ファルマシア
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54 巻, 12 号
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目次
  • 2018 年 54 巻 12 号 p. 1102-1103
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    ミニ特集:AYA世代のがん患者の支援とその問題点を考える
    ミニ特集にあたって:Adolescent and young adult(AYA)世代は,進学,就職,結婚,出産および育児など,ライフステージが活発,多様であるため,この世代のがん患者の治療やサポートは成人,高齢者と比較して難しくエビデンスも構築されていない.本ミニ特集では,がんを生きるAYA世代の患者・家族の抱えている課題(青年期特有の発達課題,妊孕性やパートナーシップ,家族内の問題点など)やその解決方法について,各分野の専門家にご執筆いただくことにより,AYA世代がん患者のサポート,薬剤師の関わりなどについて考えてみたい.
    表紙の説明:『本草図譜』の甘草 江戸時代最大の植物図鑑である『本草図譜』全95冊は,岩崎灌園(1786〜1842)によって著された.灌園は三河の出身,名は常正.小野蘭山の最晩年の弟子であった.原稿本は1828年に完成し,写本が作られ,刊行も試みられたが,一部分のみであった.著述から100年近く経った1922年,日本ならではの木版画技術を駆使し,2,000種に及ぶ多色刷の植物図を収めた豪華版がついに刊行された(本草図譜刊行会).表紙は第1冊の甘草の部分.主成分はグリチルリチンで,多くの漢方処方に配合されている.
オピニオン
Editor's Eye
ミニ特集 セミナー
ミニ特集 セミナー
ミニ特集 セミナー
  • 富岡 晶子
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1119-1123
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    AYA世代は進学や就職、恋愛、結婚、出産などさまざまなライフイベントを迎え、自己を確立していく時期であり、病気や治療に関することだけでなく多様なニーズを有している。AYA世代がん患者の看護においては、この世代特有のニーズを理解し、若者の夢や希望が奪われることなく、自らの意思で決定し、行動できるような環境を整えていくことが重要であり、心理社会的支援に加え、性・生殖機能等の問題にも対応できる専門性の向上を図ることが必要である。
ミニ特集 セミナー
ミニ特集 話題
  • がんサバイバーのQOL向上を目指して
    片岡 智哉, 真川 明将, 木村 和哲
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1129-1131
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    日本人の2人に1人はがんになると言われるほど、がんは身近なものであるが、近年の診断技術の発展や治療法の進歩も伴い、今やがんは不治の病ではなくなりつつある。本邦ではがんサバイバーが500万人以上、米国でも1300万人以上存在し、世界規模で年々増加している。現在のがん治療においては、がん罹患後のサバイバーシップにまで視野に入れたケアプランの構築が重要視されている。がんサバイバーの性に関するガイドラインとして『小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2017年版』が出版され、抗がん剤治療後の妊孕性温存に関して注目が集まっている。本稿では、抗がん剤治療後の男性性機能に関する研究を概説する。
ミニ特集 話題
最前線
  • インスリン製剤の簡便な化学合成への展開
    荒井 堅太, 岩岡 道夫
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1135-1139
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    血糖値降下作用をもつインスリンは, 二本の異なるポリペプチド鎖が2対のジスルフィド結合でリンクした特徴的な構造をとるため, その化学合成は容易ではない。我々は最近, これらの構成ペプチド鎖が水溶液中で自己組織化し, 生理活性をもつインスリンの高次構造を獲得するメカニズムの全容を明らかにした。さらに得られたメカニズムをもとに, 反応条件を綿密に最適化したところ, 各ペプチド鎖を1:1で混合するだけでインスリンを簡便に得ることに成功した。
話題
  • Bringing Japan’s R&D Innovation to Tackle Global Health Challenges
    鹿角 契
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1140-1144
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は、日本政府、日本の製薬企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団等の共同出資によって設立された、グローバルヘルスR&Dに特化した日本発の非営利・国際機関であり、途上国で蔓延する感染症に対する治療薬、ワクチン、診断薬の研究開発を支援している。これまでに74件のプロジェクトに対して総額約132億円の投資を行い、8件が既に臨床試験段階に入っている。今後日本が感染症に対抗すべく創薬開発をさらに推進し、保健医療の面から国際的貢献を果たしていく役割は極めて大きい。
話題
FYI(用語解説)
  • 三善 陽子
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1150_1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    「ピアサポート(peer support)」とは,ピア(仲間)サポート(支援)という言葉の通り,「同じような体験をした同じような立場のひとによるサポート」という意味で用いられる用語である.病気を患った患者さんの場合には,同じような病気を経験した患者さん同士あるいはその家族らが,自らの体験を語りあい,情報交換を行うことで,相互に支えあうことになる.ピア同士が体験や感情を共有し,共に考える中で,自らの抱える問題を解決していくのを助けるという,患者支援の中でも重要な位置付けにある手法である.ピアサポートを行うひとを,「ピアサポーター」という.
