理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
29 巻, 3 号
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原 著
  • 後藤 強, 三浦 哉, 出口 憲市
    2014 年 29 巻 3 号 p. 329-334
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,膝OA患者の歩行時の酸素動態の特性を明らかにすることを目的とした.〔対象および方法〕対象者は,膝OA群および非膝OA群ともに中高齢女性7名であり,3条件の歩行を実施した.測定は,前脛骨筋(TA)および腓腹筋内側(GM)における酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)および血液量(BV)の変化を連続的に測定し,各条件の歩行開始10秒前の平均値から歩行終了10秒前の平均値の差(Δ)を算出した.〔結果〕非膝OA群のGMのΔoxy-Hbにおいて75%自由歩行速度と比較し,125%自由歩行速度で著しい増加が認められた.〔結語〕膝OA群は,歩行速度にともない下腿のポンプ作用が効率的に作用せず,非膝OA群とは異なる酸素動態の特性が認められた.
  • 松井 康, 石塚 和重, 大圖 仁美, 渡邊 昌宏, 大越 教夫
    2014 年 29 巻 3 号 p. 335-339
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本稿では視覚障害を持つ理学療法学専攻の学生に対する国家試験対策の教育的効果を検討した.〔対象〕本学の理学療法学専攻の4年生7名(年齢:24.7±3.9歳)であった.〔方法〕一週間に一度の頻度で模試を実施し,その都度,各学生の苦手科目を明確にして効率的に学習できるように対策を行った.〔結果〕点数は対策初期時では138.7±21.1点,最終時では177.5±29.9点であった.また国家試験本番の結果は202.9±17.5点であり,合格率は100%であった.〔結語〕本対策は,教訓帰納や時間の管理により,効率の良い学習を進めることができ,点数の飛躍的な伸びにつながったと考えられる.
  • 今井 丈, 丸山 仁司
    2014 年 29 巻 3 号 p. 341-344
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脛骨の捻れの指標となる果部捻転角の計測法に関しての信頼性の検証に基づき,その測定誤差を検討することを目的とした.〔対象と方法〕対象は下肢に整形外科的疾患のない,学生40名80脚とした.果部捻転角の計測には,ゴニオメーター(角度計)で計測できるSeibelらの方法を用いて,治療台上長座位にて実施した.信頼性の検討に級内相関係数(ICC)とBland-Altman分析を用い系統誤差を確認後,その係数である標準誤差(SEM)と最小可検変化量(MDC)を算出し測定誤差の検討をした.〔結果〕検者内・検者間信頼性ともに,有資格者で系統誤差は認められなかった.測定誤差の指標MDCは3°未満となった.〔結語〕測定の信頼性は十分に定義された方法においては,計測経験や熟練度で異なることや臨床評価としての有用な測定誤差を確認できた.
  • ─超音波画像診断装置を用いて─
    川井 謙太朗
    2014 年 29 巻 3 号 p. 345-349
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕投球障害肩症例における上腕骨頭後捻角度を考慮した肩回旋可動域の特徴を評価することとした.〔対象〕投球障害肩の男性投手38例とした.〔方法〕超音波画像診断装置を用いて,上腕骨頭後捻角度と上腕骨頭後捻角度の影響を除いた肩回旋可動域を計測し,それぞれ投球側と非投球側間で比較検討した.〔結果〕投球側では非投球側に比べ,上腕骨頭後捻角度は平均して11度増大,補正外旋角度は9度増大も,補正内旋角度は平均18度減少,全回旋可動域は9度減少していた.いずれも有意な差であった.〔結語〕投球障害肩症例の肩回旋可動域には,上腕骨頭後捻角度の骨性のと,肩軟部組織性の,両者の因子が影響していることが示唆される.
  • 山下 弘二, 石岡 新治
    2014 年 29 巻 3 号 p. 351-355
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中患者における腹部電気刺激(ES)が随意的咳嗽力と体幹機能に及ぼす影響について検討した.〔方法〕対象は入院脳卒中患者で4週間ES併用したES群10名と対照群13名である.呼吸筋力は最大吸気圧(MIP)と最大呼気圧(MEP),随意的咳嗽力は最大咳嗽流速(PCF)と音圧レベル(SPL),体幹機能はtrunk control test(TCT)と起き上がり時間を測定した.〔結果〕ES群はMEP,MIP,PCF,SPLが4週間後で有意に増加したが,対照群では有意差はなかった.両群のTCTは有意に増加したが,変化率に有意差はなかった.起き上がり時間の短縮率はES群18.4%,対照群8.7%であった.〔結語〕脳卒中患者における腹部ESは随意的咳嗽力向上と体幹機能の改善が示唆された.
