炭素ラジカルは魅力的な反応性を有し,数多くの有機分子合成に利用されている.炭素ラジカルの発生は,有機ハロゲン化合物とスズラジカル(R
3Sn·)やシリルラジカル(R
3Si·)によるラジカル的脱ハロゲン化が知られている.これらは,熱力学的効果や遷移状態における極性効果から炭素ラジカル形成に有利な性質を有するが,毒性や経済性に課題がある.
Constantinらは,1,4-シクロヘキサジエンの芳香族化に伴う水素ラジカル(H·)の発生を利用した,新たなラジカル的脱ハロゲン化の開発に取り組んだ.1,4-シクロヘキサジエンは安価で,反応後は芳香族分子が副生するのみである.ジエンの芳香族化に伴うR
3Si·発生とラジカル的脱ハロゲン化は既知であり,R
3Si·をH·に置き換えても同様の反応が可能であるとConstantinらは仮定した.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Constantin T.
et al.,
Science,
377, 1323-1328(2022).
2) Bhunia A., Studer A.,
Chem,
7, 2060-2100(2021).
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