理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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23 巻, 3 号
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特集
原著
  • 木村 朗
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 375-382
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,高齢片麻痺者の身体活動量の自然低下を予測するための身体活動量(PA)の最適値を見つけることであった。〔対象〕対象はデイサービスを利用する日常生活活動が自立した男性片麻痺者25名であった。〔方法〕方法は,姿勢と作業強度,活動時間の組み合わせから推定した身体活動量(PA PI)と,METs法で推定する身体活動量(PAMETs)から安静時心拍数と収縮期血圧の二重積(DP)を基に低活動を見つける最適なカットオフポイントを探した。低活動を簡便に判定する指標として,早朝,安静座位時のDPを算出し各身体活動量との関連性を分析した。〔結果〕結果,DPは8,000 bpm×mmHg以上の場合を低活動あり(陽性)として,PAPIとPAMETsでROC分析において,PA PIの1,250 kcal(p<0.05)だけが有意であった。PAMETsは各値とも統計学的有効性を示さなかった。〔結語〕最適なカットオフポイントは1,250 kcalのPAPIと示唆された。
  • ―単一筋線維筋電図を用いた筋収縮特性の検討―
    谷本 正智, 水野 雅康, 塚越 卓, 田村 将良, 磯山 明宏, 渡邉 晶規
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 383-390
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕不動による関節拘縮後の廃用性筋萎縮に対する持続伸張運動が電気生理学的所見に及ぼす影響を明らかにするため実験を行った。〔対象・方法〕8週齢のWistar系雄ラット30匹を無処置の対照群5匹(以下,C群)と膝関節を4週間内固定し拘縮モデルを作製する実験群25匹に分け,さらに実験群は,1)4週間の不動終了直後にデータを測定した廃用群(以下,D群),2)不動期間終了後,4週間の通常飼育後にデータを測定した4NS群,ならびに8週間通常飼育後にデータを測定した8NS群,3)不動期間終了後,通常飼育に加え徒手的な持続伸張運動を4週間実施した後にデータを測定した4S群,ならびに8週間持続伸張運動を実施した後にデータ測定する8S群の5群に分けた。各期間終了後,膝関節可動域,ハムストリングス筋線維径,電気生理学的所見として単一筋線維筋電図(Single Fiber Electromyography: 以下,SFEMG)の指標を用いて経時的変化を検討した。〔結果〕電気性理学的改善は,4S群と8S群にて有意に持続伸張運動の効果を認め,膝関節可動域と筋線維径は8S群のみに有意な改善を認めた。
  • 真田 将幸, 一圓 未央, 中川 法一, 村上 倫, 石山 照二
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 391-394
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,ハンドヘルドダイナモメーター(HHD)を用いた下腿三頭筋筋力測定用の固定ベルトを開発したので,測定の信頼性について調査することを目的とした。〔対象〕検者内信頼性の調査が健常成人11名22肢,検者間信頼性の調査が健常成人10名20肢とした。〔方法〕下腿三頭筋筋力測定は,長座位にて後側方に両手を着き,十分な練習後に固定ベルトを用いて等尺性足関節底屈運動を測定し,級内相関係数(ICC)を用い信頼性を検討した。〔結果〕検者内信頼性がICCにて0.924,検者間信頼性がICCにて0.809であった。〔結語〕臨床上の使用に耐えうる客観性・信頼性のある測定が,誰にでも実施可能であると考える。
  • 三谷 保弘, 松澤 惠美, 小林 敦郎, 向井 公一, 竹岡 義博, 四宮 葉一, 木村 哲彦
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 395-402
