理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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28 巻, 6 号
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原 著
  • 宮﨑 茂明, 石田 康行, 河原 勝博, 渡辺 将成, 屋嘉部 愛子, 平安 堅吾, 濱野 友生, 常盤 直孝, 加藤 浩, 鳥取部 光司, ...
    2013 年 28 巻 6 号 p. 703-708
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕投球動作における体幹回旋運動と肩甲帯周囲の筋活動の関連性を検討することである.〔対象〕高校の野球部投手(疼痛既往肩8名,コントロール10名)とした.〔方法〕検討項目は投球動作時の胸郭および骨盤回旋角度とその変化量,表面筋電図周波数解析による肩甲帯周囲の筋活動(平均周波数とその差分)とした.〔結果〕疼痛既往肩の投手は,胸郭回旋角度の変化量ではコッキング期に有意に低値を,加速期に有意に高値を示した.骨盤回旋角度の変化量はコッキング期に有意に低値を示した.肩甲帯周囲の筋活動はコッキング期に僧帽筋下部線維,前鋸筋で有意に低値を示した.〔結語〕投球障害肩の発生要因として,体幹回旋運動減少と肩甲帯周囲の筋収縮リズムに生ずるインバランスにより,肩関節への負荷が増大した可能性がある.
  • ─臨床実習指導者へのアンケート調査から─
    岩瀬 弘明, 村田 伸, 廣瀨 智理, 下平 佳代, 渡邉 俊行, 舩田 雅之, 原 由香利, 窓場 勝之
    2013 年 28 巻 6 号 p. 709-713
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕臨床実習指導者からみた学生の「好感がもてる行動」を明らかにすることを目的とした.〔方法〕第1次調査では,臨床実習指導者を対象に自由記述式のアンケート調査を行い,学生に求められている148項目の行動を明らかにした.第2次調査では,1次調査で得られた好感がもてる行動の重要度を明らかにした.〔結果〕臨床実習指導者からみた学生の好感がもてる行動は「患者にはっきりと挨拶ができる」など,患者に対する態度に関する項目が上位を占めていた.一方,下位項目は学生の知識や身だしなみ,デイリーノートに関する項目であった.〔結語〕臨床実習指導者は,患者に対する挨拶や態度を重要視しているが,学生の知識や身だしなみ,デイリーノートの記載量は重要視していないことが示唆された.
  • ─特殊技術を用いた反復運動からの検討─
    加藤 勝行, 丸山 仁司
    2013 年 28 巻 6 号 p. 715-718
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕固有受容性神経筋促通技手技の中の2種のストレッチ技術を用いる特殊技術(手技)による短期的持続効果を検討した. 〔対象〕健常成人(男子20名)とした.〔方法〕特殊技術の中から連続運動の交互性の関節運動(反復運動)に類した2つの技術を用いた.PNF実施前後で肘の屈曲運動の反応時間(RT)を時系列的に測定し,その持続効果を検討した.〔結果〕リピーテッドストレッチ群において,実施前と比較して実施直後から20分後までRTを短縮する効果が認められた.スローリバーサル群において,実施前と比較して実施直後のみ有意差が認められた.〔結語〕反復運動群では20分間の持続的RTの短縮が得られたことから,臨床応用での理学療法技術における介入への応用が可能である.
  • ─臨床経験10年以上の理学療法士での検討─
    松田 徹, 吉田 晋, 井上 美幸, 村永 信吾, 大嶋 幸一郎, 川間 健之介
    2013 年 28 巻 6 号 p. 719-726
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕臨床経験10年以上の理学療法士(PT)の臨床判断による転倒予測の視点と確かさを検討すること.〔対象〕臨床経験10年以上のPT 17名.〔方法〕PT 11名に,フォーカスグループインタビューを実施し,timed “up& go” test(TUG)チェックリストを作成した.次に別のPT6名が,TUGチェックリストを使用し,21名の高齢者映像からの転倒予測を行った.〔結果〕visual analogue scale(VAS)評価は既存の転倒予測指標と有意な関連性を示し,チェックリスト評価項目の「着座動作に問題がある」の転倒予測の的中精度が高かった.〔結語〕臨床経験10年以上のPTの転倒予測の正確性は高く,既存の転倒予測指標にTUGの着座場面の観察を加えることで,予測の精度向上が期待できる.
