理学療法科学
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16 巻, 2 号
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研究論文
  • 長期回復群の検討を中心に
    小林 修二, 森田 秋子
    2001 年 16 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、脳血管障害患者の機能回復過程を類型化し、回復が長期にわたる群の存在を明らかにし、その特徴を示すことである。対象は131名の片麻痺患者。方法はMOA,MFS,MMS,BIの入院時、1、2、3、6か月後の値を測定し標準得点化した。調査期間を前期、後期と分け、標準得点が1/4SD以上上昇した場合を回復と定義し、回復が前後期にわたって持続したものを長期回復群とした。長期回復群の比率はBIが28%と最も高く、次いでMOA,MMSの順で、MFSが4%と最も低かった。BIの比率が高かった理由は評価尺度の違いが考えられた。長期回復群の特徴は、MFSをのぞき入院時の値は低いが、入院前期も後期も同様の機能回復を示し、6か月後には短期回復群と差がなくなることであった。
  • 後藤 由美, 横山 一弥, 荒井 未緒, 渡辺 京子, 内山 靖
    2001 年 16 巻 2 号 p. 59-63
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、脳卒中片麻痺患者(以下片麻痺患者)60例を対象とし、46例を立ち上がり可能 · 不可能群に分け、身体機能面の違いを明らかにし、その日常生活関連動作(以下APDL)における影響を比較 · 検討した。立ち上がり可能群は、不可能群と比較して非麻痺側下肢筋力、腹直筋筋力(以下腹筋筋力)、下肢Brunnstrom Stage(以下Br.stage)、立位バランスが有意に優れ、APDLも高値を示した。立ち上がり不可能な14例に対して通常の理学療法を2ヶ月間施行したところ、立ち上がりが可能となった例でも腹筋筋力、下肢Br.stage,非麻痺側下肢筋力、立位バランスが改善し、あわせてAPDLの得点も高くなることが分かった。これらのことから、片麻痺患者の床からの立ち上がり動作獲得には、腹筋筋力、両下肢機能、立位バランス反応が重要であり、APDLにも影響することが示された。
  • 運動肢位と重錘負荷量の違いが筋活動に及ぼす影響
    池添 冬芽, 市橋 則明, 万久里 知美, 羽崎 完
    2001 年 16 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    足部に重錘バンドを装着して等張性に股関節伸展および外転運動を行なうときの、運動肢位や重錘の重さの違いが大殿筋や中殿筋の筋活動にどのような影響を及ぼすかについて検討を行なった。対象は健常成人12名とし、大殿筋および中殿筋の整流平滑化筋電図を測定した。股関節外転運動は側臥位と立位にて、股関節伸展運動は腹臥位と側臥位にて、それぞれ4種類の重錘負荷条件(負荷なし、足部に体重の2%、4%、6%の重錘バンドを装着)で行わせた。その結果、股関節外転運動において、側臥位では大殿筋と中殿筋のピーク%RFEMGと平均%RFEMGともに重錘を重くするにしたがい有意に筋活動量は増加したが、立位では平均%RFEMGにおいてのみ重錘負荷条件による変化が認められた。股関節伸展運動については、立位で行なったときの大殿筋と中殿筋の筋活動量は腹臥位のときの約1/2の値であり、最大収縮に比較して低い筋活動量を示した。本研究の結果より、立位で等張性の筋力トレーニングを実施する場合には重錘負荷しても大殿筋や中殿筋の筋力増強効果は少ないことが示唆された。
  • 武村 啓住, 細 正博, 由久保 弘明, 井上 悟, 兼盛 淑子, 立野 勝彦
    2001 年 16 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    目的 : ラット膝関節拘縮モデルを用い、関節構成体である関節包や関節軟骨がどのような変化を起こしているのかを組織学的に観察し、検討した。対象と方法 : 9週齢のWistar系雄ラット3匹の右後肢を股関節最大伸展、膝関節最大屈曲位、足関節最大低屈位、にて固定し固定群とした。左後肢は自由にし対照群とした。採取した膝関節をホルマリン液にて組織固定し、脱灰後パラフィン包埋し標本を作製した。染色はヘマトキシリン · エオジン染色とエラスチカ · ワンギーソン染色を行い、光学顕微鏡下にて関節包、関節軟骨の病理組織学的観察を行った。結果 : 固定群では対照群に比べて関節包の厚さが減少し、線維性結合織が粗性から密性へと質的に変化して弾性線維は減少していた。また固定群では関節軟骨表層の線維増生と考えられる変化が観察された。結論 : 以上の変化は関節構成体である関節包、関節軟骨の萎縮と考えられ、この概念提起が有効であれば、筋や骨と同様関節包、関節軟骨にも廃用性萎縮の概念が適用できる可能性が示唆された。
  • 由久保 弘明, 細 正博, 武村 啓住, 井上 悟, 兼盛 淑子, 西村 誠次, 立野 勝彦
