理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
32 巻, 6 号
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原著
  • 大路 駿介, 相澤 純也, 廣幡 健二, 大見 武弘, 柳下 和慶
    2017 年 32 巻 6 号 p. 751-755
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕片脚前方ジャンプ着地における着地前空中時期の矢状面体幹・下肢関節角度と床反力後方成分との関連を明らかにすること.〔対象と方法〕15人の運動習慣のある者を対象とした.矢状面動画と床反力を計測し,初期接地50 msec前と床反力垂直成分最大値時の矢状面体幹・下肢関節角度を抽出した.〔結果〕初期接地50 msec前の矢状面上の関節角度(中央値)は,体幹11.5°,股屈曲28.9°,骨盤前傾5.9°,膝屈曲22.5°であった.床反力後方成分の最大値は60.3%BWであった.初期接地50 msec前の矢状面上のいくつかの体幹・下肢関節角度と床反力後方成分の最大値に有意な相関関係を認めた.〔結語〕着地前の体幹・骨盤前傾角度,股・膝関節屈曲角度が大きくなると,後方への着地衝撃が小さくなる可能性が示唆された.
  • 田中 周, 武藤 友和, 吉田 真一, 鈴川 活水
    2017 年 32 巻 6 号 p. 757-761
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕長下肢装具(KAFO)完成から短下肢装具(AFO)へのカットダウン移行期間(カットダウン移行期間)に関連する入院時因子および影響度について検討すること.〔対象と方法〕回復期リハビリテーション病棟に入院し,KAFOが処方された後AFOへのカットダウンを行った脳卒中片麻痺患者43人を対象とした.カットダウン移行期間に影響を及ぼす関連因子の抽出として,カットダウン移行期間と年齢,病型,半側空間無視(USN)の種類,下肢Brunnstrom Recovery Stage(下肢BRS),USN重症度,motor FIM(mFIM),cognitive FIM(cFIM)について相関分析を行った.さらに,カットダウン移行期間に関連があった項目は各因子の独立した影響度を検討するため二項ロジスティック回帰分析を行った.〔結果〕カットダウン移行期間と関連を認めた項目は,USN重症度,下肢BRS,mFIM,cFIMであった.また,二項ロジスティック回帰分析の結果,USN重症度がカットダウン移行期間の独立した規定因子として抽出された.〔結語〕カットダウン移行期間の長期化に最も影響を及ぼす入院時因子は,USN重症度であることが示唆された.
  • 伊井 公一, 山中 健行, 鈴木 一弘, 廣瀬 健人, 神野 佑輔, 山田 和政
    2017 年 32 巻 6 号 p. 763-767
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕TUGテストにて転倒リスクが低いと判断される高齢者の転倒要因を明らかにし,転倒予防について検討した.〔対象と方法〕TUGテストが13.5秒以内の高齢女性29人を,非転倒群と転倒群に分類した.歩行課題と起立-歩行課題における定常歩行に至る歩数,起立-歩行課題における起立動作時の前方重心移動速度,身体運動機能,転倒恐怖心を調査し,2群間で比較した.〔結果〕非転倒群(19人)と比較して転倒群(10人)は,起立-歩行課題で定常歩行に至る歩数が1歩多く,前方重心移動速度は有意に遅く,また転倒恐怖心のみ有意に低かった.〔結語〕転倒経験のある転倒低リスク高齢者の転倒要因は転倒恐怖心であり,転倒予防として動作方法の工夫もそのひとつの手段であると考えられた.
  • 金子 千香, 平林 茂, 菅沼 一男, 眞保 実
    2017 年 32 巻 6 号 p. 769-772
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法学科学生の大学生活不安について,非医療系一般学科の学生と比較することによりその特徴をより明確にすること.〔対象と方法〕2015年に入学した四年制大学の理学療法学科1年生88人と一般学科1年生109人を対象として,集合調査法にて大学生活不安尺度を調査し,各設問の回答頻度をχ2検定にて比較した.〔結果〕大学生活不安尺度における3つの下位尺度のうち,大学不適応尺度で群間差が認められ,大学不適応尺度の設問すべてで理学療法学科の学生が有意に多く「いいえ」と回答していた.〔結語〕理学療法学科の学生は,大学入学早期には一般学科の学生と比べて大学不適応を示さず一定の意志を持っていることが推測されたことから,入学後の学習環境を整え学業を継続できる支援をすることが退学予防として重要であることが示唆された.
