理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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11 巻, 1 号
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  • 加藤 順一, 原 泰久, 来栖 昌朗, 逢坂 悟郎, 鳴滝 恭也
    1996 年 11 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    脳卒中や脊髄損傷を起因とし,肥満をともなう3人の片麻痺患者および3人の対麻痺患者に対して頚部のクーリングを併用しながら全身温熱(サウナ)負荷テストをするとともに全身温熱(サウナ)療法を施行し,その前後で体重減量効果を検討した。サウナ負荷テストにより最大酸素摂取量および最大心拍数は,安静時のそれらと比較してそれぞれ10%および25%の増加にとどまり,頚部のクーリングにより深部体温は約1.50°Cの上昇にとどまった。またサウナ負荷後に体脂肪の燃焼を意味する呼気中ケトンは有意に上昇した(p<0.01)。16週間のサウナ療法により体脂肪およびBody Mass Indexは12%および16%それぞれ有意に減少した(p<0.01)。体重減量効果をもたらす運動療法が困難な麻痺患者においてサウナ療法は,体脂肪のエネルギー代謝面で有効であることが推測される。
  • 山本 摂, 柴田 典子
    1996 年 11 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は脳卒中片麻痺患者の歩行パターン(前型・揃い型・後型)に関節モーメントが及ぼす影響を検討することである。被験者は歩行に介助を要しない17名の脳卒中片麻痺患者とした。それぞれの被験者について関節モーメントと歩行パターンを測定し,その関連性について検討した。その結果,足接地直後の股関節伸展モーメントと歩行パターンの間に高い相関関係を認めた。この事から揃い型や後型のような歩行パターンは足接地直後の股関節伸展モーメントの低下によって出現すると考える。
  • 平岡 浩一, 岡田 康宏, 谷中 誠
    1996 年 11 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    運動練習が及ぼす,Open Taskの性質を持った多関節運動パターンの変化の構造を分析する事を目的に,標的志向運動課題についての運動練習を通した運動学的変数の変化を観察,検討した。4名の健常男性を対象に投球動作の手関節および肘関節における矢状面上の関節角度変化および筋活動を測定した。
    肘関節と手関節の協調を示す変数の標準偏差は運動練習により低下した。また,手関節と肘関節の運動範囲および運動速度は運動練習により増大した。肘関節と手関節問の変数の相関は運動練習を通して運動速度で増加し,運動範囲で減少した。しかし,各変数の変化は個体間,変数間,関節間で多様な傾向を示し,投球動作時の運動パターン変化の一般的傾向を結論することは困難であった。
  • 金井 章, 足立 明美, 高須 裕子, 星野 茂, 千葉 晃泰, 岩月 宏泰, 猪田 邦雄
    1996 年 11 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    寛骨臼回転骨切り術後の下肢筋力が荷重位での運動能力に与える影響を検討する目的で,術後患者7名(RAO群),健常者8名(健常群)を対象に,10m最大歩行速度および膝関節伸展,股関節外転の等速性筋力の測定を行った。RAO群は,健常群に比べ10m最大歩行速度(p<0.01),歩行率,膝関節伸展筋力,股関節外転筋力(p<0.05)で有意な低値を示した。また,RAO群では10m最大歩行速度と身長(r=0.84),重複歩距離(r=0.79)に,重複歩距離と膝関節伸展筋力(r=0.80)に相関関係を認めた。このことから,RAO群の歩行能力を規定する要因として膝関節伸展,股関節外転筋力の重要性が見出された。
  • ―モデル解析による定量化をもとにしたプログラムを実施して―
    嶋田 誠一郎, 佐々木 伸一, 武村 啓住, 和田 真, 井村 慎一
    1996 年 11 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,スクワット動作の定量化をもとにした前十字靱帯再建術後プログラムを実施した症例の筋力改善効果を示すことである。最初に定量化を目的に前十字靱帯再建術後患者2例でモデル解析をおこない,スクワット動作時の膝関節伸展トルク値を計測した。それをもとにスクワット動作を主とした閉鎖性運動連鎖による訓練を前十字靱帯再建術後プログラムに難易度を考慮し段階的に取り入れ17例に実施し,従来の等速度訓練を中心とした開放性運動連鎖による訓練によるプログラムを実施した11例と比較した。術後約1年でみた筋力は,CKC ex.群で受傷側・非受傷側の伸展・屈曲共有意に改善しており,閉鎖性運動連鎖による訓練を中心とした新しいプログラムは有効と考えられた。
