理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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21 巻, 2 号
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研究論文
  • -多発筋炎・皮膚筋炎患者に対する3動作総和筋力の応用-
    佐々木 賢太郎, 千田 益生, 木下 篤, 森 剛士, 築山 尚司, 太田 晴之, 上松 尚代, 石倉 隆
    2006 年 21 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,独自に考案した徒手筋力計を用い,多発筋炎8例,皮膚筋炎1例(平均44.8歳,男性3例,女性6例)の頸屈曲,肩関節外転,および下肢伸展挙上筋力の3動作筋力を経時的に測定した。その結果,3動作の総和した筋力は,全例においてクレアチンキナーゼと相関関係を認めた。このことから,3動作の総和筋力は,個人の全身筋力として反映することができ,さらに継時的な測定結果は多発筋炎・皮膚筋炎の病勢を反映するため,急性期のリハビリテーションにおいてその評価と治療効果判定を行う上で有用であることが示唆された。
  • 上杉 睦, 秋山 純和
    2006 年 21 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    片麻痺患者では麻痺側下肢の荷重量を免荷した立ち上がり動作が観察される。本研究は片麻痺患者の立ち上がり動作練習についての基礎的研究として,片麻痺患者4名に対して立ち上がり動作時の意識的な下肢の荷重配分が荷重量,足圧中心に及ぼす影響を検討した。測定条件は,通常の立ち上がり動作(Normal),両側下肢の均等荷重を意識した立ち上がり動作(E50%),麻痺側下肢の荷重量を体重の60%に調節した立ち上がり動作(E60%)と非麻痺側下肢の荷重を40%に調節した立ち上がり動作(E40%)の全4条件とした。荷重量の結果では立ち上がり動作時の意識的な荷重調節により,麻痺側下肢の荷重量が増加し,荷重量の左右不均等改善が認められた。このことは,意識的に麻痺側下肢の使用を促していることが考えられ,臨床場面における立ち上がり動作の練習で下肢の荷重量を意識的に増加することは非使用の改善,均等荷重の獲得に有用である可能性がある。
  • 水戸川 彩, 霍 明, 丸山 仁司
    2006 年 21 巻 2 号 p. 121-123
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    健常成人13名を対象に,超音波の効果を検討するために,上腕二頭筋による肘屈曲運動を行い,超音波照射群と非照射群の介入前後に反応時間(RT),premotor time(PMT),motor time(MT)を12回測定した。照射群は,超音波1 MHz,1 W/cm2で5分間,上腕二頭筋筋腹にストローク法を実施した。非照射群は0 W/cm2でストローク法を実施した。各群とも12回の平均値では介入前後では変化がみられなかったが,照射直後のRTは7回,MTは6回までの平均値と介入前の間に有意差を認めた。PMTは4回までの平均値と介入前の間に有意差を認めた。以上の反応時間の研究結果から,超音波の照射直後は筋収縮特性の変化及び覚醒が低下したが,測定回数が増加することによりすぐに元に戻ることが示唆された。
  • -Hand Held Dynamometerによる膝伸展筋力との比較-
    松田 祐一, 遠藤 文雄
    2006 年 21 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    本研究は健常高齢者39名を対象に,脚伸展筋力の水準およびその左右差と性差,動的バランスとの関連を明らかにし,膝伸展筋力と比較検討することを目的とした。脚伸展筋力はStrengthErgo240(SE240),動的バランスはFunctional Reach Test,Timed Up and Go,歩行速度を測定し,膝伸展筋力はHand Held Dynamometerにて測定した。脚伸展筋力は,女性において左右差を認め,膝伸展筋力との有意な相関を認めた。また,脚伸展筋力は,男女ともに動的バランスとの有意な相関を認め,開放性運動連鎖としての膝伸展筋力よりも,動的バランスとの関連が強いことが示唆された。
