理学療法科学
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19 巻, 3 号
August
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特集:高齢者のリハビリテーション
  • 丸山 仁司
    2004 年 19 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    高齢者リハビリテーションは,高齢社会において,虚弱高齢者の増加,要介護者の増加,慢性疾患および複雑化した疾病構造などにより,重要視されてきた。その社会的な変革,運動機能の変化,そして,高齢者リハビリテーションの問題点,今後の課題について紹介する。
  • 中山 智宏
    2004 年 19 巻 3 号 p. 169-173
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    動物の老化について,愛玩動物での老齢疾患を中心に考察した。近年,犬や猫の寿命は飼育環境の改善,疾患予防等によって飛躍的に延び,今まであまり見られなかった老齢疾患が増加した。人の加齢病変と動物のものとの大きな違いは,限られた動物種で言及すれば犬,猫,家畜では動脈硬化症が少なく,またその程度もきわめて軽いことである。そのため,臨床的に動物で心筋梗塞や脳卒中はまれな疾患である。病態的にも本態性高血圧の存在は動物では確かめられていない。最後に,動物は人と本質的に同一の疾患を多数有する反面,その罹患頻度は品種,動物種によって大きく異なり,きわめて多様である。
  • 草野 修輔
    2004 年 19 巻 3 号 p. 175-181
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    厚生労働省老健局の私的諮問機関である「高齢者リハビリテーション(以下,リハ)研究会」から『高齢者リハのあるべき方向』と題された中間報告書が発表された。その中で,高齢者リハにおいては高齢者の状態像に応じた適切なアプローチが必要であるとし,リハモデルとして,(1) 脳卒中モデル,(2) 廃用症候群モデル,(3) 痴呆高齢者モデル,を提唱している。上記提言に基づいて,総論として,高齢者の疾患の特徴,加齢に伴う生理的変化,高齢者のリハ対象疾患について述べ,各論として脳卒中モデルに関して急性期脳卒中のリハについて,廃用症候群モデルに関して廃用症候群の病態について,痴呆高齢者モデルに関して,最近の痴呆の診断・治療について述べる。
  • 小松 泰喜
    2004 年 19 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    1.平成9年(1997年)12月に日本で初めての事業として,東京厚生年金病院健康管理センターに「転倒予防教室(以下,教室)」は開設された。2.転倒予防への理学療法士の役割は,参加者が日常生活の中で「普段が大事」であることを再認識できるように,自宅で継続できる基礎的な運動指導を実践し,また「教室」では,丁寧にわかりやすい指導をするように心掛けている。3.10 m全力歩行時間は転倒回避能力の指標の一つと共に大腿骨頚部骨密度と関連する指標の一つとして,フィールドワークや施設入所者の評価・指導に役立てられる可能性がある。4.高齢化に伴い,ソフトとしての運動・生活指導とともにハードとしての杖の選び方と使い方,さらには家屋環境の整備について指導を今後積極的にしていく必要性がある。
  • 佐藤 陽子
    2004 年 19 巻 3 号 p. 189-191
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,高齢障害者を対象に実施するレクリエーション活動について,その基本的な考え方(集団の構造と特徴およびレクリエーションの目的や効果),集団の形成,レクリエーションプログラム,実施上の留意点の4点を作業療法の視点から,説明した。特にレクリエーション活動の原則である“楽しさ”を対象者に体験してもらうには,さまざまな工夫が必要であることを強調した。
  • 岡持 利亘
    2004 年 19 巻 3 号 p. 195-205
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    高齢者のリハビリテーションの改善すべきターゲットは「生活機能障害」であるという認識が整理され,現在介護が必要な方への積極的かつ効果的なリハビリテーション提供体制の整備が急がれている。同時に,現在は介護の必要はないが虚弱であるために,将来,介護の必要性が予測される方に対し,身体的能力を高めるための様々な取り組みが「介護予防」としてさまざまな方法が提案され整備が進んでいる。パワーリハビリテーションはそれらの様々な方法論の一つとして,マシントレーニングを一定期間,定期的に提供することで,「生活機能障害」の改善や予防をするという考え方であり,その主目的は「行動変容」にある。平成16年5月現在,パワーリハビリテーション実施施設は693施設となり,その業態種別内訳は,老健・病院・単体デイサービス・クリニック・自治体の順である。医療機関での取り組み例として,介護予防だけでなく「疾病予防」「障害の重度化予防」「参加・交流事業」なども含めたサービス提供のあり方を紹介した。介護予防単体としてどう実施すべきかという方法の議論ではなく,医療から地域へのリハビリテーションの流れの中にどのように組み込んでいき,既存のサービスとどのようにリンクしていくのかなど,実践としての議論をすべき時と感じる。
