ファルマシア
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59 巻, 9 号
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目次
  • 2023 年 59 巻 9 号 p. 796-797
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー
    特集:流れ(フロー合成・電解合成)を活かして分子を創る
    特集にあたって:創薬や医薬品製造プロセスでは,クリーンかつサステナブルな工程を導入することが望まれている.細い管型の反応器中での連続的な流れのなかで,逐次的に化学反応を行うフロー合成技術やクリーンな電気エネルギーを反応の駆動力として利用する有機電解合成は,いずれもその源流は古くから存在しているが,特に近年これらの分野は長足の進歩を遂げ,環境調和型プロセスとして期待が寄せられている.本特集では,この分野の第一線で活躍されている先生方に,基本的事項の解説から最新の研究成果までご紹介いただいた.どの記事も非常に充実しており,実際に使ってみたくなるような例が随所に現れている.フロー合成や電解合成に興味を示しつつも,まだ利用にまで踏み出せていない方々の背中を押す一助になれば幸いである.
    表紙の説明:最近の有機化学系論文誌では,ほぼ毎号何件かのフロー合成や電解合成の研究成果が報告され,この分野の進展が非常に目覚ましいと感じる読者も多いのではないだろうか.今回の表紙では,バッチ反応が主流であった医薬品や天然有機化合物など,多数の官能基を持つ化合物の合成においても,フロー合成や電解合成の威力が存分に示されつつあることをイメージした図を作成した.
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
セミナー
  • 有機合成プロセスの「電化」に向けたキーテクノロジー
    跡部 真人
    2023 年 59 巻 9 号 p. 810-814
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    2050年のカーボンニュートラル実現に向け,再生可能エネルギーの主力電源化やそれに伴う各種製造技術の「電化」への取り組みが進んでいる.これは医農薬品の原材料となる基礎化学品の製造においても例外ではなく,熱消費を大幅に低減させるための化学品生産プロセスの開発が求められており,その一つとして常温・常圧下で反応を駆動できる有機電解反応が脚光を浴びている.
    本稿では有機電解反応の歴史,特長ならびに課題を概説したうえで,社会実装への展開が期待されている固体高分子電解質電解技術を活用した有機電解プロセスの実施例を紹介する.
最前線
最前線
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話題
話題
最前線
最前線
最前線
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2023 年 59 巻 9 号 p. 852
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和5年6月26日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2023 年 59 巻 9 号 p. 853
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,59巻7号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
新薬のプロフィル
  • 浦田 真紀
    2023 年 59 巻 9 号 p. 854-855
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    コール酸は、欧米においては、先天性胆汁酸代謝異常症の標準的治療法としての地位を確立している。本邦において、未承認薬・適応外薬検討会議での検討による開発企業募集を受け、株式会社レクメドが開発に着手、2023年3月に「オファコル®カプセル50mg」製造販売承認を取得した。国内第Ⅲ相試験では、74週間の継続投与において安全性上の問題は認められず、尿中及び血清中異常胆汁酸濃度及び関連パラメータ(AST,ALT,V.D)は安定した推移を示した。
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
  • 小松 徹
    2023 年 59 巻 9 号 p. 863_1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    筆者は化学のツールを使って酵素の機能を「見る」研究を行っている.研究を進めていく中で,多くの研究者の方との出会いに学ばせていただいたことは数知れず,それらへの御礼の気持ちをもって,タイトルとしては敢えて手垢のついたものをつけさせていただいた(気持ちとしては,コミュニケーションの在り方が大きく変わった昨今における令和版の異分野コミュニケーションのすすめ,という意図をもっている).このような貴重な執筆の機会をいただいたことに,関係の皆さまに厚く御礼申し上げます.
期待の若手
トピックス
  • 岡村 俊孝
    2023 年 59 巻 9 号 p. 864
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    炭素ラジカルは魅力的な反応性を有し,数多くの有機分子合成に利用されている.炭素ラジカルの発生は,有機ハロゲン化合物とスズラジカル(R3Sn·)やシリルラジカル(R3Si·)によるラジカル的脱ハロゲン化が知られている.これらは,熱力学的効果や遷移状態における極性効果から炭素ラジカル形成に有利な性質を有するが,毒性や経済性に課題がある.