  • 富岡 晶子
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1150_2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    小児慢性特定疾病対策は,児童の健全育成の観点から,治療法の確立と普及をはかり,あわせて患児家庭の医療費の負担を軽減することを目的とし,1974年より「小児慢性特定疾患治療研究事業」として実施されていた.2005年に児童福祉法に位置付けられ,法律に基づく事業として法制化し,医療費助成のほか,自立支援事業として社会資源の活用,相談事業等が行われている.2018年には,対象疾患が16疾患群756疾病に拡大された.対象年齢は18歳未満とされているが,18歳到達時点においてすでに医療費助成の対象となっており,かつ18歳到達後も引き続き必要と認められる場合には,20歳未満の者も対象とされている.
    このほか,各自治体において小児医療費助成事業が行われているが,その対象年齢は自治体により様々である.
  • 片岡 智哉
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1150_3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    「小児,思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2017年版」では,妊孕性とは妊娠できる能力のことである.がん治療前,不妊症患者に対する生殖補助医療が応用され,妊孕性温存療法が行われる.女性では思春期以後に治療開始まで時間の余裕がある場合,胚(受精卵)凍結や未受精卵凍結が行われる.一方,思春期以前の場合や思春期以後でも治療開始まで時間的余裕のない場合には卵巣組織凍結が行われる.男性では思春期以後に射精が可能な場合,射出精子が凍結され,射精が不可能な場合,電気射精法や精巣内精子採取術を用いた精巣内精子が凍結される.なお思春期以前の男児では,現時点で適用しうる妊孕性温存療法は存在しない.
  • 鹿角 契
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1150_4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    顧みられない熱帯病(Neglected tropical diseases: NTDs)はWHO(世界保健機関)が「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」と定義している疾患群のことを指す.デング熱,狂犬病,トラコーマ,ブルーリ潰瘍,トレポネーマ感染症,ハンセン病,シャーガス病,アフリカ睡眠病,リーシュマニア症,嚢虫症,メジナ虫症,包虫症,食物媒介吸虫類感染症,リンパ系フィラリア症,河川盲目症,住血吸虫症,土壌伝播寄生虫症,マイセトーマ,有毒ヘビ咬傷が含まれる.
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1153
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成30年9月21日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1154-1155
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,54巻8号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
最終回 医療現場につながる基礎科学
留学体験記 世界の薬学現場から
トピックス
  • 藤原 広一
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1162
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    マクロライド類は,特徴的な大員環ラクトン構造と興味深い生物活性から,創薬研究の標的として利用されている.大員環ラクトンの構築法には,適切な環化前駆体から,マクロラクトン化反応や分子内クロスカップリング,メタセシス反応などが一般的に用いられている.一方,その前駆体の合成には足がかりとなる官能基の導入に多段階を要する.最近Harranらは,位置選択的なsyn-β水素脱離と改良型Semmelhack環化反応を活用した高効率的なマクロライド骨格構築法を活用し,抗がん活性を示す(-)-callyspongiolide(1)の不斉全合成を達成したので本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Manoni F. et al., J. Am. Chem. Soc., 140, 1280-1284(2018).
    2) Schreiber S. L., J. Am. Chem. Soc., 102, 6163-6165(1980).