  • 橋本 広徳, 元廣 惇, 鈴木 哲
    2017 年 32 巻 6 号 p. 773-776
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕サイドステップ動作の速度の変化による体幹の筋活動の変化を調べ,スポーツ復帰などを目的としたリハビリテーションを実施する際の基礎資料とすることを目的とした.〔対象と方法〕健常成人男性20人を対象とした.速度の異なる5条件でサイドステップ動作を実施し,その際の筋活動を表面筋電図を用いて測定した.対象筋は,腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腰部多裂筋とした.〔結果〕全ての対象筋において,低速度のサイドステップ動作から高速度のサイドステップになるにつれて筋活動は高まった.〔結語〕サイドステップ動作の速度が速くなるほど,体幹筋の筋活動が高まることが示唆され,サイドステップ動作のパフォーマンスに体幹筋の筋活動が関与する可能性が考えられた.
  • 横川 吉晴, 三好 圭, 西沢 公美, 西川 良太, 甲斐 一郎
    2017 年 32 巻 6 号 p. 777-781
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕二重課題トレーニングにつま先立ち動作課題を追加した3段階二重課題プログラムが,高齢者の運動機能に与える効果を検討した.〔対象と方法〕研究デザインは非ランダム化比較試験.65歳から85歳の在宅高齢者41人を対象とした.19人が二重課題プログラムを実施した(二重課題群).22人が3段階二重課題プログラムを実施した(3段階二重課題群).週1回の頻度で12回実施,運動時間はともに60分とした.測定指標は,歩行速度,筋力,バランス,遂行機能とした.〔結果〕郡内比較で4つの指標に差を認めた.変化量の比較で歩行速度,筋力,バランスの差を認めた.〔結語〕二重課題プログラムと比べて3段階二重課題プログラムでは歩行速度やバランスを改善・維持する傾向が認められた.
  • 秋山 裕樹, 朝倉 智之, 臼田 滋
    2017 年 32 巻 6 号 p. 783-786
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ステップ方向と認知負荷が単純反応時間(SRT)・選択反応時間(CRT)へ与える影響を分析すること.〔対象と方法〕対象は健常若年成人16人.測定は,single task(ST)では,視覚刺激に対し定められたステップ脚・方向で反応するSRT-ST,ステップ脚の左右を選択する2CRT-ST,ステップ脚と方向を選択する6CRT-STとし,さらにこれら各々に減算課題を付加したdual task(DT)を含めた計6条件について,反応時間(RT)とその変化率を分析した.〔結果〕RTはSRT,2CRT,6CRTの順に,またDTで有意に延長した.側方ステップのST-DT間変化率ではSRTと6CRT間に有意差を認めた.〔結語〕情報処理過程の複雑化に伴い,RTが延長することが示唆された.
  • 山口 寿, 金子 秀雄, 髙野 吉朗, 中原 雅美, 永井 良治, 江口 雅彦, 柗田 憲亮, 池田 拓郎, 岡 真一郎, 下田 武良, 濱 ...
    2017 年 32 巻 6 号 p. 787-791
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕地域在住高齢者の座位反応時間を調査し,その他の運動機能との関連を検討した.〔対象と方法〕65歳以上の高齢者258人(男性86人,女性172人)とした.座位反応時間,5回椅子立ち上がりテスト(SS-5),Timed Up & Go Test(TUG),2 step testを計測し,年齢階級による比較と,各運動機能との相関を調べた.〔結果〕座位反応時間は前期高齢群,後期高齢群,超高齢群の比較では,超高齢群は前期高齢群および後期高齢群よりも有意に遅かった.SS-5,TUG,2 step値は各群間で有意差が確認された.座位反応時間とSS-5,TUG,2 step値それぞれに有意な相関が確認された.〔結語〕座位反応時間は高齢者の反応時間の指標として活用できる可能性が期待できる.
