ファルマシア
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55 巻, 11 号
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目次
  • 2019 年 55 巻 11 号 p. 1010-1011
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    特集:日本におけるこれからの予防接種を考える
    特集にあたって:ようやく我が国の公費で接種できるワクチンの種類が諸外国にほぼ並んだ.しかし,ワクチン有効率の誤った理解や,ワクチンに関する根拠のないデマの拡散,さらにはマスコミがワクチンの副反応を過大に取り上げたことによる予防接種行政の後退などにより,我が国ではワクチンで予防できる感染症をワクチンで予防するという当たり前のことができていないという現実がある.本特集では,公衆衛生学的な観点からだけでなく,数理学的,社会学的な観点を含むいろいろな角度から,我が国における予防接種やワクチンに関する問題を取り上げた.本特集が皆様の予防接種・ワクチンに対する正しい理解と啓蒙活動に資することができれば幸いである.
    表紙の説明:近年,我が国でも世界標準とされているワクチンの定期接種化がようやく進んできた.しかし,我が国には予防接種に関する問題が数多く残されている.また,SNSなどにより「ワクチン有害説」などの根拠のない誤った情報が拡散されている.政府や製薬メーカー,そして医療従事者は,積極的に感染症やワクチンに関する正しい情報を周知していく必要がある.加えて,より効果的でかつ副反応が少ないワクチンの研究開発も重要な課題である.
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
  • 海外の状況から見えてくる課題
    菅谷 明則
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1019-1023
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    日本では、2015年から2016年にはおたふくかぜ、2019年には麻しん、風しんが流行している。このようなVaccine Preventable Disease(VPD)の流行は、健康管理システムと公衆衛生システムの失敗の結果である。その要因として、①ワクチンの効果が不十分である、②安全で有効なワクチンがあるが、財政的理由などで対象者に広く接種できない、③保護者が推奨されているワクチンを子どもに受けさせない、が考えられる。現在の日本でのVPDの流行と予防接種の課題のうち、キャッチアップ接種、任意接種、有害事象の評価の3点について、海外の状況と比較しながら解説する。
セミナー
  • 山本 輝太郎, 石川 幹人
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1024-1028
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    ワクチン有害説とは,「ワクチン接種はヒトにとって有害である」という基本的な考えのもと,社会および個人に対してワクチン接種の危険性を訴える主張の総称である.本稿の目的はワクチン有害説の科学性を評価することにある.科学哲学・科学社会学の知見から案出した「科学性評定の10条件」に基づくと,ワクチン有害説は理論の適応範囲に大きな問題を抱えており,データの面からもこれを支持できる有力な根拠はなく,典型的な疑似科学的言説である.科学性評定の10条件の理解把握によってこうした評価が可能である.
セミナー
セミナー
セミナー
  • 尾内 一信
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1039-1043
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、HPV感染を予防しHPV感染に起因する子宮頸がんを予防するワクチンである。日本でも2010年から子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業開始され、2013年4月から定期接種に組み込まれた。接種率の上昇に伴いワクチン接種後の多様な症状が報告され、2013年6月積極的勧奨の一時差し控えが通知された。その後、現在も定期接種であるのも関わらず接種率が1%に満たない状況が続いている。先進諸国ではHPVワクチンの高い接種率が維持されており、このままだと日本だけが子宮頸がんが減らないのではないかと危惧される。
セミナー
最前線
  • 西浦 博, 楊 一馳
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1049-1053
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    感染症の数理モデルは,流行が集団内で起こり,それが拡大していく様を数理的に記述した模倣的な描写ツールである.様々な疾患の疫学研究の中で感染症は最も長い歴史を有するが,200年以上ある感染症数理の歴史の中で最近15年間の進歩は凄まじく,統計学的推定(特に計算統計学)の技術革新やコンピュータの計算能力の向上に伴って,数理モデルを流行データに適合(フィット)して感染性や重症度を定量化することや未来の予測を施すことが当たり前の時代に突入した.いまや,保健医療の現場において,特定の感染症の流行状況を客観的に理解したり,予防接種や治療効果の政策判断を実施したりするうえで,数理モデルは欠かせない研究手法となった.昨今のエボラ出血熱やジカ熱,新型インフルエンザ等の新興感染症流行のデータ分析においても,世界でいち早く流行状況を理解し,予測を施すために用いられている.
