ファルマシア
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51 巻, 12 号
選択された号の論文の49件中1~49を表示しています
目次
グラビア
  • 東田 道久
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1113-1115
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    北陸新幹線が開通し,関東から北陸へのアクセスが大変便利になった.東京から富山までは約2時間,名古屋と変わらない時間での往来が可能である.江戸の昔,越中富山藩は,加賀藩の負債も背負って独立,当初は経済的に恵まれない状況におかれていた.その状況を打開するために考え出された産業が「くすり」であった.くすりは命にかかわるため付加価値も極めて高く,また軽くて運びやすいため,遠方でも物流が容易である.江戸城内での販売促進キャンペーンを経て,売薬ネットワークも確立させ,越中・富山の産業として発展,今日まで続く「くすりの富山」ブランドの看板と独占的販売権 (懸場帳:かけばちょう) を築き上げてきた.
    本グラビアでは,今も富山の産業に深く根ざしている「くすり産業」の原点とも言えそうな昔ながらの趣を残す各地や博物館を訪ね,その歴史と,先人たちの熱意と情熱に思いを馳せる.
    (各施設等の説明文の後に,詳細情報をウェブより入手する際の検索ワードを記載した)
オピニオン
  • 三品 昌美
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1117
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    科学技術の進展により物質的に恵まれた社会が実現したが,必ずしも心の豊かさにはつながっていない.心身のバランスの取れた幸せな生活は多くの人々の願いであり,脳と心の解明に取り組む脳科学の進展への期待が寄せられている.また,疾病による社会負担を総合的に示す指標としてWHOに採用されている障害調整生存年数(disability‐adjusted life:DALY)の我が国における最大の要因は精神神経疾患である.アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症などの神経疾患やうつ,自閉症,統合失調症などの精神疾患の克服が人類の重要な課題であることが広く認識されるようになり,2013年に米国のオバマ大統領は今こそ精神神経疾患の克服に取り組む時だとBRAIN Initiative計画を立ち上げた.ヨーロッパや我が国においても同様の大型研究が進められている.
    代表的な神経変性疾患であるアルツハイマー病はアミロイドβとタウタンパク質の凝集と集積を特徴とし,家族性アルツハイマー病の原因遺伝子が特定されたことから,抗アミロイド薬が開発されるに至った.臨床治験は現在のところ期待を裏切っており,発症機序が神経細胞変性かシナプス機能障害か,あるいはタウが重要なのか,課題が提起されているが,アルツハイマー病克服への包囲網は着実に狭められている.一方,精神疾患については1950年代に治療薬が偶然見いだされたが,根本的な治療にはほど遠い等様々な問題点が指摘されて久しい.発症機序が不明のまま新たな治療薬が模索されてきたが,画期的な成果は得られていない.しかしながら,大規模なゲノム解析や機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)による解析など多様な視点から,脳と心の理解と精神疾患の病因解明に向けての研究が活発に進められている.1970年代にoncogeneを軸として発がん機構の解明が飛躍的に進んだが,そのような爆発的な進展が脳研究にも起こりそうだ.
    重症のうつであるメランコリアに関連する遺伝子が最近同定されたが(Nature2015),他の大規模なゲノム解析に比べて一工夫されていた.脳と心の理解や精神神経疾患の克服には従来の研究の延長では不十分で,新たな発想や新技術の開発など多くの叡智を必要としている.独自の発想をするためには,世界に2つとない自分自身の脳を活用するしかない.実験の多くは地道な努力の積み重ねであるが,実験の成功や発見の喜びは一瞬鮮やかに研究を彩る.実験の切り口や方法を自分で工夫して新しい知見を見いだすことができた時は一層喜びが増す.論文を発表して成果が認められるのも嬉しいが,発見の喜びは別物である.脳内で報酬を表現するとされるドパミン神経は意外な想定外の出来事にも反応することが知られており,発見した研究者の脳ではドパミン神経が活性化されているに違いない.
    脳科学は基礎,臨床,人間科学などが溶け込む大きな流れになっている.どのような視点からの発見も脳科学全体への貢献が評価される時代になっていると思われる.個々の研究者にとっては独自性がますます重要になるであろう.男女とも,小学生が将来なりたい職業の上位に研究者が挙げられている.研究を楽しみ,少年少女の夢を体現する研究者が多くなることが望まれる.