  • 小畑 大志, 横川 正美, 中川 敬夫
    2017 年 32 巻 6 号 p. 793-796
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕低強度の呼気筋トレーニング(EMT)が,随意的咳嗽力の指標である咳嗽時最大呼気流量(CPF)に及ぼす即時効果を検討すること.〔対象と方法〕呼吸器,循環器の既往,喫煙歴のない健常男性21名を対象とした.背臥位にてEMTを実施し,その直後のCPFを測定した.EMTは最大呼気圧の15%の抵抗で,実施回数は10,20,30回の3条件とした.〔結果〕実施回数に関わらず,EMTを実施することで直後のCPFは向上した.10回と比較して20回および30回条件ではより強い疲労感がみられた.〔結語〕最大呼気圧の15%負荷にて10回EMTを行うことで,疲労感が少なく,かつCPFを増強させることが示唆された.
  • —足関節内反捻挫リスクの考察—
    西 晃葉, 福井 勉
    2017 年 32 巻 6 号 p. 797-801
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕足関節・重心位置・床反力の関係から内反捻挫リスクが低い着地方向を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は健常成人18人とし,20 cm台上から前方・後方・左方・右方の床反力計上に左片脚着地を行った.三次元動作解析装置と床反力計を用いて①床反力と足関節中心の距離,②床反力と身体重心の距離,③足関節中心に対する足圧中心の位置を算出した.統計処理は一要因の反復測定分散分析を行った.〔結果〕①床反力と足関節中心の距離は後方が最も大きかった.②床反力と身体重心の距離は後方が最も小さかった.③足関節中心に対する足圧中心の位置は後方にて足関節位置に対するCOP位置は,前外側であった.〔結語〕後方は外的足関節内反モーメントが小さく安定していると考えられ,最も捻挫の受傷リスクが低いことが示唆された.
  • —OJTシートの活用から新人教育に与える影響—
    藤田 聡行, 小串 健志, 石橋 尚基, 小池 靖子, 堀本 ゆかり
    2017 年 32 巻 6 号 p. 803-808
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕新人教育における指導機会を集計し,チームビルディング視点から検討した.〔対象と方法〕新人職員13人と指導者97人を対象に,入職後3ヵ月間の指導量を集計した.〔結果〕指導量は,業務の自立段階でばらつきが大きくみられた.ステップアップが早い新人には,様々な経験年数を持つ指導者がバランスよく関わる傾向がみられた.一方,ステップアップが停滞する新人は指導者に偏りがみられ,人間関係の信頼度・充実度が低い傾向があった.〔結語〕ステップアップが進んだチームは,チームビルディングが有効に構築されたと考えられる.チーム教育を新人職員に取り入れることにより,チームづくりが発展できることが示唆された.
  • 大沼 亮, 星 文彦, 西原 賢
    2017 年 32 巻 6 号 p. 809-815
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中者におけるステップ動作開始時の予測的姿勢制御(APAs)の特異性を運動学的解析によって明らかにすること.〔対象と方法〕脳卒中者20人,健常高齢者9人,健常成人5人の3群を対象とし,ステップ動作を重心動揺計,表面筋電図を用い計測した.導出筋は両側の前脛骨筋・ヒラメ筋・中殿筋とした.〔結果〕健常成人と比較し,脳卒中者の筋活動の潜時に遅延を認めた.また,麻痺側ステップ時の麻痺側ヒラメ筋と非麻痺側ステップ時の麻痺側中殿筋に抑制障害がみられた.足圧中心位置(COP)移動量は脳卒中者において特に左右方向への減少を認めた.〔結語〕本研究より,脳卒中者では麻痺側の筋活動の潜時の遅延と抑制障害が生じ,COP移動量が特に左右方向で低下することが示唆された.