  • 杉本 諭, 大隈 統, 古山 つや子, 佐久間 博子, 小宮山 隼也, 尾澤 勇海, 室岡 修, 中城 美香, 木橋 明奈
    2014 年 29 巻 3 号 p. 357-360
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕Trail making test簡易版(S-TMT)を作成し,日本語版(J-TMT)との関連性を検討した.〔対象〕武蔵台病院および介護老人保健施設日高の里において,理学療法を実施している高齢者29名と若年者18名とした.〔方法〕TMT part Aとpart Bの所要時間およびTMT比を求め,両テストの成績を比較した.〔結果〕両テスト間でTMTの所要時間およびTMT比は,いずれも中等度の相関を示した.TMTの所要時間は,S-TMTの方がJ-TMTよりも有意に短かったが,TMT比は有意な違いを示さなかった.〔結語〕S-TMTは2~3分で施行可能で,J-TMTとの相関も高いことから,注意機能の評価指標の1つとして臨床応用の可能性がある.
  • 小沼 佳代, 島崎 崇史, 矢作 友里, 竹中 晃二
    2014 年 29 巻 3 号 p. 361-365
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中患者の社会的活動性尺度(SAS),および実施意図尺度(I-SAS)の開発を目的とした.〔対象〕退院3ヵ月後の脳卒中患者53名.〔方法〕改訂版Frenchay activity indexを再編しSASを構成した.SAS,およびI-SASの信頼性は,Cronbachのa係数,および再テスト法により,妥当性は,SAS得点を基準変数,I-SAS得点を説明変数とする回帰分析により評価した.〔結果〕SAS,I-SASとも基本的活動(4項目)と積極的活動(5項目)を示す2つの下位尺度が抽出され,a係数,および再テスト法での相関に,高い値が認められた.回帰分析の結果,意図が活動性の予測因子となっていることが示された.〔結語〕SAS,およびI-SASともに,十分な信頼性,および妥当性のあることが確認された.
  • 原 聡美, 菅沼 一男, 芹田 透, 金子 千香, 丸山 仁司
    2014 年 29 巻 3 号 p. 367-370
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕床からの立ち上がりパターンと運動機能との関係を検討することとした.〔対象〕地域高齢者67名,年齢80.3 ± 7.0歳,身長149.2 ± 6.6 cm,体重51.2 ± 8.6 kg,BMI23.0 ± 3.7 kg/m2であった.〔方法〕床からの立ち上がりパターンを4つに分類し,床からの立ち上がり能力,等尺性膝伸展筋力,10 m歩行,timed up and go test(以下TUG),functional reach test(以下FR)を測定した.〔結果〕多重ロジスティック回帰分析の結果,上肢の使用の有無に影響する変数として,膝伸展筋力と10 m歩行が選択された.〔結語〕膝伸展筋力,FR,TUGが良好な値であるほど,より難易度の高い床からの立ち上がり動作が可能である.また,膝伸展筋力値と10 m歩行能力が上肢の使用の有無に関与すると考えられた.
  • 隈元 庸夫, 世古 俊明, 田中 昌史, 信太 雅洋, 伊藤 俊一
    2014 年 29 巻 3 号 p. 371-375
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕骨盤側方移動運動中に骨盤固定による受動抵抗をうけることが移動方向と反対側の中殿筋活動へ及ぼす影響を異なる立位姿勢条件で比較し,閉鎖性運動連鎖での股関節外転筋トレーニング法の筋電図学的根拠を得ることとした.〔対象〕健常成人男性20名とした.〔方法〕左方向に骨盤を側方移動させる運動課題を両股関節内旋位・外旋位・中間位の3条件,右下肢への荷重を最大にした時と体重の半分の大きさにした2条件で実施した.左右の中殿筋,大内転筋を導出筋とした.〔結果〕股関節内旋位・最大荷重での運動課題実施時に右中殿筋活動量が最も高くなった.〔結語〕立位骨盤固定位で骨盤を側方へ移動させる運動は片脚立位が困難でも立位で実施可能なCKC外転筋トレーニングとなることが筋電図学的に支持された.