Editor's Eye
挑戦者からのメッセージ
  • 米田 幸雄
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1125-1127
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    昆布の旨味成分として,グルタミン酸ナトリウムが1907年に東京帝国大学理学部 池田菊苗教授によって単離同定されて以来,旨味は甘味,酸味,塩味,および苦味に次ぐ第5番目の味覚という地位を確立している.グルタミン酸(Glu)は生体を構成する約37兆個の細胞において,ほぼ例外なく機能タンパク質の構成アミノ酸として不可欠であるばかりでなく,各種細胞におけるエネルギー産生やアミノ酸代謝にも必須の,普遍性の高い生体構成成分である.このような細胞普遍的な機能に加えて,脳内ではニューロンにおける興奮性神経伝達物質(excitatory neurotransmitter)として,脳内興奮性,学習や記憶等の可塑性形成,あるいは精神機能や運動機能等の制御と維持に,重要な生理的役割を演じている.そのうえ,細胞外に高濃度に蓄積されると,興奮性神経毒としてニューロン脱落を招来するため,パーキンソン病やアルツハイマー病など,ニューロンの脱落が著明な神経変性疾患だけでなく,著明なニューロン脱落が観察されない,うつ病や統合失調症などの神経精神疾患の病態発症メカニズムに,Gluが特別の病態生理学的意義を有すると理解される.
    一方,脳外組織を構築する各細胞内に見いだされる高濃度のGluは,長年,上述の細胞普遍的な機能に関与すると考えられてきたが,近年になって脳以外の末梢性組織に存在するGluが脳内の場合と同様に,局所性の細胞外シグナル物質として機能する事実が相次いで報告されている.各種細胞間に普遍的なGluの生理的意義については他の成書に譲ることとして,誌面の制限上,本稿ではシグナル物質としてのGluの特異的機能に焦点を絞って概説したい.
最前線
  • 伊藤 肇
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1128-1132
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    光学活性化合物の合成は,医薬分野で特に重要である.光学活性化合物の分子構造には不斉(キラリティー)があり,鏡面に映ったもの同士のように,一対の鏡像異性体(エナンチオマー)が存在する.キラリティを持つ化合物の2つのエナンチオマーが等量混合したものがラセミ体,片方のみからなるものが純粋な光学活性化合物である.
    2つのエナンチオマー同士は,その性質の多くが同一である.融点,沸点に加えて,通常のカラムクロマトグラフィーによる分離特性も同じである.また,分子の熱力学的な生成エネルギーが同一であるため,通常の手法で合成した場合には,2つのエナンチオマーの完全な等量混合物,すなわちラセミ体が得られるのが普通である.ラセミ体に含まれる2つのエナンチオマーは,通常の分離条件(蒸留や普通の再結晶,カラムクロマトグラフィーなど)で分離できないため,片方のエナンチオマーのみを入手することは簡単ではない.
    しかし一方でキラルな構造を持つ化合物が,生体物質(タンパク質や核酸など)に出会った時,2つのエナンチオマーは異なる挙動を示す.これは生体がキラルな構造体から構成されているからであるが,このことはしばしば深刻な問題を引き起こす.例えば有名なサリドマイドのケースでは,サリドマイドのR体は催眠鎮静作用を持つが,そのエナンチオマーであるS体は強力な催奇性を持つ.キラリティを持つ医薬品の場合,どちらか片方のエナンチオマーをうまく合成することがしばしば必要であることは広く認識されている.創薬の現場では,特にコストの問題から,最終的な構造にできるだけキラリティが組み込まれないように工夫するというが,いつも避けられるとは限らない.
    したがって光学活性化合物を効率よく合成することは,常に必要とされている重要なテーマである.近年では,極めて多くの種類の不斉合成反応について研究が積み重ねられている.本稿では,私達が数年前に出会った,非常に珍しい不斉合成反応「直接エナンチオ収束反応」について述べたい.
