ファルマシア
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60 巻, 1 号
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目次
  • 2024 年 60 巻 1 号 p. 2-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル フリー
    特集 ウイルスと精神神経症状
    特集にあたって 新型コロナウイルスのパンデミックを経験し,ウイルスの脅威を誰もが目の当たりにした.今もコロナ後遺症で倦怠感や集中力低下,記憶障害などの精神神経症状に苦しんでいる方も多い.新型コロナウイルスを含め,精神神経症状をきたす様々なウイルスや感染性タンパク質は,脳へ侵入複製し脳機能を損傷するものが多いが,なかには脳へ侵入しなくても,脳外での感染複製により,脳機能が影響を受け,重篤な精神神経症状や脳炎を生じることもある.本特集では,各種ウイルス・感染性タンパク質の感染による精神神経症状について,歴史と現状,最先端の研究を紹介していただくとともに,今後の予防法・薬物治療法の可能性についても考えてみたい.
    表紙の説明 ダニ,蚊,犬,牛,ヒトなど,様々な生き物を媒介して,ウイルスや異常プリオンがヒトに感染すると,脳内では神経細胞やグリア細胞の機能が障害され,精神神経症状が生じる.ウイルスに感染して精神神経疾患に罹患している子どもをうつむき加減に暗く示し,子どもの吸気,呼気にウイルスが含まれている様子を表した.また,研究の進展や新薬により回復した子どもを上向きに明るく表現した.
オピニオン
  • 柳 雄介
    2024 年 60 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    本号には、ウイルスあるいはプリオン感染による精神神経症状について最先端の基礎研究を進めている研究者による解説が集められており、研究の現状と将来への展望を得るのに最適である。従来は解析が困難であったヒト神経系におけるウイルス感染の研究も、最近では新しい研究手法を駆使して多くの知見が得られている。ウイルス感染による神経症状の分子病態の解明は、新たな薬剤やワクチンによる治療法の開発につながることが期待される。
Editor's Eye
最前線
  • ダニ媒介脳炎と新型コロナウイルス感染症の神経症状の病態
    西條 政幸
    2024 年 60 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    ダニ媒介脳炎(tick-borne encephalitis,TBE)および新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019,COVID-19)の中枢神経病態について解説した.TBEは,TBEウイルス(TBEV)によるダニ媒介性感染症である.TBEVは神経に到達してそこで増殖して脳炎を引き起こす.日本ではTBEV感染リスクは高いとは言えないが,不活化TBEワクチン接種のあり方を検討する必要がある.COVID-19の神経症状は,原因ウイルスSARS-CoV-2感染に伴う全身性反応による間接的病態またはSARS-CoV-2が中枢神経組織で増殖することによる直接的機序,あるいは,その両方の機序に基づいて引き起こされる.COVID-19ワクチン接種によりその発症リスクが低減される.
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 塩見 慎也
    2024 年 60 巻 1 号 p. 60
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    DNA,RNAやリン脂質など五価の有機リン化合物は,生命にとって不可欠の分子である.これまでに報告されているリン原子上の不斉点を制御する合成法は,主にリン系不斉補助剤を利用するジアステレオ選択的手法か,リンに結合したアルケン,アルキン等の反応性を利用した間接的な非対称化法に限られていた.今回Formicaらは,二官能性イミノホスホラン超強塩基触媒(BIMP)によるリン(V)の反応性を直接的に利用したリン酸エステルの求核的不斉非対称化合成法を開発したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Formica M. et al., Nat. Chem., 15, 714–721(2023).
  • 千葉 幸介
    2024 年 60 巻 1 号 p. 61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    核酸医薬は,低分子医薬や抗体医薬では治療が難しかった遺伝性疾患や希少疾患に対する新たな創薬モダリティとして注目されている.現在,RNAを標的とするsiRNAやアンチセンス核酸(ASO)を主軸に多くの臨床試験が行われ, 執筆時点で18品目が承認されている.こうしたなか,次なる核酸医薬としてデオキリボザイム(DNAzyme)が注目を集めている.1本鎖DNAで構成されるDNAzymeは金属イオン存在下,DNAzyme自身がRNAを切断するユニークな分子である.DNAzymeは切断部位の配列特異性が非常に高いことから,ASOやsiRNAでは難しかった一塩基変異(SNPs)選択的なRNA切断が可能になると期待されている.一方で,ASOやsiRNAのように活性と安定性を高める化学修飾方法が確立されておらず,DNAzymeの創薬応用は進んでいなかった.しかし近年,DNAzymeに適切な化学修飾を導入し,細胞内で明確なRNA切断活性を示すことに成功した事例が相次いで報告された.本稿では,Nguyenらによって報告された化学修飾型DNAzymeの最新研究について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wang Y. et al., Nat. Chem., 13, 319–326(2021).
    2) Taylor A. I. et al., Nat. Chem., 14, 1295–1305(2022).
    3) Nguyen K. et al., Nat. Commun., 14, 2413(2023).
    4) Borggräfe J. et al., Nature, 601, 144–149(2022).