  • 上野 友愛, 木山 良二, 川田 将之, 大渡 昭彦, 福留 清博, 米 和徳, 吉元 洋一, 大重 匡, 貴嶋 芳文, 前田 哲男
    2013 年 28 巻 6 号 p. 727-730
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕歩幅の変化が歩行中の足趾の荷重量と運動に与える影響を明らかにすることである.〔対象〕骨関節あるいは神経疾患のない健常成人男性19名とした.〔方法〕歩行条件は短い,通常,長い歩幅での歩行とした.三次元動作解析装置と足圧分布計を用い,歩行中の足趾の最大荷重量と中足趾節関節の最大伸展角度を算出し,各条件間で比較した.〔結果〕歩幅の延長に伴い,プレスイング時の足趾荷重量と最大伸展角度は有意に増加した.〔結語〕歩行速度と歩幅の増加は足趾荷重量と中足趾節関節の最大伸展角度に影響することが明らかとなった.足趾機能としては,中足趾節関節の十分な伸展角度,および足趾屈筋群の遠心性収縮と足底腱膜の緊張による足趾の屈曲モーメントの発揮能力が重要であると考えられる.
  • ─超音波画像診断装置を用いた検討─
    早田 荘, 早田 恵乃, 小椋 智美, 三浦 雄一郎, 渡邊 裕文, 大沼 俊博, 鈴木 俊明
    2013 年 28 巻 6 号 p. 731-734
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕洗髪動作時などの耳介後方へのリーチ動作を想定した肩関節屈曲位での肘関節肢位が肩関節外旋運動に及ぼす影響について超音波画像診断装置を用いて検討することとした.〔対象〕整形外科学および神経学的に問題のない健常男性20名(年齢の平均22.7歳,標準偏差2.07)とした.〔方法〕一側肩関節屈曲90度位での,肘関節伸展0度位と,屈曲90度位における上腕骨外旋角度変化を計測し,これら2つの肢位間で比較した.〔結果〕全ての対象者で肘関節屈曲90度位において伸展0度位時と比較し,上腕骨外旋角度に有意な増大が認められた.〔結語〕耳介後方へのリーチ動作時には上腕骨外旋運動を伴う肘関節屈曲運動の獲得が必要になる.
  • 糸谷 圭介, 糸谷 素子, 三木 明香, 佐用 佳奈, 加藤 順一, 安藤 啓司
    2013 年 28 巻 6 号 p. 735-739
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は住宅訪問調査(以下;訪問)をどのような患者に対して実施してきたかを調査し,訪問の判断基準を検討することである.〔対象〕当院退院後に在宅復帰した患者136名とした.そのうち訪問を退院前に実施した者を訪問群,実施しなかった者を非訪問群に分類した.〔方法〕リハカルテより2群の基礎情報を収集し,比較検討した.〔結果〕ロジスティック回帰分析より,疾患別,入院期間,入院時車いす移動自立度の3つの因子が抽出された.〔結語〕中枢疾患を呈し,入院時の車いす移動が非自立の患者は訪問を早期から検討する必要があると思われる.
  • 甲斐 義浩, 村田 伸, 相馬 正之, 田守 康彦, 藤田 美和子, 中井 啓太, 石川 晴美, 中﨑 千秋, 窓場 勝之
    2013 年 28 巻 6 号 p. 741-744
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,ハンドヘルドダイナモメーターを用いた簡易足関節底屈筋力測定法の基準関連妥当性について検討した.〔対象〕対象は,健常成人男性18名36肢(平均年齢:30.8±7.3歳)とした.〔方法〕測定項目は足関節底屈筋力と膝関節伸展筋力および垂直跳びの跳躍高を測定した.〔結果〕統計処理の結果,足関節底屈筋力は膝関節伸展筋力および跳躍高との間に有意な相関が認められた.〔結語〕考案した簡易足関節底屈筋力測定法は外的基準との妥当性を満たした簡便かつ有用な測定法であることが示された.