  • 寺西 正辰, 竹下 和良, 河村 民平, 小林 康孝
    2017 年 32 巻 6 号 p. 817-822
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕後進歩行は,歩行獲得や転倒予防の手段として用いられている.前進歩行は速度増加に伴い,運動関連領域の脳活動が増加するとされている.そこで,後進歩行でも速度増加に伴い脳活動が増加すると仮説を立て,後進歩行速度の違いによる大脳皮質活動の変化を検討した.〔対象と方法〕対象は健常成人10人,トレッドミル上での後進歩行を機能的近赤外線分光法にて測定した.速度設定は快適な後進歩行速度の66%,50%,33%とした.〔結果〕全ての速度で運動関連領域の脳活動の増加を認め,50%よりも66%,33%の速度で増加していた.〔結語〕後進歩行においても前進歩行に関与する運動関連領域の脳活動は増加した.また,後進歩行速度の違いにより,脳活動の程度は異なるため治療プログラム決定の際に考慮する必要があると考えられた.
  • 内田 大, 金子 秀雄, 鈴木 あかり, 和田 朋子
    2017 年 32 巻 6 号 p. 823-827
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ストレッチポール(SP)上背臥位における運動の有無が呼吸機能に及ぼす即時効果と2週間の介入効果について検討すること.〔対象と方法〕健常大学生45名をSP上背臥位にて運動を行う運動有群,SP上にて背臥位保持を行う運動無群,対照群に分けた.介入前と介入直後(運動有群と運動無群のみ)および介入2週後の努力性肺活量,腹横筋筋厚,胸腹部移動距離を比較した.〔結果〕介入直後に運動有群のみ腹横筋筋厚は有意に減少し,腹部移動距離の変化量は運動無群に比べ有意に高値であった.介入2週後,運動有群の腹部移動距離と運動無群の努力性肺活量は有意に増大した.3群間に有意差は認められなかった.〔結語〕SP上背臥位での運動の有無により効果が異なる可能性が示唆された.
  • 青田 安史, 藤木 通弘
    2017 年 32 巻 6 号 p. 829-833
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕断眠が日中の活動量にどのような影響を及ぼすかについて検討した.〔対象と方法〕Sprague-Dawleyラット6匹(雄,8週齢)を用いた.ラットはランニングホイールを制限なく使用でき,室温・湿度や明暗期が適切に調整された環境で2週間飼育した.その後,明期(休息期)開始から6時間の断眠負荷を与え,その前後の自発的輪回し運動(ランニングホイール運動)について比較した.〔結果〕断眠により,活動期の活動イベント回数,平均活動持続時間,総活動量は,負荷前と負荷当日の値と比較して有意な低下を認めた.また,平均休息持続時間は有意に増加した.さらに,総活動量の低下傾向と活動の分断化が数日にわたって認められた.〔結語〕急性の断眠負荷は日中の活動量に明らかな影響を及ぼすことが示唆された.
  • 古谷 友希, 柊 幸伸
    2017 年 32 巻 6 号 p. 835-838
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕加速度センサを使用し,衝撃吸収が行われる主な部位を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕対象者は男性11名,平均20.8±2.44歳の健常者を実験対象とした.踵骨部,腓骨部,大腿外側部の合計3台のセンサからデータを集積し,Friedman検定(Tukeyの方法)を用いて統計的有意差を検討した.〔結果〕踵骨部,腓骨頭部,大腿部での加速度(deg/sec/BW/WS)はそれぞれ4.2 ± 1.2,0.2 ± 0.03,0.1 ± 0.06だった.同様の部位のRMS(m/s2rms/WS2)はそれぞれ68.7 ± 20.9,5.4 ± 0.8,3.7 ± 1.6だった.踵骨部での加速度と腓骨部での加速度,踵骨部での加速度と大腿部での加速度の間において有意に差があった(p<0.01).腓骨部での加速度と大腿部での加速度の間に有意な差はなかった.踵骨部でのRMS値と腓骨頭部でのRMS値の間において有意に差があった(p<0.05),踵骨部でのRMS値と大腿部でのRMS値の間において有意に差があった(p<0.01).腓骨頭部でのRMS値と大腿部でのRMS値の間に有意な差はなかった.〔結語〕正常歩行中の衝撃は足関節で多く吸収されていることが判明した.