研究論文
  • ─心拍変動パワースペクトル解析による検討─
    高橋 健太郎, 村上 雅仁, 前田 慶明, 池田 洋美, 細川 晃代, 加藤 順一
    2004 年 19 巻 3 号 p. 207-210
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    頸髄損傷者を対象に自律神経機能と概日リズムについて検討した。男性頸髄損傷者7名(26±5歳)と健常男性8名(25±2歳)を対象に,アクティブトレーサーAC301を24時間装着し,心拍変動のパワースペクトル解析により超低周波領域成分,低周波領域成分,高周波領域成分,低周波領域/高周波領域比および心電図R-R間隔変動係数を睡眠および覚醒時で比較した。両群において覚醒時の低周波領域/高周波領域比と心電図R-R間隔変動係数は,睡眠時と比較して有意に高値を示した。頸損群の覚醒時超低周波領域成分および低周波領域は,健常群と比較して低値の傾向を示したが,高周波領域は変化なかった。また,頸損群で覚醒時低周波領域/高周波領域比は,健常群と比較して有意に低値を示した。結果から頸髄損傷者において睡眠および覚醒時で日内変動がみられ,自律神経中枢のリズム障害とsympathovagalバランスが関連していることが示唆された。
  • ―身体活動量および時間に関する検討を中心に―
    藤田 達也, 西田 裕介, 大橋 卓哉, 大島 琴美, 劉 恵林
    2004 年 19 巻 3 号 p. 211-215
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脳卒中片麻痺を呈する通所リハビリテーション(以下:通所リハ)利用者を対象にTime Study法によって施設内生活状況を調査し,身体活動量および時間の維持・向上という視点から検討することである。対象は脳卒中片麻痺を呈する通所リハ利用者36名(男性18名,女性18名)である。Time Study法は,来所から施設内サービス終了までの行動を1分単位で記録し,理学療法士介入・自主練習時間,理学療法士を除くリハビリスタッフ介入時間,余暇時間,休憩時間,生活活動時間,その他の7項目に分類し,全施設利用時間を100%とした百分率を算出した。その結果,対象者の施設内身体活動時間は短いものであり,また,要介護度の高い者ほど,施設内身体活動時間が低下している傾向にあった。このことから,通所リハでは,施設内身体活動時間向上を考慮したサービス提供が必要であると考えられた。
  • ─GAITRiteによる解析─
    村田 伸, 忽那 龍雄, 北山 智香子
    2004 年 19 巻 3 号 p. 217-222
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,歩行分析装置GAITRiteを用いて,最速歩行と最適歩行を分析し,測定方法の違いによる測定値の信頼性や,性差および利き足と非利き足の特徴について検討した。被験者42名(男性18名,女性24名,平均年齢22.1歳)の歩行分析の結果,最速歩行と最適歩行のいずれの歩行分析でも,歩幅,ステップ時間,歩行速度,歩行率においては,ICC=0.9以上の高い再現性が得られた。また,性差は,最適歩行では認められなかったが,最速歩行ではステップ時間と歩行率以外の全ての指標に有意差が認められた。利き足と非利き足については,歩行中の全ての測定値に有意差は認められなかった。これらのことから,臨床現場での歩行分析は,最速歩行と最適歩行のどちらであっても,再現性の高い測定値が得られることが示唆された。しかし,その人の持つ歩行能力をパフォーマンスとしてより的確に引き出すためには,最適歩行よりも最速歩行の方が,優れていることが示唆された。
  • 大工谷 新一, 谷埜 予士次, 西守 隆, 高崎 恭輔, 金井 一暁, 廣瀬 亜由美, 廣瀬 浩昭, 坂本 隆弘, 三原 修, 鈴木 俊明
    2004 年 19 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、理学療法士教育における臨床実習の成績に影響する要因を明らかにすることである。対象は,3回の臨床実習を経験した最終学年の学生39名であった。1回の臨床実習期間は7週半であった。総合評価と学生のレベルを評価する各項目との関係を相関係数の算出と重回帰分析により行った。学生に対する評価項目は,情意,知識,理学療法評価,臨床理学療法技術という観点から規定された21項目によって構成された。本研究から得られた知見は以下のとおりである。1)情意と理学療法評価は総合成績に大きな影響を及ぼす。2)理学療法評価の中では「統合と解釈」が最も重要である。3)知識に関しては,疾患に関するものと検査測定に関するものが重要である。4)技術に関しては,関節可動域訓練とリスク管理が大切である。5)情意と理学療法評価が低いと判断された場合,たとえ知識と技術に優れていても,総合評価は本来よりも低くなるかもしれない。
  • 小澤 敏夫, 清水 和彦
    2004 年 19 巻 3 号 p. 229-235