  • 沖田 実, 東 登志夫, 井口 茂, 中野 裕之, 後藤 雅之
    1996 年 11 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    大腿四頭筋強化の一手段である膝伸展位での等尺性収縮運動について,肢位の違いが筋出力,及び筋疲労に及ぼす影響を筋電図学的に検討した。健康成人10名を対象に,1)最大等尺性収縮(MVC)での筋力値,積分値,2)50%MVCの1分間持続収縮での積分値,周波数中央値(MDPF)の変化を背臥位,端座位で比較した。MVCでは筋力値,大腿直筋(RF)の積分値が背臥位で大きく,50%MVCでは肢位に関係なく各筋の積分値は初期に比べ中期・終期で増加した。また,MDPFは肢位に関係なくRF,外側広筋(VL)で低周波化したが,端座位ではRFでそれが早期にみられ,疲労しにくい内側広筋(VM)でもみられた。このことから,本運動では背臥位が端座位より運動肢位として適切であることが示唆された。
  • 恩幣 伸子, 枡 良充, 内山 靖, 山田 美加子
    1996 年 11 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,足背屈筋力の簡便な定量的測定方法の検討と計測学的信頼性を明らかにすることを目的とし,健常人の加齢変化の影響と患者の筋力を計測した。健常人30名を対象に行った,Hand Held Dynamometerによる等尺性収縮筋力の測定結果から,測定における再現性と信頼性は変動係数が4.2~5.4%と低値を示した。また,方法を理解した複数の検者による測定でも信頼性の高い値が得られた。足関節背屈筋力と加齢の関係は,相関を認めたが傾きは緩やかで,30歳以上と30歳未満とで筋力測定値を比較検討したが有意差は認められず,加齢による影響は少ないと考えられた。また,腰痛,股・膝関節疾患,片麻癖患者の筋力は有意な低下を認め,これらの諸特性を定量化し臨床的に応用することの有用性が示唆された。
  • 岩月 宏泰, 岩月 順子
    1996 年 11 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    健常青年16名を対象に等尺性掌握運動(50%MVC)時のSympathetic Skin Response(SSR)潜時,振幅の変化と心電図R-R間隔変動との関連性について検討した。1.安静時のSSR波形では潜時1.54±0.20秒,振幅1.60±0.24mVであり,潜時と身長間にr=0.45(p<0.05),肢長とはr=0.48(p<0.05)と正の相関を認めた。しかし,潜時,振幅と心電図R-R間隔変動係数(CVR-R)とは相関を認めなかった。2.掌握運動時と安静時の比較では,潜時が約8.4%短縮し,振幅が約7.5%増加した。本研究の結果,SSR波形は運動による皮膚汗腺機能の活動状況を反映することが示唆された。
  • 斉藤 昭彦
    1996 年 11 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    この論文の目的は,徒手理学療法におけるイリタビリティーの概念について解説し,イリタビリティーの評価の実際およびイリタビリティーと検査・治療との関係について記述することである。イリタビリティーとは種々の動作によって患者の状態悪化が引き起こされる可能性の程度であり,1)痛みを引き起こす活動量,2)出現した痛みの強度,3)出現した痛みの回復時間の3つの要素から決定される。イリタビリティーはまず,病歴聴取の段階で患者の訴えに基づいて決定され,身体的検査,治療を通して修正される。イリタビリティーの評価により患者の許容量を考慮した適切な検査,治療が可能となる。また,イリタビリティーは治療効果の指標あるいは臨床教育におけるコミュニケーションの手段としても有用である。
  • ―I.血液一般検査―
    國井 麻里, 黒澤 美枝子
    1996 年 11 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    臨床検査値とその意味を理解することは,理学療法を実施するにあたり,リスク管理上,重要である。本講座では,数回にわたり,主な臨床検査値について,その生理学的意味,疾病との関係,理学療法との関係などについて概説していく。今回は,血液一般検査,特に各血液成分のうち細胞成分に関する臨床検査一般(赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値,白血球数,血沈,血小板数)とそれらの異常を示す疾患について概説する。
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