  • 畑 賢俊, 高橋 尚, 古我 知成
    2017 年 32 巻 6 号 p. 839-844
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕右側前腕に対する経皮的電気神経刺激(TENS)が,左右の前腕の血液酸素動態,発汗,皮膚温にどのような影響をもたらすのか検討した.〔対象と方法〕健常成人男性8人(年齢20.3 ± 1.2歳)を対象とした.右前腕への15分間のTENSに対する同側前腕の反応を記録し,1週間以上あけて,刺激と対側の変動も記録した.〔結果〕発汗量はTENS終了後に,皮膚温は,同側のTENS刺激中から終了後にかけて有意な上昇を認めた.酸素化ヘモグロビンは,TENS終了後に両側の前腕で有意な増加を認めたが,脱酸素化ヘモグロビンは,対側TENS終了後,有意な減少を認めた.〔結語〕TENSは刺激点に近い局所性の効果だけでなく,対側への効果を生み出し,電極を直接貼付しにくい患部などに対する効果も期待された.
  • 新井 武志, 万行 里佳
    2017 年 32 巻 6 号 p. 845-849
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,運動教室終了6ヵ月後の運動継続状況と身体機能の変化を調査した.〔対象と方法〕追跡調査に参加した17名を対象とした.対象者は週2回,3ヵ月間の運動教室に参加した.5 m歩行時間(最大,通常),Timed up and Go(TUG),ファンクショナルリーチ(FR),片足立ち時間,握力,膝伸展筋力,および運動継続状況を,教室前,教室後,6ヵ月後の3時点で評価した.〔結果〕17名全員が何らかの運動を継続していた.歩行時間,TUG,およびFRは6ヵ月後も維持・改善した.一方,膝伸展筋力は,6ヵ月後に有意に低下していた.〔結語〕運動継続が身体機能の維持に好影響を与えた一方,下肢筋力に対する運動負荷量の不足が示唆された.適切な負荷量の管理には専門家の支援等が必要であると考えられる.
  • 野村 高弘, 勝平 純司, 丸山 仁司
    2017 年 32 巻 6 号 p. 851-854
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕階段降段における動作速度が膝関節屈伸モーメントに与える影響を分析することで,膝前十字靭帯損傷者の階段降段動作における特性を明らかにすることである.〔対象と方法〕健常者8名と膝前十字靭帯損傷者10名とした.赤外線反射カメラを用いた三次元動作分析装置と床反力計を用いて,歩行率60,90,120 steps/minにおける階段降段動作時の膝関節屈伸モーメント,膝関節屈曲角度,床反力ベクトルを計測した.〔結果〕歩行率が増加するに従い,両群ともに立脚前半における膝関節伸展モーメント,膝関節屈曲角度が増加したが,両群間に有意差はなかった.〔結語〕階段降段動作において,両群とも歩行率の増加に従い膝関節への負担が大きくなることが示唆された.
  • 畠山 智行, 神谷 晃央, 佐藤 香緒里
    2017 年 32 巻 6 号 p. 855-860
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,大腿骨頸部前捻角が骨盤固定下での股関節屈曲角度に及ぼす影響について明らかにすることである.〔対象と方法〕対象者は健常若年者62名(男性31名,女性31名).大腿骨頸部前捻角をクレイグ検査にて測定し,対象者を平均群,過前捻群,後捻群に男女別で分類した.併せて骨盤固定下での股関節屈曲可動域,背臥位での股関節内外旋,腹臥位での股関節内外旋を測定した.〔結果〕股関節屈曲角度以外の全測定項目に男女差がみられた.股関節屈曲角度において,男女ともに前捻群と後捻群間で有意差がみられ,前捻角度が大きいほど股関節屈曲角度が大きくなった.〔結語〕前捻角などの測定項目に男女差を認めたため男女別で検討した.男女ともに大腿骨頸部前捻角が骨盤固定下の股関節屈曲角度に影響を及ぼすことが明らかとなった.
