屈曲筋力との相関を調べることである。〔対象〕下肢に問題のない健常成人22名とした。〔方法〕下肢伸展動作時の左右における体重比のピークトルクと,左右の体重比膝関節屈曲筋力を測定した。次に,左右の下肢伸展トルクと膝関節屈曲筋力との関係をスピアマンの相関係数を用いて調べた。〔結果〕左右の下肢伸展トルクと膝関節屈曲筋力との間に中等度の相関が見られた。〔結語〕臥位・座位レベルから立位レベルへ移行する目的,或いは,歩行速度向上目的にてハムストリングスに対し筋力訓練を行うことの必要性が示唆された。
  • 小山内 正博, 南島 大輔, 舘川 康任, 清水 弥生, 新井 美紗, 秋山 純和
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕立位時のアライメントが呼吸機能,運動耐容能に与える影響を検討することである。〔対象〕健常成人16名であった。〔方法〕ハーネスを装着し立位姿勢を胸腰椎,股関節が3段階に屈曲位を呈するよう設定した。立位姿勢は,身体の各マーカーから重心線までの距離を求めた。呼吸パターンは川俣らの5段階評価法,呼吸機能はスパイロメーターを用いて測定し,運動耐容能はシャトルウォーキングテストで評価し,立位姿勢との関係を検討した。〔結果〕呼吸パターンは,耳,肩,膝,外果の前方偏位で悪化し大転子の前方偏位で向上した。%肺活量,予備吸気量は,上半身重心の前方偏位で低下した。歩行距離は,耳,膝の前方偏位で減少した。〔結語〕これらの姿勢により呼吸機能が低下し,過剰な筋収縮により末梢の酸素摂取量が増加し運動耐容能が低下したと考える。立位姿勢と呼吸パターン,呼吸機能,運動耐容能の間に強い相関を認めた。立位姿勢が呼吸機能,運動耐容能に影響を及ぼすことが示唆される。
  • 古後 晴基, 黒澤 和生, 長谷川 敦子, 有賀 透仁, 秋吉 祐一
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕研究1は健常者の筋硬度を定量化し性差を検証することである。研究2は筋硬結を有する筋・筋膜痛症候群(Myofascial Pain Syndrome:以下MPS)において,筋疼痛と筋硬度との関連性を明らかにすることである。〔対象〕研究1では20歳代健常者52名とした。研究2では,病院受診者で画像検査・神経学的検査所見に異常がなく,慢性の腰痛を訴え最長筋に筋硬結を有する者44名とした。〔方法〕研究1では,最長筋,僧帽筋,大菱形筋の筋硬度を筋硬度計にて測定した。筋硬度の性差をt検定にて検証した。研究2では,筋硬度は筋硬度計にて測定し,筋疼痛は数値的評価スケール1)(numerical rating scale:以下NRS)にて測定した。筋疼痛と筋硬度との関連性をPearsonの相関係数にて検証した。〔結果〕研究1では,僧帽筋において,女性は男性と比較して有意に高い値を示したが,最長筋と大菱形筋においては,有意差は見られなかった。研究2では,筋硬結の筋疼痛と筋硬度との相関関係は弱かった。〔結語〕僧帽筋において,女性は男性と比較して筋硬度が高いことが分かった。筋硬結を有するMPSにおいて,筋疼痛の程度は筋硬度の程度に影響されないことが分かった。
  • 居本 健一, 上門 亜矢子, 千住 秀明
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕死腔負荷を用いた簡便な呼吸筋酸素消費量測定法の妥当性を検討すること。〔対象〕心肺機能に異常のない健常成人31名とした。〔方法〕呼気ガス分析器と1000 mlチューブからなる簡便な呼吸筋酸素消費量測定装置を用いて,健常者の横隔膜呼吸と胸式呼吸の呼吸筋酸素消費量を測定し,横隔膜呼吸による呼吸筋酸素消費量の減少が確認できるか検証した。〔結果〕横隔膜呼吸によって,呼吸筋酸素消費量が有意に減少することが確認された。〔結語〕簡便な本測定法が呼吸パターンによる呼吸筋酸素消費量の変化を反映できることが示唆された。
  • 下井 俊典, 谷 浩明
