理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
27 巻, 2 号
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原著
  • 岡本 伸弘, 増見 伸, 山田 学, 有久 恵美子, 兒玉 隆之
    2012 年 27 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕当回復期リハビリテーション病院における自宅復帰に必要な因子を「FIM」を用いて検討した.〔対象〕当院に入院した患者226名とした.〔方法〕対象者の退院先を自宅(自宅群)と施設(施設群)の2群に分け,入院時および退院時FIM各項目得点を比較した.さらに,自宅群および施設群を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った.〔結果〕自宅群では,食事を除く運動11項目で退院時に有意な増加が認められた.一方,施設群では,有意差が認められた項目はなかった.退院時FIM得点の比較では,食事を除く運動11項目および問題解決・記憶の認知2項目において自宅群が有意に高値であった.ロジスティック回帰分析の結果では,トイレ移乗・更衣下に有意なオッズ比が認められた.〔結語〕トイレ移乗および更衣下が重要な自宅復帰因子の可能性が示唆された.
  • ─測定値の信頼性について─
    小林 薰, 丸山 仁司, 柊 幸伸
    2012 年 27 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕我々は,「座位両足開閉ステッピングテスト」を考案し,測定時間の決定および測定値の信頼性について検討した.〔対象〕測定時間の決定(研究Ⅰ)は,若年者48名(男性24名,女性24名)を対象とした.検者内・検者間信頼性(研究Ⅱ)は,検者A,Bの2名とし,対象は若年者10名(男性4名,女性6名)とした.〔方法〕研究Ⅰは,測定時間5,10,15,20秒間とし,1回ずつ測定したのち,同様の手順で再度測定を実施した.研究Ⅱは,測定時間を10秒間とし,検者A,Bともに2回ずつ測定した.〔結果〕研究Ⅰの級内相関係数(ICC)(1.1)は,5,10,15,20秒間の順に0.66,0.78,0.78,0.71であった.研究ⅡのICC(1.1)は,検者A,Bでそれぞれ0.90,0.92であり,ICC(2.1)(3.1)はともに0.96であった.検者内・検者間ともに系統誤差は認められなかった.〔結語〕測定時間を10秒間とすると,検者内・検者間信頼性がよく,安定した測定値が得られることが明らかとなった.
  • 平田 大勝, 矢倉 千昭, 岡 真一郎, 吉村 和代, 濱地 望, 田原 弘幸
    2012 年 27 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕胸椎の後弯を評価する可能性を探るために,デジタル傾斜計を用いて測定した胸椎後弯角とデジタル画像解析により計測した胸椎後弯角の関係,測定値の一致度を明らかにすることとした.〔対象]健常若年女性79名(平均年齢±標準偏差20.2±1.8歳)とした.〔方法〕直立位の胸椎後弯角を,デジタル画像解析およびデジタル傾斜計を用いて測定し,これらの値の関係をPearson積率相関分析および線形回帰分析により分析した.〔結果〕デジタル傾斜計を用いて測定した胸椎後弯角は,デジタル画像解析により計測した胸椎後弯角と有意な相関を示し(r=0.66),線形回帰分析により導かれた式によりデジタル傾斜計による測定値をデジタル画像解析による測定値に補正することができた.〔結論〕デジタル傾斜計は,臨床で胸椎後弯角を簡便に測定できる機器である可能性が示された.
  • 高畑 哲郎, 矢倉 千昭, 岡 真一郎, 曽田 武史, 山本 圭彦
    2012 年 27 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕10回椅子立ち上がりテスト(Sit to Stand test : STS)における時間指標(STS Time Index : STS-T),パワー指標(STS Power index : STS-P)と等速運動における膝伸展筋の最大トルク,平均パワーとの関係を解析することとした.〔対象〕若年成人60名(男性30名,女性30名,年齢23.4±4.1歳)とした.〔方法〕STS-T,STS-Pのそれぞれと,等速運動下での最大トルク,平均パワーとの相関を解析した.〔結果〕STS-Pはすべての角速度において最大トルク,平均パワーと有意な正の相関を示したが,STS-Tは有意な相関を示さなかった.〔結語〕STS-Pは,下肢筋機能を反映する簡易的な評価指標となる可能性が示唆された.
