理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
36 巻, 1 号
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原 著
  • ─性差の影響の検討─
    松野 悟之, 川瀬 博之, 岡田 直子, 筧 浩明, 中塚 貴之
    2021 年 36 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕要介護高齢者におけるFunctional Reach Test(FRT)と身体機能との関連性の性差を検討した.〔対象と方法〕要介護高齢者44名(男性16名,女性28名)とした.身体機能は握力,大腿四頭筋筋力,足趾把持力を計測した.立位バランスはFRTを計測した.〔結果〕要介護度を統制変数とした偏相関解析の結果,男性は,大腿四頭筋筋力と足趾把持力がFRTと有意な正の相関が認められた.女性は,年齢とFRTが有意な負の相関を示したが,大腿四頭筋筋力と足趾把持力は有意な相関を示さなかった.〔結語〕要介護高齢者におけるFRTと関連する身体機能要因は性別で異なり,男性では下肢筋力が重要な役割を果たしている可能性が示唆された.女性は,年齢が関連している可能性が示唆された.

  • 森田 泰裕, 新井 智之, 藤田 博曉, 渡辺 修一郎
    2021 年 36 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕地域在住高齢者における2年間の基本チェックリストの各領域の変化と新規要介護認定との関連を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕地域在住高齢者を対象に2012年度と2014年度に基本チェックリストを調査し,11174人を解析した.2年間の基本チェックリストの変化が3年後の新規要介護認定のリスク要因となるか検討した.〔結果〕運動機能悪化,栄養悪化,閉じこもり悪化,認知機能悪化,うつ悪化の領域が有意なリスク要因となった.〔結語〕基本チェックリストの変化がリスクの低い対象者の新規要介護認定予測因子となると考えられた.早期の予防介入を行うためには,基本チェックリストを継続して活用する必要があると考えられた.

  • 岡田 啓太, 浅田 啓嗣, 川村 和之, 田中 敦
    2021 年 36 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕回復期脳卒中患者を転倒リスクレベル別に分類し,レベル別の機能的自立度評価法(FIM)の得点変化と転倒の関連を明らかにすることである.〔対象と方法〕回復期病院入院の脳卒中患者86名を,転倒リスクにより低・中・高リスク群に分類した.レベル別に,入院時および30日後のFIM得点と得点差を転倒の有無で比較,検討した.〔結果〕転倒リスクレベルが高いほど有意に転倒率が高かった.中リスク群FIMは,入院時および30日後の得点差が転倒群で有意に高値を示した.〔結語〕中リスク群は,運動機能の早期改善によって転倒しやすくなることが示唆された.FIMの経時的変化を評価することは転倒予防策に有用である可能性がある.

  • ─骨盤と体幹の動きに着目して─
    和田 直樹, 山本 澄子
    2021 年 36 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕座位から歩行までの動作において胸郭・骨盤角度の特徴を運動学的に分析し,若年者と高齢者の違いを明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕若年者14名と高齢者12名を対象に,3軸傾斜計・荷重スイッチシステム・ビデオカメラレコーダーにて座位からの歩行動作を計測した.〔結果〕高齢者は若年者と比較して一歩目離地時(foot off: FO)に胸郭・骨盤前傾角度が小さく,離殿からFOまでの時間が長かった.高齢者のFO時胸郭前傾角度・FOまでの骨盤前傾角度変化量とFunctional Reach Testに正の相関があった.〔結語〕両群ともに胸郭・骨盤前傾位で離殿するが,高齢者は前傾位を保持できずFOに至る.起立から歩行に短時間で移行するには胸郭の前傾に加え,骨盤の前傾が必要であることが新たにわかり,バランス機能の低下により若年者と異なる動作戦略に至ったと考えられる.