最前線
  • 長門 石曉, 津本 浩平, 楠﨑 佑子
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1133-1137
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    我々は種々の手法を駆使して1次スクリーニング,カウンターアッセイ,それに続いてのヒットバリデーションを実施し,薬剤探索を行う.そうした,いわば過酷な試験をくぐり抜けてきた化合物群の中からでさえ,薬剤として優れた性質を有し,最適化研究に供する価値のある候補化合物を見いだすのは容易ではない.候補化合物の標的への結合は,分子サイズ,化学構造,置換基の種類・数より概算される非共有結合能から,結合親和性,熱力学,速度論などにおいて特徴を見いだせることが多い.こうしたことから,価値のある候補化合物を見いだす,つまり化合物の結合に関する「質」を評価するヒットバリデーションやリードオプティマイゼーションにおいて,物理化学的な解析を可能とする検出技術が注目されている.このような解析装置は,label-free測定,またbiophysical測定と呼ばれている.分子間相互作用には,固有の結合エネルギー(発熱反応または吸熱反応)が存在する.このエネルギー変化を熱量変化として検出できる技術が,等温滴定型熱量計(ITC)である.本稿では,低分子創薬の流れにおいて熱力学的アプローチが活かされるポイントである「ヒットバリデーション」と「リードオプティマイゼーション」に焦点を当て,我々が取り組んでいる研究成果とともにその最前線を紹介する.
セミナー
  • 心臓安全性研究における基礎と応用の融合
    古谷 和春
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1138-1142
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    製薬企業で行われる創薬研究は,3万もの候補化合物の中から,10年以上の年月と数百から数千億円にも達する巨額の開発資金をかけて,ようやくひとつの新薬が承認まで辿り着くという世界である.さらにこの開発費用はますます増大する一方で,費用当たりの創薬創出の効率は低下し続けている.副作用は開発失敗の2番目に多い原因である.創薬を今よりも効率的に進めるため,薬物の悪影響を総合的に評価する安全性試験の各段階で科学的な確証を積み上げていくことが重要な課題となっている.インシリコ創薬とは,コンピュータを用いた創薬を意味する.創薬初期の化合物探索で実績があるが,今,安全性試験へのコンピュータシミュレーションの応用という新展開を迎えている.基礎研究が活発化し,製薬企業も参加する応用研究も始まっている.本稿では,その先駆けとして,インシリコ心臓安全性研究におけるこれまでの基礎研究の成果を概説するとともに,応用研究における現在の議論を紹介する.
セミナー
  • 任 書晃, 緒方 元気, 日比野 浩
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1143-1147
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    聴覚は,機械的刺激である音を集音する外耳に始まり,機械的増幅を行う中耳,音を神経系が認識可能な電気信号に変換する末梢器官「蝸牛」,聴神経における神経伝達を経て,最終的に脳の聴覚野に至る一連の感覚知覚システムの働きによって担われている.この系を構成する要素のどこが障害されても聴覚障害が惹起される.聴覚障害には,聴覚過敏や耳鳴り,難聴が含まれているが,本稿では難聴に主眼を置いた治療の変遷と将来の薬物治療戦略について紹介する.
    難聴患者は我が国で1,000万人を超え,人口の10%に上る.0.1%の新生児は難聴を有し,これは最も頻度の高い先天性疾患の1つである.この難聴には大きく分けて2種類ある.中耳・外耳伝達系の障害を原因とする伝音難聴と,内耳蝸牛から脳側の障害に起因する感音難聴である.感音難聴は,より脳に近い場所での障害で起こるため,その治療は薬物的にも手術的にもアクセスすることが難しい.一方,伝音難聴は外界に近い場所の障害によって発生するため,歴史的に難聴の治療法は伝音難聴の治療を中心に発展してきた.
    18世紀に耳科医が独立した診療科となるまで,長らく外科医がその役割を担っていた.これは,治療可能な疾患の中心が感染に起因する伝音難聴,すなわち外耳炎・中耳炎などであったことによる.これらの治療は,19世紀のペニシリンの発見により,飛躍的に改善する.しかし,感染の制御が可能となっても,感染を原因としない中耳炎や,慢性炎症の後遺症などによっても中耳骨の変形や鼓膜の損傷が起こることから,失われた外耳・中耳の機能を再建するために,顕微鏡による手術がこの半世紀で劇的な進化を遂げた.21世紀に入り,先天性疾患を含めた外耳・中耳疾患の薬物および手術的治療法は,ほぼ確立されたといっても過言ではない.