    数ある研究課題の中でも,予防接種の有効性に関する検討は数多く,また接種効果の推定や人口レベルでの接種政策判断などは,数理モデルの威力が最も発揮される活用課題として知られる.なぜなら,直接伝播する感染症の予防接種は,接種者個人が恩恵を受ける直接的な(ミクロ生物学的な)効果に留まらず,予防接種者が増えることによって集団レベルでもたらされる間接的な予防効果としての集団免疫(herd immunity)をもたらすためである.公衆衛生学的な観点で考えれば,集団免疫があるということは,人口の全てに予防接種を実施しなくても流行が制御可能であるという歓迎すべきことであるが,データ分析を実施して予防接種を評価・計画する立場で考えれば,それは研究デザインからモデリング,結果解釈に至るまで相当のケアをしなければいけないことを意味する.本稿では,数理モデルを活用した予防接種の評価研究に関する最前線の理解を得るために,基本的な考え方を読者諸氏と共有する.
最前線
  • 長谷川 秀樹
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1054-1057
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    インフルエンザは,我が国では毎年冬に流行する.ワクチンが導入され,毎年数千万人の国民が秋から冬にかけて接種しているが,その流行は止まらず毎年繰り返されている.それではなぜ,高いワクチン接種率にもかかわらず毎年のインフルエンザの流行が起こるのか.その解答は,ワクチン接種によって誘導されるヒトの免疫とその働き方にあると思われる.それは,ワクチン接種により誘導される血中の抗体がインフルエンザワクチンの感染防御にあまり有効でないため,起こると考えられる.
    そこで,インフルエンザの予防に関しては新しいアプローチが必要であり,より良く効き,流行曲線を下げる効果のある新しいワクチンが必要である.現行のワクチンは,インフルエンザウイルスの感染阻止には不十分であり,感染の場である上気道粘膜上に感染を阻止し得る粘膜免疫を誘導する必要がある.その際,経鼻インフルエンザワクチンは粘膜免疫を誘導する強力なツールになる.
    本稿では,新たなワクチンデリバリーシステムとして粘膜免疫を誘導する不活化経鼻インフルエンザワクチンについて概説する.
最前線
FYI(用語解説)
  • 添田 博, 濱田 篤郎
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1063_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    ワクチン・ギャップとは,世界保健機関が接種を推奨しているワクチンが,国内では公的な定期接種になっていないか,あるいはそもそも国内に導入されていないという状況のことを指している.この原因としては,予防接種の副反応による健康被害を背景とした慎重な行政の対応が影響していると考えられている.これまで,我が国で接種可能なワクチンの種類は欧米と比較して20年遅れていると言われていたが,2010年以降から小児肺炎球菌ワクチン,Hibワクチン,HPVワクチンなどが,2012年には不活化ポリオワクチンが導入された.また,これらのワクチンのほかにも,従来からあった水痘やB型肝炎ワクチンが定期接種化されるなど,現在はこのワクチン・ギャップが解消に向かっている.
  • 細見 晃司, 國澤 純
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1063_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    マラリアを引き起こす寄生虫であるマラリア原虫は,蚊とヒトとの間を交互に感染しながら増殖することによって自然界で生存している.その過程において,マラリア原虫は様々に形態を変化させることが知られており,蚊からヒトへ感染する際の形態をスポロゾイトと呼ぶ.蚊の吸血時にヒトの体内へ侵入したスポロゾイトは肝臓へ移行し,シゾントに成熟し,メロゾイトとなって赤血球へ感染する.赤血球内で形態変化し,最終的に生殖母体となり,ヒトが蚊に吸血された際にヒトから蚊へ伝播する.蚊の消化管内でオーシストに発育し,最終的にスポロゾイトを放出する.このスポロゾイトが再び蚊の吸血時に蚊からヒトへ感染するという循環を示す.
  • 中村 慎吾
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1063_3
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    Maxwell-Boltzmann分布とは,統計力学の基礎的な考え方の1つで,平衡状態において理想気体分子の各速度についての確率分布を表す関数.熱力学的にみられる演繹的な立場をとると,この理想状態はより巨視的な,平衡状態における各状態のエネルギー量についての(各状態の)存在確率分布の関数とも読み替えられる.
  • 中村 慎吾
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1063_4
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    Eyringの絶対反応速度式とは,反応速度論の基礎的な考え方の1つで,化学反応速度の温度による変動を表した式であり,単純にEyringの式あるいはEyring–Polanyiの式とも呼称される.本式によって,活性化エネルギー(出発状態と遷移状態のエネルギー差)と温度だけによって,対応する反応の反応速度が絶対的に記述される.