  • ─特に座位能力の重要性について─
    若尾 勝, 福光 英彦, 田中 勇治, 徳村 拓哉, 星 虎男
    2014 年 29 巻 3 号 p. 377-381
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕座位能力,摂食・嚥下機能および尿失禁の間の関連性を分析することである.〔対象〕入院中に理学療法を実施した患者128名とした.〔方法〕座位能力,摂食・嚥下機能,尿失禁の有無について理学療法評価および看護師記録等から記録し,これらのうち2つの間の関連性をすべての組み合せについて分析した.〔結果〕座位能力分類1および2と対応する座位能力分類3では摂食・嚥下レベルが低く,座位能力分類と10段階摂食・嚥下グレードも同様であった.また,座位能力が低いと尿失禁が多くみられ,尿失禁の有る群は摂食・嚥下レベルが低かった.一方,座位能力分類1では,摂食・嚥下機能が良好で,尿失禁が少ないことが判明した.〔結語〕摂食・嚥下機能および尿失禁の改善には,まず座位能力の改善が重要である.
  • ─ストレッチング後の主観的気持ち良さと自律神経機能─
    酒井 吉仁, 梅野 克身, 荻島 久裕, 辻 政彦, 上條 正義
    2014 年 29 巻 3 号 p. 383-387
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ヒトの骨格筋に対する静的ストレッチングにおけるリラクセーションの効果について検討した.〔対象〕 健常成人男性10名を用いた.〔方法〕足関節の背屈運動を等速性筋力評価訓練装置で制御し,下腿三頭筋の伸張を行い,ストレッチング前,ストレッチング中,ストレッチング後の心拍変動スペクトル解析を行った.〔結果〕ストレッチング後で心拍変動高周波数帯域成分(high frequency component: HF)の増加と心拍変動低周波帯域成分(low frequency component: LF)/HFの減衰,呼吸周期の低下を有意に認め,副交感神経活動の亢進と交感神経活動の減衰の効果が明らかとなった.評価により,ストレッチング開始直後に被験者に気持ち良さが得られたことが明らかとなった.〔結語〕下腿三頭筋への静的ストレッチングがリラクセーションを誘発することが示唆された.
  • 齋藤 孝義, 丸山 仁司, 菅沼 一男, 鈴木 知也
    2014 年 29 巻 3 号 p. 389-392
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕考案した「座位での連続底背屈運動テスト」の測定値の再現性を検討することとした.〔対象〕65歳以上の高齢者の検者内再現性は16名(男性1名,女性15名),検者間再現性は14名(男性2名,女性12名)とした.〔方法〕検者内再現性の測定は1名の検者が2日間以上の間隔をあけて2日間行い,検者間再現性の測定は1名の被検者に対し,2名の検者がそれぞれ2回の測定を行った.検者内再現性および検者間再現性の評価は級内相関係数のそれぞれ,ICC(1,1)およびICC(2,1)により行った.〔結果〕検者内再現性の級内相関係数ICC(1,1)は,0.915,検者間再現性ICC(2,1)は0.932であった.〔結語〕再現性は良好であり,簡便かつ安全に実施でき,臨床の現場でも有用であると考えられる.
  • ─ストレッチング時の心拍変動の時間周波数解析─
    酒井 吉仁, 梅野 克身, 荻島 久裕, 辻 政彦, 上條 正義
    2014 年 29 巻 3 号 p. 393-397
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕先行研究で我々は下腿三頭筋への10分間の静的ストレッチングがリラクセーション効果をもたらすことを心拍変動のスペクトル解析から示唆した.今回は,ストレッチング中の生理学的効果を明らかにする事を目的とした.〔対象〕健常な成人男性7名を用いた.〔方法〕足関節の背屈運動を等速性筋力評価訓練装置で制御し,下腿三頭筋の伸張を行い,ストレッチング中の心拍数,血圧,心拍変動(時間周波数解析)を解析した.〔結果〕ストレッチングの開始直後に収縮血圧の昇圧なしに平均心拍数は一過性に有意な増加を示した.この時期に呼吸性心拍変動HFは有意に減少した.〔結語〕これらの結果は副交感神経活動の減衰を強く示唆した.また,被験者の気持ちよいという感性はこの時期に一致した.