  • ─近赤外分光法と表面筋電図による分析─
    田中 俊輔, 大城 昌平
    2013 年 28 巻 6 号 p. 745-750
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕曖昧な視覚情報からなる物の持ち上げ動作において,運動前野領域の脳活動と先行随伴性姿勢調節(APAs)の関連性について調査した.〔対象〕15人の健常男性とした.〔方法〕重量は同じであるが大きさの異なる3つの容器を用意し,対象者に持ち上げ動作課題を与えた.この動作直前の運動前野領域の脳血流反応と体幹のAPAs筋活動を測定した.〔結果〕大きな容器の持ち上げ動作直前に血流反応とAPAs筋活動の増加が観察された.加えて,視覚情報に基づいた重量の予測が正確でない例が観察された.〔結語〕大きさの情報により運動前野領域の神経活動が生じ,それに伴いAPAs筋活動がなされることが示唆されたことは,患者の持ち上げ動作の準備において,適切な視覚情報や重量情報を与えることの重要性を意味する.
  • 伊藤 忠, 太田 和義, 馬渕 晃好, 國島 宏樹, 山崎 一徳, 森田 良文, 谷川 智康, 吉久 みな子, 久保 晃, 酒井 義人
    2013 年 28 巻 6 号 p. 751-756
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,ケイデンスを変化させた後進歩行練習直後の運動機能の影響を検証することである.〔対象〕対象者は,高齢者6名(以下高齢者群),若年者7名(以下青年群),中学生7名(以下少年群)とした.〔方法〕3分間の後進歩行練習を,メトロノームを使用して,ケイデンスを自由速度から50%の速度へと30秒ごとに増減させて実施した.運動機能評価は,自由歩行速度,timed“up & go”test (以下TUG),5 m最大歩行速度,片脚立位時間,座位開閉ステッピングテスト,chair stand test(以下CS-30)とした.〔結果〕共通して,5 m最大歩行速度,CS-30で有意な向上を認めた.〔結語〕後進歩行練習は,年齢によって若干の違いは出るが,運動機能向上に有用であることが示唆された.
  • 阿波 邦彦, 堀江 淳, 上田 真智子, 白仁田 秀一, 田中 将英, 林 真一郎
    2013 年 28 巻 6 号 p. 757-760
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕男性間質性肺炎(IP)患者においてCS-30が運動耐容能をはじめとする運動能力を反映する有用な評価法となるかについて検討した.〔対象〕対象はIP患者20名であった.〔方法〕主要評価項目をCS-30とし,副次評価項目を呼吸機能,筋力,運動耐容能,ADL,健康関連QOLとした.解析はCS-30とそれらの評価項目との関係をPearsonの相関分析で検討した.〔結果〕CS-30は男性IP患者において上下肢筋力,5 m最速歩行速度,TUG,6分間歩行テストと有意な相関が認められた.〔結語〕CS-30は,IP患者において運動耐容能をはじめとする運動能力を反映する有用で簡便な評価法であることが示唆された.
  • 末廣 忠延, 水谷 雅年, 渡邉 進, 小原 謙一, 藤田 大介, 大坂 裕
    2013 年 28 巻 6 号 p. 761-765
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕腹臥位の脊柱彎曲角度について,測定日内および測定日間の検査者内信頼性と最小可検変化量を明らかにすることとした.〔対象〕健常成人男性20名とした.〔方法〕測定日の1日目と2日目に各2回ずつ測定を実施し測定日内と測定日間でのICC,SEM,MCD95により検者内信頼性を検討した.〔結果〕測定日内のICCは0.85~0.95であった.測定日間のICCは0.77~0.91であった.測定日間で胸椎後彎角7.5°,腰椎前彎角4.0°,仙骨傾斜角4.8°より大きな変化は真の変化であると示唆された.〔結語〕腹臥位での脊柱彎曲角度測定は,信頼性の高い測定が可能であると示唆された.
  • 與座 嘉康, 山本 玲奈, 渡邊 愛可, 三川 浩太郎
    2013 年 28 巻 6 号 p. 767-770
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕15 m ISWRTの信頼性の確立に役立てる目的で,練習と試験までの期間の長さが移動距離に及ぼす影響を検討した.〔対象〕健常成人54名.〔方法〕対象を,練習から試験までの期間の長さ(1日,1週間,4週間)の異なる3群に分けた.15 m ISWRTの練習を1回行い,その後設定された日に2回実施(Test 1,Test 2)した.各群における再現性をICCおよび,Bland-Altman分析にて検討した.〔結果〕Test 1とTest 2間のICCはすべての群で高い値を示したが,Bland-Altman分析においては,4週群で若干の加算誤差が認められた.〔結語〕15 m ISWRTは練習から試験までの期間が1週間以内であることが好ましく,4週間では若干の系統誤差が生じることに注意が必要である.