  • 田中 直樹, 斉藤 秀之, 飯塚 陽, 矢野 博明, 奥野 純子, 柳 久子
    2012 年 27 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕維持期脳卒中患者に対して歩行感覚提示装置を用いた歩行トレーニングを行い,その効果の持続性を検討した.〔対象〕発症から12ヶ月以上を経過した脳卒中患者7名(平均年齢61.1歳)とした.〔方法〕週3回4週間の歩行感覚提示装置を用いた歩行トレーニングを行い,測定された歩行速度,TUG,下肢筋力を介入後と介入前,介入1ヶ月後,介入4ヶ月後で比較した.〔結果〕介入前と比べて介入後では歩行速度,TUGで有意差が認められたが,介入後に比べて介入1ヶ月後,介入4ヶ月後では歩行速度,TUG,下肢筋力ともに有意差は認められなかった.〔結語〕歩行感覚提示装置を用いた歩行トレーニングの効果の持続性が示された.
  • 松田 雅弘, 新田 收, 宮島 恵樹, 塩田 琴美, 高梨 晃, 野北 好春, 川田 教平
    2012 年 27 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕軽度発達障害児の立位バランス能力を重心動揺計にて定量的に評価した.〔対象〕対象は軽度発達障害児群17名(平均5.4歳),健常児群17名(平均5.4歳)の児童を対象とした.研究の対象者と対象者の親に対して,事前に本研究の目的と方法を説明し,研究協力の同意を得た.〔方法〕被験者は重心動揺計(ANIMA社製)の上で,開眼・閉眼,各30秒間静止立位保持をサンプリング周波数20 Hzにて計測を行った.〔結果〕開眼・閉眼時とも軽度発達障害児群において健常児群よりも有意に重心動揺・動揺速度が大きかった.〔結語〕幼児の静止立位の重心動揺の評価を行ったが,健常児群と比較して軽度発達障害児群で動揺が大きく,姿勢制御能力の未熟さのあることが考えられる.
  • 平井 達也
    2012 年 27 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕運動学習成績と主観的判断の関連性を検討した.〔対象〕健常若年成人26名(平均23.5歳)とした.対象を学習良群6名と学習不良群5名に分類した.〔方法〕参加者は,49個配列されたキーの中心にある標的キーを直接的な視覚フィードバック(FB)なしで,押すよう求められた.到達1秒後,視覚的FBを付与された.20試行を1ブロックとし,合計10ブロック行った.ブロック毎の標的キー押しの成功率を算出した.主観的判断は,各ブロックの前にそのブロックの成功率の予測としての学習判断(JOL)を測定した.〔結果〕学習良群と不良群の判断の正確性に有意差はなかった.〔結語〕健常若年成人において,運動学習成績と主観的判断の関連はないことが示唆された.
  • 井尻 朋人, 高木 綾一, 鈴木 俊明
    2012 年 27 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肩甲骨の安定をもたらすメカニズムを分析するために,等尺性収縮時の肩甲骨周囲筋活動を測定した.〔方法〕肩関節第1,第2肢位における内旋,外旋等尺性収縮時の肩甲骨周囲筋活動を3種類の負荷を与えて測定した.肩甲骨周囲筋を動作筋,拮抗筋に分類し,活動の変化を調べた.〔結果〕第1,第2肢位の内外旋共に,負荷量増加に伴い動作筋,拮抗筋の筋電図積分値相対値は有意に増加した.最も強い負荷の場合,第1肢位では動作筋は開始肢位の14から24倍,拮抗筋は3から5倍となった.第2肢位では動作筋は2から12倍,拮抗筋は2から7倍となった.〔結語〕等尺性収縮時には動作筋,拮抗筋両者の活動が生じる必要がある.過去の研究と併せて考えると,動作筋は外的負荷に抗し,拮抗筋は肩甲骨や体幹の安定に関与している可能性がある.
  • 中野 良哉
    2012 年 27 巻 2 号 p. 147-150
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法士を目指す学生の仮想的有能感が職業的アイデンティティ形成に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.〔対象〕学生177名を対象とした.〔方法〕質問紙法にて職業的アイデンティティと仮想的有能感を評価し,職業的アイデンティティの各項目における尺度が仮想的有能感の型によって異なるかどうかを分析した.〔結果〕職業的アイデンティティの「選択への自信」は仮想型が自尊型よりも有意に低いことが示された.「療法士観の確立」,「必要とされていることへの自負」はともに仮想型,萎縮型が自尊型よりも有意に低いことが示された.「社会貢献志向」は仮想型,全能型が自尊型よりも有意に低いことが示された.〔結語〕仮想型を示す学生には,課題達成の機会を通して,勤勉性の獲得を促し,職業的アイデンティティ形成に繋げるための教育的支援の必要性がある.