  • 出口 直樹, 井澤 渉太, 平川 善之, 檜垣 靖樹
    2017 年 32 巻 6 号 p. 861-867
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕膝痛患者に対する運動教室前の60分の患者教育の身体活動(PA)促進効果を検証すること.〔対象と方法〕研究デザインは単盲検準ランダム化比較試験とした.対象は,50歳以上の膝痛患者81名であった.参加者をEx + Edu群(運動と患者教育)とEx群(運動)の2群に分類し,両群とも12週間の理学療法と運動教室での運動を実施した.加えてEx+Edu群では,理学療法士が初回の運動教室前に小冊子を用いて60分間の患者教育を行った.〔結果〕主観的なPAは,両群間で交互作用を認めたが効果量は小さかった.しかし,身体機能,疼痛,自己効力感,痛みの破局化,生活の質は交互作用を認めなかった.〔結語〕60分の患者教育の効果は小さいが,PAの促進を認める.
  • —超音波画像診断装置を用いた検討—
    見供 翔, 市川 和奈, 宇佐 英幸, 小川 大輔, 古谷 英孝, 竹井 仁
    2017 年 32 巻 6 号 p. 869-874
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕中殿筋各線維間の異なる作用を明らかにすることとした.〔対象と方法〕健常男性(平均年齢22~34歳)とした.運動課題は30%最大随意収縮の強度での異なる方向への静止性股関節外転運動(1:外転,2:外転+屈曲,3:外転+伸展)とした.運動課題前後の中殿筋各線維の筋厚と筋腱移行部距離は超音波画像から計測し,ぞれぞれの変化率を算出した.〔結果〕筋厚に関して中殿筋前部線維は課題2で,中殿筋後部線維は課題3で有意に高い変化率を示した.筋腱移行部距離変化率は筋厚変化率と同様の結果を示した.〔結語〕中殿筋前部線維は股関節外転作用に加えて屈曲作用を,中殿筋後部線維は伸展作用を有していることが示唆された.
  • 辰見 康剛, 八板 昭仁, 粟谷 健礼, 土屋 裕睦
    2017 年 32 巻 6 号 p. 875-879
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕円皮鍼およびプラセボ円皮鍼による耳の神門穴への施術が,夏季強化合宿期間における大学ラグビー選手の心理的コンディションに及ぼす影響を検討した.〔対象と方法〕A大学ラグビー部に所属する男子選手を円皮鍼群33名,プラセボ群38名,コントロール群32名に分け,各群における合宿1日目と3日目の日本語版POMS短縮版の下位尺度得点の変化を検証した.〔結果〕T-A得点とF得点における調査時期の主効果は認められたが,介入方法による主効果ならびに交互作用は認められなかった.また,その他の得点においても有意な主効果と交互作用は認められなかった.〔結語〕円皮鍼およびプラセボ円皮鍼による神門穴への施術は,心理的コンディショニングに影響を及ぼさないことが示唆された.
  • 慎 少帥, 藤井 啓介, 馬 婧宇, 阿部 巧, 辻 大士, 藤井 悠也, 大藏 倫博
    2017 年 32 巻 6 号 p. 881-887
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,要支援・要介護高齢者用に修正した新たな椅子立ち上がり時の床反力変数の有用性を検討するために,下肢筋力,ADLとの関連について検討した.〔対象と方法〕要支援・要介護高齢者32名(男性13名,女性19名)とした.椅子立ち上がり時の床反力変数,下肢筋力,FIM-M(ADL能力)ならびにFIM-M下位項目を測定し,各変数間の関連をみた.〔結果〕男性では,床反力増加率変数と下肢筋力との間,および時間変数とセルフケア,移動動作能力状況との間に有意な相関関係が認められた.女性では,最大値変数とセルフケアとの間に有意な相関関係が認められた.〔結語〕椅子立ち上がり時の床反力測定は,要介護等の男性高齢者の下肢機能を反映する有用な評価法になる可能性が示唆された.