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,最小可検変化量(MDC)を用いて継ぎ足歩行テストの絶対信頼性を検討した。〔対象〕健常成人28名(年齢63.4±7.7歳)とした。〔方法〕被検者に5 mの継ぎ足歩行をさせ,次の2つの指標を検討対象とした。1) 所要時間(TGT),2) ミス・ステップ数の2倍をTGTに加えたもの(TGI)。両指標について,4つの異なる方法により算出した「測定の標準誤差(SEM)」から,4種のMDCの95%信頼区間(MDC95)を求めて,両指標の測定誤差を検討した。〔結果〕4種類の方法で求めたMDC95は,それぞれ3.4~3.5秒,4.1~4.3であった。〔結語〕TGTで3.4秒,TGIで4.1以内の変化は測定誤差によるものと判断できた。また両指標において,算出方法による測定誤差の差異は臨床応用上無視できるものであった。
  • 芳野 純, 臼田 滋
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕医療施設における理学療法士(以下PT)資格取得後の継続教育の実施状況を調査し,問題点と今後の課題を明確にする。〔対象〕PTが5名以上在籍する医療施設のPT責任者300名にアンケートを郵送し,返信のあった113名。〔方法〕継続教育の実施状況に関する質問紙表を用いた郵送法。〔結果〕7割以上の施設で新人に対する指導者がつき,約半数の施設で教育計画等が行われていたが,評価表や指導者の任命基準がある施設は少なかった。〔結語〕PTの継続教育は,経験的な指導が行われている可能性があり,到達目標やガイドラインが必要であると考えられる。
  • ─健常若年成人における裸足および脚長差モデルを用いた検討─
    山口 良太, 平田 総一郎, 土井 剛彦, 小松 稔, 牧浦 大祐, 黒坂 昌弘
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,健常若年成人における裸足および脚長差モデルの歩幅を,体幹加速度波形から推定し,実測歩幅との関係から歩幅推定の妥当性を検証することとした。さらに歩幅推定の検者間信頼性の検証を行い,体幹加速度波形を用いた歩幅推定の有用性を同時に検討した。〔対象〕健常若年成人40名〔方法〕踵接地の波形を,前後方向と垂直方向の加速度波形から同定し,推定歩幅と実測歩幅との相関関係を妥当性の指標として,裸足と脚長差モデルの2条件で検証した。また,歩幅推定の信頼性の検証は,級内相関係数を用いて検証した。〔結果〕推定歩幅と実測歩幅の関係は,歩幅裸足,脚長差モデルともに強い相関関係が認められ,歩幅推定の妥当性が示唆された。また,検者間信頼性は高い信頼性を示した。〔結語〕加速度波形を用いた歩幅推定は,簡便であり,妥当性,信頼性の高い方法であることから,臨床における歩行解析への応用が期待される。
  • 田村 陽, 三浦 早織, 池田 光範, 岡田 彩, 木村 美陽, 高橋 絵利奈, 丹 栄美子, 中澤 明紀, 佐々木 誠
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,片膝しゃがみ位で床面から重量物を持ち上げる際に,下肢の機能の左右の相違が床反力に与える影響について検討することである。〔対象〕対象者は,平均年齢20.5±3.6歳の学生30名である。〔方法〕ボールを蹴る側の脚を利き脚と規定し,利き脚と非利き脚の等尺性膝伸展筋力,利き脚を前にした場合と非利き脚を前にした場合の片膝しゃがみ位を開始肢位とし,床面から重量物を持ち上げる際の床反力を測定した。〔結果〕膝伸展筋力には,利き脚と非利き脚との間で有意差は認められなかった。利き脚と非利き脚をそれぞれ前に出した時の床反力には,Fz,Fx,Fyのいずれも有意差は認められなかった。FxおよびFyと左右の筋力の間には有意な相関は認められなかった。Fzについては,筋力との間に有意な相関が認められたが,利き脚を前にした場合の方が非利き脚を前にした場合よりも相関が比較的強かった。〔結語〕以上より,利き脚は動作を行う際に純粋に筋力を反映させることが可能な,いわば器用な脚と推察された。それに対して,非利き脚は純粋に筋力のみを動作に反映することはできず,巧緻性や協調性などの影響を受け運動を調節するために他の要素も必要となる,いわば器用さの劣る脚であると考えられた。
  • ─身体前傾・復位動作特性と力学的パラメータの関連性について─
    石田 水里, 佐川 貢一, 対馬 栄輝