  • ─下腿三頭筋の腱部と筋腹部の比較─
    中林 紘二, 兒玉 隆之, 松本 典久, 山本 裕宣, 野見山 通済, 福良 剛志, 甲斐 悟
    2012 年 27 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕振動刺激を負荷する部位の違いが骨格筋の筋緊張に及ぼす影響を明らかにする.〔対象〕下肢に神経障害の既往がない健常男性15名.〔方法〕周波数76.6 Hz,振幅2 mmの振動刺激を用いて左下腿三頭筋の腱部あるいは筋腹部に3分間の振動刺激を行った.振動刺激前後のH波とM波の最大振幅の値から算出された最大振幅比(Hmax / Mmax)により,下腿三頭筋の筋緊張の状態を評価した.〔結果〕下腿三頭筋の腱部あるいは筋腹部に振動刺激を負荷すると最大振幅比は低下した.刺激部位で比較すると,腱部に振動刺激を負荷した場合に最大振幅比の低下は大きかった.〔結語〕負荷する部位にかかわらず,振動刺激は骨格筋の筋緊張を抑制し,臨床において振動刺激の適応が拡大することが示唆された.
  • 北野 晃祐, 甲斐 悟, 高橋 精一郎
    2012 年 27 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕筋萎縮性側索硬化症患者に対する咳嗽運動が呼吸機能と自律神経系機能へ及ぼす効果を検証した.〔対象〕対象は,患者群としてレスパイト入院期間中のALS患者群6名,コントロール群として健常成人10名とした.〔方法〕12日間の低負荷咳嗽運動を施行し,呼吸機能と自律神経系機能を介入前後で比較した.〔結果〕患者群は,咳嗽運動によりPeak Cough Flow(PCF)が増加傾向を示し,下部胸郭拡張差が有意に拡大した.健常対照群は,PCFが増加し,下部ならびに上部胸郭拡張差に拡大を認めた.心副交感神経活動は,コントロール群と同様のパターンを呈す様になった.〔結語〕ALS患者への短期間の咳嗽運動は,学習効果により呼気筋を有効に使えるようになり,さらに自律神経系機能を改善し得る可能性が示唆された.
  • 宮島 恵樹, 松田 雅弘, 高梨 晃, 塩田 琴美, 野北 好春, 川田 教平, 加藤 宗規, 黒澤 和生
    2012 年 27 巻 2 号 p. 161-164
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕今回,モノフィラメント圧痛覚計を使用して計測された,足底感覚閾値の差を性と足底4部位で検討することであった.〔対象〕対象は,本研究の主旨を説明し同意を得た整形外科・神経疾患を有してない若年者85名(男性47名,女性38名)とした.〔方法〕足底圧痛覚は測定者1名が被験者ごとに測定し,測定された足底感覚閾値について性別,部位の比較を二元配置分散分析およびその後の検定として,多重比較法(Tukey)を用いた.〔結果〕足底4部位における性差は認められなかった.踵中央の感覚閾値が最も高く,母趾中央部,第一中足骨頭部,内側縦アーチ中央の順に低くなった.〔結語〕足底メカノレセプターが多く存在している部位の閾値が低いことがわかった.
  • ─近赤外分光法による検討─
    石坂 正大, 武田 湖太郎, 下井 俊典, 丸山 仁司
    2012 年 27 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は足趾運動において運動課題や運動強度とNIRSで得られる脳活動の関係について検討をおこなった.〔対象〕健常成人12名(男性5名,女性7名,年齢26.9±5.3歳)とした.〔方法〕運動課題は,右足趾の等張性収縮運動と等尺性収縮運動とし,運動強度を最大強度と中等度強度とした.〔結果〕等張性収縮運動では運動強度に依存して運動関連領域の活動領域が広がり,活動振幅もより高くなった.一方,等尺性収縮運動では運動強度に依存した活動領域と活動振幅の違いがみられなかった.〔結語〕一側性足趾運動におけるNIRSで得られる信号は,運動課題や運動強度の影響を受けることが明らかになった.