  • 貞清 香織, 貞清 秀成, 石坂 正大, 上田 清史, 久保 晃
    2017 年 32 巻 6 号 p. 889-892
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法士養成校の学生と理学療法士(以下:PT)が対象者の目標設定する際,何を重要視しているかを調査し,臨床経験の違いが目標設定の重要項目に影響を及ぼしているかを検討した.〔対象と方法〕本大学関連施設に勤めるPT50名(経験年数3.7±2.1年)と本学理学療法学科3年生,4年生のうち協力の得られた学生(以下:学生)54名とした.〔結果〕PTは「病前の生活」を,学生は「活動面」を重要視する傾向がみられた.〔結語〕PTと学生では目標設定の際に,重要視する項目が異なり,学年間ではその項目に変化はなく,PTとして臨床現場を経験することで変化していくことが示唆された.
  • 細谷 志帆, 佐藤 洋一郎, 春名 弘一, 田中 勇治
    2017 年 32 巻 6 号 p. 893-898
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕臨床における患者の評価に近い設定で,学生の臨床技能を評価する試験を臨床実習前試験として実施した.その採点の妥当性を高めることを目的に評価者間の差異について分析した.[対象と方法]対象は,本学理学療法学科3年生49名(平均年齢21.0 ± 1.7歳)とした.学生は2グループに分かれて,いずれも運動器と中枢疾患に関する試験を受けた.1名の学生につき学内・学外評価者1名ずつで評価し,評価者間の得点の差を分析した.分析結果について学内評価者へアンケートを実施した.〔結果〕評価者間で有意差を認めた項目は,運動器の問診,形態計測,中枢の深部腱反射であった.その要因として,評価者間の評価基準の不一致等の回答が得られた.〔結語〕採点の妥当性を高めるために,出題や採点の改良が必須である.
  • 松田 雅弘, 万治 淳史, 栗原 靖, 田上 未来, 楠本 泰士, 新田 收
    2017 年 32 巻 6 号 p. 899-903
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕骨盤の肢位の違いが側方リーチに及ぼす体幹機能との関連と,座面圧中心の変化との関連性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕健常成人19名(平均年齢20.2歳)とした.体幹の関節可動域,筋力の計測,骨盤自然位と後傾位で座圧計測装置上にて端座位左右側方リーチを実施した.〔結果〕骨盤後傾位では自然位よりも側方リーチ距離は有意に短かった.骨盤前傾位で対側の体幹側屈筋力と有意な相関がみられ,骨盤後傾位で矢状面の座面圧中心の移動距離が有意に低下した.〔結語〕骨盤肢位によって側方リーチ距離は異なり,骨盤自然位で側方リーチ距離は対側体幹側屈筋力と相関があり,かつ座面圧中心の矢状面の移動距離と側方リーチ距離の相関が考えられた.
  • 内田 芙美佳, 木村 愛子, 堀江 貴文, 元廣 惇, 稲垣 杏太, 鈴木 哲
    2017 年 32 巻 6 号 p. 905-909
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕経験の浅い理学療法士のキャリア発達を促す支援策としての基礎資料を得ることを目的に,キャリア・アダプタビリティの現状を調査し,かつキャリア・アダプタビリティとメンターとの関係性について検討した.〔対象と方法〕対象は,経験年数が1年から5年までの理学療法士149名とした.質問紙にて,基本属性,キャリア・アダプタビリティ尺度,メンターの有無を調査した.〔結果〕メンターを持つものは,持たないものと比べ,キャリア・アダプタビリティの関心因子,コントロール因子,自信因子の得点が有意に高かった.〔結語〕理学療法士のキャリア発達にメンターが関与する可能性が示唆された.
  • 野本 真広, 矢倉 千昭
    2017 年 32 巻 6 号 p. 911-916
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕脳卒中片麻痺患者の麻痺側と非麻痺側回りのTUGにおける「方向転換前」,「方向転換中」,「方向転換後」の時間と下肢機能との関係について検討した.〔対象と方法〕脳卒中片麻痺患者14名とした.麻痺側と非麻痺側下肢筋力,Br.Stage,Composite Spasticity Scale,Fugl-Meyer Assessment感覚項目,TUGを測定した.〔結果〕麻痺側と非麻痺側回りのTUGは,麻痺側股関節屈曲,膝関節伸展,足関節背屈筋力,FMA感覚項目点数と負の相関があった.非麻痺側回りの「方向転換中」の時間は,麻痺側股関節屈曲筋力とFMA感覚項目点数に負の相関があった.〔結語〕本研究の結果,麻痺側下肢筋力と感覚障害はTUGの測定時間に関連する可能性があることが示された.