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕身体前傾・復位動作時の立位姿勢をモデル化して力学的パラメータの固有振動数(ω)と減衰比(ζ)を求め,動作特性および姿勢バランスの影響を検討する。〔対象〕健常成人12名を対象とした。〔方法〕安定性が異なる4条件下で身体最大前傾・復位動作を行って足・股関節運動を測定し,足関節の1自由度モデルまたは足・股関節を持つ2自由度モデルから得たωとζについて,安定性変化に伴う動作特性との関連性を確認した。〔結果〕姿勢不安定性は股関節運動の変化として現れやすく,2自由度モデルのω・ζで安定性との関係性が明確となった。〔結語〕股関節運動を考慮して求めたωとζは,動的な姿勢バランスを反映するパラメータであることが示された.
  • 福山 勝彦, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究はCross testと静的バランスおよび他の動的バランス検査との関係を明らかにするとともに,Cross testから得られる十字の軌跡図について検討することを目的とした。〔対象〕専門学校学生73名を対象とした。〔方法〕重心動揺計を使用し,静的立位バランス(開眼,閉眼)片脚立位バランス,Cross test,FRTの計測を行い,得られた各計測のパラメータ間の関係について検討した。〔結果〕開眼立位,閉眼立位,片脚立位の各パラメータ間には相関がみられた。Cross testのパラメータとその他の計測のパラメータ間には相関はみられなかった。Cross testにおける矩形面積を外周面積で除した値と開眼立位,閉眼立位との間に相関がみられた。〔結語〕Cross testのパラメータには静的バランスを含め多くの要素が関与しているが,十字の軌跡図の鮮明さは静的バランス自体を反映している可能性が示唆された。
  • 竹内 弥彦, 山田 雅子
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,補償的バランス反応であるクロスオーバーステップにおける足圧中心動揺の特性と,その制御に関与する足関節周囲筋群の筋活動との関係について検討を加えることである。〔対象〕健常学生17名。〔方法〕分離式荷重計の床反力値からクロスオーバーステップにおける片脚立位期と着地期を定義した。片脚立位期と着地期における足圧中心の動揺量と動揺速度,さらに前脛骨筋,ヒラメ筋,長腓骨筋,母趾外転筋の筋電位を計測し,単回帰分析によりそれらの関係を分析した。〔結果〕回帰分析の結果,片脚立位期,着地期ともに左右方向の足圧中心動揺速度と長腓骨筋,前後方向の動揺速度とヒラメ筋の間に有意な回帰式が得られた。〔結語〕本研究の結果から,クロスオーバーステップにおける足関節周囲筋の活動は,足圧中心の動揺速度の制御に関与していることが示唆され,さらに左右前後方向別に関与する筋が同定された。
  • 小山内 正博, 舘川 康任, 田村 麻美子, 清水 弥生, 新井 美紗, 渡辺 裕介, 福山 勝彦, 秋山 純和
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕姿勢変化に伴う側腹筋の活動を超音波画像診断装置と表面筋電図法で検証することである。〔対象〕健常成人9名であった。〔方法〕背臥位で安静呼吸と最大呼出の筋厚と筋活動を測定後,体幹を前傾位,中間位,後傾位で,各円背位と伸張位の6種類の坐位姿勢をとらせて再度測定した。〔結果〕最大呼出時に筋電図は,内腹斜筋だけが中間位伸張に対し前傾位円背,中間位円背,後傾位円背で有意差を認めた。安静吸気時は,筋厚で内腹斜筋に中間位伸張に対し前傾位円背,前傾位伸張,後傾位円背で有意差を認めた。〔結語〕中間位伸張は内腹斜筋の姿勢保持筋としての活動に関与しない姿勢と考えられる。最大呼出時の筋電図から内腹斜筋は呼気筋としての機能を発揮しやすい姿勢と考えられる。
  • ─リハビリテーションサービスにおける調査研究─
    田中 亮, 戸梶 亜紀彦