セミナー
  • 栄田 敏之
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1148-1152
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    おむつを買う男性客はビールを買う…これは,あるスーパーマーケットのチェーンで得られた膨大なデータを解析して抽出された傾向であり,マーケティングの世界では知らない人はいない象徴的な事例となっている.ところで,膨大なデータから何らかの傾向を抽出するデータ解析手法をデータマイニングといい,1994年にAgrawalらによって提唱されたアルゴリズムが最初と認識されている.紙おむつとビールの間に何があるのかはさておき,紙おむつの売り場とビールの売り場を近くにしておくと,紙おむつとビールの売上げは伸びるかもしれない.膨大なデータの収集とデータマイニングはマーケティングの世界で最初に注目を浴びた.
    医薬品と副作用の因果関係に関しては,十分に計画されたランダム化比較試験等を行ってエビデンスを収集すべきであり,新薬については,治験における有効性,安全性,有用性の評価を経て,製造販売が承認されている.しかしながら,治験における症例数は相対的に少なく,患者の条件が設定されている等の事情もあり,市販後の安全管理と臨床使用実態下におけるエビデンスの収集が課題として残る.ところで,医薬品の投与後に起こった望ましくない健康被害のことを有害事象といい,医薬品の作用によるもの(=副作用)であるか否かは問わない.医薬品の投与に伴う有害事象に関するデータを収集することは相対的に難しくないので,世界各国の規制当局等でデータの収集が行われている.医薬品と有害事象の因果関係に関しては,観察研究が行われているが,一方で,収集したデータ数が膨大化したものについては,データマイニングの手法を取り入れた解析も行われている.
    本セミナーでは,ビッグデータを利用した医薬品の市販後安全管理に関して考察する.
話題
わだい
速報 わだい
FYI(用語解説)
  • 長門石 曉, 楠﨑 佑子, 津本 浩平
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1160_1
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    効果的な薬剤を設計するにあたり,経験則としてChristopher Lipinskiにより提唱された「rule of five:分子量<500Da,水素結合ドナー数≦5,水素結合アクセプター数≦10,cLogP≦5,回転可能結合数≦10」と呼ばれるものがある.フラグメントライブイラリーは,この経験則を模して,分子量<300Da,cLogP≦3,水素結合ドナー数≦3,水素結合アクセプター数≦3,回転可能結合数≦3というrule of threeを設定している.
  • 古谷 和春
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1160_2
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    マルコフモデル(Markov Model)とは,複数の内部状態を有し,その状態間を確率的に遷移するシステムにおいて,未来の状態が現在の状態だけで決定されると考えられた時(これを,マルコフ過程に従うという),入力の分布の時間発展を予想する確率モデルである.システムの全ての状態間遷移は確率変数によって定義されている.生体システムにおいては,イオンチャネルや受容体などが活性化される過程など分子レベルのイベントや,人口分布推移や感染症流行など集団レベルの現象がマルコフ過程に従うとの仮定のもと,各状態の遷移を予測するためにマルコフモデルが応用,分析されている.
  • 任 書晃, 緒方 元気, 日比野 浩
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1160_3
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    蝸電図とは,音受容が行われる際の蝸牛電気活動の記録である.心電図や脳波と同様,電極は体外(臨床では鼓膜)に留置される.交流成分のAction Potential(AP),Cochlear Microphonics(CM)と,直流成分のSummating Potential(SP)が含まれる.APは蝸牛神経細胞の興奮を,CMは有毛細胞(内・外有毛細胞どちらかについては不明)の興奮を反映するとされているが,SPについてはその由来がいまだ明確ではない.臨床検査としての有用性が検討されてきたが,現在は特定の機関でしか行われていない.
  • 栄田 敏之
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1160_4
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    本来は患者分類としての診断群分類を意味する.2003年より,特定機能病院を対象として,DPCをベースとした入院1日当たりの定額報酬算定制度が本格的に導入され,以降,対象病院は段階的に拡大され,2014年現在,全病床数の半数強に当たる約49万床をカバーしている.導入当初は,支払制度の意味も含めてDPC制度という呼称を使用したが,支払制度を含むか否かを区別すべきという指摘があり,2010年以降,支払制度としてのDPC制度に対しては,DPC/PDPSを使用するようになった.ちなみに,PDPSはPer-Diem Payment Systemの略である.
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1162-1163
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    このコラムでは厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    当コラムは,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成27年9月28日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページ→「医薬品関連情報」→「承認情報(医薬品・医薬部外品)」→「医療用医薬品の承認審査情報」(http://www.info.pmda.go.jp/info/syounin_index.html)より検索できます.