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,簡易型乗馬シミュレータ騎乗時およびトレッドミル歩行時における身体運動の特性を検討することである。〔対象〕対象者は健常男性11名とした。〔方法〕簡易型乗馬シミュレータの速度設定は4段階とし,また,トレッドミルの速度設定は各被験者の自然歩行速度とした。それぞれについて,超音波式三次元動作解析装置を使用し,骨盤,腰椎,脊柱全体の角度変化と,頭部,体幹,骨盤の移動距離を計測した。〔結果〕簡易型乗馬シミュレータに騎乗時の身体運動の多くは,トレッドミル歩行時に比べ大きな活動が認められた。また,簡易型乗馬シミュレータ騎乗時には,いずれの速度設定においても身体の平衡を保持するために脊柱の分節的な動きが認められた。〔結語〕これらのことから,簡易型乗馬シミュレータによる運動を実施することにより,体幹機能の向上や平衡機能の改善に関係するものと考えられた。
  • 小原 謙一, 新小田 幸一, 江口 淳子, 渡邉 進, 藤田 大介, 西本 哲也
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 403-406
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,背もたれの高さが安楽座位時の臀部ずれ力に及ぼす影響を検討することを目的として行った。〔対象〕対象は,健常成人男性13名(年齢:21.3±2.4歳)であった。〔方法〕床反力計を用いて座位時に臀部にかかるずれ力を測定した。形態学的な影響を考慮し,測定したずれ力を各対象者の体重で除した値を採用した。測定肢位は,床反力計上に殿部,床反力計外に下肢を置いた長座位とした。背もたれの代わりとして床反力計上に接しないように横方向に設置した平行棒にもたれさせた。実験は,背もたれ(平行棒)の高さを調節した2条件(床面から46 cmと49 cm)で行った。〔結果〕結果を背もたれ高別にみると,46 cmでは0.83±0.27 [N/kg],49 cmでは0.71±0.25 [N/kg]であり,2条件間に有意差が認められた(p=0.014)。〔結語〕本研究結果から,背もたれの高さが高い方が臀部ずれ力は小さくなることが示された。
  • ─オフザボールに着目して─
    小川 美由紀, 中澤 理恵, 坂本 雅昭
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 407-411
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕サッカーにおける傷害は,コンタクトプレーに限らず,オフ・ザ・ボールのコンタクトのない状況下でも発生する可能性があり,本研究では,サッカーの試合中における移動動作の特徴を明らかにすることを目的とした。〔対象と方法〕先ず高等学校男子サッカー選手を対象に,試合の録画画像を用いてオフ・ザ・ボールの移動動作の様式分類を行った。次に各移動動作の実施状況を18名について調査・分析し,ポジション別に分けた3群間で比較検討した。〔結果〕移動動作の傾向およびポジション特性が明らかとなった。〔結語〕今後は各移動動作と傷害発生の関連性を検討し,傷害予防に継げることが課題である。
  • 村上 泰子, 柴 喜崇, 渡辺 修一郎, 大渕 修一, 稲葉 康子
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 413-418
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕地域在住高齢者45名(65-91歳)を対象に転倒恐怖感を測定し,その関連因子を包括的に検討した。〔方法〕転倒恐怖感の測定はModified Falls Efficacy Scale(以下,MFES)得点を用い,MFES得点139点以下を転倒恐怖感有とした。関連因子として,身体機能,転倒経験,ADL-20,身体活動セルフ・エフィカシー,外出自粛について検討した。〔結果〕対象者の68.9%に転倒恐怖感がみられ,MFES得点はADL-20得点,外出自粛と有意な相関を示した。転倒恐怖感に関連する因子を多重ロジスティクモデルにて検討した結果,ADL-20得点のみが抽出された。〔結語〕転倒恐怖感の軽減には,運動指導に加えADL向上を目指す生活指導も重要と考えられる。
  • 成田 寿次
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 419-424
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,片麻痺症例における,施設内歩行自立に関するMWSについて調査することとした。〔対象〕理学療法を施行した66例の片麻痺症例を対象とし,更に,入所時から退所時の歩行自立度から,入所時より歩行が自立していた20例を自立群,入所時歩行が見守りで,退所時自立となった24例を改善群,入所時,退所時共に見守りであった見守り群の22例を比較対象とした。〔方法〕見守り群,改善群について,退所時の評価項目より歩行自立に関連する要因を抽出した。〔結果〕施設内歩行自立に関連する要因として,MWSとBRSが抽出された。更に,MWSが30 m/min以上,BRSIII以上で施設内歩行自立にいたった片麻痺症例が24例中,23例いた。〔結語〕施設内歩行が自立するには一定以上の歩行速度は必要であると考えられた。