  • 酒井 吉仁, 梅野 克身, 荻島 久裕, 辻 政彦, 上條 正義
    2014 年 29 巻 3 号 p. 399-403
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕下腿三頭筋の静的ストレッチング実施時の伸張感覚と足関節角度,加圧力,筋束長,筋スティフネスの関係を検討した.〔対象〕健常な成人男性11名とした.〔方法〕ST時の伸長感として,筋の伸張を感じた時(FE1),気持ちの良い伸張と感じた時(FE2),伸張に痛みを感じた時(FE3)と,これら伸張感覚時の関節角度,加圧力,超音波画像診断装置で計測した筋スティフネスを解析した.〔結果〕FE2とFE3での関節角度,加圧力,筋束長がいずれにおいても差が少なかった.FE3で筋束長の短縮(防御反射),筋スティフネスの増加が5名の被験者で認められた.〔結語〕気持ちが良い伸張感覚でSTを行う場合には,ゆっくりと筋の伸張感覚を聞きながら行うことが必要である.
  • 政所 和也, 村田 伸, 宮崎 純弥, 堀江 淳, 阿波 邦彦, 上城 憲司
    2014 年 29 巻 3 号 p. 405-409
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,ブリッジ力測定法の有用性について,各種身体機能評価との関連性から検討した.〔対象〕地域在住男性高齢者32名とした.〔方法〕ブリッジ力と各種身体機能評価との関連についてピアソンの相関係数を求めて検討した.さらに,重回帰分析を用いてブリッジ力へ影響を及ぼす因子について検討した.〔結果〕ブリッジ力と膝伸展筋力,FRT,片脚立位保持時間との間に有意な相関が認められた.さらに,ブリッジ力へ影響を及ぼす因子として,膝伸展筋力とFRTが抽出された.〔結語〕ブリッジ力測定法は高齢者の膝伸展筋力ならびにバランス能力を反映するテスト法であり,簡易機能評価法として臨床応用できる可能性が示された.
  • 池田 耕二, 山本 秀美, 中田 加奈子, 黒田 未貴, 廣瀬 将士
    2014 年 29 巻 3 号 p. 411-415
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法臨床実習生の終末期理学療法に対する認識構造を視点に,終末期理学療法の教育的,実践的課題を提起することとした.〔対象〕理学療法臨床実習生9名とした.〔方法〕構造構成的質的研究法をメタ研究法にしたM-GTAとした.具体的には半構造化インタビューによってデータを収集し,そこからモデル構築を行った.〔結果〕理学療法臨床実習生の終末期理学療法に対する認識構造モデルは,主に理学療法士の内面の原動力と環境や状況からくる行動の原動力から構成された.〔結語〕本モデルからは,終末期理学療法の環境や状況の見直しのための啓蒙や教育,医療,社会のシステム作り,死の語りを取り入れた教育課程の導入等が提起された.
  • ─不安定板上の運動時に電気療法を付加するトレーニング法の検討─
    吉田 隆紀, 谷埜 予士次, 鈴木 俊明
    2014 年 29 巻 3 号 p. 417-420
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕足関節捻挫後の機能的不安定性に対して,末梢神経電気療法(以下TENS)を通常のトレーニング時に加える運動療法が効果的かどうかを検討することとした.〔対象〕Karlssonらの足関節機能的安定性スコアで捻挫側が80点以下の男子大学生7名とした.〔方法〕不安定板上でバランストレーニングを実施する条件とこれにTENSを加える条件で,課題動作前後の30秒間の片脚立位時の足圧中心(以下COP)軌跡長の変化を比較した.〔結果〕TENSを加えた条件時は,課題実施前後において捻挫側のCOP軌跡長は有意に改善したが,トレーニング時のCOP軌跡長は有意な差はなかった.〔結語〕TENSは,トレーニングの効果を増強させる.