在宅医療推進における薬剤師のかかわり
  • 川名 三知代
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1164-1166
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    当薬局は,窓口では日常的に近隣の医療機関からの処方せんを応需しつつ,無菌調剤室を備える在宅調剤サポートセンターとして地域在宅医療連携に参加している. 1つ1つの依頼に丁寧に応えることで,これまでに数百名の在宅患者とのご縁をいただいた.そのほとんどが高齢者の自宅への訪問だが,この中に10名の小児科の患者(以下,患児)も含まれる.この患児らは,高度な医療的ケア(気管切開,人工呼吸,経管栄養など)を必要とし,小児期発症疾患(重度脳性麻痺,難治性てんかん,染色体異常など)を有する乳幼児~成人期の患者である. 私たちの薬局は,国立成育医療研究センター病院から少し離れた商店街の中にあるが,最先端の高度医療を受けるためにこの地域に転居してきた家族も少なくない.窓口に来局した患児の母親からの「薬を届けてもらえないでしょうか」という要望に応える形で,当薬局では高齢者よりも先に小児科患児宅への訪問が始まっている.一昔前に地域のかかりつけ薬局が「患者様のために」と利益を度外視して始めたこの取組は,運営会社の統合・再編・社名変更を経てもなお,熱意と善意あふれる薬剤師たちに引き継がれ,やがては主治医より訪問指示を受けた上での在宅患者訪問薬剤管理指導へと発展していった. 医師の訪問診療を受けていない小児に対し,要件さえ満たせば在宅患者訪問薬剤管理指導が実施できることはあまり知られていない(図1).また,高度医療機関と地域の薬局が在宅療養患者のために連携できる仕組みが整っていない.そのため,小児の在宅医療に対応可能な薬局は少なく,私たちは存在に気付いてもらうのを待つしかなかった. 今回は小児在宅医療における私たちの取組を紹介すると同時に,その中で地域の薬局が担うべき役割を提案したい.
続・数式なしの統計のお話
  • ペンネーム スチューデント
    酒井 弘憲
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1168-1169
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    早くも師走である.昨年の連載では,仲良しの某旧帝大教授の忘年会での散財の話を書いたが,今年もその季節がやってきた.基本的にビールが苦手な筆者であるが,気候のせいか,雰囲気のせいか,海外に行くと比較的ビールを飲むようになる.特に英国では,最初の一杯はまずギネスというのが定番である.ギネスと言えばビールだけでなく世界記録を思い浮かべる人も多いだろう.筆者も中学生のときにバンクーバーに住む伯母からGuinness World Recordsを送ってもらい,分からない単語だらけなので辞書を引き引き,それでもワクワクしながら読んだことを思い出す.1955年に初めて出版されたWorld Recordsであるが,現在では出版事業はギネス社の手を離れ,HIT Entertainment社に引き継がれている.
    さて,そのギネス醸造所であるが,Wikipediaによると歴史は古く,1756年にアイルランドのダブリンで創業され,1759年にその頃使われなくなっていたセント・ジェームズ・ゲート醸造所を年45ポンドの対価で9,000年間借り受けるという超長期の賃貸契約を結び,それ以来この醸造所で変わらずに黒スタウトビールを造り続けているということらしい.スタウトビールとは,いわゆる上面発酵の黒ビールであるが,日本の黒ビールの多くはラガーと同じ下面発酵である.この黒ビールは見かけによらず,低カロリーで,1パイント(日本の大ジョッキと中ジョッキの間くらいの量)で僅か200kcal程度なのである.
    実は,このギネス社,統計家にとっては格別な会社なのである.
製剤化のサイエンス
薬学実践英語
  • F. W. FOONG
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1173-1176
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    前回はOTC薬販売における12の項目に関する英語表現を学習した.今回と次回にわたり,調剤と服薬指導の際のコミュニケーションスキルとして重要な11項目について取り上げる.それは,①患者への挨拶,②処方薬を受け取るべき患者であることの確認,③処方された薬を渡す前に確認する事項,④疑義照会,⑤患者本人が薬を受け取りに来た場合の重要な3つの質問(Three Prime Questions:用法/用量,副作用,および服用に際しての注意),⑥薬の補充のために来店した患者への「見せて説明する質問(Show and Tell Questions)」,⑦基本的な7つの質問(The Basic Seven Questions),⑧理解の再確認,⑨投与量/投与法の表現,⑩注意や記憶を促す工夫,そして,⑪別れの挨拶,である.