  • 土川 博史
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1163
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    近年,脂質―膜タンパク質相互作用は,リン脂質がGタンパク質共役型受容体の機能制御に関与することが明らかとなったことから,新たな制御分子の開発という観点でも特に注目を集めている.しかし,多くの脂質分子が混在する膜環境において,特異的な作用を有する脂質とそれ以外の脂質とを区別することは容易ではなく,現在の黄金律ともいえる低温電子顕微鏡やX線結晶解析を用いても,その観測自体が挑戦的である.
    最近になり,脂質―膜タンパク質相互作用を解析する有効な手段の1つとしてマススペクトロメトリーによる分析手法が開発された.本稿では,穏和な条件によりタンパク質を複合体の状態で質量分析することが可能なネイティブマススペクトロメトリーにより,ペプチドグリカン(peptidoglycan: PG)の生合成に関わる脂質性分子と膜タンパク質の相互作用に関して新知見が得られた例について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Dawaliby R. et al., Nat. Chem. Biol., 12, 35-39(2016).
    2) Laganowsky A. et al., Nature, 510, 172-175(2014).
    3) Bolla J. R. et al., Nat. Chem., 10, 363-371(2018).
  • 金嶋 泰
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1164
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    機能性試験を指標とした天然物からの化合物精製は,分離と活性評価の反復であり,成分(モノ)を特定するまでには長期間を要することが多い.そのため,目的の成分に早くたどり着くために,活性評価の時間短縮は重要である.今回Hsuらは,TLCバイオオートグラフィー法による薄層クロマトグラフィー(TLC)上でのチロシナーゼ阻害活性評価が,従来のin vitro試験やin vivo試験と比較して簡便かつ安価で迅速であり,精製やスクリーニングに有用であることを報告したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hsu K. D. et al., Sci. Rep., 8, 401(2018).
    2) Glavnik V. et al., J. Chromatogr. A, 1482, 97-108(2017).
  • 喜多 俊介
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1165
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    麻疹(はしか)は麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症であり,今でも世界中で年間約9万人が死亡している.日本でも海外から持ち込まれた麻疹ウイルスによって毎年限定された地域に流行が見られ,2018年も沖縄県を中心に既に150例を超える症例が報告されている.麻疹ウイルスは極めて高い感染力を持ち,一過性の強い免疫抑制を引き起こすため,別の細菌やウイルス等による症状が重症化することもある.麻疹ウイルスに対する予防法として,弱毒性のワクチン接種が有効であるが,特異的な治療薬はまだ存在しておらず,発症後は対症療法が中心であるため,治療法開発が急務となっている.本稿では,麻疹ウイルスに対する治療薬開発に重要な知見をもたらす,麻疹ウイルスのFタンパク質と阻害剤との複合体構造について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hashiguchi T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 115, 2496-2501(2018).
    2) Plemper R. K. et al., Antimicrob. Agents Chemother., 49, 3755-3761(2005).
    3) Richardson C. D. et al., Virology., 105, 205-222(1980).
  • 牧野 健一
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1166
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    「ひらめき」は,突然かつ瞬間的になされる学習であり,心理学においては洞察学習と呼ばれる学習機構である.らに,洞察学習の特徴として,学習の成立に伴った快と驚きの情動反応,すなわち「アハ体験」(Aha! moment)が生じることが知られている.
    近年では,洞察学習時における脳活動に関して,主にヒトfMRIを用いた研究が行われている.現在までに,洞察学習に付随した前帯状皮質や海馬などの脳領域の活動上昇が報告されている.しかしながら,洞察学習時における脳活動は,特に皮質下領域の活動性に関しては,未だ十分に明らかとなってはいない.本稿では,7Teslaの超高磁場fMRI(7 T fMRI)を用いることで,アハ体験と相関したドパミン神経系の活動を捉えることに成功した知見を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Köhler W., “The mentality of apes”, Routledge & Kegan Paul, London(1925).
    2) Topolinski S., Reber R., Curr. Dir. Psychol. Sci., 19, 402-405(2010).
    3) Luo J., Niki K., Hippocampus, 13, 316-323(2003).
    4) Aziz-Zadeh L. et al., Hum. Brain Mapp., 30, 908-916(2009).
    5) Tik M. et al., Hum. Brain Mapp., in press.