  • 原口 裕希, 山村 千絵
    2012 年 27 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕姿勢変化が咀嚼の効率へ与える影響を調べること.〔対象〕健常成人23人とした.〔方法〕4通りの姿勢をランダムにとらせ,試料の咀嚼開始から嚥下までを筋電図で記録し解析した.〔結果〕咀嚼回数はリクライニング30度頭頸部屈曲30度(R30-HN30)がリクライニング90度頭頸部0度(R90-HN0)より多かった.総咀嚼時間はリクライニング30度頭頸部0度(R30-HN0)とR30-HN30がR90-HN0より長かった.バースト持続時間はR30-HN0が他の姿勢より長かった.咀嚼周期はR30-HN0がR90-HN0より長かった.バースト持続時間の変動係数はR30-HN0がR90-HN0より大きかった.〔結語〕咀嚼の効率はR30の姿勢で悪く,R90-HN0の姿勢のときが最も良いことが示唆された.
  • 濱島 一樹, 兼岩 淳平, 工藤 慎太郎
    2012 年 27 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕静止立位(立位)と,下腿最大前傾位(前傾位)の内側縦アーチ(MLA)の測定の差から,動作時におけるMLAの形態の変化を求める方法の再現性を検討すること.〔対象〕下肢疾患の既往のない健常成人8名8足(男女各4名)とした.〔方法〕測定項目は,アーチ高率(AR)と踵部角(CA)とした.また,測定肢位は立位と前傾位とし,各項目の信頼性を検討した.〔結果〕ARは両肢位共に高い再現性を示した.一方,CAは両肢位ともに再現性は低値を示した.しかし,測定経験や触診技術により,再現性が改善し得ることが示唆された.〔結語〕同方法は,臨床での使用に十分な再現性が得られることが示唆されたと考える.
  • ─水平面上視線行動に伴う身体回旋運動からの検証─
    内田 全城
    2012 年 27 巻 2 号 p. 181-184
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,立位回旋運動に伴う水平面上視覚定位付け条件が立位重心動揺に与える影響について検証した.〔対象〕健常成人18名(男性7名,女性11名,年齢21.7±1.0歳,身長163.9±8.9 cm,体重57.6±13.2 kg)とした.〔方法〕水平面上0度,45度,90度,135度の4条件に設定した垂線を固視した30秒間の立位保持を動作課題とし,総軌跡長,軌跡平均面積,左右および前後最大振幅長を測定した.統計解析には一元配置分散分析,その後の多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした.〔結果〕総軌跡長と軌跡面積において条件間に主効果が認められたが,前後および左右最大軌跡長には認められなかった.〔結語〕立位回旋運動における視覚系制御には,0度および90度では視覚系制御依存が強く,身体運動軸との相互環境が要因となることが示唆された.
  • 鈴木 謙太郎, 八木 優英, 中島 大悟, 阿南 雅也, 新小田 幸一
    2012 年 27 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕変形性膝関節症患者の跨ぎ動作の特性を知るため,片側膝関節伸展制限が跨ぎ動作に及ぼす影響を検討した.〔対象〕健常若年者11人とした.〔方法〕膝装具にて右膝関節最大伸展角度を-10°に制限した場合と制限しない場合の2条件下で,身長の10%の高さの障害物を非制限側下肢から跨ぐ動作を行わせた.3次元動作解析システム,4基の床反力計を用いて計測された動作を2条件間で比較した.〔結果〕膝関節制限時には,非制限時と比較し,遊脚側股関節,体幹屈曲角度,身体重心(COM)-足圧中心(COP)傾斜角,床反力進行方向成分が有意に増加し,立脚側足関節角度変化量が有意に減少した.〔結語〕片側膝関節伸展制限は,跨ぎ動作時の遊脚側下肢,立脚側下肢および体幹の運動に影響を及ぼし,転倒を引き起こす要因となることが示唆された.
  • 大内 みふか, 前多 希美, 佐藤 香緒里, 時永 広之
    2012 年 27 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では視覚的情報を貼付した敷居と貼付なしの2つの条件下において母趾先端─障害物間最小距離(TC)と下肢関節角度を比較し,視覚的情報が下肢運動に与える影響について検討した.〔対象〕対象は健常若年男性30名とした.〔方法〕2条件下にて跨ぎ動作を行い,TCと下肢の各関節角度をVICONによって測定した.〔結果〕TCではテープなし:99.1±18.7 mm,テープあり:106.0±16.9 mmとなり有意な差が認められた.TCにおける膝関節屈曲・足関節背屈角度には有意な差が認められず,股関節屈曲角度のみに有意な差が認められた.〔結語〕跨ぎ動作時のTCの増加は視覚的情報が敷居認識を容易にし注意を喚起し,その結果予測的に障害物を回避する反応が強まった可能性があると示唆された.