  • -ストレスコーピングと性格特性に注目して-
    武田 要, 藤沢 しげ子
    2006 年 21 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    本研究は学生のストレス対処傾向と性格特性について調査し,実習において問題のなかった学生群と中止・不可になった学生群の特性を捉え,どのような情意特性が関連するのか検討することを目的とした。調査は理学療法士養成校の理学療法学科昼夜間部3,4学年生127名を対象にラザルス式ストレスコーピング・インベントリーと自我態度スケールの2つの心理テストバッテリーを実習前に実施した。学生全体の性格特性として逃避型,隔離型の特性傾向が比較的少なく,因子分析の結果からストレス対処は “積極的”,“すりかえ”,“気分屋”と自我態度は“おとな”,“こども”と分けることができた。また問題のなかった学生群と中止・不可になった学生群を比較すると自己コントロール型と円熟性に有意な差が見られ,自己コントロール型が高く,円熟性が低いほど不合格になる傾向があった。これらの結果から,学生の情意特性と実習の関係を考察した。
  • 上杉 雅之, 高田 哲, 徳久 謙太郎, 嶋田 智明
    2006 年 21 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は本邦におけるAlberta Infant Motor Scale(AIMS)の信頼性を検証することである。対象者は生後2ヵ月から17ヵ月までの健常児32名でありAIMSの方法に従って評価された。評価者を学生3名と理学療法士1名とし,評価者にAIMSの評価方法が説明された。その後,対象児の姿勢・運動が記録されたビデオを見て評価を行った。評価者間信頼性と評価者内信頼性を級内相関係数と測定の標準誤差を用いて解析した。その結果,評価者間信頼性と評価者内信頼性はいずれもICC=.99を示し,学生が評価しても正確な評価が可能であることが示唆された。1)評価者間信頼性と評価者内信頼性はともに高かったこと。2)未経験の評価者でもビデオ観察を通じてほぼ正確に評価することが可能であることが示唆された。
  • ―PBLと講義型授業における短期学習効果の比較―
    河西 理恵, 杉本 和彦, 内山 靖
    2006 年 21 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,理学療法士養成課程の学生を対象にPBLと従来の講義型という異なる教育手法を実施し,どちらがより効果的かを検証することである。対象は3年制養成課程の2年生20名とし,PBL群と講義群に割り当てた。(PBL群9名,講義群11名)なお,対象となった学生は全員PBL未経験者であった。学習効果を示す指標として,学力試験(穴埋め式問題および記述問題)および学生へのアンケート調査を行った。学力試験の結果は両群間に有意差は認められず,PBLは従来の講義型の教育手法に劣らないことが示唆されたが,記述問題においてPBL群は総じて講義群よりも点数が高い傾向が見られた。なお,PBL群では学生間の点数のばらつきが少なく合格点(60点)に達しない学生はゼロだった。アンケートでは,自己学習時間,図書館の利用頻度,インターネットによる文献検索の有無といった項目でPBL群が有意に高く,PBLが学生の自己主導型学習態度の育成に効果的な教育手法であることが示唆された。
  • ─換気力学的観点から─
    横山 美佐子, 上田 康久, 小池 朋孝
    2006 年 21 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    squeezingは一回換気量や呼気流速の増加により排痰を促すと言われ,近年小児においても普及しつつある。しかし,小児肺理学療法の効果判定に肺機能を検討した報告は少ない。本研究では,小児の急性期呼吸障害に対し施行しているsqueezing中の肺機能を連続的に測定し,その影響を換気力学的に検討した。結果は,squeezing施行前に比べ施行中は全例でVt,Tiが増加したが,Vtの増加とTi・PEF・PIFは相関がなかった。また,通常施行しているsqueezingは,呼気・吸気を意識した手技より流速・流量のスムーズな変化が確認された。小児の呼吸障害急性期に対応する手技であることに起因すると考えられ,今後手技の客観的表現の検討と病態に即した安全かつ効果的な手技を確立するために更に検討を重ねる必要がある。