  • 金山 篤樹, 南 眞由香, 有原 和, 武貞 ゆりか, 大前 麻希, 笹田 啓太, 髙橋 ひな, 三上 紘哉, 薮田 拡武, 山本 沙紀, ...
    2021 年 36 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕運動機能向上にはinternal focus(IF)指示よりもexternal focus(EF)指示が効果的である.しかし,対象者の熟練度が低い場合や,継続的な介入においてはIF指示が有効である可能性が考えられている.そこで,未習熟課題への継続的介入におけるIF・EF指示の効果を検証した.〔対象と方法〕健常若年者55名を2群に分け,非利き手での投球課題に対してIF・EF指示を用いた14日間の介入を行った.〔結果〕両群の球速変化に交互作用はなく,時間の主効果が認められた.また,対象者全体の球速に有意な向上が認められた.〔結語〕IF指示はEF指示と同等に効果的であったため,未習熟課題の継続的介入において,EF指示だけでなくIF指示も有効である可能性が考えられる.

  • ─運動教室に参加していた高齢者を対象とした調査─
    中井 雄貴, 富岡 一俊, 谷口 善昭, 竹中 俊宏, 牧迫 飛雄馬
    2021 年 36 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大予防対策に伴う外出自粛時期前後での運動教室に参加していた地域在住高齢者における身体活動量の変化を調べた.〔対象と方法〕対象は地域在住高齢者15名,2019年9月(緊急事態宣言前)と2020年4月(緊急事態宣言中)における身体活動量と生活空間(LSA)の変化を比較した.身体活動量は3軸加速度計を用いて計測した.〔結果〕緊急事態宣言前に比べて緊急事態宣言中は2割の者で町外への外出(生活空間レベル5)をしておらず,LSAスコアが低下傾向であったが,有意な変化ではなかった.身体活動量も有意な変化はなかった.〔結語〕2020年4月中旬時点において運動教室に参加していた高齢者は,生活範囲の顕著な変化および身体活動量の低下は認められなかった.

  • ─多施設の回復期リハビリテーション病棟のデータより─
    栗田 慎也, 髙橋 忠志
    2021 年 36 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕急性期病院で脳卒中片麻痺患者に長下肢装具(KAFO)を作製することが回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)退院時の歩行能力と下肢装具の使用継続の有無を調査した.〔対象と方法〕重度運動麻痺を呈した脳卒中片麻痺患者18名を対象とし,KAFOの作製群と非作製群に振り分け,機能的自立度評価法(FIM)の歩行と階段の経過と下肢装具の利用状況を調査した.〔結果〕両群ともにFIM歩行・階段が時間経過で有意な差を認めたが,作製群で回復期リハ病棟退院時のFIM歩行・階段と下肢装具の脱却割合に有意な差を認めた.〔結語〕急性期病院における KAFO の作製は,回復期リハ病棟退院時の歩行・階段能力改善と下肢装具脱却の効果があることが示唆された.

  • 大橋 ゆかり, 篠崎 真枝
    2021 年 36 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕本学科で導入を図ってきた協働作業型実習の現状を調査し,効果を検証することを目的とした.〔対象と方法〕本学科の4年次臨床実習を2017年度から2019年度に履修した学生124名を対象に,実習前後のObjective Structured Clinical Examination (OSCE)得点と理学療法士としてのアイデンティティスコア(ID)および実習内容に関する質問紙調査を行った.〔結果〕IDは実習前に比して実習後で有意に増加し,実習後のIDは実習中に患者に介入した時間と正の相関を示した.一方,OSCE得点は臨床体験とは有意な相関を示さなかった.〔結語〕今後の臨床実習では,より実践的な部分的介入を多くの患者に実施することで臨床技能を向上させることが求められる.

  • 西郡 亨, 今井 祐子, 堀本 ゆかり
    2021 年 36 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕本研究は,リハビリテーション専門職(リハ職)の認知する組織風土類型ごとに職務満足度と職業性ストレスを比較することを目的とした.〔対象と方法〕総合病院に勤務するリハ職102名を対象に,組織風土尺度と職業性ストレス調査票を用いて調査を実施し,組織風土の類型ごとに職務満足度や職業性ストレスを比較した.〔結果〕回答者は89名であった.職務満足度,環境ストレス,仕事裁量度,職業適性度,働きがい,上司サポート,同僚サポートの因子と組織風土類型間で有意な差を認め,イキイキ型の組織風土が他3類型と比べ職業性ストレスが低かった.〔結語〕組織風土は職務満足度と職業性ストレスに関連することが明らかとなった.職業性ストレスや職務満足度への対応は個人のみならず,組織風土を考慮する必要がある.