    Constantinらは,1,4-シクロヘキサジエンの芳香族化に伴う水素ラジカル(H·)の発生を利用した,新たなラジカル的脱ハロゲン化の開発に取り組んだ.1,4-シクロヘキサジエンは安価で,反応後は芳香族分子が副生するのみである.ジエンの芳香族化に伴うR3Si·発生とラジカル的脱ハロゲン化は既知であり,R3Si·をH·に置き換えても同様の反応が可能であるとConstantinらは仮定した.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Constantin T. et al., Science, 377, 1323-1328(2022).
    2) Bhunia A., Studer A., Chem, 7, 2060-2100(2021).
  • 千成 恒
    2023 年 59 巻 9 号 p. 865
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    複雑なペプチド化合物の修飾は医薬品探索や標的タンパク質の分子標識において重要であり,様々な方法論の開発が行われてきた.近年,複雑分子においても炭素-水素(C–H)結合を選択的に直接変換する手法が多く開発され,その生体共役反応や医薬品修飾への応用が盛んに展開されている.本稿で紹介する文献においてKaplanerisらは,アミノ酸残基の中でも電子豊富な芳香環であるインドールを持つトリプトファン(Trp, W)に着目し,Pd触媒を用いたアリールチアントレニウム塩とのカップリング反応を報告している.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kaplaneris N. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 62, e202216661(2023).
    2) Berger F. et al., Nature, 567, 223–228(2019).
  • 井上 尚樹
    2023 年 59 巻 9 号 p. 866
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    冬虫夏草とは,広義の意味では虫や菌類などに子嚢菌が寄生して子実体(一般的にキノコと呼ばれるところ)を形成したものの総称である.中国では古くから,セミに寄生するセミタケが生薬「蝉花」として小児の夜泣きなどに利用されていた.また,筑後(福岡県)の山中で産出したカメムシタケが薬として売買されていたという.冬虫夏草由来の化合物としては,ツクツクボウシタケからミリオシンが単離され,本化合物をリード化合物としたフィンゴリモド(FTY720)が免疫抑制剤として開発されている.生薬として用いられる狭義の意味での冬虫夏草Ophiocordyceps sinensis(Cordyceps sinensis: CS)は,高山地帯に生息するコウモリガの幼虫に寄生し,幼虫の頭頂部から出した棒状の子実体と幼虫との複合体のことを指す.1757年に呉儀洛が著した「本草従新」には肺と腎を補い,甘,平,肺を保ち,腎を益し,血を止め,痰と化し,疲労を癒すと記載されている.今回,ChenらがCS含有多糖類(NCSP)にデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎への有望な治療効果を見いだしたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 奥沢康正,“冬虫夏草の文化誌”,石田大成社,2012,p. 394.
    2) 藤多哲朗,ファルマシア,33,591-593 (1997).
    3) Chen S. et al., Food Funct., 14, 720-733(2023).
  • 山添 絵理子
    2023 年 59 巻 9 号 p. 867
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    消化管のうち,薬物吸収に対する寄与が最も大きいのは小腸である.小腸では多数の絨毛や微絨毛を有する上皮細胞が管腔側表面を覆い,表面積が極めて大きくなっているため,薬物吸収において有利な構造を有していると言える.しかし小腸は,食物と一緒に細菌やウイルスなど外部からの異物が侵入しやすい環境でもあるため,異物の攻撃から身を守るために様々なバリアを形成している.1つ目は異物をトラップし上皮細胞へ到達することを防ぐ粘液層バリア,2つ目は豊富な酵素で異物を分解する酵素バリア,3つ目は水溶性物質や高分子物質の侵入を妨げる膜透過バリアである.薬物も異物の一種と認識されるため,水溶性高分子であるバイオ医薬品はこれらのバリアに吸収を阻まれ,バイオアベイラビリティが低くなってしまう.本稿では,経口摂取型ロボット薬物送達デバイスのロボキャップ(RoboCap)を利用し,バイオ医薬品の経口投与の可能性を見いだした論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 秋吉一成,辻井 薫監修,リポソームの応用の新展開~人工細胞の開発に向けて~,2005,pp. 612-617.