  • 曽根 幸喜
    2006 年 21 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    健常な成人男性5例(29.0±5.9歳)の体脂肪率を水中体重秤量法(under water weighing: UWW),空気置換法(air displacement plethysmograph: ADP),および多周波数インピーダンス法(multiple-frequency bioelectrical impedance analysis: MFBIA)を用いて測定した。連続10回の測定値の変動係数を用いて3種の測定法の信頼性について検討した。体脂肪率の平均値, 最大変動係数および変動幅はMFBIAがUWWおよびADPと比較してやや高い傾向にあったが有意差は認められなかった。BMIとMFBIAの変動係数との関係には正の相関(r=0.993, p<0.001)があった。これらの結果から,ADPとMFBIAは共に簡便で有用な体脂肪率測定法であるが,MFBIAでは肥満傾向のある対象者の場合は測定値にばらつきがみられることが推測された。従って,対象者の体格については更に検討する必要がある。
  • ─アイスパックの内容物による比較─
    入江 一憲
    2006 年 21 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    足関節外側部へのアイシング時の前距腓靭帯,踵腓靭帯上の皮膚温分布を調べ,クラッシュアイス,0℃の冷水,キュービックアイスという3種類のアイスパック内容物の冷却効果を比較した。各群10足に対しての10分間のアイシング後にサーモグラフィにて計測された前距腓靭帯上の皮膚温は21.3±3.9℃,13.0±1.1℃,21.0±4.4℃,踵腓靭帯上の皮膚温は20.4±6.1℃,13.9±1.7℃ ,20.4±3.2℃であること,0℃の冷水にて冷却領域がもっとも均一であるという結果を得た。足関節内反捻挫時において0℃の冷水をアイスパックの内容物とした場合に前距腓靭帯,踵腓靭帯部をもっとも有効に冷却できると結論づけた。
  • 村田 伸, 甲斐 義浩, 村田 潤
    2006 年 21 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,高齢者の簡易下肢機能評価法として紹介された下肢荷重力測定について,下肢筋力や坐位保持能力との関連性から,その測定値が示す意義について検討した。対象としたのは健常成人31名(男性12名,女性19名,平均20.4±0.6歳)であり,下肢荷重力,下肢筋力,坐位保持能力を測定した。相関分析の結果,それぞれに有意な正相関が認められ,下肢荷重力は下肢筋力のみならず,坐位保持能力をも密接に反映していることが示唆された。このことから,下肢荷重力は,下肢ならびに体幹機能を総合的かつ定量的に評価できる簡易機能評価法として,臨床応用できる可能性が示唆された。
  • 森下 元賀, 網本 和, 麻生 よしみ, 草野 理恵, 栗原 陽介
    2006 年 21 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    健常若年者10名(平均年齢21.6±0.8歳)と健常高齢者10名(平均年齢69.4±6.7歳)で側方重心移動動作時の姿勢反応を比較した。課題1ではティルトテーブルを一定速度で傾斜させ,課題2ではバランスボード上で座面を傾斜させた状態から随意的に水平に戻させた。その結果,健常若年者では課題2において傾斜から戻す方向と逆方向の体幹の側屈,回旋(逆回旋)を有意に認めた。二つの課題で健常高齢者の姿勢反応を比較すると,姿勢反応のパターンはほぼ同様の傾向であった。骨盤と脊柱の角度を健常若年者群と健常高齢者群で比較すると,健常高齢者群で有意に角度変化が少なかった。これらの結果から加齢による脊柱可動性の低下などの運動器への影響が示唆された。
  • ─ラット足関節ギプス固定モデルを用いたトレッドミル走行での検討─
    坂口 顕, 沖 貞明, 金井 秀作, 長谷川 正哉, 清水 ミシェルアイズマン, 大塚 彰, 小野 武也, 陳之内 将志
