測定装置・計算機の急速な進歩によりX線回析のスピードは加速度的に増し,構造決定とX線回析が同じ意味に近くなる日がやがて来るものと思われる.その様な事態に至っても,紫外・赤外吸収スペクトル,核磁気共鳴スペクトル等は,誘導体の構造決定の手段として,又物性研究の手法として依然重要な意味を持つことに変りはないが,未知化合物の構造究明のために果すその役割は現在とは大分異なったものとなろう.一方質量スペクトルについて言えば,数十ガンマーの微量試料で測定が可能であるから,例えば「主成分の構造が既知で,類縁の微量成分の構造研究を行う場合」の様に,却ってその有用性が増大するものと思われる.
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