  • 村山 菜都弥, 村田 伸
    2012 年 27 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕健常成人を対象に利き手と,非利き手を使用した際の前頭葉の脳血流量を比較検討した.〔対象と方法〕健常な男女12名(男性9名,女性3名,年齢20.3±0.5歳,対象者のすべてが右利き)を対象に,蚊取り線香をかたどった渦巻きと同じ大きさの円を10秒間書いてもらい,次に渦巻きの壁に当たらないようにできるだけ早く線を書いてもらった.この渦巻き課題を利き手,非利き手で行った際の各所要時間と施行中の酸素化ヘモグロビン(HbO2)の変化をNIRSを用いて測定した.〔結果〕利き手と非利き手を用いた作業時のHbO2に有意な差が認められ,非利き手使用時に有意にHbO2が高まった.〔結語〕利き手よりも非利き手を使用したほうが,前頭葉の脳血流量が増加することが示唆された.
  • ─施設入所後期高齢者における無作為化比較試験による検討─
    藤田 浩之, 中野 英樹, 粕渕 賢志, 森岡 周
    2012 年 27 巻 2 号 p. 199-204
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は足底知覚トレーニングが後期高齢者の立位姿勢バランスの安定化に対しての有効性を検証した.〔対象〕介護老人保健施設に入所する後期高齢者19名とし,トレーニング群9名,コントロール群10名にそれぞれ無作為に振り分けた.〔方法〕トレーニング群には硬度の異なるスポンジマットを弁別させ,コントロール群には一定の硬度のスポンジマットにて立位姿勢を保持させ,10日間実施した.〔結果〕トレーニング群に立位重心動揺値の有意な減少が認められた.〔結語〕これらの結果より生理的に感覚機能が低下する後期高齢者においても,立位姿勢バランスの安定化に対して足底知覚課題が有効的に作用することが示唆された.
  • ─健常成人女性との比較検討─
    重島 晃史, 半田 健壽, 藤原 孝之, 小駒 喜郎, 小松 弘典, 熊谷 匡紘, 川畑 志乃, 森国 裕, 川島 隆史
    2012 年 27 巻 2 号 p. 205-211
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中片麻痺歩行の時間空間変数とその左右差を簡易的分析によって健常成人と比較検討し,さらに左右差と麻痺の重症度および歩行速度との関係を明らかにすること.〔対象〕健常成人女性10名(以下,健常群)および脳卒中片麻痺患者29名(以下,片麻痺群).〔方法〕10 m歩行路を健常群は快適速度,片麻痺群は最大速度で歩行した.歩行変数の測定にはビデオブラウザを用い,ステップ時間(以下,ST),歩幅,STおよび歩幅の左右比などを算出した.〔結果〕片麻痺群のSTの左右比は1.3±0.4で,中等度の麻痺ではより高値を示し,STの左右比と歩行速度の間には負の相関を認めた.〔結語〕脳卒中片麻痺歩行の左右差は時間変数において出現しやすく,歩行速度や麻痺の重症度の影響を受けることが示唆された.
  • 八木 優英, 鈴木 謙太郎, 阿南 雅也, 新小田 幸一
    2012 年 27 巻 2 号 p. 213-216
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は足関節機能的不安定性(FAI)を有する者の片脚立位時の下肢の筋電図学的特徴の解明である.〔対象〕片側足関節にFAIを有する若年成人11人を対象にし,患側と健側で比較した.〔方法〕課題動作は側方一歩移動後の片脚立位とし,筋電情報を筋電図モニタリングプログラムで,床反力情報を床反力計で計測・解析した.〔結果〕長腓骨筋,前脛骨筋の平均周波数は,患側が健側に比べ有意に高域化し,中殿筋の筋活動量は健側に比べ患側が有意に増加し,中殿筋の最大筋力は患側が健側より有意に低値を示した.また動作時間は患側が有意に長かった.〔結語〕FAIを有する人の患側で,足関節機能低下に対し足関節周囲の筋収縮を増強,中殿筋の活動量増大という筋活動様式の変化で対応することが示唆されたが,動作時間は延長した.