トピックス
  • 濱田 知明
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1178
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    含窒素化合物は生理活性天然物や医薬品に多く見られ,炭素-窒素(C-N)結合形成反応は有機合成化学において最も重要な反応の1つである.C-H結合活性化による含窒素官能基の導入は近年活発に研究がなされている分野であるが,そのほとんどがC(sp2)-Hアミノ化やアミド化であり,C(sp3)-H活性化による分子間C-N結合形成反応の報告は限られていた.Yuらは脂肪族カルボン酸アミドのβ位C(sp3)-H結合を活性化してアルキルアミノ基を導入する手法を開発したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) He J. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 54, 6545-6549 (2015).
    2) Wasa M. et al., J. Am. Chem. Soc., 131, 9886-9887 (2009).
    3) He J. et al., J. Am. Chem. Soc., 135, 3387-3390 (2013).
    4) Tan Y., Hartwig J. F., J. Am. Chem. Soc., 131, 3676-3677 (2010).
  • 山本 啓介
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1179
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    「O型血液は他の血液型の人間に輸血できるが,他血液型の血液をO型の人間が受血することはできない」.ABO血液型は赤血球上の糖鎖抗原の構造により決定される.上記の輸血の授受の方向性は,O型血液には誰もが保有するH型抗原しか存在しないことによる.実際,大量出血などの緊急時にO型赤血球を輸血することはよくあると聞く.このように需要の多いO型輸血液の不足に備えるため,これまでにA型またはB型血液をグルコシダーゼで処理し,H型抗原の「万能輸血液」(=O型血液)へ変換する研究がなされてきた.しかし,この方法ではA型,B型血液それぞれに別のグルコシダーゼを大量に作用させる必要があるため,簡便に「万能輸血液」を調製できる方法が現在も模索されている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Goldstein J. et al., Science, 215, 168-170 (1982).
    2) Liu Q. P. et al., Nat. Biotechnol., 25, 454-464 (2007).
    3) Anderson K. M. et al., J. Biol. Chem., 280, 7720-7728 (2005).
    4) Higgins M. A. et al., J. Biol. Chem., 284, 26161-26173 (2009).
    5) Kwan D. H. et al., J. Am. Chem. Soc., 137, 5695-5705 (2015).
  • 西山 由美
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1180
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    日本は高齢化社会を迎え,認知症患者数の増加は深刻な問題である.しかし認知症の根本的な治療方法は確立されておらず,その発症機構の解明や治療法の開発が急務となっている.認知症の中で多くを占めるアルツハイマー型では,脳内のアセチルコリン(ACh)量の低下が認められていることから,AChの分解を抑制するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬が対症療法の1つとして用いられている.しかし長期服用により,副作用である消化器障害の発生や経済的負担の増大などの問題が生じることもあり,このことから,食物やハーブなどを対象にAChE阻害作用を有する天然物の探索が多く行われている.本稿では,マンネンタケ科ハッドウィア属のきのこHaddowia longipesに含まれるラノスタノイドの構造とAChE阻害活性に関するZhangらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである. 1) Zhang S. et al., Phytochemistry, 110, 133-139 (2015). 2) Wu Z. et al., Guizhou Sci., 31, 1-17 (2013). 3) Rios J. et al., J. Nat. Prod., 75, 2016-2044 (2012). 4) Liaw C. et al., J. Nat. Prod., 76, 489-494 (2013). 5) Hu L. et al., J. Asian Nat. Prod. Res., 4, 357-362 (2013).
  • 伊藤 俊将
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1181
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    今,メタボリックシンドロームに対する注目すべき標的分子は,脂肪の燃焼を促す働きを持つアディポネクチン受容体であろう.昨年50巻8号の本トピックスでは,そのサブタイプAdipoR1(R1)とAdipoR2(R2)に対する低分子アゴニストの発見が取り上げられた.本年TanabeらはR1とR2の結晶構造解析に成功したので,本稿ではこれについて概説する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Okada-Iwabu M. et al., Nature, 503, 493-499 (2013).
    2) Tanabe H. et al., Nature, 520, 312-316 (2015).