  • ─東北地方の私立大学での実態─
    長井 真弓, 釼明 佳代子, 桂 理江子, 小野部 純, 小林 武
    2021 年 36 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
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    〔目的〕学生の就職活動状況および就職先を選択する際の条件を把握することを目的とした.〔対象と方法〕2018-2019年度に東北文化学園大学の理学療法士養成課程に在籍した4年次生133名のうち,研究同意の得られた104名に就職活動についてのアンケート調査を実施した.〔結果〕104名のうち102名が就職を希望し,うち100名は医療機関から内定を得た.関東地方の事業所から内定を得た学生28名のうち,7名は将来的に地元へ戻ることを希望していた.施設選択時には,給与,福利厚生,職場の人間関係の順で重要視していた.〔結語〕学生は卒後すぐの就職先には医療機関を希望し,給与や職場の人間関係を重視して就職活動をしていることが明らかとなった.

  • 屋嘉比 章紘, 広瀬 環, 小野田 公, 久保 晃
    2021 年 36 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における理学療法学部生の感染予防対策の実施と身体活動状況の現状把握を行った.〔対象と方法〕理学療法学部生1~4年生377名に対してCOVID-19予防対策,外出目的,外出頻度,外出手段,1週間の平均歩数についてアンケート調査を実施した.〔結果〕基本的なCOVID-19予防対策は90%以上の実施率であった.外出目的,頻度については政府の要請通り制限していた.歩数の中央値は1838歩であった.〔結語〕COVID-19予防対策は『手洗い・うがい,せきエチケット・マスク』は他の項目と比較して実施率は高かった.歩数については健康日本21の目標値を大きく下回ったため,活動量についての調査は縦断的な調査が必要である

  • 大田 瑞穂, 玉利 誠
    2021 年 36 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕歩行が自立していない脳卒中者片麻痺者の動的安定性についてmargin of stability(MOS)を用いて検討した.〔対象と方法〕脳卒中片麻痺者28例(自立群14例,非自立群14例).三次元動作解析装置を用いて歩行を計測した.MOSは麻痺側・非麻痺側単脚支持期の側方幅,後方幅,前方幅を算出した.〔結果〕非自立群はステップ長が有意に低値であったが,歩隔は有意に大きかった.非麻痺側のMOS側方幅が有意に小さく,MOS後方幅は有意に大きくなった.MOS前方幅は自立群が麻痺側・非麻痺側ともに有意に大きな負の値を示した.〔結語〕非自立群は非麻痺側外側方の不安定性を認め,麻痺側外側方や前後方向の安定性はステップ長や歩隔によって補っていることが示唆された.

  • 長嶺 翔吾, 齋藤 圭介, 原田 和宏, 川浦 昭彦, 梅﨑 義久, 岡本 伸弘, 太田 研吾
    2021 年 36 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕回復期リハ病棟に入院していた脳血管障害と大腿骨近位部骨折患者を対象に排泄動作プロセスごとに自立と非自立を調べ類型化し,類型化された集団の退院時の排泄動作の帰結を明らかにすること.〔対象と方法〕回復期リハ病棟の脳血管障害63名と大腿骨近位部骨折患者47名を対象に入院時の排泄動作プロセスの自立の可否を調査し,クラスター分析を用いて障害像を類型化し自立予後について検討した.〔結果〕両疾患ともに類似した3つの集団に類型化されたが,最終的な排泄動作の帰結は異なる結果を示した.〔結語〕入院時に排泄動作プロセスの側面から対象者をグループ化することで予後判断としての早期介入指針となりうることが示唆された.

  • 本田 浩也, 大河原 健伍, 吉本 好延
    2021 年 36 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究の目的は,地域在住高齢者のTether-release法を用いたステップ動作能力が転倒に関連するか明らかにすることであった.〔対象と方法〕対象は,独歩可能な地域在住高齢者36名とし,過去1年間の転倒の有無から転倒群(8名)と非転倒群(28名)に分けた.ステップ動作能力は,最大身体前傾時牽引量の体重比を測定した.〔結果〕群間比較の結果,転倒群と非転倒群で最大身体前傾時牽引量の体重比に有意差を認めた(p=0.038).ロジスティック回帰分析の結果,転倒と最大身体前傾時牽引量の体重比は有意な関連を示した(オッズ比:0.840,95%信頼区間:0.711-0.992).〔結語〕地域在住高齢者のTether-release法を用いたステップ動作能力と転倒に関連がある可能性が示唆された.

