理学療法科学
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38 巻, 6 号
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表紙
会告
目次
原 著
  • 掬川 晃一, 永井 公規, 伊藤 豪司, 大舘 哲詩
    2023 年 38 巻 6 号 p. 391-397
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕回復期リハビリテーション病棟の取り組みとして,心機能評価票を用いた心疾患リハビリテーション実施前後における療法士の意識の変化をアンケート調査した.〔対象と方法〕療法士21名の意識変化を,評価票で患者の心機能を把握して心疾患リハビリテーションを実施した後,意識項目およびその反転項目それぞれ14問の設問への回答を,7件法のアンケートで調査した.〔結果〕回答が高値の3項目は,評価票の有用性,運動負荷の調整,知識の獲得の順であった.心機能評価票使用前の心疾患リハビリテーション実施に対する自信は低値で,対象者のほとんどで自信がなかったが,心機能評価票の使用後は有意な向上を認めた.〔結語〕評価票で患者の心機能を把握し,リハビリテーションを行うことは,療法士の自信の向上につながる一助になると考える.

  • 溝口 綾人, 山地 紗希, 近藤 彩花, 福本 悠樹, 東藤 真理奈, 鈴木 俊明
    2023 年 38 巻 6 号 p. 398-404
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕自主練習としての運動イメージの継続が脊髄運動神経機能の興奮性と運動の正確性に及ぼす影響を検討した.〔対象と方法〕健常者9名を対象に,数字情報に着目した運動イメージ練習を4週間行わせた.1週目と4週目の安静時試行と運動イメージ試行中に左母指球からF波を導出した.各試行後にはピンチ力調整課題を与え,運動の正確性を評価した.〔結果〕1週目と4週目において振幅F/M比は試行間で差を認めず,運動の正確性も運動イメージ試行前後で変化を認めなかった.ただし,1週目でピンチ力値の絶対誤差が大きかった2名が,4週目の運動イメージ試行前で運動技能の向上がみられた.〔結語〕4週間の継続的な数字イメージの介入によって運動技能に改善の余地がある場合,運動技能が向上することが示唆された.

  • 小山 浩司, 一場 友実, 古島 弘三, 菅野 好規, 新津 あずさ, 小太刀 友夏, 新納 宗輔, 上野 真由美, 足立 和隆
    2023 年 38 巻 6 号 p. 405-410
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕児童を対象に,スパインマットの使用前後で脊柱傾斜角と足圧中心の位置がどのように変化するのか検討をした.〔対象と方法〕児童83名を対象とした.スパインマットによる介入前後で,直立位における脊柱傾斜角と足圧中心の位置の測定を実施した.〔結果〕介入前後の脊柱傾斜角は,男子において介入前(4.34 ± 3.7°)に比べ介入後(3.04 ± 3.8°)に有意に前傾の程度が減少した.一方,女子においては有意な差は認められなかった.足圧中心の位置の変化は,男女ともに有意な変化は認められなかった.〔結語〕スパインマットの即時効果として,男子のみ介入後に脊柱傾斜角が減少した.また足圧中心の位置に変化は認められない可能性が示唆された.

  • 髙橋 大翔, 井川 達也, 松本 千晶, 伊藤 梨也花, 浦田 龍之介, 石坂 正大
    2023 年 38 巻 6 号 p. 411-414
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕アマチュアサッカー選手の身体機能が,競技レベルの違いに与える影響を分析し,身体機能との関連性を評価した.〔対象と方法〕競技レベルの高いチームに属する21名(H群)と低いチームに属する7名(N群)のサッカー選手28名を対象とし,筋と全身の持久力として各々平均パワーと最大酸素摂取量を計測し,ジャンプ力,下肢筋力,下肢と体幹の筋量の各身体項目を2群で比較し,筋と全身の持久力とその他の身体項目との相関関係を評価した.〔結果〕H群はN群よりも平均パワーが有意に高かった.平均パワーはジャンプ力,下肢筋力,下肢と体幹の筋量と有意な相関関係を認めた.最大酸素摂取量は,下肢と体幹の筋量と有意な相関関係を認めた.〔結語〕アマチュアサッカー選手の競技レベルの違いは,筋量と関連する可能性が考えられた.