  • ─転倒恐怖感,転倒歴,身体機能,身体機能認識誤差に着目して─
    坂本 由美, 大橋 ゆかり
    2013 年 28 巻 6 号 p. 771-778
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕地域在住高齢者の転倒恐怖感,転倒歴,身体機能およびその認識誤差を調べ,関係性を検討した.〔対象〕高齢者体力測定の参加者82名を対象とした.〔方法〕握力・長座体前屈・片脚立ち・functional reach・歩行速度・timed up and go test・障害歩行路上の歩行所要時間による身体機能と,その認識誤差を調べ,分散分析またはKruskal-Wallis検定を用いて転倒恐怖感と転倒歴により比較検討した.〔結果〕身体機能と転倒恐怖感の間には有意な関係性が見られたが,その他の項目間には統計的に有意な関係は見られなかった.〔結語〕実際の転倒が発生する以前に転倒恐怖感の増大があり,それには身体機能が関係しており,その要因には身体機能の認識誤差も関係している可能性が示唆された.
  • ─シングルケースデザインにて4週間継続フォロー─
    大槻 桂右
    2013 年 28 巻 6 号 p. 779-782
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕非特異的急性腰痛症と診断された1症例を対象に,大腿筋膜張筋(tensor fasciae latae muscle; TFLM)へのダイレクト・ストレッチング(direct stretchig; DS)を実施し,即時的効果を検証し,4週間継続フォローすることである.〔対象〕症例は非特異的急性腰痛症と診断された患者(60歳,女性)とした. 〔方法〕研究デザインはシングルケースで,腰痛緩和肢位を実施するA期とTFLMに対してDSを実施するB期で構成されるAB型とした.visual analog scale (VAS),指床間距離 (finger floor distance; FFD),下位腰椎後弯域(posterior lumbar flexibility; PLF)を評価指標とし,二項検定を用いて分析した.〔結果〕B期のVAS,FFD,PLFはA期と比較して,有意な改善を示した.また腰痛の訴えは2週間後になくなった.〔結語〕TFLMに対するDSが急性腰非特異的腰痛症に対して即時的効果を発揮することが示唆された.
  • 井尻 朋人, 高木 綾一, 鈴木 俊明
    2013 年 28 巻 6 号 p. 783-786
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕外的負荷に抗する課題の際の肩甲骨周囲筋活動の順序を測定することで,肩甲骨安定化のメカニズムを検討した.〔対象〕健常男性17名とした.〔方法〕課題は第一肢位での肩関節内外旋とし,与えられる外力に対して抗することを指示した.外力を与えるタイミングを予告する条件と予告しない条件を設定した.この課題中のGHJの動作筋,STJの動作筋,拮抗筋における筋活動開始までの時間を測定した.〔結果〕全ての課題において,GHJの動作筋とSTJの動作筋の筋活動開始時間に差はなく,STJの拮抗筋はGHJ,STJの動作筋と比べ有意に活動が遅かった.〔結語〕STJの動作筋はGHJの動作筋同様,外的負荷に抗する為の活動であると考えられた.STJの拮抗筋はSTJの動作筋の活動により変位する肩甲骨位置を制御していると考えられた.
  • ─車椅子クッションが駆動開始動作に及ぼす影響─
    川田 教平, 松田 雅弘, 髙梨 晃, 宮島 恵樹, 塩田 琴美, 山本 澄子
    2013 年 28 巻 6 号 p. 787-790
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕車椅子クッションにより骨盤後傾を抑えた際の効果を静止座位と駆動開始動作から検討することを目的とした.〔対象〕車椅子駆動と端座位を獲得している片麻痺者18名とした.〔方法〕車椅子クッションは3条件とし,車椅子静止座位と駆動開始動作を3次元動作解析装置と筋電計を使用し,骨盤後傾角度と大腿二頭筋長頭の筋活動,駆動速度を計測した.〔結果〕アンカー機能をもち駆動側大腿部のパッドを外したクッションでは,静止座位と駆動開始で骨盤後傾を抑え,大腿二頭筋長頭の筋活動は小さくなり,速く駆動できた.〔結語〕車椅子静止座位で骨盤後傾を抑えると駆動開始動作に影響することが示唆された.