    2006 年 21 巻 2 号 p. 181-184
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    関節拘縮の発生予防を目的とした運動療法における,前処置としての温熱療法の有効性についてラットを用いて検討した。実験には足関節ギプス固定による関節拘縮モデルを作成し,固定のみを行う「固定群」,1日1度固定を除去し,1度に10分間のトレッドミル走行のみを行う「トレッドミル走行群」,およびトレッドミル走行の前処置として20分間,42℃の温浴を施す「温熱・トレッドミル走行群」について,固定開始1週間後の関節可動域を比較した。「固定群」と「トレッドミル走行群」では差がなかったものの,「温熱・トレッドミル走行群」では「固定群」と「トレッドミル走行群」に対して,有意に関節可動域制限の発生が抑制された。臨床現場では使用頻度の高い温熱療法であるが,今回の結果は,自動運動の前処置としての温熱療法の必要性を示唆するものである。
  • 前田 慶明, 東 祐二, 米井 聡, 奥山 聡, 加藤 順一, 村上 雅仁, 古川 宏
    2006 年 21 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    今回,我々は携帯型呼気ガス代謝装置を用いて脳卒中片麻痺者に6分間歩行検査を施行し,短下肢装具(AFO)の有無が歩行能力ならびに歩行時エネルギー消費に与える影響について検討した。当施設に入所している歩行可能な脳卒中片麻痺者12名を対象に,AFOの装着あるいは非装着状態で6分間歩行検査を実施し,歩行距離と歩行速度をみるとともに,歩行時の酸素消費量(VO2)および心拍数(HR)を測定した。歩行時の運動エネルギー効率として1 mあたりのVO2とPhysiological Cost Index(PCI)を算出した。装具装着時と非装着時を比較すると,歩行距離・歩行速度および 1 mあたりのVO2で有意な差を認めた。また,非装着時と比較して装着時のPCIは低値を示した。運動障害を有する脳卒中片麻痺者はAFOを装着することにより歩行能力が向上し,歩行時のエネルギー消費において軽減することが示唆された。
  • 長谷川 正哉, 金井 秀作, 坂口 顕, 沖 貞明, 石倉 隆, 大塚 彰
    2006 年 21 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    片側足関節ギプス固定時の「歩きにくさ」を調査する目的で,三次元動作解析装置を用い裸足時および足関節ギプス固定時の下肢関節モーメント・角度を計測し,運動学・運動力学的な検討を加えた。また,足関節固定時の歩行について被験者の感想を聴取したところ,「膝が止められるよう」「踏み返しが難しい」等の「歩きにくさ」に関する意見が聴取された。足関節ギプス固定時において,立脚中の膝関節伸展角度のピーク値が増加し,制動力としての膝関節屈曲モーメントの発生が示唆された。実験結果より足関節固定中の「歩きにくさ」には立脚中期付近に発生する膝関節の過度な伸展と伸展制動力としての膝関節屈曲モーメントが影響すると考えられた。
  • ─身長,年齢,足底圧中心点,体幹前傾角度および歩行速度による検証─
    前岡 浩, 金井 秀作, 坂口 顕, 鵜崎 智史, 川原 由紀, 小野 武也
    2006 年 21 巻 2 号 p. 197-200
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はFRT距離に影響を与えていると考えられている項目を抽出し,身長,年齢,左右のCOPの前後長,体幹前傾角度,歩行速度のそれぞれの関係を検証した。重回帰分析によるFRT距離の予測検定では,標準化重回帰係数 βにて身長と体幹前傾角度のみ有意な変数を得られた。また,左右足によるCOP前後長の比較では有意な相関がみられた。よってバランス能力の評価として実施する場合,身長による正規化の必要性を示唆している。加えて前方リーチ動作に伴う運動戦略において股関節の運動である体幹の前傾能力が重要であることも判明した。また,そのCOPの結果から利き足等左右側の影響をうかがうことはできなかった。
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