  • 鈴木 誠也, 谷 浩明
    2023 年 38 巻 6 号 p. 415-420
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕理学療法士が患者の動作指導中に行う教示や,フィードバックの特徴について検討した.〔対象と方法〕10名の理学療法士に,脳卒中左片麻痺の模擬患者に対するベッド上動作の指導を行わせ,その様子を動画として撮影した.対象者は課題遂行後に動画を視聴し,自らの指導についての感想を求められた.撮影された動画からは,指導時間,教示・フィードバックの種類ごとの回数を測定した.〔結果〕すべての対象者で,内的焦点を用いる教示の使用回数が多かった.外的焦点を用いる教示の回数と経験年数の間に,有意な正の相関が認められた.〔結語〕日常生活動作の指導において,理学療法士は内的焦点による教示を使う傾向が強いことが考えられた.

  • 大嶋 一輝, 佐々木 雄大, 前田 佑輔
    2023 年 38 巻 6 号 p. 421-425
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕動作開始合図と動作速度を変えた場合,跨ぎ動作の正確性に及ぼす変化について比較検討した.〔対象と方法〕健常若年者20名と健常高齢者10名を対象とし,三次元動作解析装置を使用して,右踵部離地から接地までの座標データを抽出した.合計8条件を,1個人で1条件につき10回,可能な限り同じ動作で実施した.ばらつきと定義した10回の平均軌跡からの逸脱値をとその標準偏差を,前方と前側方跨ぎ動作および若年者と高齢者で比較した.〔結果〕高齢者の前側方跨ぎ動作のばらつきにおいて,至適速度で合図開始した場合が,高速速度で任意開始した場合より有意差を認めた.一方,若年者と高齢者の間には有意差を認めなかった.〔結語〕高齢者は,動作開始合図と動作速度の変化によって,跨ぎ動作のばらつきに影響を及ぼすことが示唆された.

  • 鍔木 悠里奈, 河野 由, Cheng-Feng Lin, 水村(久埜) 真由美
    2023 年 38 巻 6 号 p. 426-432
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕トウシューズのボックスやソールの硬さが,回転動作時の運動学的指標に与える影響を検討することを目的とした.〔対象と方法〕シューズの硬さの違いは,万能試験機で確認した.15名のバレエダンサーを対象に,2種類のシューズで回転動作の三次元動作解析を実施した.両脚支持,片脚支持,終了時の下肢3関節の屈曲・伸展および回転軸の傾きの変化量,両足の外果,踵,第2中足骨頭の躍度を算出し,シューズ間で比較した.〔結果〕柔らかいシューズでは,両脚支持での回転軸の傾きの変化量は低値を示し,終了時の第Ⅱ中足骨頭の躍度が大きかった.〔結語〕シューズの硬さは,経験年数の長いダンサーでは下肢関節運動には影響はないが,回転軸の傾きの変化量や,足部の動きの円滑さに影響がある可能性が示唆された.

  • 田中 智美, 井川 達也, 伊藤 梨也花, 浦田 龍之介, 石坂 正大
    2023 年 38 巻 6 号 p. 433-437
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕犬の理学療法に関する症例報告を対象に,情報の欠落について実態を調査することとした.〔対象と方法〕1900~2022年に日本国内の学術雑誌に掲載された犬の理学療法に関する症例報告を対象とした.医中誌Webを含む3つの電子検索データベースを用い,網羅的に文献を収集した.症例報告における情報の欠落は,CAse REport guidelinesを用いて評価した.〔結果〕9件の症例報告が選択された.治療介入の種類は遵守率が100%であった.アブストラクトと本文に関する計10項目では,遵守率は30%未満であった.〔結語〕犬の理学療法に関する症例報告には情報の欠落が存在し,慎重に解釈する必要性が示唆された.

  • ─SCATを用いた質的研究─
    櫻井 陽子, 齋藤 正美
    2023 年 38 巻 6 号 p. 438-443
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕介護支援専門員が歩行補助具を選定する際のプロセスの現状を,インタビューから分析し明らかにすること.〔対象と方法〕A市に登録のある居宅介護支援事業所に在籍する介護支援専門員5名を対象とし,半構造化面接によるフォーカスグループインタビューを行い,その内容を質的に分析した.〔結果〕「杖必要性の判断基準」,「杖選定時のチェックポイント」,「杖導入後のフォローアップ」,「杖選定から杖使用における不安点」の4つの概念が抽出された.〔結語〕介護支援専門員は,多職種からの情報を基に,対象者の歩行観察や,対象者の希望や環境を加味しながら歩行補助杖を選定しているが,選定からフォローアップ全般にわたり,リハビリ専門職の介入の必要性が示唆された.