  • 新井 玲子
    2024 年 60 巻 1 号 p. 62
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    天然物の分析において,「試験の再現がとれない」ことは珍しくない.再現性の高い分析法では,事前に頑健性が評価されることが多いが,多成分系の天然物分析においてこの頑健性を高めることは容易ではない.Quality by Design(QbD)は医薬品規制調和国際会議(ICH)のガイドラインに示されている概念で,開発プロセスから製品の品質を作り込むことを目的としているが,これは分析手法にも応用されており,しばしばAnalytical QbD(AQbD)と称される.AQbDでは分析法開発の初期段階から体系的に作り込むことにより,頑健で実用性の高い分析法の確立を目標としている.本稿では,AQbDを適用したウコンの分析法の開発例を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mohammed H. A. et al., Foods, 12, 1010(2023).
    2) Priyadarsini K. I., Molecules, 19, 20091-20112(2014).
  • 与那嶺 雄介
    2024 年 60 巻 1 号 p. 63
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    生化学・分子生物学の進展により,生体分子(タンパク質・核酸・脂質など)が精巧に相互作用して,生命現象を制御していることが分かってきた.これらの知見を基に,細胞を模倣した人工細胞を創出する研究が起こった.構成要素として生体分子や人工分子を自由に選択できるため,天然の細胞とは異なった機能発現システムを組み込むことも可能となる.特に,光照射をトリガーとする生理活性の発動は時空間制御が可能であり,化学的な誘導が不要で利便性が高い.本稿では,光照射により人工細胞膜内でタンパク質のナノポアの形成を誘導し,色素を放出させた研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Sihorwala A. Z. et al., J. Am. Chem. Soc., 145, 3561-3568(2023).
    2) Hindley J. W. et al., Nat. Commun., 9, 1093(2018).
    3) Booth M. J. et al., Sci. Adv., 2, e1600056(2016).
  • 増川 太輝
    2024 年 60 巻 1 号 p. 64
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    生体における水分と塩分の恒常性は,中枢神経系および末梢内分泌によって維持されている.大腸は電解質吸収の主要な臓器の1つであるが,ナトリウム摂取調節における大腸および消化管ペプチドの役割については不明な点が多い.本稿においては,ナトリウムの恒常性を適切に調節するための新しい腸―脳連関を明らかにしたLiuらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Liu Y. et al., Sci. Adv., eadd5330(2023).
    2) Resch J. M. et al., Neuron., 96, 190–206(2017).
    3) Jarvie B. C. et al., Nat. Neurosci., 20, 167–169(2017).
  • 松本 信圭
    2024 年 60 巻 1 号 p. 65
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    海馬は,記憶,学習,空間探索に重要な脳部位である.特に,海馬の神経細胞の一部は動物が環境内の特定の場所を通過した時に高い頻度で発火する.このように,海馬の神経活動による場所の表象と動物の移動とは関連がある.しかし,動物の移動には四肢の運動が必須であるにもかかわらず,海馬での場所の表象と四肢の運動との関連は検討されていなかった.本稿では,これら両者の関連に迫った論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Joshi A. et al., Nature, 617, 125–131(2023).
    2) Kay K. et al., Cell, 180, 552-567.e25(2020).
    3) Denovellis E. L. et al., eLife, 10, e64505(2021).
  • 寺田 一樹
    2024 年 60 巻 1 号 p. 66
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    グルココルチコイド(GC)は,副腎皮質から分泌される副腎皮質ステロイドの一種であり,強力な抗炎症作用や免疫抑制作用から種々の疾患の治療に汎用されている.また,生体内においては,ストレス刺激によってGC分泌が促進されることから,中枢神経系疾患との因果関係に注目が集まっている.近年では,アルツハイマー病(AD)患者のGCレベルが高いことが報告され,ADの病因としても考えられているが,未だ不明な点が多い.本稿では,ADの危険因子の解明や予防に資する新たな知見として,GCによる神経細胞のミトコンドリア機能障害について明らかにしたDuらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zheng B. et al., Ageing. Res. Rev., 64, 101171(2020).
    2) Du F. et al., Brain, 146, 4378-4394(2023).
    3) Choi G. E. et al., Nat. Commun., 12, 487(2021).
    4) Du H. et al., Nat. Med., 14, 1097-1105(2008).
  • 山西 由里子
    2024 年 60 巻 1 号 p. 67
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/01
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病性潰瘍や褥瘡などの創傷では感染がリスクファクターの1つであり,その治療・予防は必須の課題である.一般的に皮膚や軟部組織の感染では緑膿菌(PA),黄色ブドウ球菌(SA)などが病原菌として知られており,創傷の難治性化および慢性化の原因となっている.感染治療に対しては抗菌薬が使用されるが,漫然とした抗菌薬の使用は耐性菌発現のリスクがあり,推奨されていない. 一方,乳酸菌を含むプロバイオティクスは腸内細菌などに対して抗菌作用を示すことが報告されており,創傷に対する局所投与においても効果が期待される.
    本稿では,プロバイオティクスとして乳酸菌を配合した外用薬の抗菌作用および製剤としての安定性を検討した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) de Macedo G. H. R. V. et al., Pathogens, 10, 148(2021).
    2) Pontes D. G. et al., Rev. Col. Bras. Cir., 47, e20202471(2020).
    3) Nair M. S. et al., Adv. Appl. Microbiol., 98, 1–29(2017).
    4) Sousa M. A. D. S. et al., Pharmaceutics, 16, 468(2023).
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