  • 池田 幸司, 大沼 俊博, 渡邊 裕文, 藤本 将志, 赤松 圭介, 鈴木 俊明
    2014 年 29 巻 3 号 p. 421-424
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕端座位での側方体重移動時における骨盤の側方傾斜と移動側股関節外転筋群の関連を明確にするため,一側殿部への荷重量がこれらの筋の筋電図積分値に及ぼす影響を検討することとした.〔対象〕健常男性16名(平均年齢27.1 ± 6.6歳)とした.〔方法〕端座位より一側殿部の荷重量の総荷重量に対する比率を変化させて,移動側中殿筋・大腿筋膜張筋・大殿筋上部線維の筋電図を測定し,各筋の課題間での筋電図積分値相対値を比較した.〔結果〕筋電図積分値相対値はすべての筋で荷重量85%まで有意に増加した.中殿筋と大腿筋膜張筋では荷重量90%以上で有意に減少した.〔結語〕端座位での側方体重移動に伴う骨盤の側方傾斜を促すには移動側股関節外転筋群の関与が重要である.
  • ─Sitting Draw-inによる体幹筋活動─
    笠木 広志
    2014 年 29 巻 3 号 p. 425-430
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕着地動作における下肢不良アライメントに伴う前十字靭帯損傷の予防のため,体幹筋活動が下肢アライメントおよび下肢筋活動へ与える影響を明らかにすることとした.〔対象〕下肢に整形外科疾患を有さない健常女性8名.〔方法〕片脚着地動作において,内腹斜筋および多裂筋の活動量の強弱で分けた試技間で,指示前後での下肢アライメントおよび,下肢筋群の活動性の変化を比較した.〔結果〕体幹筋活動量がより高い方の試技では,他方の試技と比べ,正常値からの大腿脛骨角変位量が有意に小さかった.また,大腿直筋と大腿二頭筋に,体幹筋活動との相関が認められた.〔結語〕sitting draw-in による内腹斜筋および多裂筋の活動性向上は,着地動作における大腿四頭筋および大腿二頭筋の活動性向上と,下肢不良アライメント是正に関与していることが示唆された.
  • ─足圧中心と身体重心の関係─
    澤田 智紀, 行宗 真輝, 木藤 伸宏
    2014 年 29 巻 3 号 p. 431-436
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,異なる方向の歩き始め動作において,予測的姿勢制御期の足圧中心(center of pressure: COP)と身体重心(center of gravity: COG)の挙動の違いを明らかにすることを目的とした.〔対象〕対象は下肢疾患の既往がない健常成人20人とした.〔方法〕課題は右下肢から前方,前方外側30°,前方内側30°,側方90°,後方の歩き始め動作とした.予測的姿勢制御期をCOPの動き始めから右下肢ステップ前の最大外側変位点と定義し,その間までのCOPとCOG変位量と,最大外側変位時間におけるCOGの加速度を求めた.〔結果〕COP左右および前後変位量とCOG左右変位量および左右加速度は,方向によって有意に異なっていた.〔結語〕予測的姿勢制御期におけるCOPとCOGの位置関係によって歩き始めの方向制御が決定されることが明らかとなった.
  • 徳田 一貫, 新小田 幸一, 羽田 清貴, 合津 卓朗, 田中 泰山, 吉田 研吾, 木藤 伸宏, 菅川 祥枝, 本山 達男, 川嶌 眞人, ...
    2014 年 29 巻 3 号 p. 437-442
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕変形性膝関節症のlateral thrustと膝関節の回旋の関係を明らかにすることである.〔対象〕対照群8人,膝OA群13人であった.〔方法〕ハイスピードカメラを用いて歩行立脚時の関節角度を解析し,3軸角速度計を用いて大腿と下腿の回旋角速度を解析した.〔結果〕対照群に比し,軽度膝OA群は荷重応答期から立脚中期の下腿の外旋角速度が有意に小さく,重度膝OA群は立脚期の両肩峰傾斜,下腿傾斜,膝関節内反角度が有意に大きかった.膝OA群の膝関節内反角度は,荷重応答期から立脚中期の下腿の外旋角速度が関連要因であった.〔結語〕膝OAの初期は荷重応答期から立脚中期の大腿部に対する下腿部の適合性が低下し,膝OAの重症化に伴いlateral thrustへと繋がることが示唆された.