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,我々が開発を進めている「欲求の充足に基づく顧客満足測定尺度(Customer Satisfaction Scale base on Need Satisfaction: CSSNS)」の交差妥当性を検証することである。〔方法〕対象は,リハビリテーションサービスを利用している医療機関の外来患者206名と,通所リハビリテーション施設(デイケア施設)の利用者81名とした。医療機関の外来患者とデイケア施設の利用者を異なる2つの集団とし,斜交モデルにおいて2つの集団は同等の因子構造を有していると仮定して多母集団同時分析を行った。〔結果〕因子負荷量と因子間の分散共分散に等値制約を課した斜交モデルの適合度指標の値は良好であり(χ2(185)=293.775,p<.000,CFI=.949, RMSEA=.045,AIC=463.775),斜交モデルはデータと適合していると判断された。〔結語〕斜交モデルが想定されたCSSNSの強固な因子不変性が確認され,CSSNSの交差妥当性が検証された。
  • 鈴川 芽久美, 島田 裕之, 小林 久美子, 鈴木 隆雄
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,要介護認定を受けた高齢者における外出行動と身体機能との関係を明らかにすることである。〔対象〕通所介護サービスを利用していた高齢者359名(平均年齢82.2±7.0歳,男性119名,女性240名)とした。〔方法〕調査項目は性,年齢,chair stand test 5 times,timed up-and-go test(TUG),階段昇降の自立度,mental status questionnaireとした。なお外出は,これら調査の前後1ヶ月間(2ヶ月間)の状況を対象者の家族から聴取した。〔結果〕多重ロジスティック回帰分析の結果,TUGが有意に町内までの外出と関連し(オッズ比;1.04,95%信頼区間;1.01-1.08),町外までの外出とは階段昇降の自立度が有意に関連した(オッズ比;1.74,95%信頼区間;1.06-2.86)。〔結語〕外出の実行には実用的な歩行機能が必要であり,より複雑な状況への適応を要求される町外への外出には,階段の自立度が関与した。
  • ─機能的近赤外分光装置(fNIRS)による検討─
    大植 賢治, 富永 孝紀, 市村 幸盛, 河野 正志, 谷口 博, 森岡 周, 村田 高穂
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 109-114
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,言語教示によって対象者の能動的注意を自己の身体内部および外部に向けさせて,運動を認識している際の脳活動の違いを明らかにすることを目的とした。〔対象〕右利き健常成人8名とした。〔方法〕機能的近赤外分光装置(fNIRS)を用いて検証した。〔結果〕能動的注意を右手で自己の身体内部へ向けた場合では,右半球前頭前野と右頭頂領域で,左手で身体外部へ向けた場合では,左半球前頭前野と左頭頂領域で酸素化ヘモグロビンの有意な増加を認めた。〔結語〕今回の結果から,運動を認識する際の運動と同側大脳半球の左右大脳半球の機能分化として,能動的注意が右手で身体内部に向かう場合は右半球前頭-頭頂領域が,左手で身体外部に向かう場合は左半球前頭-頭頂領域が担うといった側性化が存在することが示唆された。
  • 村田 伸, 大田尾 浩, 村田 潤, 堀江 淳, 宮崎 純弥, 山崎 先也, 溝田 勝彦
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕高齢者の上体起こしの可否を評価し,可否別にその他の身体機能や心理機能を比較検討した。〔対象〕地域在住高齢者475名(男性106名,女性369名,平均年齢74.5±5.9歳)である。〔方法〕筋力や歩行能力などの身体機能6項目と主観的健康感や生きがい感などの心理機能3項目について,性別および上体起こしの可否別に比較した。〔結果〕上体起こしが可能であったのは男性で65.1%,女性で41.5%であり,男性の方が有意に上体起こし可能者の割合が多かった。身体機能の指標とした筋力や歩行能力などの6項目すべてに有意差が認められ,上体起こし可能群が不可能群より良好な値を示した。心理面を評価した主観的健康感にも有意差が認められ,上体起こし可能群が不可能群より自身をより健康だと自覚していた。〔結語〕高齢者にとって上体起こしができるか否かは,身体機能をよく反映する簡便なテスト法であるということのみならず,主観的健康感を含めた高齢者の総合的な健康度を推測できる可能性が示された。