    2) Srinivasan et al., Sci. Robot., 7, eabp9066(2022).
  • 薄田 健史
    2023 年 59 巻 9 号 p. 868
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    がん免疫療法の代表的な薬剤である抗PD-1抗体は,「腫瘍のHLAクラスI分子上に提示されるがん抗原をCD8T細胞が認識し誘導される免疫応答」を増強することで治療効果を発揮すると一般的には考えられている.そのため,ミスマッチ修復異常(MMR-d)によりHLAクラスIが欠損している大腸がんでは,CD8T細胞による抗腫瘍免疫が機能しない.その一方で,抗PD-1抗体によるがん免疫療法自体は奏功するとも近年報告されており,そのメカニズムにCD8T細胞以外の他の免疫細胞の寄与が考えられた.本稿では,HLAクラスI欠損のMMR-d大腸がんに対する免疫療法においてγδT細胞が主翼を担うことを紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Sade-Feldman M. et al., Nat. Commun., 8, 1136(2017).
    2) Middha S. et al., JCO Precis. Oncol., 3, 1-14(2019).
    3) de Vries N. L. et al., Nature, 613, 743-750(2023).
  • 鹿山 将
    2023 年 59 巻 9 号 p. 869
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    脳は,末梢神経を介して末梢臓器の活動を感知し,制御している.こうした脳と末梢組織との関連は,近年注目を集めている.例えば,大脳皮質の一部である島皮質は,身体の内部の活動と深く関連する.マウスを用いた知見では,炎症に関連する島皮質の神経細胞を人工的に活性化させることで,腸内の免疫細胞が炎症時と類似した挙動を示すことが報告されている.このことは,島皮質が腸内の炎症状態を記憶し,制御する可能性を示している.一方で,炎症発生時に複数の脳領域の活動が変化することから,こうした機能は島皮質だけでなく,他の脳領域も担っている可能性が考えられてきた.本稿では,海馬の中でも,特に情動記憶と関連する腹側海馬に着目し,末梢組織における炎症性疼痛との関連を明らかにしたShaoらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Koren T. et al., Cell184, 5902‒5915.e17(2021).
    2) Shao S. et al., Cell. Rep., 41, 112017(2023).
  • 矢野 真実子
    2023 年 59 巻 9 号 p. 870
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    健康な皮膚を保つためには,皮膚そのものだけでなく皮膚に存在する常在菌についても理解する必要がある.皮膚常在菌には,代表的なものにアクネ菌,表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis: SE)や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus: SA)があり,特にSAは食中毒の原因になることから有名である.ヒトと共生している菌の集団(菌叢)は,様々な種類で構成されてバランスを保っている.皮膚常在菌叢のバランスが乱れると,皮膚にトラブルが起こることが知られている.本稿では,皮膚常在菌が表皮細胞に与える影響を報告した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Naik S. et al., Science, 337, 1115–1119 (2012).
    2) Clayton K. et al., Br. J. Dermatol., 188, 396–406 (2023).
  • 神山 直也
    2023 年 59 巻 9 号 p. 871
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    COVID-19の世界的流行により,患者の医療機関へのアクセスが大幅に制限されたことは,治験実施にも大きな影響を及ぼした.2020年3月27日には医薬品医療機器総合機構(PMDA)が「新型コロナウイルス感染症の影響下での医薬品,医療機器及び再生医療等製品の治験実施に係るQ&Aについて」を通知し,治験薬の配送やオンライン診療は特例的な措置ではなく受入れ可能であることを示した.その結果,進行中の治験をいかにして継続するかだけでなく「コロナ後」を見据えた議論についても一気に加速することとなり,2023年3月30日にはオンライン技術を活用した治験データの信頼性確保等のガイダンスの第一弾として,厚生労働省が「治験及び製造販売後臨床試験における電磁的方法を用いた説明及び同意に関する留意点について」を発出した.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Naggie S. et al., JAMA, 328, 1595-1603(2022).
    2) Akechi T. et al., J. Clin. Oncol., 41, 1069-1078(2023).
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