  • 吉田 一也, 藤縄 理, 原 和彦
    2012 年 27 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肩外転時の肩甲骨運動動態を考案した肩甲骨位置測定法による肩甲骨位置変化量(変化量)によって検証した.〔対象〕肩障害のない成人26名とした.〔方法〕上肢下垂位,肩90°外転位,180°外転位での肩甲骨位置を測定し,3肢位の変化量を一元配置分散分析と多重比較法を用いて統計解析した.〔結果〕変化量は,肩甲骨下制および上方回旋で3肢位すべてにおいて有意差を認めた.さらに,肩甲骨内転は上肢下垂位と肩90°外転位との間で有意差を認めた.肩甲骨は肩90°外転で下制・内転・上方回旋し,最終域でさらに上方回旋することが明らかになった.〔結語〕本測定法はテープメジャーを使用し,肩甲骨運動を評価する簡便な測定法である.運動器疾患に対する理学療法評価としての応用が可能と考える.
  • 関谷 詩穂実, 時田 幸之輔, 澤田 豊
    2012 年 27 巻 2 号 p. 223-226
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕半腱様筋(ST)腱使用による前十字靱帯(ACL)再建術後長期経過例について,両膝屈筋群の筋活動を検討した.〔対象〕再建術後より12ヶ月以上経過した男女9名.〔方法〕アイソキネティックマシーンを用い膝関節角度30°,60°,90°および105°における,膝屈筋出力と筋活動の測定を行った.〔結果〕対象者を筋出力に基づいて健側100%とし,膝深屈曲位で術側が8割以上回復している者(回復群)と8割未満で低下したままの者(非回復群)に分けた.筋活動は,回復群術側と非回復群術側と健側のSTに筋放電量低下を認めた.〔結語〕ST腱使用によるACL再建術後,長期経過しても術側の腱採取の影響によりドナー筋の筋活動低下が残存し,術側の筋出力o筋活動共に低下している場合には,健側STの筋活動低下も生じることが示唆された.
  • 天野 徹哉, 玉利 光太郎, 吉井 健悟, 河村 顕治
    2012 年 27 巻 2 号 p. 227-230
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕変形性膝関節症(膝OA)患者の半年後の歩行速度の予測因子を明らかにすることを目的とした.〔対象〕保存的治療を実施する膝OA患者48名を対象とした.〔方法〕研究デザインは前向きコホート研究とした.膝伸展筋力・膝屈曲筋力・H/Q比・疼痛・膝関節可動域を説明変数とし,5 m最大歩行速度(5 mMWS)を目的変数とする階層的重回帰分析を行った.〔結果〕半年後の5 mMWSには,膝伸展筋力,膝屈曲筋力,疼痛と膝関節伸展角度が有意に寄与した.〔結語〕膝OA患者では膝伸展筋力,膝屈曲筋力と膝関節伸展角度が低値であること,疼痛が高値であることが,半年後の歩行速度を遅延させることが明らかになった.
症例研究
  • ─症例集積による有用性検証─
    小嶌 康介, 生野 公貴, 徳久 謙太郎, 庄本 康治
    2012 年 27 巻 2 号 p. 231-238
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕鏡治療(MT)と筋電誘発電気刺激(ETMS)の組み合わせ治療(ETMS-MT)を脳卒中患者の麻痺側上肢に実施し上肢機能訓練としての有用性ならびに臨床効果を予備的に検証すること.〔対象〕脳卒中症例8名.〔方法〕治療は前向きの椅子座位にて4週間実施した.手指の開閉などのMTと併せて麻痺側手関節および手指の伸展筋群に対するETMSを実施した.〔結果〕機能障害面ではFugl-Meyer assessment上肢項目,能力面ではbox and block test,などの臨床評価において有意な改善がみられた.脱落者はみられず全対象が治療を完了することができた.〔結語〕ETMS-MTは脳卒中後の上肢機能を改善させる可能性が示された.今後,RCTによる治療効果の検証が必要である.
総説
  • 吉田 一也
    2012 年 27 巻 2 号 p. 239-245
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕キネシオテーピング®の理論と基本貼付法についてまとめた.伸縮性テープを皮膚に貼付することで体液の循環を改善させ,自然治癒力を高める効果が期待されるテーピング法である.人体の比較的浅層へのアプローチから膜組織の乱れを評価・調整し,筋膜を中心とした機能改善を目的とする.効果として,筋機能の改善,体液の循環改善,疼痛抑制,関節矯正,治療効果持続時間の延長等がある.テープ自体をほとんど伸張せずに貼るのが特徴である.またテープの伸張率を変えて貼付することによって,低伸張での貼付は表層の皮膚・筋膜・筋に対してアプローチでき,高伸張での貼付は深層の腱・靱帯および関節矯正等に応用できる.このような特徴的な貼付法は治療だけではなく,理学療法評価への応用も期待でき,理学療法士分野へのさらなる進出が期待される.
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