  • ─e-learningは理学療法教育に何を与えるか─
    小貫 睦巳, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 425-430
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    [目的]本研究は理学療法学生の情報リテラシーはどの程度であり,氾濫する医療情報の信頼性をどのように捉えているのか,各学年の進行に伴いそれらがどのように変化するのかを検討することを目的とした。[対象と方法]調査は四年制理学療法士専門学校の学生161名を対象に16項目のアンケート調査により行った。[結果]インターネット情報の信頼性判断の程度は学生の主観的な感じ方ではあるが学年が上がるにつれて有意に増加する傾向を示した。しかしそれでもまだインターネット情報の信頼性を高いとする学生が半数以上であった。[結論]これにより学年の早い段階から情報リテラシーを喚起する教育カリキュラムが重要であるという示唆が得られた。
  • 横川 正美, 野本 あすか, 佐々木 誠, 三秋 泰一, 井上 克己, 洲崎 俊男, 立野 勝彦
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 431-434
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    [目的]食後しばらくの間は運動を控えるのが一般的であるが,健康維持・増進のため,日常生活において食後十分な休憩をとらずに運動する場合がある。[対象と方法]健常男性12名を対象に中等度運動時における食後の影響を代謝と心拍数から検討した。対象者は571 kcalの試験食をとり,食後30分と食後2時間の2条件下で60% peak Vo2強度の自転車漕ぎ運動を15分間行った。[結果]運動時の酸素摂取量,心拍数,酸素脈は食後条件間で有意な違いは認められなかった。ガス交換比から推定されるエネルギー代謝は,食後30分条件では運動初期に糖質代謝が優位であり,食後2時間条件に比べて運動時定常状態に至るまでに遅れがみられた。[結語]食後間もない時間帯に運動を行う場合,主運動における代謝応答が調整される程度に十分なウォーミングアップがより重要になると考えられた。
  • ─地域在住高齢者における検討─
    山田 実, 村田 伸, 太田尾 浩, 村田 潤
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 435-439
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,高齢者における二重課題条件下での歩行機能に,注意機能が関与しているのかを検討することである。〔対象〕対象は要支援,要介護状態にない地域在住高齢者161名である。〔方法〕5 m 歩行時間(ST歩行),計算(serial-1)を行いながらの5 m 歩行時間(DT歩行),ST歩行からDT歩行への変化量( Δ歩行時間),注意機能(trail making test part A:TMT-A),それに認知機能(mini mental state examination:MMSE)を測定し,DT歩行はどのような因子の影響を受けているのかを検討した。〔結果〕重回帰分析の結果, Δ歩行時間はTMT-A,MMSEと有意な相関関係を示したのに対し,ST歩行時間とは有意な相関関係にはなかった。〔結語〕DT条件下での歩行能力の低下には,一般的な歩行能力ではなく注意機能や認知機能が関与していたことが示唆された。
  • 川端 悠士, 日浦 雅則
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 441-445
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕下肢の筋力低下は高齢者の転倒のリスク要因の1つに挙げられる。CS-30(30-seconds chair-stand test)は簡便な下肢筋力評価法として近年広く使用されているが,CS-30と転倒との関係についての報告は少ない。本調査では転倒予測テストとしてのCS-30の有用性を検討することを目的とした。〔対象と方法〕地域在住高齢者135例を対象にCS-30を行い,転倒歴との関連を調査した。〔結果〕CS-30のROC曲線を作成した結果,最も統計学的に有効なcut-off値は14.5回であった。また転倒歴を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析により,算出したcut-off値の妥当性が確認された。得られたcut-off値14.5回における転倒予測の感度は88%,特異度は70%を示し, AUCも85.2%と高値を示した。〔結語〕これらの結果からCS-30の転倒予測テストとしての有用性が示唆された。
