DNAなどの生体高分子と共有結合を形成する天然物には有用な生理活性を示すものが多く,医薬品のシード化合物となることが期待される.そのためには,作用機序の解明が望まれるが,複雑な構造ゆえに生体内での真の活性種や挙動を明らかにすることは難しい.
土壌のカビより見いだされたテルペノイドであるmyrocin C(1)は抗腫瘍活性を示す.シクロプロパン環の開裂を含む連続的なアルキル化によりDNAをクロスリンクする活性発現機構(1→4)が推定されているが,反応の順序や中間体については明らかとなっていない.
Herzonらはmyrocin Cの機能発現において,ジオスフェノール構造を持つ未知の活性化型中間体2(myrocin Gと命名)が関与する機構を提唱している.すなわち,1より生じた2に対し,C環アリルアルコール部位でのS
N2ʼ型機構による1度目の付加(2→3)と,ジエノン構造によって活性化されたシクロプロパン環の開裂を伴う2度目の付加(3→4)が起きるメカニズムである.今回,2の合成とその反応性が報告されたので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Nakagawa M.
et al.,
J.
Antibiot.,
42, 218-222(1989).
2) Chu-Moyer M. Y.
et al.,
J.
Am.
Chem.
Soc.,
116, 11213-11228(1994).
3) Chu-Moyer M. Y., Danishefsky S. J.,
Tetrahedron Lett.,
34, 3025-3028(1993).
4) Economou C.
et al.,
J.
Am.
Chem.
Soc.,
140, 16058-16061(2018).
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