  • 山梨 義英
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1182
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    近年,がんの発生や増殖に関わるシグナル伝達分子が次々と明らかになり,これら分子を標的とした多くの阻害剤(分子標的薬)が抗がん剤として開発・利用されている.なかでも,腫瘍細胞で活性化変異したリン酸化酵素を標的としたキナーゼ阻害剤は,低分子化合物で経口投与が可能という利点もあり,広く臨床応用されている.一般に,分子標的薬は従来の化学療法剤と比べて優れた著効性を示すが,腫瘍の薬剤耐性化により長期使用が困難となる症例も多い.この腫瘍の耐性化は分子標的薬治療にとって克服すべき大きな課題となっているが,そのメカニズムには未解明な点が多い.本稿では,キナーゼ阻害剤によって腫瘍細胞から分泌される液性因子群(セクレトーム)が腫瘍の治療抵抗性・悪性化を促すことを示したObenaufらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Holohan C. et al., Nat. Rev. Cancer., 13, 714-726 (2013).
    2) Obenauf A. C. et al., Nature., 520, 368-372 (2015).
    3) Shi H. et al., Cancer Discov., 4, 80-93 (2014).
  • 藍原 大甫
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1183
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    現在,我が国では食生活の欧米化に伴い,肥満や2型糖尿病患者が増加の一途をたどっている.これらの疾患の特徴として,血糖調節に重要なインスリンの標的組織における感受性の低下,いわゆるインスリン抵抗性を生じることが知られている.また近年,インスリン抵抗性の発症および増悪を引き起こす因子として,炎症誘発性メディエーターであるエイコサノイドなどが注目されている.これらの因子は,インスリンの標的となる肝臓,骨格筋および脂肪組織において,マクロファージなどの免疫系細胞の集積に関与している.さらに,集積したマクロファージから分泌される種々のサイトカインにより,インスリンシグナル伝達異常が起こり,インスリン抵抗性が誘発されることが報告されている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mathis D. Cell. Metab., 17, 851-859 (2013).
    2) Spite M. et al., J. Immunol., 187, 1942-1048 (2011).
    3) Li P. et al., Nat. Med., 21, 239-247 (2015).
  • 金澤 勝則
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1184
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus,以下SA)は,市中感染および院内感染の原因菌として,人類が歴史的に最も長く戦ってきた病原細菌の1つである.古くは1940年代にペニシリンの発見により画期的な治療手段を手にするも,早々にペニシリン耐性菌が出現し,その後もメチシリンをはじめとする新たな抗菌薬の開発とSA側の耐性獲得が交互に繰り返されてきた.感染症の克服において目指すべきゴールは,その予防法の確立である.メチシリン耐性株(MRSA)を含めたSAに関しても,長年多くの企業や研究組織により,予防ワクチンの研究,開発が試みられてきたが,いまだその実用化には至っていない.本稿では,SAワクチンの候補の1つであるNDV-3ワクチン(NovaDigm Therapeutics社)のMRSA皮膚・皮膚組織感染の予防効果および重症化防止効果ならびにその作用機序に関するYeamanらの研究論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Jansen K. U. et al., Vaccine, 31, 2723-2730 (2013).
    2) Schmidt C. S. et al., Vaccine, 30, 7594-7600 (2012).
    3) Yeaman M. R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 111, E5555-5563 (2014).
    4) Yeaman M. R. et al., Front. Immunol., 5, doi : 10.3389/fimmu.2014.00463 (2014).
    5) Lin L. et al., PLoS. Pathog., 5, doi : 10.1371/journal.ppat.1000703 (2009).
  • 濵村 賢吾
    2015 年 51 巻 12 号 p. 1185
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    日周リズムとは,睡眠・覚醒のサイクルやホルモン分泌など,我々の生体機能に認められる約24時間を1サイクルとする周期的変動を指す.この日周リズムは,時計遺伝子と呼ばれる一連の体内時計分子機構により形成される内因性のリズムと,光や食事などにより形成される外因性のリズムに大別され,両者のバランスが恒常性維持に重要であると考えられている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Saad A. et al., Diabetes., 61, 2691-2700 (2012).
    2) Coomans C. P. et al., Diabetes., 62, 1102-1108 (2013).
    3) Suwazono Y. et al., J. Occup. Environ. Med., 48, 455-461 (2006).
    4) Morris C. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 112, E2225-2234 (2015).
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