理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
39 巻, 1 号
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表紙
会告
目次
原著
  • 楠 貴光, 大沼 俊博, 鈴木 俊明
    2024 年 39 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕広背筋を椎骨部,腸骨部,肋骨部線維に分け,運動変化に伴う筋活動の相違を検討した.〔対象と方法〕健常男性10名を対象とし,課題は肩関節伸展,肩関節内旋,肩甲帯下制,胸腰部側屈の各肢位を保持させた.各肢位で筋電図を測定し,端座位保持時の筋活動を基準に筋電図積分値相対値を検討した.〔結果〕椎骨部線維は,肩関節伸展課題にて他の課題と比較して増大を認めた.腸骨部線維は,肩関節伸展,内旋課題と比較して肩甲帯下制課題,さらに肩関節内旋課題と比較して胸腰部側屈課題にて増大を認めた.肋骨部線維は,肩甲帯下制課題にて他の課題と比較して増大を認めた.〔結語〕椎骨部線維は肩関節伸展,肋骨部と腸骨部線維は肩甲帯下制に加え,腸骨部線維は,胸腰部の側屈への関与が大きかった.

  • 野田 優希, 城野 靖朋
    2024 年 39 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕慣性センサを用いた片脚連続ホッピング(OLCH)時の筋反応指数(RSI)測定の妥当性と信頼性を検証すること.〔対象と方法〕対象は健常成人7名とした.フォースプレートと慣性センサを同期し,OLCH時のRSIを解析した.フォースプレートで測定したRSI(RSI-fp)をゴールドスタンダードとして,慣性センサで得られたRSI(RSI-IMU)を独自の3つの基準を用いて解析した.〔結果〕自由落下の重力加速度(0G)を基準としたRSI-0Gは,RSI-fpと有意な正の相関を認めたが,系統誤差が認められた.RSI-0GのICC(1,1)は0.97であり,系統誤差を含んでいなかった.〔結語〕RSI-0Gは高い信頼性はあったが妥当性はなかったため,慣性センサ独自のRSI値として用いる必要がある.

  • 伊藤 兼, 中島 弘之, 増田 優作, 川尻 将太, 森 憲司, 千鳥 司浩
    2024 年 39 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕拡散テンソル画像(DTI)と拡散テンソルトラクトグラフィー(DTT)の解析において,関心領域法とtract specific analysis(TSA)の再現性の違いを明らかにすること.〔対象と方法〕対象者は,健常な男女17名(年齢32.8 ± 6.8歳),検査者は理学療法士3名.関心領域法(フリーハンド,楕円形,球形)は中脳大脳脚,TSAは皮質脊髄路の線維束でfractional anisotropy値を解析し,検者間信頼性を比較した.〔結果〕TSAはフリーハンド,楕円形と比較して有意に信頼性が高く,球形と有意差がなかった.〔結語〕DTIとDTTの解析において,関心領域法のうちフリーハンドおよび楕円形よりもTSAの再現性が高く,球形とTSAは再現性に差がないことが示唆された.

  • 小山 浩司, 一場 友実, 古島 弘三, 菅野 好規, 新津 あずさ, 小太刀 友夏, 新納 宗輔, 上野 真由美, 足立 和隆
    2024 年 39 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕ストレッチポールを使用する際,頭頸部の位置の違いが,試技後の胸郭拡張差の変化に影響を与えるかを検討した.〔対象と方法〕健常成人男性62名を対象とし,頭頸部を後屈させる介入群31名と,頭頸部を後屈させない対照群31名の2群に割付した.試技前後に3ヵ所(腋窩部,剣状突起部,第10肋骨部)の胸郭拡張差を測定した.〔結果〕試技前後の胸郭拡張差について,介入群では有意な差は認められなかった.一方,対照群では,剣状突起部で試技前に比べ,試技後に有意に低値を示した.〔結語〕ストレッチポールを使用する際の,頭頸部の位置の違いは,試技後の胸郭拡張差の変化に影響を与えない可能性が示唆された.

  • 福島 卓
    2024 年 39 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕斜面板上立位保持トレーニング(SST)を実施することで,障害物跨ぎ越え時の足クリアランスを増加させることが可能か検証した.〔対象と方法〕若年健常者10名を対象とし,SSTを1分間実施した条件と,平地立位練習条件を比較した.跨ぎ越え動作時の足クリアランスとステップ長を測定し,足クリアランスからは標準偏差(SD)を算出した.立位トレーニング課題前後に,前後・左右方向の足圧中心(COP)変位も計測した.〔結果〕SST条件で足クリアランスが増加し,SDが減少した.ステップ長の増加もみられ,COPは前方へと変位した.〔結語〕SSTは足クリアランスを増加させ,転倒を予防するツールとなり得る可能性がある.

  • 村田 祥子, 秋月 千典, 小林 修二
    2024 年 39 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕同居家族がいる脳卒中患者が入院した場合,その退院先を判別する要因を特定すること.〔対象と方法〕回復期リハビリテーション病棟に入院中の同居家族がいる脳卒中患者50例とその家族を対象とした.退院先を自宅と自宅以外との2群に分類し,比較検討した.ロジスティック回帰分析で退院先を判別する要因を特定し,受信者動作特性曲線から自宅退院するための機能的自立度評価法(FIM)のカットオフ値を算出した.〔結果〕退院先の判別要因は,入院時のFIM総合計得点であった.カットオフ値は45点であった.〔結語〕回復期リハビリテーション病棟に入院時のFIM総合計得点で退院先を予測した支援の可能性が示唆された.