  • 小原 謙一, 白石 明継, 高橋 尚
    2013 年 28 巻 6 号 p. 791-794
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕一側前腕に対する部分浴の施行の違いが対側前腕の総ヘモグロビン量に及ぼす影響について検討した.〔対象〕自律神経系及び循環系の疾患を持たない健常人10名であった.〔方法〕左前腕部の総ヘモグロビン量を近赤外分光法器にて測定した.実験条件は,温浴,交代浴,無処置の3条件とした.各条件における部分浴を右前腕部に対して20分間施行した.部分浴前を基準とした変化率を算出した.〔結果〕処置中及び処置後において,交代浴は他の2条件よりも有意に高値を示した.〔結語〕本研究結果から,交代浴は,交叉性効果によって対側の総ヘモグロビン量をより増加し得ることが示唆された.
  • 伊藤 一也, 一瀬 浩志, 杉野 伸治, 樋口 隆志, 蒲田 和芳
    2013 年 28 巻 6 号 p. 795-799
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,骨盤ローリングテストの検者内・検者間信頼性,および健常者における寛骨非対称アライメント検出の可否を明示することとした.〔対象〕対象者は19-21歳の健常者10名とした.〔方法〕背臥位の被検者に対し2人の検者と2人の測定補助者が骨盤傾斜測定器を用いて骨盤ローリングテストを行い,左右の骨盤傾斜角度を測定した.〔結果〕本テストの検者内信頼性についてはICC(1,4)が0.97-0.99,検者間信頼性についてはICC(2,2)が0.60を示した.また,左右の骨盤傾斜に関して有意差を検出した.〔結語〕骨盤ローリングテストは信頼性を有し,左右差の検出が可能であり,臨床で幅広く活用できる簡便かつ正確な寛骨アライメント測定法である.
  • 小原 謙一, 吉岡 史晃
    2013 年 28 巻 6 号 p. 801-804
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕インソールによる足底刺激部位の違いが,静止立位時の足圧中心動揺に及ぼす影響を明らかにすることとした.〔対象〕下肢機能に疾患のない健常人40名とした.〔方法〕足圧中心動揺の測定には,重心動揺計を用いた.足底刺激として凸部のあるインソールを採用し,刺激部位の異なる4つの群(全足底刺激,前足部刺激,踵部刺激,刺激無し)間で足圧中心動揺の程度を比較した.〔結果〕足圧中心動揺の外周面積と矩形面積において,前足部刺激群は刺激無し群と比較して有意に低値を示した.〔結語〕インソールによる前足部への刺激は,足圧中心動揺をより減少させ得る.
  • 浅川 育世, 水上 昌文, 岩本 浩二
    2013 年 28 巻 6 号 p. 805-811
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ロボットスーツHALを授業に用い,学生がどのようなことを学習したのか,その効果を検証する.〔方法〕授業に参加した学生43名分の自由記載のレポートを対象とし,授業前後のレポートをテキストマイニングの手法を使い分析した.〔結果〕授業前のレポートからはHALについてのイメージに関する語が多くみられたが,授業後には患者や理学療法といった語が多くなった.また,クラスター分析からは「理学療法分野でのHALの可能性」や「リハビリテーション分野でのHALの実用性」などのクラスターが形成された.〔結語〕HALを実際に取り扱うことで最先端リハビリテーション機器の可能性などについて,理学療法を学ぶ学生の視点から考えられるようになったこと,授業については一定の効果があったことが示された.
  • 大槻 桂右
    2013 年 28 巻 6 号 p. 813-816
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肩関節拘縮を伴う高齢患者を対象に,上腕骨解剖頸軸回旋humeral neck axis rotation; HNARを用いた関節可動域運動(range of motion exercise; ROM-ex)の有用性と適応について検討した.〔対象〕平均年齢は86.6±7.2歳の女性20名を対象とした.〔方法〕従来のROM-exとHNARを用いたROM-exを,それぞれ約20回実施し,屈曲,外転,内転,外旋(第1肢位)角度を測定した.〔結果〕従来のROM-exでは,有意な増加が認められなかったが,HNARを用いたROM-exでは,全測定可動域において,有意な増加が認められた.〔結語〕HNARを用いたROM-exは不動による可動域制限を改善するための一手段として,有用性が示唆された.