  • 梅﨑 泰侑, 川村 大地, 菅原 陸, 新岡 大和, 遠藤 陽季, 川口 徹, 篠原 博
    2023 年 38 巻 6 号 p. 444-450
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕立位におけるタオルギャザーエクササイズ(従来法)および考案した足部内在筋群エクササイズ(ゆびだし法)の即時効果について,足趾屈曲時における足部内在筋群および外在筋群の筋活動から足部形態別に検討した.〔対象と方法〕健常成人の35肢を普通足群と回内足群に分け,2つの足趾屈曲エクササイズ前後の足部内在筋群および外在筋群の筋活動および足趾把持力を比較した.〔結果〕エクササイズ後に従来法は普通足群の足部外在筋群の筋活動を増加し,足部内在筋群の筋活動を低下させ,足趾把持力を向上させた.ゆびだし法は,回内足群の足部外在筋群および内在筋群の筋活動を増加させた.〔結語〕従来法は普通足に,ゆびだし法は回内足に効果がある可能性が示唆された.

  • 岡部 泰樹, 石坂 正大, 久保 晃
    2023 年 38 巻 6 号 p. 451-455
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕訪問リハビリテーション利用者の冬・春間の身体活動量の変化を明らかにすること.〔対象と方法〕訪問リハビリテーション利用者1名を対象に,活動量計を使用し,冬・春間の身体活動量を測定した. 座位行動時間,低強度身体活動時間,中高強度身体活動時間に分け,各季節の身体活動量をMann-WhitneyのU検定を用いて検討した.〔結果〕中高強度身体活動時間は冬15.0分(6-65分),春30.5分(2-139分)であり,冬・春間に有意な差を認めた.座位行動時間,低強度身体活動時間には差は認められなかった.〔結語〕訪問リハビリテーション利用者は,春に中高強度身体活動時間が増加する可能性がある.

  • 栁瀨 由起子, 小川 浩紀, 山内 啓, 村上 忠洋
    2023 年 38 巻 6 号 p. 456-460
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕脳卒中片麻痺に併存する感覚障害が,患者の歩行が自立するまでの期間の長さと関連があるのかどうかを明らかにすること.〔対象と方法〕対象は初発脳卒中片麻痺患者21名で,入院時に歩行が自立しておらず,12段階「片麻痺回復グレード」法で9以上の,運動麻痺の軽度な者とした.Stroke Impairment Assessment Setの触覚と,位置覚検査の点数と歩行が自立するまでの期間の相関係数を求めた.〔結果〕歩行が自立するまでの期間と触覚の点数(r=-0.51),および歩行が自立するまでの期間と位置覚検査の点数(r=-0.48)との間に,それぞれ有意な負の相関を認めた.〔結語〕運動麻痺が軽度な脳卒中片麻痺において,触覚および位置覚障害が重度なほど,歩行が自立するまでの期間は長かった.

  • 楠 貴光, 大沼 俊博, 鈴木 俊明
    2023 年 38 巻 6 号 p. 461-465
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕日本人において,骨盤内に筋線維を有する内腹斜筋が表層に位置する部位を調査した.〔対象と方法〕健常成人男性の11名を対象とし,両側の骨盤および股関節部の前面の超音波画像を描出し,内腹斜筋が表層に描出される位置を測定した.〔結果〕全対象で上前腸骨棘より0 cm下方(A0,B0)の1-4 cm内側,上前腸骨棘より1 cm下方(A1,B1)の2-5 cm内側,上前腸骨棘より2 cm下方(A2,B2)の3-5 cm内側,上前腸骨棘より3 cm下方(A3,B3)の4-6 cm内側の部位で,内腹斜筋が表層に描出された.〔結語〕今回,明らかとなった内腹斜筋が表層に位置する部位は,表面筋電図計測時の電極貼付位置にふさわしいと考える

症例研究
  • 新納 亮太, 二階堂 泰隆, 浦上 英之, 石田 直也
    2023 年 38 巻 6 号 p. 466-471
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)患者に対して,下肢骨格筋の質 (LMQ)と生理的コスト指数(PCI)を指標に運動強度を設定すること.〔対象と方法〕IMNMの40代男性を対象に,1週間ごとにLMQとPCIを評価し,それを基に運動強度を設定したレジスタンス運動や歩行,階段昇降練習を実施した.結果は,理学療法開始前と退院時(8週後)のMRC筋力スコア,6分間歩行テスト(6MWT),血清CK値,疲労感評価スケール(FAS)で評価した.〔結果〕運動強度は60%RM(中等度強度)まで増加させることが可能であった.MRC筋力スコアと6MWTはそれぞれ改善し,血清CK値やFASも悪化を認めず自宅退院となった.〔結語〕LMQとPCIを用いた効率の評価は,IMNM患者に対する適切な運動強度設定の指標となる可能性が示唆された.

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