  • 栗田 和典, 横川 正美, 間所 祥子, 田中 正二, 久保田 雅史, 三秋 泰一, 山崎 俊明
    2024 年 39 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕股関節内転運動(内転運動)時の股関節屈曲角度の設定が,腹横筋の筋厚変化に与える影響を検討した.〔対象と方法〕健常男性20名を対象とし,背臥位で内転運動を実施した.運動は運動強度(安静,低強度,中強度)と股関節屈曲角度(0°,45°,90°)を組み合わせた9条件とし,超音波診断装置を用いて腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋の筋厚を測定した.〔結果〕内転運動時の腹横筋筋厚は,安静の90°よりも中強度の90°の時に有意な増大を認めた.低強度の条件間では90°が45°よりも有意に高値を示し,中強度では90°が0°,45°よりも有意に高い値を示した.〔結語〕内転運動時の腹横筋の筋厚は,股関節屈曲角度によって変化する.

  • ─75歳以上を対象とした後方視的研究─
    保坂 公大, 大田尾 浩, 菱川 幹太, 古賀 一平, 今村 純平, 田中 順子, 柴田 元
    2024 年 39 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕地域包括ケア病棟に入院する患者の退院先に,影響を及ぼす入院時の要因を検証した.〔対象と方法〕2020年1月から2022年 12月までに,当院の地域包括ケア病棟に入院した75歳以上の患者413名とした.評価項目は,入院時機能的自立度評価表(FIM)運動項目のセルフケア能力,排泄能力,移乗能力,移動能力,改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),同居者数,疾患分類とした.また,退院先別に自宅群と施設群に分類し,退院先に影響する要因を調査した.〔結果〕地域包括ケア病棟患者の退院先には,入院時のセルフケア能力と同居者数が関係していた.さらに,施設群は自宅群に比べてセルフケア能力,特に食事の項目の点数が低かった.〔結語〕地域包括ケア病棟に入院する75歳以上の患者の退院先の選定には,同居者数および入院時のセルフケア能力が影響することが示唆された.

  • 保坂 雄太郎, 池田 崇, 湖東 聡, 吉川 泰司
    2024 年 39 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕人工股関節全置換術(THA)後患者の術後入院日数と,術前後の栄養状態に関するパラメータとの関連性を明らかにすること.〔対象と方法〕変形性股関節症の診断で,初回THAが施行された50例50関節(男性6例,女性44例,平均年齢66.6 ± 10.4歳)を対象に,術後入院日数と年齢と,Body Mass Index,栄養制御指数(CONUT score),術後5日目のアルブミン(Alb),総蛋白,C反応性蛋白との関連性を調査した.〔結果〕CONUT scoreは,正常47例,軽度不良3例であった.術後入院日数に関して,Alb(p<0.05)で有意な関連性を認めた.〔結語〕術後5日目のAlbによって,変形性股関節症の初回THA術後の入院期間の長期化が予測できることが示唆された.

  • 上野 勝也, 東 利紀, 渡邉 陽祐, 多和田 絵里奈, 山田 康貴, 橋本 恵, 後藤 伸介, 髙橋 祐樹, 黒田 一成, 淺 亮輔, 羽 ...
    2024 年 39 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕高齢の人工膝関節全置換術(TKA)患者の歩行能力と体幹,下肢機能の関連性を調査すること.〔対象と方法〕対象は,TKAを施行した前期高齢者22名と後期高齢者36名.歩行能力は,10 m歩行時間,8の字歩行時間を,体幹機能は,Trunk Righting Test(TRT),端座位側方リーチテストで,下肢機能は,片脚立位保持時間,疼痛,筋力(膝伸展,股外転),関節可動域(膝屈伸,股内転)で測定し,重回帰分析を行った.〔結果〕前期高齢者では,10 m歩行時間,8の字歩行時間とも術側股外転筋力,安静時痛,膝屈曲可動域が抽出された.後期高齢者では,術側片脚立位,膝伸展筋力,膝伸展可動域と,8の字歩行時間には両側TRTも抽出された.〔結語〕後期高齢者ほど体幹,下肢機能とも歩行能力に影響することが示唆された.

紹介
  • 中根 征也, 杉本 圭, 石倉 健二
    2024 年 39 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究の目的は,本邦における自閉スペクトラム症(ASD)児への運動介入に関するスコーピングレビューを行い,その実態を明らかにし,示唆を得ることにした.〔方法〕PubMed,医中誌,CiNii,Medical Onlineによる検索,Googleによるハンドサーチを行い,選定基準に従ってスクリーニングを行った.〔結果〕最終抽出文献は9文献であった.ASD児への運動介入は,運動能力向上に加えて,社会的適応能力の向上にも有効であることが示唆された.〔結語〕ASD児への運動介入は,運動能力と社会適応能力を向上させる可能性が示唆された一方,研究デザインの側面で,その有効性を明示するには不十分であった.今後,さらなる有効性の検証が求められる.

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