  • 根地嶋 誠, 浦辺 幸夫, 横山 茂樹
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 447-451
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,片脚および両脚着地における膝関節角度と下肢筋活動の相違を検証することである。〔対象〕健常男性9名とした。〔方法〕高さ30 cmの台から片脚と両脚による着地動作を行った。関節角度は,矢状面上の膝屈曲角度と前額面上の膝外反角度を算出した。筋活動は,中殿筋,大内転筋,大腿直筋,内側広筋,半膜様筋,大腿二頭筋について記録した。〔結果〕片脚着地は両脚着地より,有意に膝屈曲角度が小さく,膝外反角度は大きかった。片脚着地の筋活動は,すべての筋で両脚着地より有意に増加した。特に中殿筋は,片脚着地が両脚着地の約3倍を示した。〔結語〕片脚着地は両脚着地より膝屈曲角度が減少し外反角度が増加するため,前十字靭帯損傷のリスクが高まるものと推察された。
  • 辻 圭一, 横川 正美, 田中 正二, 洲崎 俊夫, 立野 勝彦
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 453-457
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究では,車椅子を使用している片麻痺患者の座位姿勢中の座圧の特徴と,車椅子専用クッションが座圧に与える影響について検証した。〔対象〕対象は脳卒中片麻痺者9名で,歩行練習を実施している4名(片麻痺歩行群)と歩行練習を実施していない5名(片麻痺介助群)に分けた。また,麻痺がなく下肢筋力が低下した歩行困難な4名(筋力低下群)も調査した。〔方法〕被検者は標準型車椅子に‘クッション無し’と‘有り’の条件で各10分間座り,体圧分布測定装置で座圧を測定した。分析には座圧の体重補正値を用い,対応のあるt検定を用いた。〔結果〕クッション無しで非麻痺側と麻痺側を比較した結果,片麻痺歩行群では非麻痺側の座圧が有意に高かった。片麻痺介助群と筋力低下群にはそのような違いは生じなかった。クッション有りで片麻痺歩行群と介助群の非麻痺側と麻痺側を比較した結果,差は認められなかった。下肢筋力低下群の左右差もみられなかった。〔結語〕片麻痺者は障害の程度により座圧の特徴があることが示された。また,クッションの使用により,非麻痺側と麻痺側の座圧の偏りが解消することが示唆された。
  • 吉澤 隆志, 藤沢 しげ子
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 459-462
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,学業成績と勉強時間や医療関係の職種のアルバイト経験の有無との関係を調べるものである。〔対象〕当学院理学療法学科昼間コース学生41名および夜間コース学生40名とする。〔方法〕質問紙法にて実施した勉強時間等に関するアンケート結果と,定期試験成績との比較検討を行った。〔結果〕昼間コース学生においては医療関係の職種のアルバイト経験の有無,夜間コース学生においては試験前の週の勉強時間が学業成績に好影響を及ぼすことが示唆された。〔結語〕今後の学生指導として,昼間・夜間コース学生において,各コースの特色を考慮した上で対応を行っていく必要があると考える。
  • ―生理学面ならびに機能面からの検討―
    濱田 桂佑, 佐々木 誠
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 3 号 p. 463-467
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,静的ストレッチングがジャンプ能力に及ぼす効果について,生理学面ならびに機能面の2つの側面から検討することである。〔対象〕対象は,健常学生20名であった。〔方法〕静的ストレッチング前後で,生理学面として伸張反射の潜時,機能面として等運動性筋力(60 deg/secと240 deg/sec),ジャンプ能力として垂直跳び,立ち幅跳びを計測した。〔結果〕各項目を静的ストレッチング前後で比較したところ,ストレッチング後に伸張反射発現までの潜時,60 deg/secの筋力,垂直跳び,立ち幅跳びは有意に低下していた。〔結語〕静的ストレッチングを行った後にジャンプ能力が低下した。その原因として,筋紡錘の感受性低下ならびにゴルジ腱器官の関与による,筋緊張の調節にかかわる中枢神経系の筋緊張抑制メカニズムに基づく筋緊張低下に伴う筋力低下に加えて,伸張反射発現までの時間の延長によって筋収縮にタイミングの遅れが生じたことが示唆された。
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