新薬のプロフィル
  • 海老原 秀治
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1064-1065
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    チオテパはエチレンイミン系のアルキル化剤でDNA合成を阻害すること等により腫瘍増殖抑制効果を示すと考えられている。国内では1958年より製造販売されていたが、2009 年に販売中止された。海外の承認状況、国内の使用経験などを踏まえて、学会から未承認薬・適応外薬の開発要望が出され、本剤の開発に着手した。2019年3月に「小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療」を効能・効果としてリサイオ®点滴静注液が承認された。
くすりの博物館をゆく
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
トピックス
  • 近藤 健
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1072
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    医薬品や農薬へのフッ素の導入は薬物動態や代謝安定性の改善が期待されるため,フッ素化反応の開発は創薬において重要である.しかし,既存の有効なフッ素化試薬は価格や毒性が高いものも多い.一方,フッ化カリウム(KF)は安価かつ取り扱いが容易であり,フッ素源として理想的であるものの,有機溶媒に溶けにくく,反応性の制御が困難であることから,フッ素化反応への適用はほとんどなかった.最近,Gouverneurらは,KFによるβ-ハロアミン類のエナンチオ選択的なフッ素化反応を達成したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Pupo G. et al., J. Am. Chem. Soc., 141, 2878-2883(2019).
    2) Pupo G. et al., Science, 360, 638-642(2018).
  • 喜多村 徳昭
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1073
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    フタリジルエステルは,カルボキシ基を有する生理活性化合物のプロドラッグ化において有望なエステルである.しかし,従来のエステル化法では,反応で生じる不斉中心の立体制御は困難であり,現在上市されているフタリジルエステルプロドラッグは2種類の立体異性体混合物として用いられている.2つの立体異性体は生体内で必ずしも同じ薬物動態を示すとは限らないことから,医薬品開発の観点から立体化学を制御したフタリジルエステルの合成法が望まれている.
    今回Chiらが,N-ヘテロ環状カルベン(NHC)触媒を用いた不斉アセタール化反応の開発により,高い立体選択性で光学活性フタリジルエステルを合成することに成功したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Stella V. J. et al., Drugs, 29, 455-473(1985).
    2) Liu Y. et al., Nat. Commun., 10, 1675(2019).
  • 太田 智絵
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1074
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    忘年会シーズン到来で,これからウコン配合ドリンクにお世話になる方も多いのではないか.ショウガ科植物ウコンCurcuma longa Linnéはアジア南部やインドで自生,栽培される多年生草本で,日本では,肝機能の維持を目的に機能性表示食品などとして用いられている.また,血流を改善する作用があるとされ,冷え性や肩こりなどに対する効果が期待できるほか,動脈硬化や認知症の予防にも役立つとされる.ウコンの主成分はクルクミンや(+)-ar-ツルメロンなどであるが,クルクミン以外の化合物の生物活性はほとんど研究されていない.
    今回,Liuらはウコンから新規セスキテルペンを単離し,それらの血流改善作用について検討したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lin X. et al., J. Nat. Prod., 75, 2121-2131(2012).
    2) Manzan A. C. et al., J. Agric. Food Chem., 51, 6802-6807(2003).
    3) Liu Y. et al., Org. Lett., 21, 1197-1201(2019).
  • 岡田 康太郎
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1075
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー型認知症患者の多くは高齢者であり,服薬アドヒアランスの低下が起こりうる.また,服薬の継続には,介護者のサポートを必要とすることがある.もし薬剤を1週間に1回服用するだけで症状の進行を抑制できるならば,患者・介護者にとってメリットは大きい.製剤技術の進歩から,薬効を変えずに服用回数を減らせるようになったが,おおよそ1日1回が限度であり,さらに回数を減らすことが求められている.この課題を解決する経口製剤が,米国のベンチャー企業によって報告されており,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kanasty R. et al., J. Control. Release., 303, 34-41(2019).
    2) Kirtane A. R. et al., Nat. Commun., 9, 2(2018).
  • 行方 衣由紀
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1076
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    生体内には血圧を一定に保とうとする様々なメカニズムが存在するが,なかでも圧受容器反射(圧反射)は短時間(秒から分)での血圧制御を担う.何らかの原因によって血圧の低下が起こった場合,圧反射を介して心拍数の上昇や心収縮力の増大,さらに血管の収縮によって血圧が回復する.血圧の上昇に対しては逆の反応が起こる.血圧の変化を感知する圧受容器は,頸動脈洞や大動脈弓に存在し,その情報が求心性の感覚神経を介して延髄にある血管運動中枢に伝達され,自律神経系を介して血圧が制御される.解剖学上,求心性感覚神経が入り込んでいる頸動脈洞や大動脈弓の血管壁は薄く弾性線維が多いため,組織が伸展しやすい.このことから圧反射の一次トランスデューサーは機械感受性イオンチャネルであろうと推測されていたが,長年分子実体は不明なままであった.しかし,ついに圧受容器の分子実体がPIEZOチャネルであることの決定的な証拠が示されたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zeng W. Z. et al., Science, 362, 464-467(2018).