  • ─理学療法士養成校において得られた実践知から学校が備えるべきことを考案する─
    山下 喬之, 川元 大輔, 長津 秀文
    2021 年 36 巻 1 号 p. 91-99
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究は,感染症の流行に伴う緊急事態宣言下の専門学校において,遠隔授業を受講した学生のアンケート結果の分析から遠隔授業の課題を抽出し,緊急事態に備えるべき具体策を得ることを目的とした.〔対象と方法〕理学療法士養成校に在学する,1年生から3年生169名を対象とした調査結果を,KHCorder3を使用して解析し,分析した.〔結果〕遠隔授業の実践から,受講環境,視聴覚状況,授業の内容理解,受講生の身体不調に関する課題の4つを抽出した.〔結語〕課題から,養成校が緊急事態に備えるべき授業に対するレディネスや授業デザイン,授業実践の具体策を見出した.今後は,教員・学生ともにICTの利活用能力を高める必要があり,また,実技を伴う専門科目・実習の在り方等も検討しなければならないことが示唆された.

  • 佐々木 智, 前田 眞治
    2021 年 36 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕片麻痺に対する病態失認(AHP)は,体性感覚障害と半側空間無視(USN)を高頻度で合併するが,今回,我々はこの両者を伴わないAHP例(NSU例)を経験した.本研究の目的は,NSU例と同様に体性感覚障害とUSNのないAHP文献例を集積し,その関連病巣からAHPの発現要因を検討することとする.〔対象と方法〕対象は,NSU自験例1例と集積したNSU文献例3例とし,各症例の損傷部位から,AHPの発現要因を検討した.〔結果〕NSUの関連病巣として,背外側前頭前野(DLPFC)が4例中3例,被殻・淡蒼球は4例中2例で認めた.〔結語〕DLPFCは自己モニター,被殻・淡蒼球は動作選択と関連し,両領域を結ぶ「連合系ループの機能低下」がNSU例のAHP発現要因と考えた.

  • 本間 はるな, 齋藤 香保里, 高橋 俊章
    2021 年 36 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕体幹への揺動刺激が身体柔軟性に及ぼす影響を男女別に検討した.〔対象と方法〕健常成人20名を対象にクロスオーバーデザインを用い,揺動刺激の介入と背臥位姿勢を保持するのみの非介入の実験を行った.揺動刺激前後で体圧,筋硬度,脊椎可動性,皮膚伸張性,長座体前屈,主観的な寝やすさを評価した.〔結果〕揺動刺激により男性では接触面積増加,体圧平均値減少,体幹最大屈曲位での胸椎後弯角減少,脊椎可動域拡大,長座体前屈距離増加,腰部筋硬度が低下した.女性では,接触面積および皮膚伸張性が増加し,体圧平均値が減少した.〔結語〕揺動刺激で男女ともに柔軟性が向上した.揺動刺激は男性では深部の軟部組織である筋や関節に対して,女性は浅部の軟部組織である皮膚に対して主に作用した.

  • ─最大筋出力時の離散ウェーブレット変換による表面筋電図解析および筋厚の変化─
    諸角 一記, 森下 勝行, 横井 悠加, 古川 勉寛, 佐々木 広人, 渡邉 哲朗
    2021 年 36 巻 1 号 p. 113-117
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕筋力増強運動の過程における中枢神経性要因など筋力増強メカニズムの解析方法について知見を得ることを目的とした.〔対象と方法〕四肢に運動障害がない健常成人男子12名を対象とした.右上腕二頭筋筋力強化プログラムは6週間とし毎週4日間実施した.測定は上腕二頭筋等尺性最大筋力と表面筋電図,安静時の筋厚とした.中枢神経性要因について表面筋電図の解析に離散ウェーブレット変換を適用し瞬時周波数スペクトルの中央値と実効値を算出,筋厚の変化は超音波画像診断装置を用いた.〔結果〕上腕二頭筋最大筋力,瞬時周波数スペクトルの中央値と実効値,筋厚は有意に変化した.〔結語〕今回用いた解析方法は,筋力変化要因である中枢神経性要因などの変化が捉えられ,運動機能の評価指標として応用できる可能性が示唆された.