  • 早川 省三, 寺田 茂, 三秋 泰一
    2014 年 29 巻 3 号 p. 443-447
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕バリスティックストレッチング(BS)における腓腹筋の筋および腱への影響を検討すること.〔対象〕健常男性20名.〔方法〕BSは利き足の膝の屈伸運動を1 Hzのリズムで3分間行うことによって,非利き足の足関節を底背屈させた.内側腓腹筋筋腱移行部(MTJ)の位置を超音波診断装置を用いてストレッチング前後で計測した.自然立位中のMTJ位置とストレッチング前後のMTJ位置との差を筋伸張量として規定し,腱伸張量は推定した筋腱複合体の伸張量と筋伸張量から算出した.〔結果〕足関節背屈角度はBS後に有意に増加した.筋伸張量,腱伸張量はBS前後で有意差は認められなかった.〔結語〕本研究のBSにおける筋活動レベルでは形態的変化にまで至らないことが示唆された.
  • 内田 全城, 名倉 達也
    2014 年 29 巻 3 号 p. 449-453
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕片脚立位を30秒保持した際の初期重心動揺の特性を検証した.〔対象〕健常成人30名とした.〔方法〕片脚立位30秒間の総軌跡長,X・Y単位軌跡長,単位面積軌跡長を計測し,10秒毎の3区分と初期10秒に対する1秒毎10区分に対する相関分析と比較検証を行った.〔結果〕10秒毎と1秒毎の区分において,単位面積軌跡長と他の重心動揺指標の間に有意な相関はみられなかった.総軌跡長とX・Y単位軌跡長は,初期10秒と0~1秒で他区分より高値を示した.一方,単位面積軌跡長は初期10秒で低値となり,0~4秒の4区分で7~8秒より低値を示した.〔結果〕重心動揺の距離や速度は増大するが,深部感覚系制御への依存性は小さいことが示唆される.
  • 今井 丈, 丸山 仁司, 勝平 純司
    2014 年 29 巻 3 号 p. 455-457
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脛骨捻転の指標となる果部捻転角の角度計を用いた測定方法の妥当性を検証することである.〔対象〕女子学生14名28脚とした.〔方法〕角度計と三次元動作解析システムにより得られる果部捻転角の相関を検討した.〔結果〕角度計による計測値は三次元動作解析システムによる計測値との間に高い相関を示し,この方法のICC(2,1)は0.74,ICC(3,1)は0.89となった.〔結語〕角度計による果部捻転角の計測法により,一定の妥当性が確保できることが期待される.
  • 池野 祐太郎, 福田 航, 片岡 悠介, 濱野 由夏, 竹内 謙太, 川上 翔平, 森田 哲生
    2014 年 29 巻 3 号 p. 459-462
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕膝前十字靱帯(ACL)再建における手術前スクワット時ハムストリングス筋活動量と手術6ヵ月後大腿四頭筋筋力の関連性を検討することとした.〔対象〕解剖学的2重束ACL再建術を施行された患者12名とした.〔方法〕手術前スクワットのハムストリングス筋活動量と手術6ヵ月後大腿四頭筋筋力体重比を測定し,これらの間の相関を求めた.〔結果〕手術前スクワット時ハムストリングス筋活動量と手術6ヵ月後大腿四頭筋筋力体重比に負の相関が認められた.〔結語〕ACL再建術を施行された患者において,スクワット時のハムストリングス筋活動が高い者は,ACL再建術後急性期にリスク管理上良好なCKCによる動作が行われているにもかかわらず,その後の大腿四頭筋筋力が低いことを示唆している.
  • 宮田 伸吾, 寺田 茂, 松井 伸公, 内山 圭太, 大酢 和喜夫
    2014 年 29 巻 3 号 p. 463-469
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    〔目的〕慢性期脳梗塞片麻痺患者に対する油圧制動継手付短下肢装具と下腿三頭筋トレーニングの併用が歩行能力に与える影響を調べることである.〔対象〕77歳の男性で発症後10年経過した脳梗塞左片麻痺患者であった.〔方法〕装具の即時効果,および装具と下腿三頭筋トレーニングの併用効果を,10 m歩行試験と6分間歩行試験で検証した.下腿三頭筋トレーニングの期間は3ヵ月間とした.〔結果〕油圧制動継手付短下肢装具は歩容,最大歩行速度と6分間歩行距離を即時的に改善させ,装具と下腿三頭筋トレーニングの併用は最大歩行速度と最大歩幅の改善に有効であった.〔結語〕油圧制動継手付短下肢装具と下腿三頭筋トレーニングの併用は,歩行能力の改善に有効であった.
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