    2) Coste B. et al., Science, 330, 55-60(2010).
    3) Spiering W. et al., Lancet, 390, 2655-2661(2017).
  • 中村 庸輝
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1077
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    シグマ-1 受容体(Sig-1R)は,一回膜貫通型受容体であり,主に小胞体膜に発現しているタンパク質である.その細胞内での役割は,他のタンパク質の構造を安定化させるタンパク質(シャペロンタンパク質),またはイノシトール三リン酸(IP3)受容体などのタンパク質と物理的に会合し機能を調節する因子として働く.Sig-1Rは,慢性疼痛,筋萎縮性側索硬化症(ALS),精神疾患,認知機能障害など様々な末梢および中枢神経疾患の病態に深く関わっている可能性が報告されている一方で,その詳細には不明な点が多く残っている.内因性リガンドとしては,神経ステロイドであるプレグネノロン,プロゲステロンや,トリプトファンの代謝産物であるN, N-ジメチルトリプタミンが既に報告されているが,最近,Brailoiuらのグループによって新たなSig-1Rの内因性リガンドとしてコリンが同定されたので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Schmidt H. R. et al., Nature, 532, 527-530(2016).
    2) Hayashi T., Su T. P., Cell, 131, 596-610(2007).
    3) Su T. P. et al., Science, 240, 219-221(1988).
    4) Fontanilla D. et al., Science, 323, 934-937(2009).
    5) Brailoiu E. et al., Cell Reports, 26, 330-337(2019).
  • 伊藤 友香
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1078
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    皮膚は人体で最大の面積を持つ臓器であり,外界からの刺激や感染に対する防御機能,体温調節機能を持つ.なかでも皮膚脂肪層は,中性脂肪の蓄積,断熱・保温,外力からの衝撃緩和作用などを担っている.2015年には脂肪組織がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染した皮膚での自然免疫応答に関与することが報告され,大きな注目を集めた.今回,皮膚線維芽細胞(dermal fibroblasts: dFBs)の脂肪細胞分化能と抗菌ペプチド(カテリシジン)産生能が加齢とともに低下すること,transforming growth factor(TGF)-βがこの変化の重要な上流制御因子であることがZhangらによって明らかにされたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhang L. J. et al., Science, 347, 67-71(2015).
    2) Zhang L. J. et al., Immunity, 50, 121-136(2019).
    3) Lakos G. et al., Am. J. Pathol., 165, 203-217(2004).
    4) Choy L., Derynck R., J. Biol. Chem., 278, 9609-9619(2003).
  • 木﨑 速人
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1079
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    介護施設において,高齢者に対する適切でない薬剤の投与(potentially inappropriate med-ication: PIM)による有害事象発症リスクが増加する可能性が問題視されている.Morinらのシステマティックレビューでは,介護施設入居者のおよそ半数にPIMが見られることが報告されており,PIMによる有害事象の危険性を低減することが喫緊の課題である.
    「Deprescribing」とは,医療者の介入によってPIMに対する減量や削減,あるいは代替薬への変更を行い,処方適正化および有害事象の回避を目指した行為であり,概念である.介護施設においてもPIMに対するdeprescribingの有用性が期待される一方,その有用性に関するまとまった報告は少ない.そこで本稿では,介護施設入居者を対象としてdeprescribingの効果について検討したシステマティックレビューとメタ解析の結果を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Morin L. et al., J. Am. Med. Dir. Assoc., 17, 862.e1-862.e9(2016).
    2) Kua C. H. et al., J. Am. Med. Dir. Assoc, 20, 362-372(2019).
    3) Fick D. et al., Arch. Intern. Med., 163, 2716-2724(2003).
    4) Gallagher P. et al., Int. J. Clin. Pharmacol. Ther., 46, 72-83(2008).
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  • 伊勢 雄也
    2019 年 55 巻 11 号 p. 1071
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    著者が小学生の頃は、ゲームというものはゲームセンターなどに行かなければできなかったが、ゲームウオッチやファミリーコンピュータの登場により、自宅でもゲームが楽しめるようになった。現在では多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)が主流となってきている。一方、このゲームの普及により、ゲームをやめられない、やめられずに日常生活に大きな障害を生じる、「ゲーム依存症」がWHOで2018年に公表されたICD-11に収載され、大きな社会問題となってきている。
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