    2001 年 16 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    目的 : ラット膝関節拘縮モデルを用い、滑膜の病理組織学的変化を観察することである。対象と方法 : 9週齢のWistar系雄ラット3匹の右膝関節を屈曲位で2週間ギプス固定し固定群とした。左膝関節は自由にし対照群とした。採取した膝関節をホルマリン固定した後、脱灰、パラフィン包埋し組織標本を作製した。染色はヘマトキシリン · エオジン染色を行い、光学顕微鏡下にて滑膜を観察した。結果 : 対照群と比べ固定群では滑膜細胞の萎縮、滑膜下層の線維化、微小血管の拡張とうっ血を認めた。結論 : 本研究の関節拘縮の滑膜における変化はギプス固定による二次的障害として考えられ、関節構成体である滑膜にも廃用性萎縮の概念が適用できる可能性が示唆された。
  • 前田 哲男, 大渡 昭彦, 山口 尚美
    2001 年 16 巻 2 号 p. 83-85
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は大腿四頭筋訓練器を用いて膝関節伸展屈曲運動を行った場合の負荷量が運動速度及び個人により異なるかどうかを明らかにすることである。大腿四頭筋訓練器を膝関節運動中の負荷量と角度変化がKin-Comに取り込めるように改良したものを測定に使用し、健常女子学生20名に対して4種類の速度で膝関節の伸展屈曲運動をそれぞれ13回ずつ行わせた。結果、各速度における負荷量の値はp<0.01にて有意差が認められ、各被検者間での負荷量の値もp<0.01にて有意差が認められた。以上により、大腿四頭筋訓練器を用いて膝関節伸展屈曲運動を行った場合の抵抗パッド部分への負荷は、運動速度の違い及び個人により異なることが示された。
  • 西田 裕介, 獅子内 善徳, 秋山 純和
    2001 年 16 巻 2 号 p. 87-90
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究では、大殿筋の筋収縮増大を得るために、骨盤挙上運動(以下Br)時に上肢PNFパターンを施行した時の筋活動の状況を分析した。方法は、健常男性12名を対象に左上肢PNF(伸展-外転-内旋、屈曲-外転-外旋)パターンをBr時に施行した。なお、PNFは各2回ずつ中間域にて最大等尺性収縮を7秒間行わせ、筋電図波形を導出した。測定筋は左右大殿筋、左右脊柱起立筋とし、各筋電図は、安定している5秒間についてroot mean square(以下RMS)を導出した。得られたRMSの統計には分散分析と多重比較検定を用い、危険率は5%未満とした。結果は、右大殿筋および左右脊柱起立筋でBr時に屈曲-外転-外旋パターンを施行した方が、伸展-外転-内旋パターンを施行した方より大きい筋活動が得られた(p<0.05)。このことより、上肢PNFパターンとBrとの組み合わせは、神経生理学的には脊髄-延髄-脊髄反射の影響が示唆された。
  • 仙波 浩幸, 今村 陽子, 福田 典子, 関根 正幸, 菊地 善行, 沼尾 茲夫
    2001 年 16 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、身体障害を有する慢性分裂病患者が理学療法を実施するに際して、プログラムの計画や実施に問題となる臨床症状を明らかにすることを目的として実施した。対象は、平成9年7月より12年3月の間に、身体障害を生じ理学療法を実施した慢性精神分裂病患者で、精神症状がコントロールされている男性58名49.8±13.4歳、女性71名52.7±15.9歳、合計129名とした。当院理学療法部門で精神症状評価尺度を作成し因子分析を実施した。その結果、認識 · 意欲障害、注意障害、活動性低下、不安症状、否定拒否の5つの因子が抽出された。理学療法士の立場から、精神分裂病患者の理学療法実施の際には、この5つの領域からなる精神症状に配慮してプログラムの計画、実施に取り組まなければならないと考える。
  • 日常生活動作(基本動作)に関連して
    江口 勝彦
    2001 年 16 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、カスタムメイドの非伸縮性腰仙椎装具(軟性)(Aタイプ)と、より汎用性の市販の伸縮性簡易コルセット(Bタイプ)の装着が腰椎の屈曲 · 伸展可動域に及ぼす影響と床からの立ち上がり、ベッドからの起きあがり動作の所用時間に及ぼす影響を明らかにする目的で、実験を行った。その結果、コルセットの装着は、1)Aタイプで約50%、Bタイプで約10%体幹の可動性を制限し、さらに2)Aタイプで約50%、Bタイプで約20%基本動作の遂行時間を延長させることが明らかになった。
講座
  • 竹井 仁
    2001 年 16 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/12/27
    ジャーナル フリー
    Myofascial Release(筋膜リリース)とは筋膜の単なる伸張ではなく、筋膜のねじれをリリース(解きほぐす)することにある。筋膜制限に適用された隠やかな伸張は、熱を引き出し、リンパドレナージを改善し、筋膜組織を再編成し、そして最も重要である軟部組織固有感覚の感覚機構をリセットする。この活動により、中枢神経系が再プログラミングされる。さらに、運動療法あるいは神経発達学的治療を組み合わせることで、患者は新しい運動を学習でき、機能的な巧緻活動場面の中でその運動を応用していくことも可能となり、自立した機能の獲得へと前進する。最終的には最適の機能とパフォーマンスを最少のエネルギー量で達成できることが目標となる。
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