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    人工股関節全置換術(THA)を受けた116症例について,機能回復状況から回復に影響する要因と経時的な障害モデルを把握する為,術前から術後24ヶ月までを日整会股関節判定基準(Hip Score)と股関節周囲筋力を測定した。分散分析で回復状況を分析し,重回帰分析で要因を抽出し,構造方程式モデリング(SEM)で障害モデルを推測した。Hip Scoreの変化は術前56.3±13.9点から術後24ヶ月で88.3±8.6点と有意に回復が認められ,重回帰分析では術後の機能回復に影響を与える要因として年齢,手術既往数,非術側筋力,合併症の有無が抽出された。SEMの結果は,Whyteの示した2つの障害モデルを含んでいた。
  • 冨田 和秀, 阪井 康友, 門間 正彦, 大瀬 寛高, 居村 茂幸
    2004 年 19 巻 3 号 p. 237-243
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,dynamic MRIを用いて,健常者の安静呼吸と最大深呼吸における横隔膜運動の差異を定量的に解析すること,最大深呼吸における全横隔膜運動とBMI,肺活量(VC)や胸郭拡張差との相関関係について検証することである。その結果,横隔膜の頭尾方向への運動距離の平均は,安静呼吸時,腹側部14 mm,中央部20 mm,背側部27 mmであり,最大深呼吸時,腹側部41 mm,中央部64~67 mm,背側部74 mmであった。また,全横隔膜運動とBMI,VC,胸郭拡張差との間には,相関関係は認められなかった。
  • 村田 伸
    2004 年 19 巻 3 号 p. 245-249
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,健常女性33名(平均年齢22.2歳±2.6)の開眼片足立ち位での重心動揺を測定し,主要な下肢筋力や足部機能(足把持力と足底感覚)との関連性を検討した。重回帰分析によって,片足立ち位での重心動揺に影響を及ぼす因子として抽出されたのは,足把持力と足底感覚(二点識別覚)であり,足把持力が強いほど,また,足底感覚が鋭いほどに,片足立ち位保持が安定していることが示唆された。今回の知見より,片足立ち位保持が良好な対象例では,大腿四頭筋などの下肢の主要な筋力よりも,足部の機能である足把持力や足底感覚の方が,片足立ち位での重心動揺に影響を与えていることが示唆された。すなわち,片足立ち保持が30秒以上可能な対象者の片足立ち能力をより高めるためには,下肢の主要筋力を強化するよりも,足底感覚や足把持力をトレーニングすることの重要性が示唆された。
  • 小野 武也, 沖 貞明, 越智 淳子, 金井 秀作, 清水 ミシェル・アイズマン, 大塚 彰
    2004 年 19 巻 3 号 p. 251-254
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脊損ラットの足関節底屈位固定に加えて痙縮の有無がラットヒラメ筋の筋性拘縮に与える影響について検討することであった。足関節最大底屈位に固定した固定群,足関節最大底屈位固定に加えて脊損を行った固定+脊損群,およびコントロール群に分けた。4週後,ヒラメ筋の筋性拘縮の程度は,コントロール群に比較して固定群および固定+脊損群が有意に大きく,固定群と固定+脊損群との間には有意差がみられなかった。このことから,筋性拘縮は関節の不動という廃用の影響は受けるが痙縮の影響は受けないものと推測された。
  • 金井 章, 元田 英一, 鈴木 康雄, 植松 光俊, 梶原 史恵, 坂野 裕洋, 松田 輝
    2004 年 19 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,筋骨格モデルを用いて歩行時にどの程度の膝関節引き出し力が作用しているかについてについて検討することを目的とした。対象は,本研究について協力の承諾を得ることのできた健常青年男性7名で,平均年齢は19歳(18歳~20歳),平均身長は176.5±6.6 cm,平均体重は69.6±7.5 kgとした。方法は,被験者に10 mの歩行路を快適歩行速度で歩行をさせ,その時の膝関節前方引き出し力を筋骨格モデルを用いて算出した。その結果,立脚期前半には100 Nを越す力が脛骨前方引き出し力として作用していることが明らかになった。歩行時は100 Nを越す負荷が繰り返し再建ACLにかかることを考慮して,術後の理学療法,日常生活での歩行指導をしていくことが重要であると考えられた。
講座
  • 今井 樹, 潮見 泰藏
    2004 年 19 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/30
    ジャーナル フリー
    近年,科学的根拠に基づいた理学療法(EBPT)が一つのトピックとなっている。このEBPTを検討するにあたって重要になるのがOutcome measuresである。しかしながら,Outcome measuresに関していくつかの問題点があり,その一つに信頼性の問題が挙げられる。ここでの信頼性とは,検者内信頼性(Intra-rater reliability)および検者間信頼性(Inter-rater reliability)のことを指している。この信頼性を表すものとして,Pearsonの積率相関係数などが挙げられるが,今回は級内相関係数(ICC:Intraclass correlation coefficient)を取りあげ,検者内信頼性および検者間信頼性の求め方を概説する。
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