  • 大角 哲也, 原田 亮, 臼田 滋
    2017 年 32 巻 6 号 p. 917-921
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕健常若年成人におけるDual Taskの戦略に及ぼす認知課題の難易度と異なる課題の優先順位付けの影響を検討する.〔対象と方法〕健常若年成人31名とした.Single TaskはTimed Up & Go Test(TUG)および任意の数字からの連続減算課題を計測した.Dual Taskはそれらの同時遂行とし,2種類の減算課題の難易度として「3ずつ引く」,「7ずつ引く」,および2種類の課題の優先順位付けとして「歩行と減算課題の両方ともに集中して下さい」(no priority:NP)と「主に減算課題に集中して下さい」(cognitive priority:CP)をそれぞれ組み合わせた4条件で計測した.〔結果〕Single Taskに比べてDual Task,さらにNPに比べてCPにてTUGの歩行の時間が有意に増加した.〔結語〕健常若年成人では,DTにおける歩行の時間は課題の優先順位付けにより影響されることが示唆された.
  • 宮澤 佳之, 朝倉 智之, 臼田 滋
    2017 年 32 巻 6 号 p. 923-927
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕異なる身体部位に取り付けた加速度計により測定した静的立位姿勢動揺の妥当性を検討すること.〔対象と方法〕対象は健常成人男性21名とした.条件は開眼と閉眼,硬い支持面と柔らかい支持面を組み合わせた4条件とした.頭部,第4胸椎,第5腰椎の加速度のRoot mean square(RMS)と,床反力計による足圧中心(COP)を測定した.指標ごとに各条件間の差を解析した.〔結果〕身体各部位の加速度は柔らかい支持面条件ではCOPと同様に条件間で差を示した.〔結語〕身体各部位の加速度RMSは,柔らかい支持面条件では条件間でCOP軌跡長と同様の差を示し,従来のCOP軌跡長測定に代わる評価指標として有用であることが示唆された.
  • 宮原 拓也, 加藤 研太郎, 白石 和也, 高島 恵
    2017 年 32 巻 6 号 p. 929-935
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕装具療法に関する学年ごとの理解度を明らかにすることを研究目的とした.〔対象と方法〕対象は3年制専門学校の理学療法学科学生92名とした.以下の項目についてアンケート調査を実施し,学年別に検討した.(年齢,性別,学年,入学前の装具の認知,現在の装具の認知,正しい装具の認知,触れた経験,使用目的,対象疾患,部品の認知とその機能等).〔結果〕1年生は,他学年と比べ理解と触れた経験が乏しかった.2年生は,名称理解や触れた経験はあるが,部品や使用目的・対象疾患の理解は限定的であった.3年生は,今回の調査内容に関してはほぼ理解できていた.〔結語〕学年ごとの理解度を踏まえ授業を展開する必要がある.
症例研究
  • 壹岐 伸弥, 大住 倫弘, 赤口 諒, 谷川 浩平, 奥埜 博之
    2017 年 32 巻 6 号 p. 937-941
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕日常生活動作は概ね自立しているも在宅復帰に対する不安を強く訴えた症例の要因について明らかにすること.〔対象と方法〕対象は橋延髄梗塞によりWallenberg症候群を呈した患者 1 名.一般的な理学療法評価に合わせて,入院時から退院までの約150日間,1週間ごとに①10 m歩行試験,②自己効力感,③不安と抑うつ,④状態-特性不安の評価を実施した.〔結果〕10 m歩行試験と不安・状態不安,自己効力感と③・④との間に負の相関を認め,10 m歩行試験と自己効力感の間に正の相関を認めた.また,片脚立位時間の延長に伴いできる日常生活動作も拡大した.〔結語〕退院に向けて心身能力の改善が不十分であった症例に対して,前庭機能に着目した介入や心理面への考慮が必要であった可能性が示唆された.
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