  • 河江 敏広, 高橋 真, 関川 清一, 稲水 惇
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 121-125
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕運動後駆血の有無により筋代謝受容器反射がBRSに与える影響を明らかにすること。〔対象〕健常男子大学生10名とした。〔方法〕最大随意収縮(MVC)の30%にて5分間の静的ハンドグリップ (HG)運動を行い,運動終了後駆血を行う試行(PEI試行)及び運動終了後駆血を行わない試行(Control試行)をそれぞれ5分間行った。測定中は心電計を用いて心拍数を,連続指血圧計を用いて収縮期血圧を計測した。BRSはシーケンス法を用いて安静時,HG運動中,HG運動後に算出した。〔結果〕収縮期血圧はPEI試行において安静時と比較しHG運動後で有意に高値を示したが,Control試行では安静時と比較し有意差を認めなかった。BRSはPEI試行およびControl試行において運動後駆血の有無による有意差を認めなかった。〔結語〕筋代謝受容器反射はBRSに影響しないことが示唆された。
  • 高田 靖夫, 川越 厚良, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 127-132
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,最大吸気圧40%負荷での吸気筋トレーニングの効果と,その効果がトレーニング終了時よりどの程度維持可能であるかを検討することである。〔対象〕対象は健常な学生12名とした。〔方法〕POWERbreatheTMを用い,40%PImax負荷で吸気筋トレーニングを4週間継続し,トレーニング終了後12週間にわたってその効果持続性を検証した。〔結果〕トレーニング終了時には吸気筋力,吸気筋耐久力,運動耐容能が有意に増加したものの,概ねトレーニング終了後12週までにはいずれもトレーニング開始前の値まで低下した。〔結語〕4週間の40%PImax負荷による吸気筋トレーニングは呼吸筋を有意に増強するが,トレーニングを休止すると,その効果は概ね12週のみしか持続しない。
  • 笠原 敏史, 戸塚 満久, 高橋 光彦, 宮本 顕二
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕健康若年者において,腰椎部の前屈・回旋運動を含む非対称性体幹前屈運動時の脊柱起立筋(ES)の屈曲弛緩現象(FRP)を調べた。〔方法〕対象は健常成年男子10名(平均年齢22±0.8[SD]歳)。両側ESの筋活動と腰椎部の運動をそれぞれ筋電計と電気磁気センサーを用いて計測し,3つの運動課題(体幹前屈運動のみ,非対称性体幹前屈運動として体幹回旋位から開始する前屈運動,体幹回旋位で終了する前屈運動)の時のFRPの出現時期とそのときの腰椎部の屈曲及び回旋角度を求めた。〔結果〕体幹前屈運動のみでは両側ESにFRPが出現していた。一方,体幹回旋位から開始する前屈運動では左右ESのFRP出現時期の前屈角度に差が認められた。体幹回旋位で終了する前屈運動では回旋側のESにFRPが出現しなかった。〔結語〕健常若年者において,体幹前屈運動に回旋運動を加えた非対称性前屈運動時に脊柱起立筋の屈曲弛緩現象は回旋方向によって出現やその時期に左右差がみられる。このこと腰痛症の発生および悪化に関係する可能性がある。
  • 廣瀬 昇, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,2020年以降に中高年期を迎える若年者の日常の活動時間の違いが身体活動量(PA:Physical Activity)に与える影響について調査した。〔対象〕健常男子学生78名とした。〔方法〕PAに対するアンケート調査による日常の活動時間数と加速度計測装置付歩数計による総エネルギー消費量を測定した。〔結果〕若年者の生活背景に至る生活時間因子を重回帰分析により,運動時間と非運動余暇時間のみに有意差を認め,PAに影響を与えうることを示した。〔結語〕特定の運動時間を設けるだけではPAを維持することができず,余暇時間での活動強度を上げることが重要で,運動継続に大きく影響を与えることが予測された。