  • 大田 瑞穂, 青木 淳, 藤井 千尋, 山田 辰樹, 玉利 誠
    2021 年 36 巻 1 号 p. 119-123
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕回復期脳卒中者に対する機能的電気刺激(FES)を用いた歩行練習が,麻痺肢の推進力と下肢振出し戦略に及ぼす影響を検証した.〔対象と方法〕対象は回復期脳卒中者26例(FES群13例,対照群13例).介入期間は30日間(1日40分)とし,FES群は遊脚期に前脛骨筋へのFESを行いながら歩行練習を実施し,対照群は通常の歩行練習を行った.介入前後で身体機能評価と三次元動作解析装置による歩行評価を行った.〔結果〕介入前後で両群ともに歩行速度は有意に増加したが,FES群は対照群と比較して歩行速度,前遊脚期の床反力進行方向成分と足関節パワーが有意に増加した.〔結語〕回復期脳卒中片麻痺者に対する前脛骨筋へのFESは,麻痺肢の推進力および足関節底屈運動による下肢振出しを改善する可能性が示された.

  • 佐野 紘一, 嘉戸 直樹, 高橋 優基, 前田 剛伸, 鈴木 俊明
    2021 年 36 巻 1 号 p. 125-129
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕2個の球を手掌で回転させる運動の練習による,母指の運動範囲と球の軌跡の変化について明らかにする.〔対象と方法〕対象は健常成人11名とした.課題は,2個の球を左手掌で回転させる1分間の運動とした.この運動を1分間1セッションとして3セッション練習し,練習前後の母指の前額面の運動範囲,矢状面の運動範囲,1つの球が手掌上を移動する軌跡長それぞれを比較した.また,練習前と練習3セッション目の球の回転数を比較し運動の習熟を確認した.〔結果〕母指の運動範囲は,練習前に比べ練習後の課題中に減少した.球の軌跡長は練習前に比べて練習後に短縮していた.〔結語〕2個の球を手掌で回転させる運動は,練習により習熟することで母指の運動範囲が狭小化し,球の軌跡長が短縮する.

  • 廣田 亜梨朱, 浦邉 幸夫, 小宮 諒, 前田 慶明
    2021 年 36 巻 1 号 p. 131-136
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕振動刺激と視覚フィードバックを用いた骨盤底筋群の運動効果を骨盤底筋群の筋活動変化から確認すること.〔対象と方法〕10名の健常男性を対象とした.振動刺激なし条件と振動刺激あり条件,視覚フィードバック条件,振動刺激と視覚フィードバックの併用条件で,10秒間の骨盤底筋群の収縮運動を各6回実施した.〔結果〕介入前後の筋活動は振動刺激あり,視覚フィードバック,振動刺激と視覚フィードバック併用条件で有意に増加していた.振動刺激と視覚フィードバックの併用条件では最も高い効果量を示した.〔結語〕振動刺激と視覚フィードバックを併用することで振動刺激や視覚フィードバックのみの条件より高い運動効果が期待できる.

症例研究
  • 長谷川 隆史, 佐熊 晃太, 西 啓太, 小無田 彰仁, 東 登志夫
    2021 年 36 巻 1 号 p. 137-141
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    [目的]本研究の目的は,痛みに対する破局的思考が強い脊椎圧迫骨折患者への有効な介入方法を検討することである.[対象と方法]対象は脊椎圧迫骨折と診断され,当院に入院した高齢男性であった.成功体験を強調した介入を行い,痛みの程度(NRS),痛みに対する破局的思考(PCS),不安抑うつ状態(HADS),日常生活動作能力(mFIM),活動量を評価した.[結果]入院時PCSの合計点は44点と高値を示したが,成功体験を強調した介入を実施することで,32点に改善し,その他の痛み関連因子も改善し,mFIMも37点改善した.[結語]痛みが強い脊椎圧迫骨折患者に対し,入院早期から多職種協働で成功体験を強調した介入を実施することで,PCSを改善させ,痛みの遷延化を防止できる可能性が示唆された.

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