  • 衣斐 大祐
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1167
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    近年,様々な臨床研究においてN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬のケタミンが,既存の抗うつ薬が奏功しない治療抵抗性うつ病患者に対して抗うつ作用を示すことが報告され,うつ病治療におけるブレークスルーとされている.しかし,ケタミンの抗うつ作用に関する分子機構は未だ不明である.本稿では,Yangらのグループによって同定されたケタミンの脳内作用部位と分子機構について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Murrough J. W. et al., Targeting glutamate signalling in depression:progress and prospects. Nat. Rev. Drug Discov., 16, 472-486(2017).
    2) Yang Y. et al., Ketamine blocks bursting in the lateral habenula to rapidly relieve depression. Nature, 554, 317-322(2018).
    3) Cui Y. et al., Astroglial Kir4.1 in the lateral habenula drives neuronal bursts in depression. Nature, 554, 323-327(2018).
  • 佐々木 崇光
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1168
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)は,世界規模の調査において成人有病率が約25%と報告されており,現在,最も一般的な肝疾患の1つとなっている.我が国の診療ガイドラインにおいて,NAFLDは,“組織診断あるいは画像診断で脂肪肝を認め,アルコール性肝障害などの他の肝疾患を除外した病態”と定義されており,メタボリックシンドロームが発症の基盤となっている.そのため,肥満者のNAFLD有病率は高く,肥満に至る生活習慣やインスリン抵抗性が病態形成の中心となっている.NAFLDの一部は,脂肪化した肝臓が腸内細菌やアディポサイトカイン等に由来する過剰なストレスを受け,肝細胞障害や肝線維化を経て肝硬変となり,最終的に肝細胞がんへと進行する.近年では,肝硬変を経過せずにがんを発症するケースも報告されており,その病態機序は十分に解明されていない.
    本稿では,NAFLD誘発肝細胞がん(NAFLD-induced hepatocellular carcinoma: NAFLD-HCC)患者は,コレステロール生合成の第二の律速酵素であるスクワレンエポキシダーゼ(squalene epoxidase: SQLE)が高発現していることに着目し,NAFLD-HCC形成の病態機序の解明とSQLEをターゲットとした治療法について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Younossi Z. M. et al., Hepatology, 64, 73-84(2016).
    2) NAFLD/NASH診療ガイドライン2014, 日本消化器病学会.
    3) Piscablia F. et al., Hepatology, 63, 827-838(2016).
    4) Liu D. et al., Sci. Transl. Med., 10, eaap9840(2018).
  • 岡 希太郎
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1169
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    出生体重が2,500g未満は「低出生体重児」,1,500g未満は「極低出生体重児」と定義され,500g未満の出生児では,半数強の生存が困難になる.近年,日本人の低出生体重児の割合が増加して,全体のほぼ1割に達し,先進国の平均6.8%を大きく上回った.極低体重に伴う心身の機能障害では,救命措置はもちろんのこと,成長後に障害を残さない医学的配慮が求められる.ここでは未熟児無呼吸発作のカフェイン治療について,1990年代から研究を続けてきた国際臨床試験グループ“Caffeine for Apnea of Prematurity Trial Group(通称CAP)”の研究内容を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mürner-Lavanchy I. M. et al., Pediatrics, 141, e20174047(2018).
    2) Schmidt B. et al., N. Engl. J. Med., 357, 1893-1902(2007).
    3) Kreutzer K., Bassler D., Neonatology, 105, 332-336(2014).
    4) Ravichandran S. et al., Acta Paediatr., in press.
資料
追悼
  • 吉原 新一
    2018 年 54 巻 12 号 p. 1170
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    名誉会員吉村英敏先生のご逝去に際し、哀悼の意を表したい。先生は東京大学医学部薬学科をご卒業後、昭和26年より九州大学医学部薬学科助手、助教授を経て昭和43年に同大学薬学部衛生裁判化学教室の教授に就任された。先生のご研究は一貫して薬学が担うべき社会的課題への貢献を目指した裁判化学的視点に基づく薬毒物代謝研究であった。薬学研究者、教育者としての先生のご遺徳を偲び、ここに衷心よりご冥福をお祈りしたい。
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