  • 内田 全城, 名倉 達也, 中村 泰規, 塚本 敏也
    2013 年 28 巻 6 号 p. 817-822
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法士との協働環境が介護職の負担感に与える影響を検証することとした.〔対象〕介護職28名とした.〔方法〕Zarit介護負担尺度日本語版のうち,親族を対象とする質問項目を除外した13項目に対するアンケート調査を行い,理学療法士との協働環境にある群とそうでない環境にある群の間で介護負担度を比較した.〔結果〕協働群よりも非協働群のほうが介護負担感は高かった.また介護負担感には,サービスの対応と方向性,介護職への負担感の要因が抽出された.〔結語〕介護職の介護負担感の軽減には,チーム型仕事遂行形態に伴う介護職の裁量権の低下を防止することが重要である.さらに理学療法士が介護職との協働において,生活機能の評価や運動学習理論に基づく介助方法の統一を促進していくことも有効な手段である.
  • 松原 彩香, 池添 冬芽
    2013 年 28 巻 6 号 p. 823-827
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は若年女性を対象に骨盤底筋トレーニングおよび腹横筋トレーニングを実施し,骨盤底筋・腹横筋機能におよぼす影響を明らかにすることを目的とした.〔対象〕健常若年女性31名を対象とした.〔方法〕対象者を骨盤底筋トレーニング群,腹横筋トレーニング群,コントロール群に分類した.超音波診断装置を用いて骨盤底筋機能および腹横筋機能を測定した.〔結果〕背臥位での骨盤底挙上量の変化量はコントロール群と比較して骨盤底筋トレーニング群および腹横筋トレーニング群において有意に大きい値を示したが,両群間には有意差がみられなかった.〔結語〕骨盤底筋トレーニングと腹横筋トレーニングはいずれも骨盤底筋機能を向上させる効果があり,両トレーニング法に効果の違いはみられないことが示唆された.
  • 伊藤 一也, 増田 圭太, 蒲田 和芳
    2013 年 28 巻 6 号 p. 829-832
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ストレッチポールを用いたベーシックセブンの効果を明らかにすることを目的とした.〔対象〕若年健常男性20名を対象とし,介入群とコントロール群に無作為に割りつけた.〔方法〕介入群はストレッチポールを用いたベーシックセブンを実施し,コントロール群はストレッチポールを使用せず,同様の運動を床上にて実施した.介入前後で体幹後屈可動域,体幹背面の床接地面圧分布を測定し,各群で変化量を比較した.〔結果〕介入前後での体幹後屈可動域および上部体幹床接地面圧はともに,介入群で有意に増大した.〔結語〕ベーシックセブンは,体幹後屈可動域および上部体幹床接地面圧の増加に効果的である.
  • 石原 みさ子, 樋口 由美, 北嶋 宏美, 奥田 邦晴
    2013 年 28 巻 6 号 p. 833-839
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕健常成人の歩行では,足関節と股関節が運動力学的に補完的な役割を果たしトレードオフの関係性を示す.本研究の目的は,CP児・者の歩行中のけりだし強化が,足関節と股関節に即時的な変化が生じるかを検討することである.〔対象〕10m以上の連続歩行が可能な右片麻痺CP児・者2名とした.〔方法〕3次元動作解析装置,床反力計および赤外線カメラを用いて通常歩行と強いけりだし歩行を計測し,けりだしにおける足関節と股関節の比(A2/H3比)を算出した.パラメータの比較はMann-Whitney検定を行った.〔結果〕強いけりだし歩行により股関節伸展モーメントの増加を認め,A2/H3比は有意な増加を示さなかった.〔結語〕CP児・者では,強いけりだし歩行遂行に足関節での活動ではなく,股関節で代償していた.
症例研究
  • 中井 秀樹, 穴山 良, 前田 優希, 堀 竜次, 大住 倫弘, 中野 英樹, 大松 聡子, 森岡 周
    2013 年 28 巻 6 号 p. 841-844
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳幹患者における長期の人工呼吸器管理からの離脱に成功した症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.〔対象〕脳幹梗塞発症以来,7年間の人工呼吸管理から離脱した男性とした.これまで数回の離脱を試みるも困難であった.〔方法〕再度の離脱を試みるため,浅速呼吸指数,呼吸リズム,意識状態,身体運動を評価し,歩行練習を中心とする理学療法を実施した.〔結果〕自発呼吸は持続的に出現し,無呼吸はなくなった.そして,理学療法開始37日後,人工呼吸器からの離脱に成功し,59日後退院に至った.〔結語〕本症例研究は,詳細な評価および医師と連携した治療介入が長期の人工呼吸からの離脱を成功させる可能性を示唆する.
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