  • ─回復期・慢性期の傾向─
    林 悠太, 久保 晃
    原稿種別: 原 著
    2010 年 25 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,高齢入院患者の生活意欲とADL,体格との関連を明らかにすることである。〔対象〕対象者は,Functional Independent Measure(以下FIM)の食事項目が5点以上であった高齢入院症例71例(回復期リハ病棟:男12例,女24例,79.6±11.1歳 慢性期病棟:男10例,女25例,83.2±7.6歳)である。〔方法〕生活意欲はVitality Index scoreより求め,8点以上を高得点群,7点以下を低得点群の2群に分類し,FIMとBody Mass Index(以下BMI)を求めて分析した。〔結果〕その結果,回復期ではFIMすべての項目で群間に有意差が認められ,慢性期では運動項目の整容・トイレ動作・排泄項目とすべての認知項目,BMIに有意差が認められた。〔結語〕回復期ではADL能力全般が,慢性期では身だしなみや排泄といった人間としてごく当たり前の動作能力が,生活意欲と関連してくると考えられる。
症例研究
  • 江連 亜弥, 原田 慎一, 小澤 佑介, 荻野 禎子, 奥田 裕, 内山 靖
    原稿種別: 症例研究
    2010 年 25 巻 1 号 p. 147-150
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,脳卒中片麻痺者の体幹機能と日常生活活動との関係を明らかにすることを目的とした。また麻痺側機能との関係,FIMの運動項目,認知項目との比較,病巣別による体幹機能の違いも検討した。〔対象〕回復期脳卒中片麻痺者56名(平均年齢66.3±10.7歳)とした。〔方法〕体幹機能は臨床的体幹機能検査(Functional Assessment for Control of Trunk,以下FACT)を,ADLはFIMを,麻痺側機能はBrunnstrom recovery stageを用いて評価した。〔結果〕FACTとFIM合計は非常に高い相関が得られた。FIMの認知項目では体幹のみ高い相関が得られた。病巣別では中大脳動脈起始部,被殻,視床の病巣部位を比較したが,視床は体幹との相関がみられなかった。〔結語〕脳卒中片麻痺者のADLには麻痺側機能よりも体幹機能との関係が強いこと,認知機能とも関係があること,病巣により体幹機能が異なることが示唆された。
  • ─一症例による検討─
    中野 英樹, 生野 達也, 奥埜 博之, 川見 清豪, 藤田 浩之, 吉田 慎一, 河村 章史, 森岡 周
    原稿種別: 症例研究
    2010 年 25 巻 1 号 p. 151-153
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,膝関節のギプス固定中における運動イメージの介入が,ギプス除去後の関節可動域に及ぼす影響について検討することである。〔対象〕症例は,右膝蓋骨の不全骨折を呈した77歳の女性であった。保存的治療として膝関節伸展位にて大腿近位部から足関節果上までのギプス固定を39日間施行した。〔方法〕健側にて膝関節屈曲30°,60°,90°の他動運動を行った後に,健側および患側にて各々の屈曲角度の運動イメージを想起させた。運動イメージの評価として健側および患側における運動イメージ想起時間を,疼痛の評価としてVASを測定した。運動イメージの介入日数は計24日であり,測定は訓練1,6,12,18,24日目に行った。〔結果〕運動イメージ想起時間およびVASは,介入日数を重ねるごとに減少した。また,ギプス除去後の膝関節屈曲角度は95°であった。〔結語〕膝関節のギプス固定中における運動イメージの介入は,ギプス除去後の関節可動域制限を予防するための一助となることが示唆された。
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